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主客転倒について

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はじめに

 この記事では主客転倒のとあるテクニックについて説明していきます。私自身この話を理解するのにかなり時間がかかってしまったので、皆さんにはすんなり理解してもらえるよう出来るだけ丁寧に説明していきます。

本題

 いきなりですが、以下のような問題を考えていきましょう。

OMC213(H)

 向きを固定した正333角形の各頂点を,赤・青・緑の三色から一つずつ選んで塗り,それぞれの塗り方に対してそのスコアを以下で定めます:
・正333角形の辺のうち,両端の頂点の色が等しいものの数
 回転によって一致する色の塗り方を区別した場合の3333通りすべてについて,それぞれのスコアの2乗の(相加)平均を求めてください.

 まずこの問題を見たときに「2乗...!?」となる人は多いのではないでしょうか。そうなんです、もし2乗の相加平均ではなく、スコアそのものの相加平均ならばシンプルに主客転倒を用いるだけで答えは出せるんです。(練習としてやってみるといいかもしれません。) では2乗の総和をどのように扱えばいいのでしょうか?実はこれもうまい見方をすれば主客転倒で解けてしまうのです。いきなりこの問題の解説をしてもわかりにくいと思うのでもう少し簡単な例を見てから解説します。

類題

 向きを固定した正六角形の各頂点を,赤・青・緑の三色から一つずつ選んで塗り,それぞれの塗り方に対してそのスコアを以下で定めます:
・正六角形の辺のうち,両端の頂点の色が等しいものの数
 回転によって一致する色の塗り方を区別した場合の36通りすべてについて,それぞれのスコアの2乗の(相加)平均を求めてください.

 正六角形の頂点を、A1,A2,A3,A4,A5,A6として、Ai(1i6)に塗られた色をCiとします。(ただしC7=C1として考えます)また、スコアの2乗を"真のスコア"と呼ぶことにします。このとき、
(2)=(Ci=Ci+1i)2=(Ci=Ci+1i)(Cj=Cj+1j)
これはijという文字に置き換えただけです。すると、ある塗り方における真のスコアは、その塗り方においてCi=Ci+1,Cj=Cj+1を満たすi,jの組(i=jも含める)の個数に等しいことがわかります。具体例で考えてみましょう。
 C1=C2,C3=C4,C5=C6を満たすスコアが3の塗り方を考えます。このとき、i,jの組は
(i,j)=(1,1),(1,3),(1,5),(3,1),(3,3),(3,5),(5,1),(5,3),(5,5)
と合計で9通りあることがわかります。これがまさに真のスコアと一致しているわけです。この場合、(Ci=Ci+1i)i=1,3,53通りで、同じく(Cj=Cj+1j)j=1,3,53通りなので、i,jの組は33=32となりこれは真のスコアそのものですよね。そして、これはどのような塗り方に対しても同じようなことが言えます。「だからなんなんだ!!」と思うかもしれませんが、ここで総和を考えるととっても嬉しいことが起きます。以下このように真のスコアを(i,j)の組の個数とみなすことを"真のスコアを組に分解する"と呼ぶことにします(これは私が勝手につけた呼び方です)。
 これまでの話から、すべての塗り方に対する真のスコアの総和は、すべての塗り方に対する「Ci=Ci+1,Cj=Cj+1を満たすi,jの組の数」の総和と言い換えられます。ここで、ある組(i,j)が何回表れるかに着目していきましょう。ここで主客転倒を用いるのです。
 例えば上の例で登場した(1,1)を考えてみましょう。
(1,1)C1=C2を満たす塗り方の真のスコアを組に分解して考えたときに必ずその中にただ一つ含まれます。

C1=C2,スコア1C1=C2,C4=C5,スコア2C2=C3,C5=C6,スコア2C1=C2,C3=C4,スコア2C3=C4,C5=C6,スコア2.....
(1,1)(1,1)(2,2)(1,1)(3,3).....
(1,4)(2,5)(1,3)(3,5).....
(4,1)(5,2)(3,1)(5,3).....
(4,4)(5,5)(3,3)(5,5).....

同様に(i,i)(i=jの場合)は、Ci=Ci+1を満たす塗り方の真のスコアを組に分解して考えたときに必ずその中にただ一つ含まれます。そして、すべての塗り方に対する真のスコアの合計を考えているので、(i,i)が含まれるような塗り方は、334通りあります。(CiCi+1は同じ色の3通り、その他の頂点は自由に選べて34通りなので。) また、iの選び方として6通りあるので、(i,i)の組は合計で6334個あることがわかります。
 次は(1,3)を考えてみましょう。
(1,3)C1=C2,C3=C4を満たす塗り方の真のスコアを組に分解して考えたときに必ずその中にただ一つ含まれます。

C1=C2,スコア1C1=C2,C4=C5,スコア2C2=C3,C5=C6,スコア2C1=C2,C3=C4,スコア2C3=C4,C5=C6,スコア2.....
(1,1)(1,1)(2,2)(1,1)(3,3).....
(1,4)(2,5)(1,3)(3,5).....
(4,1)(5,2)(3,1)(5,3).....
(4,4)(5,5)(3,3)(5,5).....

同様に(i,j)(ijの場合)は、Ci=Ci+1,Cj=Cj+1を満たす塗り方の真のスコアを組に分解して考えたときに必ずその中にただ一つ含まれます。そして、すべての塗り方に真のスコアの合計を考えているので、(i,j)(ij)が含まれるような塗り方は、
|ij|=1のとき、333通り。(Ci=Cj+1またはCi+1=Cjであり、Ci=Cj+1の場合を考えると、CjCj+1=CiCi+1は同じ色の3通り、その他の頂点は自由に選べて33通りなので。) また、このような(i,j)の組は62通りなので、(i,j)(|ij|=1)の組は62333個あることがわかります。
|ij|>1のとき、3332通り。(CiCi+1は同じ色の3通り、CjCj+1は同じ色の3通り、その他の頂点は自由に選べるので32通りなので。) また、このような(i,j)の組は63通りなので、(i,j)(|ij|>1)の組は633332個あることがわかります。 
故に、(i,j)(ij)の組は合計で、62333+633332=2355個あることがわかりました。
 よって、真のスコアの総和を、それぞれの真のスコアを組に分解した合計と捉えることで、真のスコアの総和は、6334+2355=1635となることがわかります。従って、求めたかった値は
163536=163
となります。

OMC213(H)を解いてみよう!

 ここまで簡単目な例を見てきましたが、OMC213(H)も全く同じ手順で解くことができます。ぜひ自分で手を動かして解いてみましょう!
答えが出せたらこちらの公式解説をご覧ください OMC213(H)

最後に

 最後まで読んでいただきありがとうございます。初めての数学の記事ということもありうまく説明できているか不安な部分もあるので、間違いや誤植、質問等あれば言っていただけると助かります。(できるだけ対応します。)
 私はこの手法を理解して主客転倒の奥深さを感じました。この手法はOMCでは少し高度な典型だと思うのでぜひこの機会に習得してみてください。最後にOMCE004(B)を練習問題として置いておきます。 OMCE004(B)

投稿日:2024713
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