光円錐の頂点からこんにちは。Physics Lab. 2026 宇宙物理班、観測者のほるみるです。 本記事では、我々宇宙物理班がどのような世界線を描いているか、その軌跡をご紹介いたします。
この記事にはいくつか数式が登場しますが、局所慣性系で理解できなくても問題ありません。強い重力場を漸近的平坦な場から眺めて、「時空が歪んでるな〜」と楽しむので十分です。もし、無限の固有時間を費やしてでもそのイベントホライゾンに落ちてみたいと思ったら、クルスカル座標で特異点への道筋を用意していますので、光速で突入してみてください!
みなさんこんにちは。Physics Lab. 2026 宇宙物理班班長のほるみるです。 本記事では、私達宇宙物理班の活動についてご紹介いたします。
この記事ではいくつか式を紹介しています。ワクワクしてもらうのが目的なので意味わからなくても雰囲気で楽しんでもらえれたらいいなと思います。勉強してみたいと思ったら本のリンクを踏むなりして参考にしていただければいいなと思います!
ここからは真面目でいきます。
宇宙物理学とは、素粒子という極微の世界から、銀河、そして宇宙全体という極大の世界までを、物理学の法則を用いて解き明かそうとする学問です。 力学、電磁気学、熱・統計力学、量子力学、そして相対性理論……。物理学科で学ぶあらゆる知識が、宇宙という壮大な舞台で交錯します。 私たち宇宙班は、そんな「物理学の総合格闘技」とも言える宇宙物理学に魅せられたメンバーが集まり、日々議論を交わしています。
宇宙物理班では、班員が主体となって様々な自主ゼミを行っています。現在進行中の熱いゼミたちを紹介します。
場の古典論
著者: L.D.ランダウ、E.M.リフシッツ
出版社: 東京図書
なんと2年生が20人近く参加している、今期超人気のゼミです。 建前上は今年から新設された「一般物理」の管轄ということになっていますが、私が勝手に宇宙班認定しました。 電磁気学と特殊相対性理論、そして一般相対性理論を扱うこの名著を通じて、物理学の基礎体力を鍛え上げています。自分も去年はこの本を通じて一般相対論が大好きになってしまったおじさんの一員です。せっかくなのでアインシュタイン方程式を置いておきます。
$$R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}R +\Lambda g_{\mu\nu}=\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} $$
演習形式で学ぶ一般相対性理論
著者: 前田 恵一、田辺 誠
出版社: サイエンス社
B2(2年生)とB3(3年生)が入り混じり、みんなで一般相対論の激ヤバ計算に挑んでいます。 他の教科書ではよく行間になるような7時間とかかかる計算を確かめたい、そんなマニアックな需要に応えてくれる稀有な本です。
使用しているテキストは誤植が多いことでも有名(?)で、計算が合わないのが自分のミスなのか誤植なのか、みんなでてんやわんやしながら進めています。 しかし、その苦労の分だけ計算力と理解が深まっているはずだと信じています。
ここでも一つ数式をピックアップしておきましょう。カー解をどうぞ。
\begin{eqnarray}
d
s^2 &= -\left(1 - \frac{2Mr}{\Sigma}\right)dt^2 - \frac{4Mar \sin^2\theta}{\Sigma} dt d\phi + \frac{\Sigma}{\Delta} dr^2 \\&+ \Sigma d\theta^2 + \left(r^2 + a^2 + \frac{2Ma^2r \sin^2\theta}{\Sigma} \right) \sin^2\theta d\phi^2 \\
&\Delta \equiv r^2 - 2Mr + a^2 \quad \quad \Sigma \equiv r^2 + a^2 \cos^2\theta
\end{eqnarray}
宇宙電磁流体力学の基礎
著者: 柴田 一成、横山 央明、工藤 哲洋
出版社: 日本評論社
始まったばかりのゼミですが、宇宙物理班の「星」とも言える期待のゼミです。 宇宙物理というと一般相対論のイメージが強いかもしれませんが、「宇宙は相対論だけではない!」ということを思い出させてくれます。 プラズマや磁場が支配するダイナミックな宇宙の姿を学んでいきます。もちろんcgs-Gauss単位系(電場$\bf{E}$と磁場$\bf{B}$は同じ次元、超新星爆発のエネルギーは$10^{51}\mathrm{erg} $)ですし、$4\pi \approx 10 \approx 1$です。
このゼミを立ててくれた学科の友達に「好きな式何?」って聞いたら「電磁流体中の波動の分散関係式」と即答してくれました。分散関係式です。
$$\mathrm{det}\begin{pmatrix} \omega^2 - v_A^2 k^2 - c_s^2 k_\perp^2 & 0 & -c_s^2 k_\perp k_\parallel \\ 0 & \omega^2 - v_A^2 k_\parallel^2 & 0 \\ -c_s^2 k_\perp k_\parallel & 0 & \omega^2 - c_s^2 k_\parallel^2 \end{pmatrix} = 0$$
宇宙論の物理(上)
著者: 松原 隆彦
出版社: 東京大学出版会
こちらも始まったばかりのゼミです。 一般相対論や場の量子論、素粒子論が超端的にまとめられており、まさに物理学の「総合格闘技」。 「宇宙論が気になります!」というメンバーが集まり、現代宇宙論の最前線を理解するための基礎を叩き込んでいます。
なぜ宇宙が138億光年だとわかるのか、その計算の理屈を追えるのが上巻で一番激アツでした。その際に登場する宇宙膨張を表すフリードマン方程式をどうぞ。
$$H^2 =\frac{8 \pi G}{3} \rho - \frac{K c^2}{a^2} + \frac{\Lambda c^2}{3}$$
$$\frac{\ddot{a}}{a} = - \frac{4 \pi G}{3} \left( \rho + \frac{3p}{c^2} \right) + \frac{\Lambda c^2}{3}$$
激アツすぎるので、このトピックについてのアドカレ記事を書く予定です。お楽しみに!
(仮題) 宇宙の時間を巻き戻す方法 — Λ-CDMモデルで知る宇宙の広さと年齢
宇宙物理班では、初期の量子ゆらぎが、ホライズンを超えて相関を持ち合い、密度ゆらぎとして古典化しながら物理を学んでいます。来る五月祭という時空点においては、これらの学びを凝縮した展示を行い、重力波のごとく皆様に伝播させる予定ですので、検出器の感度を上げてご期待ください。
宇宙物理班では、このように多様な興味を持ったメンバーが、互いに刺激し合いながら楽しく物理を学んでいます。 五月祭では、これらの学びを活かした展示を行う予定ですので、ぜひご期待ください。
追伸
これからも宇宙の膨張に合わせて、ゼミの開催数もインフレーションさせていきたいですね〜。最近話題のダークマターのゼミとかやりたくないですか?