ごきげんよう、みなさま。
この記事は、数A「図形の性質」の問題編です。かなり易しい比や角の確認から始め、隠れた円、逆定理、空間の断面、複数の判断をつなぐ問題へ進みます。
前の記事「数学A・図形の性質をつなぐ① 知識・証明・『何を疑うか』」では、知識を整理し、証明と知識同士の関係を確認しました。ここからは、実際の問題でその知識をどう発見し、どうつなぐかを見ます。
この記事だけを読む方は、各問の解説にある「講義編の対応箇所」を、復習する知識の目印にしてください。三角形の面積は$[ABC]$と書き、線分の長さは正で扱います。
見えているもの → 構造を疑う → 条件を確認する → 使う → 新しい情報から、もう一度疑う。この循環を、二十四問で練習します。
$AB=12$とする。線分$AB$を$2:3$に内分する点を$P$、$2:3$に外分する点を$Q$とする。
① $AP,PB$を求めよ。
② 点$Q$の位置を示し、$AQ,QB$を求めよ。
内分では二つの長さの和、外分では差が$12$です。外分点がどちら側にあるかも、比の大小から決めます。
① $AP=2t,PB=3t$とおくと、$5t=12$より
$$\boxed{AP=\frac{24}{5},\quad PB=\frac{36}{5}}.$$② $AQ\lt QB$なので、点の順序は$Q,A,B$である。$AQ=2u,QB=3u$とおけば$3u-2u=12$より
$$\boxed{AQ=24,\quad QB=36}.$$比の数字だけを見て、内分の公式を両方に使わないようにします。まず点の位置を決め、和が元の長さになるのか、差が元の長さになるのかを確認しました。
ここではまだ特別な定理を探す必要はありません。言葉を図と長さの関係に翻訳することが、最初の一手です。
講義編の対応箇所:第1部2「内分と外分」。
$AB=6,AC=9,BC=10$である三角形$ABC$において、内角$A$の二等分線と$BC$の交点を$D$、外角$A$の二等分線と直線$BC$の交点を$E$とする。
① $BD,DC$を求めよ。
② $E$の位置を示し、$BE,CE$を求めよ。
二等分線から得られるのは$AB:AC$と等しい比です。ただし、$D$は内分点、$E$は外分点です。
① 角の二等分線定理より$BD:DC=6:9=2:3$だから、
$$\boxed{BD=4,\quad DC=6}.$$② 外角の二等分線定理より$BE:EC=2:3$である。$BE\lt EC$なので$E,B,C$の順に並び、$EC-BE=10$である。よって
$$\boxed{BE=20,\quad CE=30}.$$「二等分線を見たら辺の比」を、内分・外分の知識へつなぎました。定理を使った後の計算は問題1と同じです。
外角の二等分線を見て、$E$を$C$側に描いてしまうと、比の大小と矛盾します。図の位置は、計算とは独立した飾りではありません。
講義編の対応箇所:第1部2・3、第2部1②。
$AB=5,AC=7,BC=8$である三角形$ABC$で、$M$を$BC$の中点、$G$を重心とする。
① $AM,AG$を求めよ。
② $[ABG]:[ABC]$を求めよ。
中線の長さと、重心による分割比は別の性質です。まず中線定理で$AM$を求めます。
① 中線定理より
$$AM^2=\frac{2\cdot5^2+2\cdot7^2-8^2}{4}=21.$$重心の性質$AG:GM=2:1$から
$$\boxed{AM=\sqrt{21},\quad AG=\frac{2\sqrt{21}}3}.$$② $M$は中点なので$[ABM]=[ABC]/2$である。また、底辺を$AM,AG$とすると高さが共通なので、
$$[ABG]=\frac{AG}{AM}[ABM]=\frac23\cdot\frac12[ABC].$$よって$\boxed{[ABG]:[ABC]=1:3}$。
中点があるからといって、$AM$が高さとは限りません。三平方の定理を直接使うのでなく、中線定理を候補にします。
①で使ったのは「中点と長さの平方」、②で使ったのは「同じ高さの面積比」です。同じ中線を、目的に応じて異なる情報へ変えています。
講義編の対応箇所:第1部2・3、第2部1③④。
$\angle A=64^\circ$の三角形$ABC$で、$I$を内心、$I_A$を$A$に対する傍心とする。
① $\angle BIC,\angle BI_AC$を求めよ。
② $BC:CA:AB=7:6:5$である別の三角形で、$[IBC]:[ICA]:[IAB]$を求めよ。
①は二等分された角、②は三辺までの等しい距離を使います。①と②は別々の三角形です。
① 内心・傍心の角の関係より
$$\boxed{\angle BIC=90^\circ+32^\circ=122^\circ},$$$$\boxed{\angle BI_AC=90^\circ-32^\circ=58^\circ}.$$② 三つの小三角形の高さは内接円の半径に等しいので、
$$\boxed{[IBC]:[ICA]:[IAB]=BC:CA:AB=7:6:5}.$$内心を「二等分線の交点」と読むと角が得られ、「三辺までの距離が等しい点」と読むと面積が得られます。同じ定義を二つの側から使っています。
内心から三頂点までの距離が等しいわけではありません。それは外心の性質です。中心の名前より、何から等距離なのかを確認しましょう。
講義編の対応箇所:第1部3。
