3

∫_0^∞ 1/x^x dx < 2を多量の計算で示す

133
0

注意

この記事では小数の単位を使用します。見慣れない単位が出てくるので 巨大数研究Wiki でご確認ください。

割り算の記号のつもりで\divと書くとなぜか発散の記号が出るようにMathlogの仕様が変わってしまったので、÷の代わりに/を使うことにします。

問題

01xxdx<2を証明せよ。

準備

自然対数をln、二進対数をlbで表すことにする。

x¢2x1200と定義する。

f(x)=1xx=xx=exlnx(x>0)とする。
g(x)=xx(x>0)とする。
便宜上f(0)=g(0)=1とする。

Ia,δ=aa+δ1xxdxとする。
Ia=Ia,1=aa+11xxdxとする。
Ia+=a1xxdxとする。
I=I0+=01xxdxとする。

二進対数の近似値

私の記事では何回も出てきているので導出はほとんど省略します。

312=531441>524288=219から、32>700¢が従う。
35=243<256=28から、32<720¢が従う。

56=3125>3072>2112から、54>360¢が従う。
53=125<128=27から、54<400¢が従う。

75=16807>16384=214から、74>960¢が従う。
76=117649<131072>217から、74<1000¢が従う。

32>700¢の両辺を2から割ることで、43<500¢がわかる。
32>700¢54<400¢から、65>300¢がわかる。

補題の証明

f(x)=1xx(x0)0<x<1で上に凸、1<xで下に凸である。また、x=1eで最大値e1eを取る。

f(x)=exlnxであるから、

f(x)=(lnx+1)f(x)

であることが分かる。lnx1の大小を比較することで、f(x)0<x<1eで単調増加、1e<xで単調減少であることが分かる。また、このときの最大値はe1e(1)=e1eである。

f(x)=((lnx+1)21x)f(x)

であるから、x>1のときf(x)>0x=1のときf(x)=0である。
1e2<x<1であれば|lnx+1|<1であるからf(x)<0である。
0<x<1e2のとき、a=1xとすると、(1lna)2a=(lna1)2aの符号が分かればよい。h(a)=lnaaとおくと、h(a)=a112a12であるが、ah(a)=1a2<0であるから、h(a)<0h(e2)=2e<0よりh(a)<0がわかる。したがって、(lna1)2a<(a1)2a<aa=0より0<x<1e2f(x)<0であることがわかる。
よって、f(x)0<x<1で上に凸、1<xで下に凸であることがしめされた。

xR,nN,0<x1,n1とする。
ex<(k=0nxkk!)+xnn!xn
が成り立つ。

ex=k=0xkk!=k=0nxkk!+k=n+1xkk!<k=0nxkk!+l=1xnxln!(n+1)l<k=0nxkk!+l=1xn+1n!(n+1)l=k=0nxkk!+xn+1n!l=11(n+1)l=(k=0nxkk!)+xn+1n!n=(k=0nxkk!)+xnn!xn

a>eのとき、
Ia+<1aa
が成り立つ。

1aa=a1/aaeaexdxであるから、
1xx<1/aaeaex(x>a)
を示せばよい。
(1xx)/(1/aaeaex)=aaeaxxex<aaeaaxex=aaxeax=exaaxa<1(x>a,a>e)
より示された。

0<x<200のとき、
1+x1800<x¢<1+x1600
が成り立つ。

上からの評価は32>700¢の両辺を2乗し2で割ると98>200¢が得られ、2xが下に凸であることから従う。
下からの評価はln2>23を示せばよい。
そのために、まず1+117<100¢を示す。
(1+117)12=1+1217+(1211)/2172+k=31712Ck17k<1+1217+66172+k=31766(103)k217k=1+1217+66172+k=317220(103)k317317k3=1+1217+66172+k=3220(103)k317317k3=1+1217+66172+220173111051=1+1217+66172+2205140173<1+1217+66172+281173<1+1217+68172+289173=2

突然だが、y=2xのグラフを考えると、これはy=23x+1上の点(112,1718)の下を通る。よってy=2xy=23x+1のグラフはx<0で交わるので、2xが下に凸であることからln2>23が成り立つ。

