$f,g,a$がいい感じのとき,
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f’(x)}{g’(x)}$$
ロピタルの定理を答案に書いてもいいのか。受験数学で5000兆回ぐらいは擦られた話題ですが、僕なりの結論が出来たので、この記事に書いていこうと思います。
間違い等あれば、コメントまたはXのDMにて指摘していただけるとありがいです。
記事で紹介したものより短い証明があればぜひ教えてください🙏
結論は、「類似の定理を証明した上で使う!」というものです。
元の定理は証明が結構長いので答案に書くリスクが色々とありますが、扱う対象を絞って示せば意外と短く証明できます。
スムーズに書いて3分30秒、消して書き直すなどあれば4分ぐらいでかけます。
正整数$n$と関数$f$について,$\Big\lceil\displaystyle\lim_{x\to+0}f(x)=0\ \Big\rfloor\ \land\ \Big\lceil\ x(>0)$が十分小さい$\Rightarrow f’(x)$が存在する$\Big\rfloor$のとき,以下のどちらかが存在すれば,
$$\lim_{x\to+0}\frac{f(x)}{x^n}=\lim_{x\to+0}\frac{f’(x)}{nx^{n-1}}$$
十分小さな正実数$x$をとって$F(t)=x^nf(t)-t^nf(x)\ (0\lt t\le x)$とする.
さらに$\displaystyle F(0)=\lim_{a\to+0}F(a)$とすると$F$は$[0,x]$で連続となる.平均値の定理より,
$$\frac{F(x)-F(0)}{x-0}=F’(s)\ (0< s< x)\quad\cdots ①$$
なる$s$が存在する.$F(x)=F(0)=0,\ F’(t)=x^nf’(t)-nt^{n-1}f(x)$より,
$$①\Longleftrightarrow\frac{f(x)}{x^n}=\frac{f’(s)}{ns^{n-1}}\quad\cdots ②$$
$0\lt s\lt x$なので②の両辺を$x\to+0$とすると補題の主張を得る.
注意すべき点が2つあります。
これでも某定理よりは緩いですが、条件が普通に煩雑なので間違えないようにしましょう。
左辺か右辺が存在していることが必要なので、どちらが存在しているか確認してから使ってください
$$\begin{aligned} &\lim_{a\to+0}\frac{\frac12-\frac{\sin a}{a}+\frac{1-\cos a}{a^2}}{a^2} \\ =&\lim_{a\to+0}\frac{a^2-2a\sin a+2-2\cos a}{2a^4} \\ =&\lim_{a\to+0}\frac{2a-2a\cos a}{8a^3} \\ =&\frac14\lim_{a\to+0}\frac{1-\cos a}{a^2} \\ =&\frac14\lim_{a\to+0}\frac{\sin a}{2a} \\ =&\frac18 \end{aligned}$$
これは最もよくある使用例です。しかし注意すべき点があります。それは、補題は下から順に適用されるということです。補題の条件を見返していただくと、「どちらかが存在すれば」とあります。よって、補題を複数回適用したいケースでは、結論の方から$=$が伝播するイメージになります。
陰関数については別途記事を作ろうと思っていましたが、ここに書いちゃいます。
下の問題は、これ単体ではあまり難易度は高くないですが汎用性の高さを見ていただければと思います。
$a$は$0\lt a\lt\pi$を満たす定数とする.$n=0,1,2,\cdots$に対し,$n\pi\lt x\lt(n+1)\pi$の範囲に$\sin(x+a)=x\sin x$を満たす$x$がただ一つ存在するので,この値を$x_n$とする.
$(1)$ 極限値$\displaystyle\lim_{n\to\infty}(x_n-n\pi)$を求めよ.
$(2)$ 極限値$\displaystyle\lim_{n\to\infty}n(x_n-n\pi)$を求めよ.
$y:=x-n\pi$とすると,$0\lt y\lt\pi$であり,
$$\sin(x+a)=x\sin x\Leftrightarrow \sin(y+n\pi+a)=(y+n\pi)\sin(y+n\pi)\Leftrightarrow \sin(y+a)=(y+n\pi)\sin y$$
$t=1/n$とおくと,
$$\sin(y+a)=(y+n\pi)\sin y\Leftrightarrow t\sin(y+a)=(ty+\pi)\sin y\quad\cdots ①$$
とでき,$①$は両辺$t\gt 0$で定義可能であることに留意する.
$(1)$ 置換により求めるものは$\displaystyle\lim_{t\to+0}y$となる.$①$について,$(左辺)\to 0$なので$(ty+\pi)\to 0$または$\sin y\to 0$であるが,$y$は有界であるので$\sin y\to 0\Leftrightarrow (y\to+0)\ \mathrm{or}\ (y\to\pi-0)$.両辺の符号の一致を考えると$y\to+0$.よって答えは$\boxed{0}$
$(2)$ 置換により求めるものは$\displaystyle\lim_{t\to+0}\frac{y}{t}$となる.$①$の両辺を$t$で微分すると,$$\begin{aligned} &\sin(y+a)+ty’\cos(y+a)=(y+ty’)\sin y+(ty+\pi)y’\cos y \\ \Leftrightarrow \ &y’=\frac{y\sin y-\sin(y+a)}{t\cos(y+a)-t\sin y-(ty+\pi)\cos y} \end{aligned}$$両辺の$t\to+0$をとると,$ y’\to\dfrac{\sin a}{\pi}$がわかる.
補題より求める答えは$\displaystyle\lim_{t\to+0}\frac{y}{t}=\lim_{t\to+0}\frac{y’}{1}=\boxed{\frac{\sin a}{\pi}}$
工夫すればロピタルの定理っぽいこともやれます。
$f,g$に対して適切に$n$を選んで,
$$\lim_{x\to+0}\frac{f(x)}{x^n}=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}\quad\cdots ①$$
と
$$\lim_{x\to+0}\frac{g(x)}{x^n}=\frac{g^{(n)}(0)}{n!}\quad\cdots ②$$
を前計算しておくと,
$$\lim_{x\to+0}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to+0}\frac{f(x)}{x^n}\cdot\frac1{\frac{g(x)}{x^n}}=\frac{f^{(n)}(0)}{g^{(n)}(0)}$$
と結論できます.
①と②の成立が強い仮定になっているため、これはロ◯◯ルの定理を証明するものではありませんが、実用上はこれで困ることは無い気がしています。