三角形$ABC$の辺$CA,AB$上に、それぞれ$AE:EC=3:2,AF:FB=2:3$となる点$E,F$を取る。$BE$と$CF$の交点を$P$とし、直線$AP$と$BC$の交点を$D$とする。$BD:DC$を求めよ。
三角形と、内部の一点へ集まる三本の線が見えています。チェバの積を、辺を一周する順に書きます。
$D,E,F$は各辺の内部にあり、$AD,BE,CF$は$P$で交わる。チェバの定理より
$$\frac{BD}{DC}\cdot\frac23\cdot\frac23=1.$$したがって$\boxed{BD:DC=9:4}$。
与えられた比は$AE:EC$ですが、今回のチェバの式は$CE/EA$を使います。問題文の順序をそのまま並べるのでなく、図の上で一周してください。
共点は仮定から分かっているので、ここで使っているのはチェバの順方向です。
講義編の対応箇所:第1部4、第2部2①。
三角形$ABC$の辺$BC,CA$の内部に、$BD:DC=2:3,CE:EA=3:1$となる点$D,E$を取る。直線$DE$と直線$AB$の交点を$F$とする。点$F$の位置を示し、$AF:FB$を求めよ。
今度は三本の共点ではなく、一本の直線が三辺を含む直線を横切っています。
$D,E$は二辺の内部にあるので、$F$は辺$AB$の延長上にある。三角形$ABC$と直線$DEF$にメネラウスの定理を用いると、
$$\frac23\cdot3\cdot\frac{AF}{FB}=1.$$よって$\boxed{AF:FB=1:2}$。$AF\lt FB$だから、点の順序は$\boxed{F,A,B}$である。
問題5と式の形は似ていますが、図の構造が違います。式だけを見て定理の名前を決めないようにします。
外分点の位置は最後に比の大小からも確かめました。辺の延長上の点を、無意識に内分点として扱うと、正しい式から誤った図を作ってしまいます。
講義編の対応箇所:第1部4、第2部2②。
円の外部の点$P$を通る直線が、円と$A,B$の順に交わっている。$PA=4,AB=5$とし、$P$からの接線の接点を$T$とする。$PT$を求めよ。
方べきの積は$PA\cdot AB$でしょうか。それとも、どちらも$P$から測るのでしょうか。
$P,A,B$の順なので$PB=PA+AB=9$である。接線と割線の方べきから$PT^2=PA\cdot PB=36$。よって$\boxed{PT=6}$。
円の外部の一点から、接線と割線が出ています。方べきの典型的な配置です。
ただし、積に入れる長さは同じ点$P$を基準にします。円の内部の部分$AB$を、そのまま$PB$の代わりに使わないことが条件確認の中心です。
講義編の対応箇所:第1部5、第2部3③。
① 「平面内の一本の直線に垂直なら、その平面に垂直である」は正しいか。誤りなら反例を挙げ、条件を補え。
② 正八面体の面数が$8$であることを用いて、辺数と頂点数を求めよ。
①は平面内の直線を、もう一本見ます。②は面から辺を数えると、各辺を何回数えるでしょうか。
① 誤りである。平面内の交わる二直線が垂直でも、一方の直線がその平面に垂直とはいえない。
直線が平面と交わる点を通る、平面内の異なる二直線にともに垂直なら、その直線は平面に垂直である。
② 辺数を$e$、頂点数を$v$とすると、各面は三角形で各辺を二回数えるから$3\cdot8=2e$、よって$e=12$。オイラーの多面体定理から$v-12+8=2$なので、
$$\boxed{e=12,\quad v=6}.$$①では、足りない条件を自分で補うことが主題です。垂直という言葉が二回出たから十分なのではなく、「同一平面内の交わる二直線」であることが必要です。
②も、表の数値を思い出すだけでなく、二重の数え方とオイラーの定理をつなげば復元できます。
講義編の対応箇所:第1部7・8、第2部4③。
鋭角三角形$ABC$で、$A$から$BC$への垂足を$D$、$B$から$CA$への垂足を$E$とする。
① $A,B,D,E$が同一円周上にあることを示せ。
② $\angle EDA=\angle EBA$を示せ。
二つの直角が、同じ二点を見ていないでしょうか。円を示せたら、次は同じ弦を見る角を探します。
① $\angle ADB=\angle AEB=90^\circ$なので、$D,E$はともに直径$AB$の円上にある。よって四点は同一円周上にある。
② 同じ円で、$D,B$は直線$EA$の同じ側にある。したがって弦$EA$に対する円周角より$\boxed{\angle EDA=\angle EBA}$。
「垂線が二本ある」という情報を、直角三角形の計算へ使うこともできます。しかし、今回は角を示したいので、直角から円を作る方を選びます。
最初の図には円がありません。それでも、直径$AB$を共有するという条件を確認すれば、自分で円を加えられます。そこから円周角を使う、逆方向から順方向への切り替えです。
②の二頂点が弦の同じ側であることは、鋭角三角形の垂足の位置から確認できます。二つの角が同じ弦を見ている、というだけで等しいと書かないようにします。
講義編の対応箇所:第1部5、第3部「逆」、第4部2。
円の外部の点$P$を通る直線が、円と$A,B$の順に交わり、$PA=2,PB=18$である。円上の点$T$が$PT=6$を満たすとき、直線$PT$は円の接線であることを示せ。ただし$T$は直線$AB$上にない。
問題7では接線であることが分かっていました。今回は、そのとき成り立つ積の等式が先に与えられています。