100<x<0のとき、
x¢<1x1800
が成り立つ。

直前の定理の証明から即座に従う。

385.6¢<54<388¢である。

3乗して比較する。
2/(54)3=1+3125である。
定理4より、38.4¢<1+3125<43.2¢であるから、
54=212001200lb(1+3125)3
であることより、
385.6¢<54<387.2¢

が従う。

証明

最初の試み

e1e<e0.4<1+0.4+0.08+0.080.42<1.496<1.5であるから、f(x)の最大値は1.5未満である。よって、I0<1.5である。

また、f(x)x>1で下に凸であるから、台形近似は常に上からの評価となる。

I1<(11+14)/2=(1+0.25)/2=0.625
I2<(14+127)/2<(0.25+0.04)/2=0.145
I3+<127<0.04

1.5+0.625+0.145+0.04=2.274

大幅にオーバーしてしまいました。そもそも、x=1の接線を考えることでI1>0.5がわかるので、I0<1.5をもっと精密に評価する必要があります。

また、I0は1と1.5の間を取って1.25くらい、I1は0.6くらい、I2は0.1くらい、I3は0.04くらいと考えると、この時点で1.99となり、かなり積分値が2に近そうなことが分かります。

そこで、最低でも糸の位までは計算することにします。

高精度の試み

簡単な方から、すなわちxが大きい方から分割して順に求めていきます。

I6+

I6+<166=146656<3

I5

I5<(13125+146656)/2=(32+3)/2<175

I4

4.52=20.25>20であるから、4.54.5>4004.5>800である。

I4.5,0.5<(1800+13125)/2×0.5=(125+32)/20.5=3925
I4,0.5<(1256+1800)/2×0.5=(400+125)/20.5=13125

I4<3925+13125=175

I3

3.52=12.25>12であるから3.53>123.5=42すなわち3.53.5>423.5>421.8>75である。

I3.5,0.5<(175+1256)/2×0.5=(134+40)/20.5=435
I3,0.5<(127+175)/2×0.5=(371+134)/20.5=12625

I3<435+1263=1698

I2

(このあたりから数式を書き殴るだけになってきます)

14ごとに計算する。

f(3)<127<371

2.752.75>72.750.75>7e0.75>7(1+0.75+0.28)>14

f(2.75)<114<715

I2.75,0.25<(715+371)/20.25<136

2.52.5=6.252.5>6.251.5=9.375=758

f(2.5)<875<1067

I2.5,0.25<(1067+715)/20.25<223

2.252.25>52.25=51.5>51.22>6.1

f(2.25)<16.1<1640

I2.25,0.25<(1640+1067)/20.25<339

I2,0.25<(2500+1640)/20.25<518

I2<0.1216

I1

f(1.75)=1.751.75<(9601.75)¢=(1680)¢=14720¢<14(74)2/2<0.3829

I1.75,0.25<(0.3829+0.2500)/20.25<0.0792

f(1.5)=1.51.5<(7001.5)¢=(1050)¢=12150¢<121.2<121.1=0.55

I1.5,0.25<(0.55+0.3829)/20.25<0.1169

f(1.25)=1.251.25<(3601.25)¢=(440)¢<34(1+601600)<0.78

I1.25,0.25<(0.78+0.55)/20.25<0.167

I1,0.25<(1+0.78)/20.25<0.2225

I1<0.5856

I0

台形公式が使えないので1/8ごとにサンプリングし、その範囲の最大値を取ります。1e3848の間にあります。

f(78)=(87)78<(24078)¢=210¢<1.160¢<1.1(1+0.0375)<1.1413
f(68)=(86)68<(50068)¢=375¢<54(10)¢<1.250.99444<1.2431
f(58)=(85)58<(81558)¢<510¢<4330¢<1.33(1+0.01875)<1.3584
f(48)=(84)48=2<1.4143
f(38)=(83)38<(170038)¢<637¢<32(63)¢<1.50.965=1.4475
f(28)=(82)28=3<1.7321<1.3161
f(18)=(81)18=8<2.8285<1.6818<1.2969

e1e<1.4960と合わせて、次の結果を得る:

