垂心を知っていれば十分である.
なお,垂心に関する構図は数多くあると思うが,本記事では「水レートを目指すならまずはこのくらい」というものだけ扱っている.
まず,次の$2$つは最も基本的なものである.
点$H$は$△ABC$の垂心である.
このとき,共円である$4$点の組がいくつか存在する(例:$(A,F,H,E)$は共円である).
(問題)$(A,F,H,E)$が共円であることを示せ.また,そのような$4$点の組を,図からできるだけ多く発見せよ.
図1中の,線分と線分によってできる全ての角度は,$\angle A, \angle B, \angle C$のみを使って表すことができる.
(問題)実際に確かめよ.
「基礎」と書いてはみたが,競技数学における基礎知識である.受験数学でここまで求められることはまずないだろう.
$△ABC$の垂心,外心をそれぞれ$H,O$とする.$BC$の中点を$M$,$AA'$が円$O$の直径となるような点を$A'$とする.$AH$と線分$BC$,$A$を含まない方の円弧$BC$との交点をそれぞれ$D,H'$とする.このとき
証明は角度追跡でできる.
$△ABC$の垂心,外心をそれぞれ$H,O$とし,$OA=R$とする.
このとき$AH=2R \cos A,BH=2R \cos B, CH=2R \cos C$が成り立つ.
証明は三角比の定義に従って計算すればよい.もちろん正弦定理も使う.
$△ABC$の外心,重心,垂心をそれぞれ$O,G,H$とする.これらの$3$点はこの順に一直線上に並び,これをEuler線という.$OG:GH=1:2$である.
証明は例えば 高校数学の美しい物語 を参照.
まずはここまで知っておけばよいと思うが,追加でもう一つ挙げるなら九点円だろうか.
$△ABC$の垂心,外心をそれぞれ$H,O$とする.次の$9$点は同一円周上に存在する.
九点円の存在の証明は,中点連結定理を使うのは最も単純だろう.参考として Wikipedia .
ベクトルが得意であれば(Euler線を含めて)以下の説明も好まれるだろう.
$\overrightarrow{OA}=\overrightarrow{a},\overrightarrow{OB}=\overrightarrow{b},\overrightarrow{OC}=\overrightarrow{c}$とおくと,$\overrightarrow{OH}=\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}$が成り立つことが知られている.
さらに重心の性質から$\overrightarrow{OG}=\dfrac{\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}}{3}$なので,Euler線の性質が従う.
次に$9$点円である.$BC$の中点,$AH$の中点をそれぞれ$M_1,M_2$とおくと,
$\overrightarrow{OM_1}=\dfrac{\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}}{2}, \overrightarrow{OM_2}=\overrightarrow{a}+\dfrac{\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}}{2}$
であり,その中点は$\overrightarrow{ON}=\dfrac{\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}}{2}$となる.これは線分$OH$の中点に一致する.
また,$AH$と$BC$の交点を$D$と置くと,$\angle M_1DM_2=90°$より,点$D$は$M_1M_2$を直径とする円上に存在する.
OMCでは,垂心を用いた問題は非常に多く出題されている.以下,OMCの例題を挙げておく.