$P$は円の外部、$T$は円上にあり、$P,A,B$の順に並んでいる。したがって接線と割線の方べきの逆により、直線$PT$は$T$での接線である。
与えられた情報は長さです。半径と垂直であることを直接示そうとするより、まず方べきの逆を候補にできます。
ただし、$PT^2=PA\cdot PB$という数値の一致だけでは足りません。$T$が円上にあること、$P$が外部にあること、割線の点の順序を合わせて使っています。
「接線なら等式が成り立つ」から「等式が成り立つなら接線」を無条件に推論したのではなく、講義編で条件付きで証明した逆定理を使いました。
講義編の対応箇所:第1部5、第2部3③。
$AB=10,AC=17,BC=21$である三角形$ABC$の内接円が、$BC,CA,AB$とそれぞれ$D,E,F$で接する。内心を$I$とする。
① $AF,BD,CE$を求めよ。
② 内接円の半径$r$を求めよ。
③ $[BDI]$を求めよ。
接点が三つあるなら、同じ頂点からの接線長を組にします。半径を求めるには、三角形の面積が分からないかを考えます。
① 半周長は$s=(10+17+21)/2=24$である。接線長の性質より
$$\boxed{AF=3,\quad BD=7,\quad CE=14}.$$② $A$から直線$BC$へ下ろした垂線の足を$H$とする。$AC\lt BC,AB\lt BC$なので、$H$が$B$側または$C$側の延長上にあると三平方の定理に反する。よって$H$は$BC$の内部にある。$BH=x$とすると、
$$10^2-x^2=17^2-(21-x)^2$$より$x=6$、$AH=8$となる。よって$[ABC]=21\cdot8/2=84$。$[ABC]=rs$から
$$\boxed{r=\frac72}.$$③ $ID\perp BC$なので
$$\boxed{[BDI]=\frac12\cdot7\cdot\frac72=\frac{49}{4}}.$$①で接線長を整理し、②で面積を経由して半径へ進み、③でその半径を小三角形の高さとして使いました。
②では、底辺上の垂足を作ると、同じ高さ$AH$を持つ二つの直角三角形ができます。平方の式を等置した理由は、その高さを消して$BH$を求めるためです。$BH=6$が$0$と$21$の間にあることも、配置と一致しています。
講義編の対応箇所:第1部6、第2部3④。面積を先に求める方法として余弦定理なども使えますが、この数値なら三平方二回で足ります。
三角形$ABC$で、$D$を$BC$の中点とする。$E$を直線$CA$上の$A$側の延長上で$AE=AC$となる点、$F$を直線$AB$上の$A$側の延長上で$AF=AB$となる点とする。
① $(BD/DC)(CE/EA)(AF/FB)$を求めよ。
② $AD,BE,CF$の位置関係を調べよ。
③ ①から直ちに「チェバの逆により三直線は一点で交わる」とする説明の不足を述べよ。
積を計算した後で、三本が本当に交わるかを確認します。外部のチェバの逆では、平行の場合が残ります。
① $BD/DC=1,CE/EA=2,AF/FB=1/2$なので、積は$\boxed{1}$。
② $\triangle CBE$で、$D$は$CB$の中点、$A$は$CE$の中点だから、$AD\parallel BE$。同様に$\triangle BCF$で$D,A$は二辺の中点だから、$AD\parallel CF$。よって三直線はすべて平行である。
③ 一つが内分点、二つが外分点である場合、積が$1$でも、共点または三本平行である。共点と結論するには、二直線が平行でないことを確認する必要がある。
公式に数字が合うことと、結論を言えることの違いを確認する問題です。図を見て交わりそうに思っても、二つの中点を見つけると、実際には平行だと分かります。
条件を確認する作業は、最後に付け足す注意書きではありません。使える定理の結論そのものを変えます。
講義編の対応箇所:第1部4「外分点を含むチェバ」、第2部2①。
平面上の直線$l$に対して同じ側に点$A,B$があり、$A,B$から$l$への垂線の足をそれぞれ$H,K$とする。$AH=3,BK=5,HK=6$である。$X$が直線$l$上を動くとき、$AX+XB$の最小値と、そのときの$HX$を求めよ。
$A$と$B$をそのまま結んでも、その線分は$l$を横切りません。一方を$l$について対称移動できないでしょうか。
$B$を$l$について対称移動した点を$B'$とする。$XB=XB'$より
$$AX+XB=AX+XB'\geqq AB'.$$$A,B'$の$l$への距離の和は$8$、垂足間の距離は$6$なので$AB'=\sqrt{8^2+6^2}=10$。
等号は$X=AB'\cap l$のとき成立する。この点は$H,K$の間にあり、直角三角形の相似から$HX:XK=3:5$なので$HX=6\cdot3/8=9/4$。
よって最小値は$\boxed{10}$、そのとき$\boxed{HX=9/4}$。
経路の折れ曲がりを、対称移動によって一本の直線へ伸ばしました。使った不等式は三角不等式だけです。
最小値の候補を出した後、等号を実現する$X$が動ける範囲にあることを確認します。もし$X$の範囲が線分の一部に制限されていたなら、この交点を取れるかを調べ直す必要があります。
講義編の対応箇所:第1部4、第5部3「補助線」。