I0<(1.2969+1.3161+1.4475+1.4960+1.4143+1.3584+1.2431+1.1413)/8=1+2.7136/8=1.3392

以上の結果を合わせると、以下のようになる。

分割
I6+3
I5175
I41705
I31698
I21216
I15856
I013392
合計2065290

どうやらもう少し削れるところがありそうです。

超高精度の計算

ここからは私も本気を出します。積分値の一部になる項は小数以下6桁まで計算します。

ln2>0.69

e0.69<2を示せばよい。
e0.69<1+0.69+0.6922+0.6936+0.69418=1+0.69+0.47612+0.3285096+0.2266712118<1.000000+0.690000+0.238050+0.054752+0.012593=1.995395<2

ln2>0.692

e0.002<1+0.0021!+0.00221!1=1.002004
e0.692<1.995395(1+0.002004)<1.995395+20.002004=1.999403<2

0<xのとき、
1+0.0005766x<x¢
が成り立つ。

0.692/1200=0.00057666

0<x<100のとき、
x¢<1+0.0006x
が成り立つ。

x=0のとき両辺は等しい。x¢は下に凸なので、x=100のときこの式が成り立つことを示せばよい。
(1+0.06)12=1+0.0612+0.003666+0.000216220=1+0.72+0.2376+0.047520=2.005120>2
であるから両辺の12乗根を取ることで示された。(Q.E.D.)

701.894¢<32<701.974¢である。

312219=531441524288=1+7153524288=1.01364である。
0.01365/0.0005766<23.68
0.01364/0.0006>22.73
なので、
219+22.731200<312<219+23.681200
がわかる。したがって、
701.894¢<32<701.974¢
を得る。

386.13¢<54<386.67¢である。

2/(54)3=128125=1.024である。
0.024/0.0005766<41.63
0.024/0.0006=40.00
なので、
2141.631200<(54)3<2140.001200
がわかる。したがって、
386.13¢<54<386.67¢
を得る。

968.861¢<74<968.896¢

75214=1680716384=1+42316384=1.02581である。
0.02582/0.0005766<44.78
0.02581/0.0006=43.01
なので、
214+43.011200<75<214+44.781200
がわかる。したがって、
968.861¢<64<968.896¢
を得る。

550.952¢<118<551.552¢

112120=121120=1+1120=1.008333である。
0.008333/0.0005766<14.46
0.008333/0.0006>13.88
なので、
(82122)(701.894+386.13+13.88)¢=261101.904¢<121
(82122)(701.974+386.67+14.46)¢=261103.104¢>121
がわかる。したがって、
550.952¢<118<551.552¢
を得る。

840.337¢<138<840.600¢

132168=169168=1+1168<1.005952である。
0.005953/0.0005766<10.33
0.005952/0.0006>9.92
なので、
(82122)(701.894+968.861+9.92)¢=261680.675¢<169
(82122)(701.974+968.896+10.33)¢=261681.20¢>169
がわかる。したがって、
840.337¢<138<840.600¢
を得る。

ここまでの結果をまとめます。

701.894¢<32<701.974¢
386.13¢<54<386.67¢
968.861¢<74<968.896¢
550.952¢<118<551.552¢
840.337¢<138<840.600¢

また、次の結果が得られます。

定理7

203.788¢<98<203.948¢

マイナスのセントを計算するのに役に立つ補題です。

任意の0<α<1に対し、11+α<1α+α2が成り立つ。

0<α<1なので、無限級数
1α+α2α3+α4
は絶対収束する。よって、以下のような不等式評価ができる。
11+α=1α+α2α3+α4=1α+α2α3(1α+)=1α+α2α31+α<1α+α2

I1

18単位で計算し直します。数式だけ書くので何をやっているか察してください。

f(15/8)<(1088.02415/8)¢=(2040.045)¢=14359.955¢<516(26.715)¢<51611.015403<5160.984835<0.307761
f(14/8)<(968.86114/8)¢<(1695.506)¢=14704.494¢<382.520¢<381.001512=0.375567
f(13/8)<(840.33713/8)¢<(1365.547)¢=141034.453¢<71665.592¢<7161.039356<0.454719
f(12/8)<(701.89412/8)¢<(1052.841)¢=12147.159¢<916(56.629)¢<91611.032652<9160.968414<0.544733
f(11/8)<(550.95211/8)¢=(757.559)¢=12442.441¢<5856.311¢<581.033787<0.646117
f(10/8)<(386.1310/8)¢<(482.662)¢=12717.338¢<3415.444¢<341.009267<0.756951
f(9/8)<(203.7889/8)¢<(229.261)¢=12970.739¢<781.878¢<781.001127<0.875987

