鋭角三角形 $ABC$ があり,その垂心を $H$ とする.線分 $AH$ の中点を $P$,$CH$ と三角形 $ABC$ の外接円の交点($\neq C$)を $Q$ とすると,円 $PQH$ は直線 $BH$ に接した.このとき,線分 $BC$ の中点を $M$ とすると $AB=AM$ であることを示せ.
$B,C$ から対辺に下した垂線の足をそれぞれ $E,F$ とする.接弦定理より,
$$ \angle PQH=\angle PHE=\angle ACB$$
これと,$\angle ABC=\angle PHQ$,$HF=FQ$,$BM=MC$ と合わせて,($A,B,C,M$)と($P,H,Q,F$)は相似である.このとき,$P$ が円 $AFHE$ の中心であることに留意して,$PF=PH$ を得る.よって $AB=AM$ で,題意は示された.
<コメント>
垂心の基本構図を使った問題でした.$M$ の扱いが難しいので相似を活用することを考えましょう.
$1!+2!+\cdots +x!=y^z$ を満たす $2$ 以上の整数 $x,y,z$ の組を全て求めよ.
素数 $p$ について,$n$ が $p$ で割り切れる最大の回数を $v_p(n)$ で表す.
$x\leq 8$ のとき,$x=3,y=3,z=2$ が解である.以下,$x\geq 9$ と仮定して矛盾を導く.
$$ v_3(1!+2!+\cdots +8!)=v_3(46233)=2$$
一方,$k\geq 9$ において $v_3(k!)\geq 4$ であるから,$v_3(1!+2!+\cdots +x!)=2$,すなわち $z=2$ がわかる.
このとき,$1!+2!+\cdots +x!$ は平方数となるが,
$$ 1!+2!+\cdots +x!\equiv 1!+2!+3!+4!\equiv 3\pmod 5$$
で,$3$ は$\mod 5$ において平方剰余でないので矛盾する.
以上より,$x=3,y=3,z=2$ である.
<コメント>
階乗を用いた整数問題でした.$x$ を大きくしても変わらない素因数を考えると $v_3$ が有効だとわかると思います.
$2026\times 2026$ のマス目があり,上から $i$ 段目,左から $j$ 行目にあるマスを $(i,j)$ で表す.まず,マス $(i,j)$ のうち, $i+j$ が偶数であるようなマスを黒く,その他のマスを白く塗りつぶす.ここで,以下の操作を行う.
この操作を繰り返し行うことで得られる白マスの個数の最小値を求めよ.
まず,求める最小値が $2026$ 以上であることを示す.任意の $j$ について,左から $j$ 行目の列を全て黒マスにすることはできない.なぜなら,縦に隣接する $2$ マスの色を反転させるという操作を繰り返し行っても白マスの個数の偶奇は変化しないが,$j$ 行目の列には白マスが初めの状態で $1013$ 個と奇数個であるから,任意の盤面において白マスが奇数個存在するからである.よって,各列に少なくとも一つの白マスが存在するので, $2026$ 個以上の白マスは必ず存在する.
以下では,白マスの個数を $2026$ 個とするような操作の方法が存在することを示す.まず,$4\times 4$ の市松模様に塗られたマス目について,
$$ (p,q)=(1,2),(1,3),(2,1),(2,3),(3,1),(3,2)$$
と選べばすべてを黒マスにすることが可能である.よって,$4k\times 4k$ のマス目を全て黒マスにすることは可能であるから,初めに $(3,1),(3,2024),(2026,2024),(2026,1)$ を頂点とする $2024\times 2024$ の正方形の内部のマスすべてを黒マスにする.次に,
というように操作を行うことで,$(k,2027-k)$ と表される $2026$ 個のマスのみを白マスにすることができる.
以上より,求める最小値は $\mathbf{2026}$ である.
<コメント>
マス目の個数の最小を求める問題でした.評価に関しては各列に注目すればうまくいき,構成に関しては端の $2024\times 2024$ のマスを全て黒マスにするという発想がポイントだったかと思います.
