0

OMC対策(A分野:因数定理の応用)

34
0
$$$$

本記事の前提知識

剰余の定理

1. 整式$P(x)$$1$次式$x-a$で割った余りは$P(a)$
2. 整式$P(x)$$1$次式$ax+b$で割った余りは$P\left(-\dfrac{b}{a}\right)$


(確認問題)この定理を証明せよ.

証明
 整式$P(x)$$x-a$で割った商を$Q(x)$,余りを$R$とおく($1$次式で割っているので,余りは定数項である).すなわち$P(x)=(x-a)Q(x)+R$とおく.この式に$x=a$を代入すれば,余り$R=P(a)$である.
 2.の証明もほぼ同様なので省略する.
因数定理

 整式$P(x)$$x-a$を因数にもつ($x-a$で割り切れる)ことと,$P(a)=0$を満たすことは同値である.


(確認問題)この定理を証明せよ.

証明
 $P(x)=(x-a)Q(x)+R$とおくと,$P(a)=0 \iff R=0$である.
 $R=0$であることは,$P(x)=(x-a)Q(x)$すなわち$P(x)$$x-a$を因数にもつことを意味する.

 以上,二つの定理を前提知識としたが,これらはどちらも大学受験で言えば基本レベルの定理である.
 今回の記事は,これらの定理の応用編と言うべきものであり,大学受験で役立つこともあるかもしれない.

応用その1.関数の決定

 $3$$(0,0),(1,1),(2,4)$を通る$2$次関数を決定せよ.

 この問題を解く基本的な方法は,決定すべき関数を$y=ax^2+bx+c$とおいて,$3$点を代入するものである.そうすれば$a,b,c$に関する連立方程式が得られるので,それを解けば$2$次関数が決定される.
 しかし,もし$3$点ともが$y=x^2$を満たすことに気付けば,これで終わりである.相異なる$3$点を通る$2$次関数は一つに決定されるためである.

 では,次の問題はどうだろうか.

 $4$$(0,0),(1,1),(2,4),(3,7)$を通る$3$次関数を決定せよ.

 この問題は,例1の発展バージョンである.
 もし最後の点が$(3,9)$であれば,そのような$3$次の関数は存在せず,$y=x^2$が答えとなる.しかし本問では,最後の点が$(3,7)$となっている.
 もちろん$y=ax^3+bx^2+cx+d$と置いて,$4$点を代入する手段はある.しかし$(0,0),(1,1),(2,4)$を通るという条件を,どうにか活用できないだろうか.
 ある程度"良い"条件がわかっているときに,それらを活用して関数の決定をしたい,というのが今回の記事の核である.
 例2をここで解いてしまうこともできるが,この問題は練習問題としてあとに残しておきたい.

 次の問題はどうだろうか.

 $3$$(2,0),(3,0),(4,4)$を通る$2$次関数を決定せよ.

 これくらいの問題であれば,普通の数学Ⅰの教科書や問題集に載っているかもしれない.決定すべき関数を$y=ax^2+bx+c$とおいて$3$点を代入するより,ちょっとした工夫ができる.
 それは,決定すべき関数を$y=a(x-2)(x-3)$と置くことである.こう置けば,あとは$(4,4)$を代入すれば$a=2$が決まり,$y=2(x-2)(x-3)$が答えだとわかる.
 この工夫の素晴らしい点は,$y=ax^2+bx+c$と置く場合に比べて,未知数の数が$2$つも少なくなるところにある.$(2,0),(3,0)$を通るという条件だけを生かして,$y=a(x-2)(x-3)$と置く技を,ぜひとも覚えておいてほしい(大学入試でもしばしば使える技である).

 なお(少し大げさな表現ではあるが,)このアイディアに因数定理が使われていることは明記しておく.
 問題文の条件を満たす$2$次式$P(x)$は,$P(2)=0$を満たすので$x-2$を因数にもち,$P(3)=0$を満たすので$x-3$を因数にもつ.これらを利用して,$P(x)=a(x-2)(x-3)$と置けたのである.

 では,この問題を参考にして,次の問題を解けるだろうか.ぜひとも考えてから解答を見てほしい.

 $3$$(2,1),(3,1),(0,7)$を通る$2$次関数を決定せよ.

解説
 決定すべき関数を$y=a(x-2)(x-3)+1$と置くのが工夫である.
 こうすることで,$(2,1),(3,1)$を通るという条件は使い切っている.あとは$(0,7)$を代入して,$a=1$を得る.求めるべき解答は$y=(x-2)(x-3)+1$である.
 なお数学のテストであれば,この解答では減点される可能性が高い.きちんと展開して$y=x^2-5x+7$とした方がよいだろう.

 次の問題も,工夫できるだろうか.

 $3$$(1,1),(2,2),(4,16)$を通る$2$次関数を決定せよ.

