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相加・相乗平均を使って円周率を求めよう。

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初めまして。国立大学二次受験が迫っている高校3年生・半額と申します。
本日は、現実逃避も込めて記事を書きました。拙い内容ですが、どうぞ最後までご覧ください。

皆さんは相加・相乗平均の大小関係をよくご存知のことだと思います。今回は、それを使った漸化式のお話【クザーヌスが発見した円周率の求め方】をしていこうと思います。

まずはじめに、以下の漸化式を考えます。

$a_{0}=cosθ$ $(- \frac{π}{2}<θ< \frac{π}{2})$ $,b_{0}=1$

$$a_{n}= \frac{a_{n-1}+b_{n-1}}{2} , b_{n}= \sqrt{a_{n}b_{n-1}}( n \in \mathbb{N} )$$
で定められた数列{$a_{n}$},{$b_{n}$}の一般項$a_{n},b_{n}$を求めよ。

それでは実際に代入して、実験してみましょう。
$a_{1}= \frac{cosθ+1}{2}= cos^{2} \frac{θ}{2}$

$b_{1}= \sqrt{cos^{2} \frac{θ}{2}}=cos\frac{θ}{2}$

まだ法則性がはっきりしません。
さらに計算していくと、

$a_{2}=\frac{cos^{2}\frac{θ}{2}+cos\frac{θ}{2}}{2}= cos\frac{θ}{2}\frac{1+cos\frac{θ}{2}}{2}$
$=cos\frac{θ}{2}cos^{2}\frac{θ}{4}$
$b_{2}=\sqrt{cos\frac{θ}{2}cos^{2}\frac{θ}{4}cos\frac{θ}{2}}=cos\frac{θ}{2}cos\frac{θ}{4}$

であることがわかりました。

さて、この結果から予測できるのは

$$b_{n}= \prod_{k=1}^{n}cos \frac{θ}{2^{k}},a_{n}=b_{n}cos \frac{θ}{2^{n}}$$

であるということですね。これは数学的帰納法を使えばすぐ証明できます(ここでは割愛します)。

次に、$b_{n},a_{n}$の極限について考えていきます。
$θ$$0$でないと仮定しましょう。
$b_{n}sin\frac{θ}{2^{n}}= \cos \frac{θ}{2} \cos \frac{θ}{4} \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cos\frac{θ}{2^{n}} \cdot\sin \frac{θ}{2^{n}} $
$$ = \cos \frac{θ}{2} \cos \frac{θ}{4} \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cos \frac{θ}{2^{n-1}} \cdot\frac{1}{2}\sin \frac{θ}{2^{n-1}} $$
$$ = \cos \frac{θ}{2} \cos \frac{θ}{4} \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cdot \cos \frac{θ}{2^{n-2}} \cdot\frac{1}{2^{2}}\sin \frac{θ}{2^{n-2}} $$
$=cos \frac{θ}{2} \cdot \frac{1}{2^{n-1}} \sin \frac{θ}{2}$
$= \frac{sinθ}{2^{n}}$
$θ$$0$でないので、
$b_{n}= \frac{sinθ}{2^{n}sin \frac{θ}{2^{n}}}$
としてもよく、さらに
$b_{n}= \frac{sinθ}{θ} \cdotθ \cdot\frac{\frac{θ}{2^{n}}}{sin\frac{θ}{2^{n}} } \cdot \frac{1}{θ}$
$= \frac{sinθ}{θ} \cdot\frac{\frac{θ}{2^{n}}}{sin\frac{θ}{2^{n}} } $
と変形できますね。
ここで、$n \rightarrow∞$のとき$\frac{θ}{2^{n}} \rightarrow0$であるから、

$$\lim_{n \to \infty}b_{n}= \frac{sinθ}{θ}$$

さらに、

$$\lim_{n \to \infty}a_{n}= \lim_{n \to \infty}b_{n}cos \frac{θ}{2^{n}}= \frac{sinθ}{θ}$$

となり、${a_{n}},{b_{n}}$の収束値が求められました。
ここで試しに$θ= \frac{π}{6}$を代入してみると、${a_{n}}$の収束値は$\frac{\frac{1}{2}}{ \frac{π}{6}}= \frac{3}{π}$となり、逆数にして3倍すると円周率が求められます。

ここまで聞いても「そ、そうか……」としか思いませんよね。今度は、この漸化式の図形的な意味を考えていきましょう。

古代ギリシャの数学者・アルキメデスは、円に内接・外接する正多角形に着目して円周率の近似計算をしました。時は流れ中世、クザーヌスは正多角形に内接・外接する円に着目することを試みたそう。そんなクザーヌスの考えを追っていきましょう。

周の長さが$2$の正$2^{n}$角形を考えます。この図形の内接円・外接円の半径をそれぞれ$a_{n},b_{n}$とおくと、直感的に
内接円の円周<正多角形の周の長さ<外接円の円周
すなわち
$2a_{n}π<2<2b_{n}π$
よって
$\frac{1}{b_{n}} \ltπ \lt \frac{1}{a_{n}}$
であることが納得できるはずです(厳密な証明は積分により円の周の長さを出し、それと正多角形の周の長さと比較すれば良いかと思います)。
次に正$2^{n+1}$角形の重心を先の正$2^{n}$角形の重心と一致するように置き、正$2^{n}$の全ての辺が正$2^{n+1}$角形のある辺と平行になるように回転させます。
$2^{n+1}$角形は正$2^{n}$角形よりも円に近い形を取ります。すなわち$a_{n+1}$$a_{n}$より大きく、また$b_{n+1}$$b_{n}$より小さいことが分かります。これを無限に続けていくと、$π$の取りうる値が狭まっていき、やがて円周率が求められるんですね(はさみうちの原理みたいなものですかね)。
え?相加・相乗平均関係ないじゃん、って?いやいやそれがあるんですよ。余白が狭すぎるのでここでは示しませんが、$a_{n}$$b_{n}$には文前半で示したような漸化式(係数は合いませんが)の関係があります。十分小さい$n$で考えると、図形的にわかるはずです。

しかし、このπの求め方にはある重大な欠点があります。それは、収束がかなり遅いことです。$n=5$でやっと$3.140<π<3.144$となるくらいの精度なので、今日ではこの計算方法はほとんど用いられていません。しかし極限の飛ばし方がユニークなため、数学的にある程度の価値があると私は思います。

本日は以上です。
大変読みづらく長い文章になってしまったにもかかわらず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
それではまたいつか。人生に数学の視点を!

投稿日:221
更新日:221

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