本記事の前提知識
剰余の定理
1. 整式を次式で割った余りは.
2. 整式を次式で割った余りは.
(確認問題)この定理を証明せよ.
証明
整式をで割った商を,余りをとおく(次式で割っているので,余りは定数項である).すなわちとおく.この式にを代入すれば,余りである.
2.の証明もほぼ同様なので省略する.
因数定理
整式がを因数にもつ(で割り切れる)ことと,を満たすことは同値である.
(確認問題)この定理を証明せよ.
証明
とおくと,である.
であることは,すなわちがを因数にもつことを意味する.
以上,二つの定理を前提知識としたが,これらはどちらも大学受験で言えば基本レベルの定理である.
今回の記事は,これらの定理の応用編と言うべきものであり,大学受験で役立つこともあるかもしれない.
応用その1.関数の決定
この問題を解く基本的な方法は,決定すべき関数をとおいて,点を代入するものである.そうすればに関する連立方程式が得られるので,それを解けば次関数が決定される.
しかし,もし点ともがを満たすことに気付けば,これで終わりである.相異なる点を通る次関数は一つに決定されるためである.
では,次の問題はどうだろうか.
この問題は,例1の発展バージョンである.
もし最後の点がであれば,そのような次の関数は存在せず,が答えとなる.しかし本問では,最後の点がとなっている.
もちろんと置いて,点を代入する手段はある.しかしを通るという条件を,どうにか活用できないだろうか.
ある程度"良い"条件がわかっているときに,それらを活用して関数の決定をしたい,というのが今回の記事の核である.
例2をここで解いてしまうこともできるが,この問題は練習問題としてあとに残しておきたい.
次の問題はどうだろうか.
これくらいの問題であれば,普通の数学Ⅰの教科書や問題集に載っているかもしれない.決定すべき関数をとおいて点を代入するより,ちょっとした工夫ができる.
それは,決定すべき関数をと置くことである.こう置けば,あとはを代入すればが決まり,が答えだとわかる.
この工夫の素晴らしい点は,と置く場合に比べて,未知数の数がつも少なくなるところにある.を通るという条件だけを生かして,と置く技を,ぜひとも覚えておいてほしい(大学入試でもしばしば使える技である).
なお(少し大げさな表現ではあるが,)このアイディアに因数定理が使われていることは明記しておく.
問題文の条件を満たす次式は,を満たすのでを因数にもち,を満たすのでを因数にもつ.これらを利用して,と置けたのである.
では,この問題を参考にして,次の問題を解けるだろうか.ぜひとも考えてから解答を見てほしい.
解説
決定すべき関数をと置くのが工夫である.
こうすることで,を通るという条件は使い切っている.あとはを代入して,を得る.求めるべき解答はである.
なお数学のテストであれば,この解答では減点される可能性が高い.きちんと展開してとした方がよいだろう.
次の問題も,工夫できるだろうか.
ヒント1
を通る条件を上手く使いたい.
当然だが,この二点が満たしている条件はである.
ヒント2
と置いてみるとはいくつになるだろうか.
解説
と置く.
誤解しないでほしいが,求めるべき関数は,ではなく,全てである.
つまり,方程式がを通るということである.
さて,ここでにを代入するとどうなるか.答えは,である.つまり因数定理からと置けるのである.
ということで,決定すべき次関数はと置ける.あとはを代入することでを得る.答えはである.
ここまでを理解していれば,先ほど飛ばした例2を工夫して解けるはずだ.
改めて考えてみてほしい.
解説
と置くと,を得る.よって,決定すべき次関数はと置ける.
を代入するととなり,である.よって求めるべき関数はである.
このように,関数を決定する際に,既にある条件をうまく生かして文字数を減らすという技が,因数定理の応用その1である.
OMCの例題
OMC209(B)
←公式解説は因数定理そのものではないが,解説Youtubeの方針は因数定理を使っている.
OMCB038(F)
OMCB031(C)
応用その2.代入を楽に
この問題を,解と係数の関係の問題ではなく,因数定理の問題として解けるだろうか.
このヒントだけで,少しでも方針が思い浮かんだ人は,その方針を試してみてほしい.さっぱりわからないという人は,解説を読んだ方がよいだろう.
解説
とおく.因数定理よりである.
いま求めたい値は,であり,その値はである.
この解説を読んでも,「解と係数の関係を使った方が早いのでは…」という人はいるかもしれない.では,次の問題だとどうだろう.解説1
実は,因数定理だろうが解と係数の関係だろうが,この問題なら大差ない.そういうわけで,両方の方針を記しておく.
まず因数定理の方針であれば,と置いて,を代入すればよいので,値はである.
次に解と係数の関係を使う場合は,次の対称式がになるので,
である.
ここで読者の皆さんに次の問いである.「因数定理を使った方が楽である」と言えるような例を作ってほしい(そのような例を解説2に記す).
解説2
基本対称式がにならないように,全ての係数をでなくすのは一案である.例として.
また,次の係数をでなくす方法もあるだろう.
以下にOMCの例題をいくつか置いておくので,ぜひ解いてみてほしい.
OMCの例題
OMC201(F)
←応用2の難しめの例題
OMC143(E)
←今回の応用1,2の複合
OMC058(C)
←今回のテーマと少しずれるかもしれない
おまけ
次の性質は,OMCでたまに見かけるので書いておく.証明はそんなに難しくないので,初めて見た人は考えてみるとよいだろう.
が多項式で,方程式が重解を持たないとき,はで割り切れる.
証明
であればであることから従う.
なお重解を持たない条件は重要である.例えばを考えればよい.