$AB=13,AC=20,BC=21$である鋭角三角形$ABC$で、$A$から$BC$への垂足を$D$、$B$から$CA$への垂足を$E$とする。$AD$と$BE$の交点を$H$とする。
二人が、図を見ながら考えている。
甲「$AD$は二つの直角三角形で共通だから、先に求められそうだね。」
乙「その後、$CE$を求めたい。直角が二つあるけれど、四点に注目すると別の進め方もありそう。」
① $BD$と$AD$を求めよ。
② 乙の考えを完成させ、同一円周上にある四点と、その理由を答えよ。
③ ②で得た円に対し、点$C$を基準に作れる長さの積の等式を書き、$CE,BE$を求めよ。
④ 甲は「$BD$も$BE$も分かったので、直角三角形の相似から$DH$が求められる」と考えた。比較する二つの三角形を答え、$AH$を求めよ。
②では円を発見し、③ではその円を長さの積へ変えます。④では、得た長さを別の相似の条件として使います。
① $BD=x$とすると
$$13^2-x^2=20^2-(21-x)^2$$より$x=5$。よって$\boxed{BD=5,\ AD=12}$。
② $\angle ADB=\angle AEB=90^\circ$なので、$\boxed{A,B,D,E}$は直径$AB$の円上にある。
③ $C,D,B$と$C,E,A$の順に並ぶので、点$C$の方べきより
$$\boxed{CD\cdot CB=CE\cdot CA}.$$$CD=16$だから$CE=16\cdot21/20=84/5$。直角三角形$BEC$で
$$BE=\sqrt{21^2-(84/5)^2}=\frac{63}{5}.$$したがって$\boxed{CE=84/5,\ BE=63/5}$。
④ $\angle BDH=\angle BEC=90^\circ$、$\angle DBH=\angle EBC$より$\triangle BDH\sim\triangle BEC$である。したがって
$$\frac{DH}{EC}=\frac{BD}{BE}=\frac{5}{63/5}.$$よって$DH=20/3$。$H$は$AD$の内部にあるから
$$\boxed{AH=12-\frac{20}{3}=\frac{16}{3}}.$$会話の中で「四点」といわれたら、円周角の逆を候補にします。ただし、二つの直角が同じ$AB$を見ていることを確認して、初めて共円といえます。
次に、得た円をそのまま角の計算に使うとは限りません。求めたいのは$CE$という長さで、$C$から二本の割線が見えています。そこで方べきへ進みます。
さらに$BE$が分かると、$BD/BE$という比が作れます。④ではこの新情報に対して、もう一度「直角と共通角を見たら相似」を適用しました。
ここで新しい考え方を導入したわけではありません。問題9の円の発見、問題7の方べき、講義編の相似という、すでにある道具をつないでいます。
「図から円を発見した」「その円に方べきを使った」「得た長さで別の相似を使った」という三段階を、自分の言葉で説明できれば、この問題の誘導を読めています。
講義編の対応箇所:第1部1・5、第4部2、第5部4。
底面$ABCD$が一辺$6$の正方形である四角錐$PABCD$において、$PA=PB=PC=PD=5$とする。$P$から底面へ下ろした垂線の足を$O$とする。
甲「四本の辺が等しいから、$O$は正方形の中心だと思う。」
乙「それを図の見た目ではなく、三平方の定理で確かめよう。」
① $OA=OB=OC=OD$を示し、$O$が正方形の中心であることを説明せよ。
② 四角錐の高さと体積を求めよ。
③ $PO$の中点を通り底面に平行な平面で切る。頂点$P$を含む小さい四角錐の体積は、元の四角錐の何倍か。切り口の面積も求めよ。
④ 「底面がどんな三角形でも、頂点から底面の三頂点への辺が等しければ、垂線の足は底面の重心になる」という主張は正しいか。
等しいのは、空間の斜めの辺です。共通の高さを引くと、底面内の距離の等しさへ移せます。
① $PO\perp$平面$ABCD$なので、
$$OA^2=PA^2-PO^2=PB^2-PO^2=OB^2$$であり、$C,D$についても同様である。よって$O$は四頂点から等距離にあり、正方形の外接円の中心、すなわち対角線の交点である。
② $OA=3\sqrt2$だから、
$$\boxed{PO=\sqrt{25-18}=\sqrt7}.$$したがって体積は
$$\boxed{\frac13\cdot36\cdot\sqrt7=12\sqrt7}.$$③ 小さい四角錐と元の四角錐は相似比$1:2$である。よって体積は$\boxed{1/8}$倍、切り口の面積は$\boxed{36/4=9}$。
④ 誤りである。三平方の定理から、垂線の足は底面の三頂点から等距離の点、すなわち外心となる。重心とは一般に一致しない。
①の証明によって、空間の問題が$\triangle POA$という直角三角形へ移りました。断面を選ぶだけでなく、その中の直角を保証したところが重要です。
③では面積比と体積比を混ぜないようにします。高さが半分だから体積も半分、とはなりません。縦・横・高さのすべてが半分です。
④は、正方形や正三角形で中心が一致することを、一般の底面へ広げすぎないための確認です。図が対称に見えることと、仮定から対称性が保証されることを分けます。
講義編の対応箇所:第1部1・7・8、第4部3。
三角形$ABC$の内接円が辺$BC,CA,AB$と、それぞれ$D,E,F$で接している。直線$AD,BE,CF$は一点で交わることを示せ。