正の整数に対して定義され,正の整数値をとる関数 $f$ であって,任意の正の整数 $x,y$ に対して
$$ f^y(x)+f(x)=2f^x(y)-f(y)+2$$
を満たすものを全て求めよ.ただし,$f^k(x)$ で $\underbrace{f(f(\cdots f}_{k個}(x)\cdots ))$ を表すものとする.
$P(p,q)$ で与式への $x=p,y=q$ の代入を表す.
$P(y,x)$ より,
$$ f^x(y)+f(y)=2f^y(x)-f(x)+2$$
これと与式を合わせて,
$$ 2f^x(y)=f^y(x)+f(x)+f(y)-2=4f^y(x)-2f(x)-2f(y)+4$$
よって,
$$ f^y(x)=f(x)+f(y)-2$$
である.ここで,$f^x(f(x))=f^{x+1}(x)$ より,
$$ f^x(f(x))=f(x)+f^2(x)-2=f(x+1)+f(x)-2$$
すなわち,
$$ f(x+1)=f^2(x)=f(x)+f(2)-2$$
がわかる.また,$P(1,1)$ から $f(1)=2$ であるから,
$$ f(x)=2+(f(2)-1)(x-1)=(f(2)-2)x-(f(2)-4)$$
と表される.ここで $P(1,y)$ より $f^y(1)=f(y)$ が従い,$f^2(2)=f^3(1)=f(3)$ であるから,
$$(f(2)-2)f(2)-f(2)+4=3(f(2)-2)-f(2)+4$$
つまり,$f(2)=2,3$ が従う.
以上より,$f(x)=2,x+1$ である.また,これは与式を満たす.
<コメント>
合成を用いた$\mathbb{Z^+}$のFEでした.$f(x)=(f(2)-2)x-(f(2)-4)$ までは多くの人がたどり着いていましたが,そこから「与式に代入して」とするだけで終わっていた答案は減点しています.($f(2)$ を求める過程はそこまで自明ではないため.)
鋭角三角形 $ABC$ があり,その垂心を $H$ とする.線分 $AH$ の中点を $M$,$B,C$ から対辺に下した垂線の足をそれぞれ $E,F$ とする.ここで,$H$ を通り $BC$ に平行な直線と $CM$ の交点を $P$ とすると,$\angle FEP=90\degree$ であることを示せ.
$C$ を通り $AB$ に平行な直線と $BE$ の交点を $X$,$BC$ の中点を $N$ とする.$\angle HAC=\angle XBC$,$\angle ACH=\angle ABH=\angle BXC$ から三角形 $AHC$ と $BCX$ は相似.また, $E$ はこの回転相似の中心である.よって,$C$ を通り $BC$ に垂直な直線と $XN$ の交点を $Y$ とすると,$\angle PEY=90\degree$ が従う.以下では,点 $Y$ が直線 $EF$ 上にあることを示す.円 $AFE$ を $w_1$,円 $CED$ を $w_2$,円 $BFEC$ を $w_3$,$C$ を中心とする半径 $0$ の円を $w_4$ とする.すると,$X$ は $w_1,w_2,w_4$ の根心となり,$X$ は $w_1$ と $w_4$ の根軸上にある.ここで,$\angle NFH=\angle NCF=\angle FAH$ より,$w_1$ は直線 $FN$ に接し,$CN=NF$ より $N$ も $w_1$ と $w_4$ の根軸上にある.よって $w_1$ と $w_4$ の根軸は直線 $XN$ である.ここで,$w_3$ と $w_4$ の根軸は $CY$,$w_1$ と $w_4$ の根軸は $XN$ より,$w_1,w_3,w_4$ の根心は点 $Y$ である.このとき $Y$ は $w_1$ と $w_3$ の根軸,すなわち $EF$ 上に位置する.よって, $F,E,Y$ は共線で,$\angle FEP=90\degree$ は示された.
<コメント>
垂心に関する問題でした.$AH$と$EF$ の交点を$X$として$BX\perp CM$ を利用する方法や,$HP$と$AC$の交点を$Y$として$CX$が$HY$の中点を通ることを利用する方法など、いろいろな解法が見れて面白かったです.座標計算で解いていた人もいました.