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競技数学解説
文献あり

某IMO shortlist問題を瞬◯?五心一致の深淵へ

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こんにちは!Kikachuです。
今回初投稿ということで、私が高校時代に発見した定理を紹介していこうと思います。本記事では、発見した定理の紹介とその応用(特にIMO shortlistのとある問題を瞬殺できる定理であること)を紹介していきます。前提知識は相似と三角形の五心のみです!
では、早速見ていきましょう!

定理の紹介

とはいったものの、内心と垂心の一致といってもピンとこない方もいらっしゃると思うのでまずは有名な定理を紹介します。

$\triangle ABC$の内心$I$とその傍心三角形$\triangle I_AI_BI_C$の垂心$H$は一致する。

$\angle ABI_B=\angle CBI_B$,$\angle ABI_C = \angle CBI_A$
よって、$\angle I_BBI_C=\angle I_BBI_A=90°$他についても同様。

面白い性質ですね!まさか異なる三角形の内心と垂心が一致してしまうなんて!!幾何がとても魅力的に感じてきましたね。この定理は私が五心の一致研究をしようと思ったきっかけのひとつです。(以下この定理を定理1と呼ぶ。)

ウォーミングアップはここまでで主定理について見ていきましょう

主定理

任意の$\triangle ABC$において、各辺$AB,BC,CA$を直径とする円をそれぞれ$C_1,C_2,C_3$とおく。ここで、$C_2$$C_3$の交点であって、$ \triangle ABC$の頂点でないものを$D$、同様に$C_3$$C_1$の交点を$E$$C_1$$C_2$の交点を$F$とする。このとき、$\triangle ADF,\triangle BDE,\triangle CEF$の内心を$P,Q,R$とし、$\triangle PQR$の垂心を$H$とおくと、$\triangle ABC$の内心$I$$H$が一致する。

まさか垂足三角形で分けられる三角形の内心を結ぶと内心と垂心が一致してしまうなんて思いませんでした。この不思議な性質を証明していこうと思います。(以下この定理を主定理と呼ぶ)
証明は少し天下り的ですが見ていきましょう。

角度から$I$が垂心であることを示す。
以下、有向角を$\measuredangle (l_1,l_2) \in \frac{ \mathbb{R} }{\pi \mathbb{Z} } $で表し、すべて$mod \pi$で扱う。また、$\angle BAC =2\alpha, \angle ABC =2\beta, \angle ACB=2\gamma$とおく。

$D,E,F$は円周角の定理から明らかに各頂点から対辺に下ろした垂線の足である。

まず、$\triangle ABC \sim \triangle ADF \sim \triangle CEF \sim \triangle BDE$であることを示す。
$\triangle ABC \sim \triangle ADF$のみを示せば十分である。
$\measuredangle (DF,DA)=\measuredangle (DF,DB)$,$\measuredangle (DF,DB)=\measuredangle (FC,CB)$,$\measuredangle (FC,CB)=\measuredangle (AC,CB)=2\gamma$つまり、$\angle ADF =2\gamma$.
さらに、$\measuredangle (AF,FD)=\measuredangle (CF,FD)$,$\measuredangle (CF,FD)=\measuredangle (CB,BD)$,$\measuredangle (CB,BD)=\measuredangle (CB,BA)=2\beta$つまり、$\angle ADF =2\beta$.

次に$\angle QPR$を求めていく。$\angle QPR=\angle DPF-\angle DPQ-\angle FPR$とすれば求める角度が出せる。ここで天下り的だが、$\triangle AEF \sim \triangle PFR$を示す。
まず、$AE\perp BC$より、
$\measuredangle (AE,EF)=90^\circ -\angle BAC =90^\circ -2\alpha$.
$\triangle ACE$において、$\angle EAC =180^\circ -(90^\circ+2\gamma)=90^\circ -2\gamma$.
したがって、$\angle AFE=180^\circ-(90^\circ -2\alpha)-(90^\circ -2\gamma)=180^\circ-2\beta$.
$\angle RFE=\angle PFD =\beta$より、$\angle PFR =180^\circ-2\beta$.