示したいのは三本の共点です。円の角を見る前に、三辺上の比を作れないかを考えます。
同じ点からの接線長は等しいので、正の数$x,y,z$を用いて
$$AF=AE=x,\quad BD=BF=y,\quad CE=CD=z$$と置ける。したがって
$$\frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE}{EA}\cdot\frac{AF}{FB} =\frac yz\cdot\frac zx\cdot\frac xy=1.$$$D,E,F$は各辺の内部にあるから、チェバの逆により$AD,BE,CF$は一点で交わる。
円が描かれていても、必ず円周角を使うわけではありません。目標が共点なので、チェバの逆に必要な比を作る方へ戻りました。
接線長の等しさで同じ文字を使うと、比の積が一周して約分されます。内接円という情報が、三角形の共点へ変わりました。
この交点にはジェルゴンヌ点という名前がありますが、その名前を知らなくても解けます。今回使った道具は、接線長の等しさとチェバの逆だけです。
講義編の対応箇所:第1部4・6、第3部「逆」。
凸四角形$ABCD$で、$\angle BAD=\angle BCD=90^\circ$であり、
$$AB=6,\quad AD=8,\quad BC=2\sqrt5,\quad CD=4\sqrt5$$
である。対角線$AC$の長さを求めよ。
二つの直角から、四点の配置に何がいえるでしょうか。辺の長さが四本とも与えられていることにも注目します。
対角の和が$180^\circ$なので、$ABCD$は円に内接する。また$\triangle BAD$で$BD=\sqrt{6^2+8^2}=10$。
トレミーの定理より
$$AC\cdot10=6\cdot4\sqrt5+8\cdot2\sqrt5=40\sqrt5.$$よって$\boxed{AC=4\sqrt5}$。
最初から円が与えられているわけではありません。二つの直角で共円を示してから、四辺と対角線という情報の形を見直します。そこでトレミーが候補になります。
四辺が分かる一般の四角形へ、そのままトレミーを適用してはいけません。共円を示したことで、初めて使える道具になりました。
講義編の対応箇所:第1部5、第2部3⑤。
半径$4,9$の二円が互いに外接し、同じ直線$l$に同じ側から接している。二円と直線$l$に囲まれた小さい隙間に、三者すべてに接する円を入れる。その半径を$r$とする。$r$を求めよ。
各中心から$l$へ半径を下ろします。二円の中心間距離は半径の和ですが、縦の差は半径の差です。
半径$u,v$の二円が外接し、同じ直線に同じ側から接しているとき、直線上の二接点間の距離を$t$とすれば、
$$t^2+(u-v)^2=(u+v)^2$$より$t=2\sqrt{uv}$である。
半径$4,9$の二円の接点間距離は$12$である。小円の接点はその二接点の間にあるから、
$$2\sqrt{4r}+2\sqrt{9r}=12.$$よって$10\sqrt r=12$より
$$\boxed{r=\frac{36}{25}}.$$三つの円を一度に扱わず、まず二円と一本の直線へ分けます。「接点への半径は接線に垂直」という基本から、中心間の直角三角形ができます。
次に、同じ関係を小円と各大円に再適用します。最初に得た式を、対象を替えてもう一度使っています。
小さい隙間という位置条件が、接点間の距離を和にする根拠です。外側にある別の接円まで含めると、差で結ぶ配置も現れるので、同じ式を無条件に使えません。
講義編の対応箇所:第1部6、第5部1。共通外接線の長さを、二円が外接する場合へ当てはめても同じ式です。
一辺$2$の正八面体を、向かい合う二頂点を通る直線を軸として一回転させる。回転によってできる立体の体積を求めよ。ただし、正八面体の内部も含めて回転させる。
残る四頂点が作る正方形を見ます。その正方形を軸に垂直な平面内で回すと、どこまで埋まるでしょうか。
軸の両端を$P,Q$、中間の正方形の中心を$O$、その一頂点を$A$とする。正方形の一辺は$2$なので$OA=\sqrt2$。また$PO\perp OA$で$PA=2$より$PO=\sqrt2$である。
軸に垂直な各断面は、中心が軸上の正方形であり、回転すると、その外接円を境界とする円板を埋める。したがって回転体は、底面の半径$\sqrt2$、高さ$\sqrt2$の円錐を二つ合わせたものである。
よって体積は
$$\boxed{2\cdot\frac13\pi(\sqrt2)^2\sqrt2 =\frac{4\sqrt2\pi}{3}}.$$見取り図の輪郭が円錐に見える、というだけで決めません。軸に垂直な各断面が円板になることを確認したので、内部に穴が残らないといえます。
高さを求める段階では、軸を含む$\triangle POA$へ移しています。回転体の形を決める断面と、長さを計算する断面を使い分けました。
講義編の対応箇所:第1部7・8、第4部3。
四面体$ABCD$が
$$AB=CD=\sqrt{13},\quad
AC=BD=\sqrt5,\quad
AD=BC=\sqrt{10}$$
を満たす。
① この四面体の体積を求めよ。
② 内接球の半径を求めよ。
③ 外接球の半径を求めよ。
向かい合う三組の辺が等しいので、等面四面体です。三種類の辺を、直方体の面の対角線として表せないでしょうか。
