確率と期待値でよく考える題材として、コインやサイコロがあります。この記事ではサイコロの方に注目し、出た目の確率や期待値を考えていきます。
チンチロリンは、日本の大衆的な博戯(賭博・ゲーム)の一種である。
(Wikipediaより)
飲み屋さんでもメニューにチンチロリンというのがあったりしますね。サイコロ2個を振り、出た目に応じて、値段が変わるという内容ですね。
サイコロの目 | 注文 |
---|---|
ぞろ目 | 通常ジョッキ無料 |
合計が偶数 | 通常ジョッキ半額 |
合計が奇数 | メガジョッキ(値段も2倍) |
例えば通常の値段が500円のジョッキの場合、出た目の合計が偶数なら半額なので、通常より安くお酒を飲むことができます。合計が奇数であれば、1000円でメガジョッキを飲むことになります。メニューの記載内容からでは、合計が奇数の場合のメガジョッキの値段が分からなくて、合計が奇数でも通常値段でメガジョッキ飲めるじゃん!と思っていたのですが、お会計を見たらただのメガジョッキの値段かぁとなり、ぬか喜びしていました。残念。お店から考えたら、メガジョッキも安く提供してしまっては儲けになりませんよね。さて、ここで気になることは、このチンチロリンをするのと普通に注文するのでは、どちらの方がお得になるのかということです。これを確認するのに必要となるのが「確率」と「期待値」です。
前提としてサイコロは「1」から「6」の6つの面があり、それぞれ均等に目が出るものとします。なので1つのサイコロで考えると「1」から「6」の目はそれぞれ$\frac{1}{6}$の確率で出ます。偶数は「2」「4」「6」なので$\frac{3}{6}(=\frac{1}{2})$の確率、奇数は「1」「3」「5」なので、同じように$\frac{3}{6}(=\frac{1}{2})$の確率となります。
サイコロの1つ目 | サイコロの2つ目 | サイコロの合計 |
---|---|---|
偶数 | 偶数 | 偶数 |
偶数 | 奇数 | 奇数 |
奇数 | 偶数 | 奇数 |
奇数 | 奇数 | 偶数 |
この組み合わせから見て分かるとおり、2つのサイコロの出た目の合計は偶数も奇数も$\frac{1}{2}$です。計算して確認をしてみます。どちらのサイコロも偶数の場合は$\frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{4}$、同様にどちらも奇数の場合は$\frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{4}$となります。このことよりサイコロの合計が偶数になる確率は$\frac{1}{4} + \frac{1}{4} = \frac{1}{2}$となります。
これではぞろ目の場合の確率が考慮されていません。ぞろ目は「1」「1」のようにどちらも同じ目なので$\frac{1}{6} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{36}$です。これが「1」から「6」の6パターンとなるので$\frac{1}{36} \times 6 = \frac{1}{6}$がぞろ目の確率です。加えてぞろ目の場合のサイコロの合計について考えてみると、ぞろ目はどちらも偶数または奇数の目となるので、ぞろ目の合計は偶数となります。サイコロの合計が偶数の場合は$\frac{1}{2}$なので、ぞろ目以外で合計が偶数となる確率は$\frac{1}{2} - \frac{1}{6} = \frac{1}{3}$となります。
サイコロの合計 | 確率 |
---|---|
偶数(ぞろ目) | $$\frac{1}{6}$$ |
偶数(ぞろ目以外) | $$\frac{1}{3}$$ |
奇数 | $$\frac{1}{2}$$ |
サイコロの目のパターンごと確率を求めることができたので、ここからは値段の期待値を求めていきます。サイコロの出た目ごとの値段をまとめると下のようになります。通常ジョッキは500円でメガジョッキは2倍の量で2倍の値段として考えます。
サイコロの目 | 確率 | 値段 | 備考 |
---|---|---|---|
ぞろ目 | $$\frac{1}{6}$$ | 0円 | 通常ジョッキ無料 |
合計が偶数 | $$\frac{1}{3}$$ | 250円 | 通常ジョッキ半額 |
合計が奇数 | $$\frac{1}{2}$$ | 1000円(通常サイズ換算で500円) | メガジョッキ(値段も2倍) |
上の表でメガジョッキをそのままの値段ではなく通常サイズ換算したのは、サイズが同じでなければチンチロリンのお得度合いが判断できないからです。サイズが大きくなれば値段が上がるのは当然ですね。サイズを同一の基準にすることでどのくらいお得なのかを考えることができます。逆の考え方として、値段を基準として単位値段あたりにどのくらいのサイズとなるのか、と考えることもできますが、ここではサイズを基準としていきます。
それでは期待値を求めていきます。
$$「チンチロリンの期待値」$$
$$= (ぞろ目の「確率 \times 値段」) + (合計が偶数の「確率 \times 値段」) + (合計が奇数の「確率 \times 値段」)$$
$$= (\frac{1}{6} \times 0) + (\frac{1}{3} \times 250) + (\frac{1}{2} \times 500)$$
$$= 0 + \frac{250}{3} + \frac{500}{2}$$
$$= \frac{1000}{3} \fallingdotseq 333.33 \cdots$$
「チンチロリンの期待値」は約333円となります。通常サイズで500円なので、これはお得なのではと考えられそうですね。しかしサイコロの合計が奇数の場合はメガジョッキ注文となってしまい、メガジョッキなんて飲みきらないという人は、合計が奇数となると損失というか外れとなってしまいます。実際に状況としては通常サイズだけで考えるのでは少し足りない感じがしてきました。とはいえメガジョッキ基準で考えればよいのでしょうか?例えば、1度目のチンチロリンで合計が偶数になり2度目で奇数となると、トータルでは通常ジョッキとメガジョッキとなってしまい、通常ジョッキ3杯分となります。1回チンチロリンをすると通常ジョッキ1杯分か2杯分となってくるので、1つの考え方として通常ジョッキ2杯分を飲む場合はどのくらいお得かを求めることができそうです。
この場合の考え方の場合は下表のようになります。
サイコロの目 | 確率 | 値段 | 備考 |
---|---|---|---|
ぞろ目 | $$\frac{1}{6}$$ | 0円+500円 | 通常ジョッキ無料+通常の注文 |
合計が偶数 | $$\frac{1}{3}$$ | 250円+500円 | 通常ジョッキ半額+通常の注文 |
合計が奇数 | $$\frac{1}{2}$$ | 1000円 | メガジョッキなので通常ジョッキ2杯分 |
$$「チンチロリンをして通常ジョッキ2杯分飲むときの値段の期待値」$$
$$= (\frac{1}{6} \times 500) + (\frac{1}{3} \times 750) + (\frac{1}{2} \times 1000)$$
$$= \frac{500}{6} + \frac{750}{3} + \frac{1000}{2}$$
$$= \frac{2500}{3} \fallingdotseq 833.33 \cdots$$
チンチロリンをして通常ジョッキ2杯分飲むときの値段の期待値は約833円となります。これでも普通に注文すると1000円なのでお得となります。通常ジョッキ2杯分で満足する人がしょっちゅう飲みに行く場合であれば、毎回チンチロリンをした方が、トータルでみてみるとお得になるということが言えます。
通常ジョッキ2杯分で考えてみましたが、3杯、4杯と増えても考えることができます。ですがパターン分けが少々複雑になっていきそうですね。
飲み屋さんのチンチロリンを例に確率や期待値を考えてみました。飲み屋さんによってはチンチロリンの内容が違ったりもするのかと思いますが、このようにパターンごとの確率を求め、何杯飲むのかを決めておけばどのくらいお得なのかを求めることができそうです。意外と身近なところに期待値は隠れているものですね。