(1.000000+0.250000)/2=0.625000
0.625000+0.307761+0.375567+0.454719+0.544733+0.646117+0.756951+0.875987=4.586835
4.586835/8<0.573355

分割
I6+3
I5175
I41705
I31698
I21216
I1573355
I013392
合計2053045

I2I4

I2I4も高精度で計算しなおします。

f(11/4)<(1750.95211/4)¢<(4815.118)¢=116(15.118)¢<11611.008717<1160.991359<0.061960
f(10/4)<(1586.1310/4)¢<(3965.32)¢=116(834.68)¢<13128(5.657)¢<1312811.003261<131280.996750<0.101233
f(9/4)<(1403.7889/4)¢<(3158.523)¢=18(441.477)¢<532(55.347)¢<5321.033209<0.161439
f(12/4)=127=0.037037037であるから

(f(8/4)+f(12/4))/2<0.143519
I2<(0.143519+0.061960+0.101233+0.161439)/4=0.468151/4<0.117038

半整数乗の場合はセントの計算より開平法を行う方が高い精度で計算できます。

3.5=1.870828であるから

f(4)=1256=0.00390625
1f(3.5)>3.531.870828=42.8751.870828>80.2117
f(3.5)<1/80.2117<0.012468
(f(3)+f(4))/2<0.020472
I3<(0.020472+0.012468)/2=0.016470

4.5=1.52=2.121320であるから

f(5)=13125=0.00032
1f(4.5)>4.542.121320=410.06252.121320>869.873
f(4.5)<1/869.873<0.001150
(f(4)+f(5))/2<0.002114
I4<(0.002114+0.001150)/2=0.001632

分割
I6+3
I5175
I41632
I31647
I2117038
I1573355
I013392
合計2047900

I0

I0を直接計算するのは難しいですが、このような定理が知られています。

二年生の夢

011xxdx=n=11nn

証明は級数展開により行います。

011xxdx=01exlnxdx=01n=0(xlnx)nn!dx=n=01n!01(xlnx)ndx=n=01n!0(tet)netdt(x=et)=n=0(1)nn!0tne(n+1)tdt()

0tne(n+1)tdt=0tn(1n+1e(n+1)t)dt=[tn1n+1e(n+1)t]0nn+10tn1e(n+1)tdt=nn+10tn1e(n+1)tdt=(1)2n(n1)(n+1)20tn2e(n+1)tdt==(1)nn!(n+1)n0t0e(n+1)tdt=(1)nn!(n+1)n+1

よって

()=n=0((1)nn!(1)nn!(n+1)n+1)=n=0(1)2n(n+1)n+1=n=11nn
(Q.E.D.)

これにより、I0は以下のように計算できます。これらの計算は、それまでの計算より極めて簡単です。

111=1.0000000122=0.2500000133<0.0370371144<0.0039063155=0.0003200166<0.0000215177<0.0000013

n=01(8+n)8+n<n=0188+n<n=01882n=288<2109<107

よって

I0<1.291287

なのでここまでの評価を合計すると

分割
I6+3
I5175
I41632
I31647
I2117038
I1573355
I01291287
合計1999987

よって

01xx<1.999987<2

が示されました!!!

おわりに

なんだこのデウスエクスマキナはと思ったかもしれませんが、許してください。こうしないと、I0を求めるのに128分割が必要になり、この記事が数表で埋まってしまいます。

!FORMULA[307][-1423178686][0]は!FORMULA[308][1061861822][0]分割では足りない I064分割では足りない

謝辞

I0を求める手法(二年生の夢)を教えていただいたmathphilia様に感謝いたします。

投稿日:202453
更新日:202455
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