① 三辺が$3,2,1$の直方体の一つおきの四頂点を取ると、六辺の長さは$\sqrt{13},\sqrt5,\sqrt{10}$が二本ずつになる。辺の対応を合わせれば、与えられた四面体と合同である。
したがって体積は直方体の体積の$1/3$だから、
$$\boxed{V=\frac13\cdot3\cdot2\cdot1=2}.$$② 一面の三辺は$\sqrt{13},\sqrt5,\sqrt{10}$である。$\sqrt{13}$の辺を底辺とし、$\sqrt5$の辺の底辺方向への長さを$x$、高さを$h$とすると、
$$x^2+h^2=5,\qquad(\sqrt{13}-x)^2+h^2=10.$$よって$x=4/\sqrt{13},h=7/\sqrt{13}$で、一面の面積は$7/2$。表面積は$S=14$である。$V=rS/3$より
$$\boxed{r=\frac{3V}{S}=\frac37}.$$③ 直方体の中心は、選んだ四頂点から等距離なので、四面体の外接球の中心である。よって半径は空間対角線の半分で、
$$\boxed{R=\frac{\sqrt{3^2+2^2+1^2}}2=\frac{\sqrt{14}}2}.$$①の入口は「向かい合う辺が等しい」です。直方体の三辺を$x,y,z$と置けば、
$$x^2+y^2=13,\quad y^2+z^2=5,\quad z^2+x^2=10$$となり、足し引きで$x^2=9,y^2=4,z^2=1$が得られます。三つとも正なので、実際の直方体が作れます。
この一つの見方から、体積は四隅の三角錐を除いて求められ、外接球は直方体の中心で求められます。一方、内接球は面までの距離なので、体積と表面積へ戻りました。
外接球と内接球は、どちらも「球」ですが、等距離の相手が頂点か面かで処理が変わります。講義編の定義を、そのまま使い分けています。
講義編の対応箇所:第1部7⑤⑥、第2部4②。
$AB=AC=5,BC=6$である二等辺三角形$ABC$で、$M$を$BC$の中点、$O,G,H$をそれぞれ外心、重心、垂心とする。$OG,AH$を求めよ。
対称性から、中心をどの直線上に置けるでしょうか。外心は頂点から等距離、重心は中線を$2:1$、垂心はオイラー線の比とつなげます。
$AM\perp BC$で、$AM=\sqrt{25-9}=4$。三角形は鋭角三角形であり、外心$O$は$AM$の内部にある。$OM=x$とすると$OA=4-x,OB^2=x^2+9$だから、
$$(4-x)^2=x^2+9$$より$OM=7/8$。
また$MG=AM/3=4/3$だから、
$$\boxed{OG=\frac43-\frac78=\frac{11}{24}}.$$正三角形ではないので、オイラー線上で$G$は$O,H$の間にあり$GH=2OG=11/12$。したがって
$$MH=\frac43+\frac{11}{12}=\frac94,\qquad \boxed{AH=4-\frac94=\frac74}.$$五心の公式を独立に三回使うのでなく、同じ中線上に長さを集めました。まず外心の等距離で$OM$を求め、重心の比で$MG$を求め、その差をオイラー線へつなげています。
最後に$MH\lt MA$なので、垂心が内部にあるという鋭角三角形の性質とも一致します。比だけでなく、点の並びを確認することが大切です。
講義編の対応箇所:第1部3、第2部1⑤。
三角形$ABC$で、$a=BC,b=CA,c=AB$とする。内角$A$の二等分線と$BC$の交点を$D$とする。
① $BD,DC$を$a,b,c$で表せ。
②
$$AD^2=bc-BD\cdot DC$$
を示し、$AD$を$a,b,c$で表せ。
①の辺の比だけでは、二等分線自身の長さは出ません。外接円を描いて$AD$を延ばすと、方べきに$AD$が現れます。
① 二等分線定理より$BD:DC=c:b$だから、
$$\boxed{BD=\frac{ac}{b+c},\quad DC=\frac{ab}{b+c}}.$$② 直線$AD$と外接円との、$A$以外の交点を$K$とする。$A,D,K$の順に並ぶ。
$\angle BAD=\angle KAC$、また同じ弦$AC$に対する円周角より$\angle ABD=\angle AKC$なので、
$$\triangle ABD\sim\triangle AKC.$$したがって$AB/AK=AD/AC$より
$$AD\cdot AK=bc.$$点$D$の方べきから$DA\cdot DK=DB\cdot DC$。$AK=AD+DK$なので
$$AD^2=AD\cdot AK-AD\cdot DK=bc-BD\cdot DC.$$①を代入して、
$$\boxed{AD=\frac{\sqrt{bc\{(b+c)^2-a^2\}}}{b+c}}.$$三角不等式$a\lt b+c$より根号内は正である。
最初に見えているのは二等分線です。そこで辺の比を取りました。しかし目標は$AD$の長さなので、ここで一度「今の結果では何が足りないか」を考えます。
$AD$を積に入れるには、$D$を通る円の割線を作るのが候補になります。外接円を描いて二等分線を延ばすと、$DA\cdot DK$が方べきに現れます。
これだけでは$DK$が未知ですが、追加した点$K$は円周角も使える点です。二等分された角と円周角から相似を疑うと、$AD\cdot AK=bc$という別の積が得られます。二つの積の差を取れば、$AD^2$が残ります。
