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OMC対策(A分野:因数定理の応用)

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本記事の前提知識

剰余の定理

1. 整式P(x)1次式xaで割った余りはP(a)
2. 整式P(x)1次式ax+bで割った余りはP(ba)


(確認問題)この定理を証明せよ.

証明
 整式P(x)xaで割った商をQ(x),余りをRとおく(1次式で割っているので,余りは定数項である).すなわちP(x)=(xa)Q(x)+Rとおく.この式にx=aを代入すれば,余りR=P(a)である.
 2.の証明もほぼ同様なので省略する.
因数定理

 整式P(x)xaを因数にもつ(xaで割り切れる)ことと,P(a)=0を満たすことは同値である.


(確認問題)この定理を証明せよ.

証明
 P(x)=(xa)Q(x)+Rとおくと,P(a)=0R=0である.
 R=0であることは,P(x)=(xa)Q(x)すなわちP(x)xaを因数にもつことを意味する.

 以上,二つの定理を前提知識としたが,これらはどちらも大学受験で言えば基本レベルの定理である.
 今回の記事は,これらの定理の応用編と言うべきものであり,大学受験で役立つこともあるかもしれない.

応用その1.関数の決定

 3(0,0),(1,1),(2,4)を通る2次関数を決定せよ.

 この問題を解く基本的な方法は,決定すべき関数をy=ax2+bx+cとおいて,3点を代入するものである.そうすればa,b,cに関する連立方程式が得られるので,それを解けば2次関数が決定される.
 しかし,もし3点ともがy=x2を満たすことに気付けば,これで終わりである.相異なる3点を通る2次関数は一つに決定されるためである.

 では,次の問題はどうだろうか.

 4(0,0),(1,1),(2,4),(3,7)を通る3次関数を決定せよ.

 この問題は,例1の発展バージョンである.
 もし最後の点が(3,9)であれば,そのような3次の関数は存在せず,y=x2が答えとなる.しかし本問では,最後の点が(3,7)となっている.
 もちろんy=ax3+bx2+cx+dと置いて,4点を代入する手段はある.しかし(0,0),(1,1),(2,4)を通るという条件を,どうにか活用できないだろうか.
 ある程度"良い"条件がわかっているときに,それらを活用して関数の決定をしたい,というのが今回の記事の核である.
 例2をここで解いてしまうこともできるが,この問題は練習問題としてあとに残しておきたい.

 次の問題はどうだろうか.

 3(2,0),(3,0),(4,4)を通る2次関数を決定せよ.

 これくらいの問題であれば,普通の数学Ⅰの教科書や問題集に載っているかもしれない.決定すべき関数をy=ax2+bx+cとおいて3点を代入するより,ちょっとした工夫ができる.
 それは,決定すべき関数をy=a(x2)(x3)と置くことである.こう置けば,あとは(4,4)を代入すればa=2が決まり,y=2(x2)(x3)が答えだとわかる.
 この工夫の素晴らしい点は,y=ax2+bx+cと置く場合に比べて,未知数の数が2つも少なくなるところにある.(2,0),(3,0)を通るという条件だけを生かして,y=a(x2)(x3)と置く技を,ぜひとも覚えておいてほしい(大学入試でもしばしば使える技である).

 なお(少し大げさな表現ではあるが,)このアイディアに因数定理が使われていることは明記しておく.
 問題文の条件を満たす2次式P(x)は,P(2)=0を満たすのでx2を因数にもち,P(3)=0を満たすのでx3を因数にもつ.これらを利用して,P(x)=a(x2)(x3)と置けたのである.

 では,この問題を参考にして,次の問題を解けるだろうか.ぜひとも考えてから解答を見てほしい.

 3(2,1),(3,1),(0,7)を通る2次関数を決定せよ.

解説
 決定すべき関数をy=a(x2)(x3)+1と置くのが工夫である.
 こうすることで,(2,1),(3,1)を通るという条件は使い切っている.あとは(0,7)を代入して,a=1を得る.求めるべき解答はy=(x2)(x3)+1である.
 なお数学のテストであれば,この解答では減点される可能性が高い.きちんと展開してy=x25x+7とした方がよいだろう.

 次の問題も,工夫できるだろうか.

 3(1,1),(2,2),(4,16)を通る2次関数を決定せよ.