$\angle PAF =\alpha,\angle AFP =\beta$を思い出すと、$\angle APF = 180^\circ-\alpha-\beta=90^\circ +\gamma$. $\triangle APF$の正弦定理より、$\frac{AF}{PF}=\frac{sin{(90^\circ +\gamma)}}{sin{\alpha}}=\frac{cos{\gamma}}{sin{\alpha}}$
同様に、$\angle FER =\alpha,\angle EFR =\beta$を思い出すと、$\angle ERF = 180^\circ-\alpha-\beta=90^\circ +\gamma$. $\triangle EFR$の正弦定理より、$\frac{EF}{RF}=\frac{sin{(90^\circ +\gamma)}}{sin{\alpha}}=\frac{cos{\gamma}}{sin{\alpha}}$
以上より相似であることが示される。
巡回対称性から、$\triangle BFD \sim \triangle PDQ, \triangle CDE \sim \triangle QER$.

$\angle QPR=\angle DPF-\angle DPQ-\angle FPR= (90^\circ+\alpha)-(90^\circ -2\gamma)-(90^\circ -2\beta)=90^\circ -\alpha$
さらに、$\angle PRI=\angle FRI-\angle FRP=(\beta+\gamma)-(90^\circ-2\alpha)=\alpha$
したがって、$RI$$PQ$の交点を$X$とおけば、$\angle PXR=\angle QPR+\angle PRI=90^\circ$同様にして他も言えるので、$I$$\triangle PQR$の垂心である。

これで、証明が完了です。嬉しい!!……で終わりたいところですが、この定理は問題設定上たまたま成り立っただけで、何か特別な場合にすぎないのではないかと思った方もいるのではないでしょうか?(ハイ!)

そこに気づくとは、幾何的センスがありますね!実はこの定理は、ある図形を写像で移したものの、ごく一部分を取り出したものと見なすことができるのです?!
どういうことかと思われたでしょう。これは、自己相似性をもつ図形の一部分を見ている、ということです。実際、$\triangle PQR$に同じ操作を与えても、内心と垂心が一致することが確認できます。すると、この操作は無限回繰り返すことができるため、フラクタルのような自己相似を保ち続けます。つまり、ある図形を写像で移して得られた図形が$\triangle PQR$というわけです。では、その写像は何であり、もとの図形は何かを考えていきましょう。

ここで次の補題を考えます。

傍心三角形$\triangle I_AI_BI_C$$\triangle PQR$は相似である。その相似比は、$\triangle ABC$の内接円の半径$r$と外接円の半径$R$を用いて、$\frac{r}{2R}$である。

相似であることは簡単な角度追跡により示せる。計算は読者に委ねる。
相似比を求める。トリリウムの定理より$II_A=4Rsin{\alpha}$
また、$IP=IA-AP=IA(1-cos2\alpha)=\frac{r}{sin{\alpha}}\cdot2sin^2\alpha=2rsin\alpha$
したがって、相似比は$\frac{r}{2R}$である。

これより、傍心三角形と$\triangle PQR$が相似比$\frac{r}{2R}$の相似であることがわかりました。では、これがわかって何が嬉しいのでしょうか。ここで定理1を思い出してみてください。あれ、垂心と内心が一致している。何か関係があるのかもしれません。しかも、どちらも中心$I$を共有する相似です。まさか……、そうです。今回の主定理と、競技数学でよく現れる「傍心三角形の垂心と内心の一致」は、実は同じ自己相似構造の中で、写像の作用前と作用後の関係として捉えられるのです。本当に? と思うかもしれないので、次の定理を示します。

自己相似が起こる回転写像

$z_I$を内心の複素数表示、$r$$\triangle ABC$の内接円の半径、$R$$\triangle ABC$の外接円の半径とする。
$ f:\mathbf{C} \to \mathbf{C}, z \mapsto z_I +\frac{r}{2R}\cdot e^{i\theta}(z-z_I)$
いま、回転相似は$\pi$回転したものであるため、$\theta=\pi$である。
で定義される写像を作用させると、作用後の図形の垂心が$\triangle ABC$の内心と一致する。

写像fの定義より$f(z)=z_I-k(z-z_I)$ただし、$k=\frac{r}{2R}$
三角形$XYZ$の垂心を$H$とすると像を$f(X)=X',f(Y)=Y',f(Z)=Z',f(H)=H'$とおく。この写像は角度を保存し$I$を中心に回転することより、$f(HX\perp YZ)=H'X'\perp Y'Z'$となり、同様に他も示せるので、垂心と内心が一致する。