① 二等分線から辺の比。
② 長さが足りないので、外接円と第二交点を追加。
③ 新しくできた円周角から相似。
④ 同じ円に方べき。
⑤ 二つの積を、点の順序$AK=AD+DK$で結ぶ。
ここまでに使った知識は、講義編の二等分線、円周角、相似、方べきだけです。二等分線の長さの公式を、別の暗記事項として持ち込む必要はありません。
講義編の対応箇所:第1部3・5、第5部2・3。
$AB=6,AC=8,BC=7$である三角形$ABC$で、辺$AB$上に$AF=4$となる点$F$を取る。$B,C,F$を通る円と辺$AC$との、$C$以外の交点を$E$とする。
$P=BE\cap CF$とし、直線$AP$と$BC$の交点を$D$とする。
① $AE$を求めよ。
② $BD:DC$を求めよ。
③ $AP:PD$を求めよ。
④ $[BPD]:[ABC]$を求めよ。
最初は円の外の点$A$。その後、三角形の共点へ移り、$AP:PD$が欲しくなったら小さい三角形を選び直します。
① 点$A$の方べきより$AF\cdot AB=AE\cdot AC$なので、
$$\boxed{AE=3}.$$したがって$EC=5,BF=2$であり、$E,F$は各辺の内部にある。
② $P$は内部にあり、チェバの定理より
$$\frac{BD}{DC}\cdot\frac53\cdot\frac42=1.$$よって$\boxed{BD:DC=3:10}$。
③ 三角形$ABD$と直線$FPC$にメネラウスの定理を使う。点の順序は$B,D,C$であり、$BC/CD=13/10$なので、
$$\frac{AF}{FB}\cdot\frac{BC}{CD}\cdot\frac{DP}{PA} =2\cdot\frac{13}{10}\cdot\frac{DP}{PA}=1.$$したがって$\boxed{AP:PD=13:5}$。
④ $[ABD]/[ABC]=BD/BC=3/13$。また$[BPD]/[BAD]=PD/AD=5/18$なので、
$$\frac{[BPD]}{[ABC]}=\frac{5}{18}\cdot\frac{3}{13}=\frac{5}{78}.$$よって$\boxed{[BPD]:[ABC]=5:78}$。
最初に見えているのは、円に入る二本の直線$AB,AC$です。$A,F,B$の順序を確かめ、方べきで$AE$を求めます。この結果によって、円の情報が三角形の辺の比へ変わりました。
次に$AD,BE,CF$が$P$へ集まっていることを見て、チェバを疑います。三分点が辺の内部にあることも、①で得た値と問題の条件から確認できます。
③では、同じ$\triangle ABC$にチェバを使い続けても、欲しい$AP:PD$は直接出ません。そこで、その比が一辺上の分割比になる$\triangle ABD$を選びます。$C$は辺$BD$の延長上、$F,P,C$は一直線上なので、メネラウスの配置ができました。
最後は、新たに分かった$PD/AD$を面積比へ移します。比が一つ足りるたびに、対象を替えて同じ知識を使っています。
| 段階 | 確認した条件 | 新しく得たもの |
|---|---|---|
| 方べき | 同じ円への二割線 | $AE=3$ |
| チェバ | $\triangle ABC$の三本の共点 | $BD:DC=3:10$ |
| メネラウス | $\triangle ABD$を横切る直線$FPC$ | $AP:PD=13:5$ |
| 面積比 | 二回の共通の高さ | $[BPD]:[ABC]=5:78$ |
使った道具は、講義編にすべてありました。難しくなったのは公式の種類ではなく、「新しい情報を受け取った後、どの三角形へ視点を移すか」という判断です。
なお、$E$の存在も積の式から確認できます。$A$は円の外部で、直線$AC$のもう一つの交点は$A$と同じ側へ延ばした半直線上にあり、その距離は$AF\cdot AB/AC=3$です。$0\lt 3\lt 8$なので、実際に辺$AC$の内部にあります。
講義編の対応箇所:第1部2・4・5、第4部1、第5部1・2。
ここまでで、比・角・円・空間のいろいろな配置を扱いました。最後の一問へ進む前に、解答を「使った定理の名前」だけでなく、次の六つの点から読み返してみてください。
① 最初に何が見えていたか。
② そこから何を疑ったか。
③ 成立条件をどこで確認したか。
④ 何が新しく分かったか。
⑤ その情報から、次に何を疑ったか。
⑥ どの知識をつないで目標へ至ったか。
最後の問題は、本記事で最も発想を要する問題です。計算は長くありません。難しいのは、目標の二つの長さを比べるために、どこへ補助線を加えるかです。
すぐに見つからなくても、解答を読んだ後で「使われた性質は講義編のどこにあったか」をたどってみてください。
円の弦$AB$の中点を$M$とする。$M$を通る異なる二本の弦$PQ,RS$を取り、$P,S$は直線$AB$の一方の側、$Q,R$は反対側にあるものとする。
$X=PR\cap AB,\ Y=QS\cap AB$とし、点は$A,X,M,Y,B$の順に並んでいるとする。円周上の六点$A,B,P,Q,R,S$はすべて異なるものとする。
$$MX=MY$$
を示せ。
目標の長さを$x=MX,y=MY$とすると、$X,Y$から直線$PQ$までの距離の比も$x:y$です。直線$RS$への距離についても同じことがいえます。