ヒント1
 $(1,1),(2,2)$を通る条件を上手く使いたい.
 当然だが,この二点が満たしている条件は$y=x$である.
ヒント2
 $y=P(x)+x$と置いてみると$P(1),P(2)$はいくつになるだろうか.
解説
 $y=P(x)+x$と置く.
 誤解しないでほしいが,求めるべき関数$ax^2+bx+c$は,$P(x)$ではなく,$P(x)+x$全てである.
 つまり,方程式$y=P(x)+x$$(1,1),(2,2),(4,16)$を通るということである.
 さて,ここで$y=P(x)+x$$(1,1),(2,2)$を代入するとどうなるか.答えは,$P(1)=P(2)=0$である.つまり因数定理から$P(x)=a(x-1)(x-2)$と置けるのである.
 ということで,決定すべき$2$次関数は$y=a(x-1)(x-2)+x$と置ける.あとは$(4,16)$を代入することで$a=2$を得る.答えは$y=2(x-1)(x-2)+x=2x^2-5x+4$である.

 ここまでを理解していれば,先ほど飛ばした例2を工夫して解けるはずだ.
 改めて考えてみてほしい.

例2(再掲)

 $4$$(0,0),(1,1),(2,4),(3,7)$を通る$3$次関数を決定せよ.

解説
 $y=P(x)+x^2$と置くと,$P(0)=P(1)=P(2)=0$を得る.よって,決定すべき$3$次関数は$y=ax(x-1)(x-2)+x^2$と置ける.
 $(3,7)$を代入すると$7=6a+9$となり,$a=-\dfrac{1}{3}$である.よって求めるべき関数は$y=-\dfrac{1}{3}x(x-1)(x-2)+x^2$である.

 このように,関数を決定する際に,既にある条件をうまく生かして文字数を減らすという技が,因数定理の応用その1である.

OMCの例題
OMC209(B) ←公式解説は因数定理そのものではないが,解説Youtubeの方針は因数定理を使っている.
OMCB038(F)
OMCB031(C)

応用その2.代入を楽に

 $x^2-6x+4=0$の解を$\alpha,\beta$とするとき,$(\alpha+3)(\beta+3)$の値を求めよ.

 この問題を,解と係数の関係の問題ではなく,因数定理の問題として解けるだろうか.
 このヒントだけで,少しでも方針が思い浮かんだ人は,その方針を試してみてほしい.さっぱりわからないという人は,解説を読んだ方がよいだろう.

解説
 $P(x)=x^2-6x+4$とおく.因数定理より$x^2-6x+4=(x-\alpha)(x-\beta)$である.
 いま求めたい値は,$(\alpha+3)(\beta+3)=P(-3)$であり,その値は$31$である.


 この解説を読んでも,「解と係数の関係を使った方が早いのでは…」という人はいるかもしれない.では,次の問題だとどうだろう.

 $x^4-6x+4=0$の解を$\alpha,\beta,\gamma,\delta$とするとき,$(\alpha+2)(\beta+2)(\gamma+2)(\delta+2)$の値を求めよ.

解説1
 実は,因数定理だろうが解と係数の関係だろうが,この問題なら大差ない.そういうわけで,両方の方針を記しておく.
 まず因数定理の方針であれば,$x^4-6x+4=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)(x-\delta)$と置いて,$x=-2$を代入すればよいので,値は$32$である.
 次に解と係数の関係を使う場合は,$1,2$次の対称式が$0$になるので,
 $(\alpha+2)(\beta+2)(\gamma+2)(\delta+2)=\alpha \beta \gamma \delta+2(\alpha+\beta+\gamma+\delta)+16=32$である.

 ここで読者の皆さんに次の問いである.「因数定理を使った方が楽である」と言えるような例を作ってほしい(そのような例を解説2に記す).
解説2
 基本対称式が$0$にならないように,全ての係数を$0$でなくすのは一案である.例として$x^4+x^3+x^2-6x+4$
 また,$4$次の係数を$1$でなくす方法もあるだろう.

 以下にOMCの例題をいくつか置いておくので,ぜひ解いてみてほしい.

OMCの例題
OMC201(F) ←応用2の難しめの例題
OMC143(E) ←今回の応用1,2の複合
OMC058(C) ←今回のテーマと少しずれるかもしれない

おまけ

 次の性質は,OMCでたまに見かけるので書いておく.証明はそんなに難しくないので,初めて見た人は考えてみるとよいだろう.

 $f(x)$が多項式で,方程式$f(x)-x=0$が重解を持たないとき,$f(f(x))-x$$f(x)-x$で割り切れる.

証明
 $f(\alpha)-\alpha=0$であれば$f(f(\alpha))-\alpha=0$であることから従う.
 なお重解を持たない条件は重要である.例えば$f(x)=x^2+x$を考えればよい.
投稿日:319
更新日:320
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

て
2
951

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中