ここから、定理1もまた何かの図形の回転写像による像であることが分かりました。逆像を求めたいなら、$\frac{2R}{r}$倍とすれば求められます。

いかがだったでしょうか?五心の一致についてかなり深い部分にまで触れてみました。五心の奥深さについて知ってもらえたら幸いです。

続いて、この定理を用いてIMO shortlistを瞬殺していきます。

IMO shortlistから学ぶ応用

ここからは息抜きがてら見てもらえたらいいです。

IMO shortlist 2012 G3

鋭角三角形 $ABC$ において、頂点 $A, B, C$ から対辺に下ろした垂線の足をそれぞれ $D, E, F$ とする。 $\triangle AEF$$\triangle BDF$ の内心をそれぞれ $I_1, I_2$ とし、$\triangle ACI_1$$\triangle BCI_2$ の外心をそれぞれ $O_1, O_2$ とする。 このとき、$I_1 I_2$$O_1 O_2$ が平行であることを証明せよ。
本来は図はないですが、分かりやすいように付け足しました 本来は図はないですが、分かりやすいように付け足しました

問題設定がそのまま定理が使えそうな形をしていますね!
本解答だと、反転や複素数平面で体育をしていますが、今回我々はその計算を一気に飛ばす定理を知っているので、次のような証明で終了です。

鋭角三角形 $ABC$ に対し,$D,E,F$ をそれぞれ $A,B,C$ からの垂足とする。また,$I_1=\text{$\triangle AEF$ の内心},\qquad I_2=\text{$\triangle BFD$ の内心},\qquad I_3=\text{$\triangle CDE$ の内心}$
とおく。さらに,
$O_1=\text{$\triangle ACI_1$ の外心},\qquad O_2=\text{$\triangle BCI_2$ の外心}$
とする。このとき,
$I_1I_2 \parallel O_1O_2$
を示す。まず,主定理より,
$\triangle I_1I_2I_3$
の垂心は,$\triangle ABC$ の内心 $I$ に一致する。ここで $I_3$ は角の二等分線 $CI$ 上にあるので,$II_3 \perp I_1I_2$
が成り立つ。したがって,$I_1I_2 \perp CI ・・・(1)$
を得る。
次に $O_1O_2$ について考える。
$\triangle AEF \sim \triangle ABC$ かつ $\triangle BFD \sim \triangle ABC$ であるから,
$I_1$$AI$ 上に,$I_2$$BI$ 上にある。
トリリウムの定理より,
$II_1=2\,IA\sin^2\frac{A}{2},\qquad II_2=2\,IB\sin^2\frac{B}{2}$
である。
一方,$\triangle ABI$ に正弦定理を用いると,$IA\sin\frac{A}{2}=IB\sin\frac{B}{2}$を得る。よって,
$IA\cdot II_1=IB\cdot II_2・・・(2)$
である。ここで,円 $(ACI_1)$ に対する点 $I$ の冪は
$\operatorname{Pow}_{(ACI_1)}(I)=IA\cdot II_1$
であり,同様に$\operatorname{Pow}_{(BCI_2)}(I)=IB\cdot II_2$
である。したがって (2) より,点 $I$ は 2 つの円$(ACI_1),\quad (BCI_2)$の根軸上にある。
これら 2 つの円はともに点 $C$ を通るので,その根軸は直線 $CI$ である。したがって,それぞれの外心を $O_1,O_2$ とすると,
$O_1O_2 \perp CI・・・(3)$が成り立つ。(1),(3) より,
$I_1I_2 \perp CI,\qquad O_1O_2 \perp CI$
なので,$\boxed{\,I_1I_2 \parallel O_1O_2\,}$ が従う。

いかがでしょうか?めんどくさい角度計算がなくなり根軸の議論部分だけで脳死で証明が完了してしまいました。

今後の展望

他にも五心の一致というものがあるので、それを写像を用いて統一的に表せないか研究していきたいです。

それではまたどこかで会いましょう!さようなら。

参考文献

投稿日:14日前
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