二つの直線までの距離を作った後、円周角を使って別の組の直角三角形を比較できないでしょうか。
$MA=MB=a,MX=x,MY=y$とする。$0\lt x,y\lt a$である。
$X$から直線$PQ,RS$への距離をそれぞれ$x_1,x_2$、$Y$から同じ二直線への距離をそれぞれ$y_1,y_2$とする。
$M,X,Y$は一直線上にあるから、垂線でできる直角三角形の相似より(直線同士が垂直なら、距離が$MX,MY$に等しいことから直接)、
$$\frac{x_1}{y_1}=\frac{x}{y},\qquad \frac{x_2}{y_2}=\frac{x}{y}. \tag{1}$$同じ円の弦$QR$に対する円周角より$\angle QPR=\angle QSR$である。したがって、斜辺を$PX,SY$とする直角三角形を比較して、
$$\frac{x_1}{y_2}=\frac{PX}{SY}. \tag{2}$$同様に、弦$PS$に対する円周角$\angle PRS=\angle PQS$から、
$$\frac{x_2}{y_1}=\frac{RX}{QY}. \tag{3}$$垂線の足が辺の延長上にある場合も、等しい角の補角を取れば同じ比を得る。角が$90^\circ$なら、各距離が比較する線分自身の長さに等しいので、同じ式が直接成り立つ。
$(1)$〜$(3)$を掛け合わせると、
$$\frac{x^2}{y^2} =\frac{x_1x_2}{y_1y_2} =\frac{PX\cdot RX}{SY\cdot QY}.$$$X,Y$は円の内部にあるので、方べきより
$$PX\cdot RX=AX\cdot BX=(a-x)(a+x)=a^2-x^2,$$$$SY\cdot QY=AY\cdot BY=(a+y)(a-y)=a^2-y^2.$$したがって
$$x^2(a^2-y^2)=y^2(a^2-x^2)$$より$a^2(x^2-y^2)=0$。$a,x,y\gt 0$なので$x=y$、すなわち$\boxed{MX=MY}$である。
円の中で複数の弦が交わり、$AB$の中点$M$があります。方べきはすぐ候補になります。一方、目標は$MX=MY$であり、$M$からの二つの距離です。
ここで$M$にだけ方べきを使うと$MP\cdot MQ=MR\cdot MS$は得られますが、$X,Y$が式に入りません。結論へ近付くには、$X,Y$で方べきを使う候補も見ておきます。
② 方べきの二つの積を、どう比較するか
$a=MA=MB,x=MX,y=MY$とおけば、点の順序から
$$AX\cdot BX=a^2-x^2,\qquad AY\cdot BY=a^2-y^2$$です。つまり$PX\cdot RX$と$QY\cdot SY$を比べられれば、目標の$x,y$へ戻れます。
しかし、この二つの積が直接等しいとは、まだ分かりません。そこで、長さを比較しやすい別の形へ移します。
③ なぜ、二本の直線へ垂線を下ろすのか
$X,Y$は、二直線$PQ,RS$の交点$M$を通る一本の直線上にあります。講義編の「長さの比を、直線までの距離の比へ」を使うと、どちらの直線への距離も、比は$x:y$になります。
この段階では、
$$x_1:y_1=x:y,\qquad x_2:y_2=x:y$$という二組ができました。垂線を引いた目的は、長さを計算することではなく、目標の比$x:y$を二組の直角三角形へ移すことです。
④ 円周角で、組合せを入れ替える
次に、$P,S$は弦$QR$を、$R,Q$は弦$PS$をそれぞれ同じ側から見ています。そこで円周角を使うと、今度は距離の組を交差させた
$$x_1:y_2=PX:SY,\qquad x_2:y_1=RX:QY$$が得られます。
講義編で扱った「等しい角なら、斜めの線分に対する高さの割合が等しい」を、この配置に適用しただけです。新しい定理ではありません。
⑤ 新しく得た積に、方べきを使う
二つの比較を掛けると、左側には$(x/y)^2$、右側には方べきで置き換えられる二つの積が現れます。ここで最初に候補として残していた方べきが効きます。
中点条件から$a^2-x^2,a^2-y^2$に替えると、共通の項$x^2y^2$が消えて$x=y$が残ります。
⑥ 今回つないだ知識
直線までの距離と相似 → 円周角から別の相似 → 比を掛けて長さの積へ → 方べき → 中点による和と差。
どれも講義編にありました。見た目は難しくなっていますが、「垂線で距離を作る」「同じ円を見る角を疑う」「積が現れたら方べきを疑う」という判断を繰り返しています。
この性質はバタフライ定理と呼ばれます。しかし、それを知識として持ち込んで解いたのではありません。今回の目標は、この配置でも既習の道具を発見し、つなげられることでした。
講義編の対応箇所:第1部2③・5、第2部3③、第5部1・3。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
難しい問題で止まったときは、解答の最初の一手を覚えるだけでなく、その一手が何を使えるようにしたのかを読み直してみてください。得られた新しい情報に対して、もう一度同じ知識を使える場面が見つかるはずです。
知識を覚える。関係を知る。構造を疑う。条件を確かめる。使う。そして、新しく分かったことから、もう一度考える。この循環が、次の一問を解く手掛かりになれば幸いです。
皆さんの日常に良き数学の彩のあらんことを。
それでは、ごきげんよう。