$p$を$2p+1$が素数であるような素数とする.$2p$以下の正の整数の並べ替え$(a_1,a_2,\cdots,a_{2p})$であって,以下の条件を満たすような$2p$以下の相異なる正の整数$i,j$が存在するものの個数を求めよ.ただし,$a_{2p+1}=a_1$とする.
整数$a,b$に対し,$a$と$b$を$2p+1$で割った余りが等しいことを単に$a\equiv b$で表し,$a_0=a_{2p}$とする.また,問題文の条件を満たす$2p$以下の正の整数の並べ替え$(a_1,a_2,\cdots,a_{2p})$のうち,$a_1=1$であるものを良い並べ替えと呼ぶ.このとき,求める値は良い並べ替えの個数を$2p$倍したものであり,良い並べ替えにおいて問題文の条件を満たす$i,j$は$i=a_0,j=a_2$と$i=a_2,j=a_0$である.
$(a_1,a_2,\cdots,a_{2p})$が良い並べ替えであるとき,ある$2p$以下の正の整数$k$が存在して$a_{k-1}a_k\equiv a_ka_{k+1}$が成り立つと仮定すると,$2p+1$と$a_k$は互いに素なので$a_{k-1}=a_{k+1}$となり矛盾する.したがって,$k$が偶数のとき$a_ka_{k+1}\equiv a_0$,奇数のとき$a_ka_{k+1}\equiv a_2$である$(\because a_0a_1\equiv a_0,a_1a_2\equiv a_2)$.このときウィルソンの定理より$a_1a_2\cdots a_{2p}=2p!\equiv-1$であり,$a_1a_2\cdots a_{2p}=(a_1a_2)(a_3a_4)\cdots (a_{2p-1}a_{2p})\equiv a_2^{p}, a_1a_2\cdots a_{2p}=a_1(a_2a_3)(a_4a_5)\cdots (a_{2p-2}a_{2p-1})a_{2p}\equiv a_0^{p}$で$a_0^{p}\equiv a_2^{p}\equiv -1$なので,オイラーの規準より $a_0$と$a_2$はどちらも法$2p+1$で平方剰余でない.ここで,$2p$以下の正の整数からなる数列$b_0,b_1,\cdots$を以下のように定める.
このとき,$b_1=1$である.また,任意の$2p$以下の正の整数$a,b$について$ac\equiv b$を満たす$2p$以下の正の整数$c$はちょうど一つ存在するため,$b_1,b_2,\cdots$は$b_0,b_2$によって一意に定まる.良い並べ替えの定義から,$(b_1,b_2,\cdots,b_{2p})$が良い並べ替えであることと,以下の条件を満たすことは同値である.
$b_0,b_2$が相異なり,法$2p+1$で平方剰余でないとき,$b_1,b_2,\cdots$は上の条件を満たすことを示す.