ヒント1
 (1,1),(2,2)を通る条件を上手く使いたい.
 当然だが,この二点が満たしている条件はy=xである.
ヒント2
 y=P(x)+xと置いてみるとP(1),P(2)はいくつになるだろうか.
解説
 y=P(x)+xと置く.
 誤解しないでほしいが,求めるべき関数ax2+bx+cは,P(x)ではなく,P(x)+x全てである.
 つまり,方程式y=P(x)+x(1,1),(2,2),(4,16)を通るということである.
 さて,ここでy=P(x)+x(1,1),(2,2)を代入するとどうなるか.答えは,P(1)=P(2)=0である.つまり因数定理からP(x)=a(x1)(x2)と置けるのである.
 ということで,決定すべき2次関数はy=a(x1)(x2)+xと置ける.あとは(4,16)を代入することでa=2を得る.答えはy=2(x1)(x2)+x=2x25x+4である.

 ここまでを理解していれば,先ほど飛ばした例2を工夫して解けるはずだ.
 改めて考えてみてほしい.

例2(再掲)

 4(0,0),(1,1),(2,4),(3,7)を通る3次関数を決定せよ.

解説
 y=P(x)+x2と置くと,P(0)=P(1)=P(2)=0を得る.よって,決定すべき3次関数はy=ax(x1)(x2)+x2と置ける.
 (3,7)を代入すると7=6a+9となり,a=13である.よって求めるべき関数はy=13x(x1)(x2)+x2である.

 このように,関数を決定する際に,既にある条件をうまく生かして文字数を減らすという技が,因数定理の応用その1である.

OMCの例題
OMC209(B) ←公式解説は因数定理そのものではないが,解説Youtubeの方針は因数定理を使っている.
OMCB038(F)
OMCB031(C)

応用その2.代入を楽に

 x26x+4=0の解をα,βとするとき,(α+3)(β+3)の値を求めよ.

 この問題を,解と係数の関係の問題ではなく,因数定理の問題として解けるだろうか.
 このヒントだけで,少しでも方針が思い浮かんだ人は,その方針を試してみてほしい.さっぱりわからないという人は,解説を読んだ方がよいだろう.

解説
 P(x)=x26x+4とおく.因数定理よりx26x+4=(xα)(xβ)である.
 いま求めたい値は,(α+3)(β+3)=P(3)であり,その値は31である.


 この解説を読んでも,「解と係数の関係を使った方が早いのでは…」という人はいるかもしれない.では,次の問題だとどうだろう.

 x46x+4=0の解をα,β,γ,δとするとき,(α+2)(β+2)(γ+2)(δ+2)の値を求めよ.

解説1
 実は,因数定理だろうが解と係数の関係だろうが,この問題なら大差ない.そういうわけで,両方の方針を記しておく.
 まず因数定理の方針であれば,x46x+4=(xα)(xβ)(xγ)(xδ)と置いて,x=2を代入すればよいので,値は32である.
 次に解と係数の関係を使う場合は,1,2次の対称式が0になるので,
 (α+2)(β+2)(γ+2)(δ+2)=αβγδ+2(α+β+γ+δ)+16=32である.

 ここで読者の皆さんに次の問いである.「因数定理を使った方が楽である」と言えるような例を作ってほしい(そのような例を解説2に記す).
解説2
 基本対称式が0にならないように,全ての係数を0でなくすのは一案である.例としてx4+x3+x26x+4
 また,4次の係数を1でなくす方法もあるだろう.

 以下にOMCの例題をいくつか置いておくので,ぜひ解いてみてほしい.

OMCの例題
OMC201(F) ←応用2の難しめの例題
OMC143(E) ←今回の応用1,2の複合
OMC058(C) ←今回のテーマと少しずれるかもしれない

おまけ

 次の性質は,OMCでたまに見かけるので書いておく.証明はそんなに難しくないので,初めて見た人は考えてみるとよいだろう.

 f(x)が多項式で,方程式f(x)x=0が重解を持たないとき,f(f(x))xf(x)xで割り切れる.

証明
 f(α)α=0であればf(f(α))α=0であることから従う.
 なお重解を持たない条件は重要である.例えばf(x)=x2+xを考えればよい.
投稿日:24日前
更新日:24日前
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  3. 応用その2.代入を楽に
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