$x\gt y,b_x=b_y$を満たす正の整数$x,y$であって,$x-y$が最小になるものの$1$つを$X,Y$とする.$b_1,b_2,\cdots,b_{2p+1}$がどの$2$つも異なることはないので,$X-Y\lt 2p+1$である.$X$と$Y$の偶奇が異なるとすると,$b_{X-1}b_X\equiv b_Yb_{Y+1}$なので,$b_X=b_Y$,$b_X$と$2p+1$は互いに素だから$b_{X-1}=b_{Y+1}$で,帰納的に任意の$X$未満の正の整数$n$について$b_{X-n}=b_{Y+n}$が成り立つ.$X-Y$は奇数なので$\frac{X-Y+1}{2}$は正の整数であり,$n=\frac{X-Y+1}{2}$を代入すると$b_\frac{X+Y-1}{2}=b_\frac{X+Y+1}{2}$だが,$b_\frac{X+Y-1}{2}b_\frac{X+Y+1}{2}\equiv b_0$または$b_\frac{X+Y-1}{2}b_\frac{X+Y+1}{2}\equiv b_2$なので,$b_0,b_2$が法$2p+1$で平方剰余でないことに矛盾する.よって,$X$と$Y$の偶奇は等しい.すなわち$Y\gt 1$のとき $b_Xb_{X-1}\equiv b_Yb_{Y-1}$なので,帰納的に任意の$Y$未満の正の整数$m$について$b_{X-m}=b_{Y-m}$が成り立つ.$m=Y-1$を代入すると,$b_{X-Y+1}=b_1$が分かる.これは$Y=1$でも成り立つ.$X-Y$は$2$以上の偶数なので,$Z$を正の整数として$X-Y=2Z$とおくと,$b_{2Z+1}=1,b_{2Z}b_{2Z+1}\equiv b_0$より$b_{2Z}=b_0$である.また,$b_1b_2\cdots b_{2Z}=(b_1b_2)(b_3b_4)\cdots (b_{2Z-1}b_{2Z})\equiv b_2^Z, b_1b_2\cdots b_{2Z}=b_1(b_2b_3)(b_4b_5)\cdots (b_{2Z-2}b_{2Z-1})b_{2Z}\equiv b_0^Z$で$b_0^Z\equiv b_2^Z$なので,$b_0^p\equiv b_2^p$($\because b_0,b_2$は法$2p+1$で平方剰余でない)とあわせて考えると$b_0^{\gcd{(p,Z)}}\equiv b_2^{\gcd{(p,Z)}}$が分かる.よって,$Z$と$p$が互いに素であるとすると,$b_0=b_2$となり矛盾する.$p$は素数なので$Z$は$p$の倍数であり,$X-Y\lt 2p+1$より$Z\leq p$だから,$Z=p$である.よって$b_{2p+1}=1$であり,$X-Y=2p$なので,$b_1,b_2,\cdots,b_{2p}$のうちいずれか$2$つが等しいとすると$X-Y$の最小性に矛盾するため$b_1,b_2,\cdots,b_{2p}$はどの$2$つも異なるから,$b_1,b_2,\cdots$は提示された条件を満たす.(証明終わり)
以上から,任意の法$2p+1$で平方剰余でない相異なる$2p$以下の正の整数の組$(b_0,b_2)$に対し$(b_1,b_2,\cdots,b_{2p})$が一意に定まり,それが良い並べ替えになる.ゆえに,$2p$以下の正の整数の並べ替え$(a_1,a_2,\cdots,a_{2p})$において,$a_2,a_{2p}$が法$2p+1$で平方剰余でないとき,それぞれの$(a_2,a_{2p})$に対し良い並べ替えがちょうど$1$つ存在する.これは,$b_2=a_2,b_0=a_{2p}$としたときの$(b_1,b_2,\cdots,b_{2p})$に対応する.$2p$以下の正の整数であって,法$2p+1$で平方剰余でないものは$p$個あり,$a_2$と$a_{2p}$は相異なるので良い並べ替えは$p(p-1)$個存在する.よって,求める値は$2p^2(p-1)$である.
なお,$b_0^Z\equiv b_2^Z,b_0^p\equiv b_2^p$ならば$b_0^{\gcd{(p,Z)}}\equiv b_2^{\gcd{(p,Z)}}$は,以下のように導ける.
$p$を$Z$で割った余りを$r$とすると,$Z\leq p$より正の整数$k$を用いて $p=kZ+r$と表せる.よって$b_0^{kZ+r}\equiv b_2^{kZ+r}$より$(b_0^Z)^k\cdot b_0^r\equiv (b_2^Z)^k\cdot b_2^r$で,$b_0^Z\equiv b_2^Z$から $b_0^r\equiv b_2^r$が分かる.これの$Z$または$p$を$r$に置き換えて同様に考えることを繰り返すと,ユークリッドの互除法と同じ要領で$b_0^{\gcd{(p,Z)}}\equiv b_2^{\gcd{(p,Z)}}$が分かる.