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階乗の逆数

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導入

非常にきれいな等式を見つけたので紹介します。
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{m}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots \left(n+m\right)}=\frac{1}{m!}~~(m\ge1)$$
例えば$m=1$とすれば、
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n\left(n+1\right)}=\left(1-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right)+\cdots=1$$
という高校数学でもよく知られた無限級数となります。今回はそれの一般化ということですね。
更にこの級数等式の素晴らしいところは、(導出時は全然別の方法で導出しましたが)高校数学の範囲のみで証明可能なところです。
さっそく証明していきましょう。

導出

数学的帰納法を用います。

\begin{align} &S_{m}=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{m}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots \left(n+m\right)} とする。S_{m}=\frac 1 {m!}であることを示す。 \newline \\ &m=1のとき、 \\ \\ &S_{1}=\sum_{n=1}^{\infty}\frac 1 {n(n+1)}= \lim_{N\rightarrow\infty}\sum_{n=1}^{N}\left(\frac 1 n -\frac 1 {n+1}\right)=\lim_{N\rightarrow\infty} \left( 1-\frac 1 {N+1}\right)=1=\frac 1 {1!} で成立。 \\ \\ &m=k(\ge1)のとき、 S_{k}=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{k}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots \left(n+k\right)}=\frac 1 {k!}が成立すると仮定する。 \\ \\ &S_{k+1}=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{k+1}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots \left(n+k+1\right)} \\ \\ &=\sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac {1} {n(n+1)(n+2)\cdots(n+k)}-\frac {1} {(n+1)(n+2)(n+3)\cdots(n+k+1)}\right) \\ \\ &=\sum_{n=1}^{\infty} \frac {1} {n(n+1)(n+2)\cdots(n+k)}-\sum_{n=1}^{\infty}\frac 1 {(n+1)(n+2)(n+3)\cdots(n+k+1)} \\ \\ &=S_{k}-\left(S_k-\frac 1 {1\cdot2\cdot3\cdots(k+1)}\right)=\frac 1 {(k+1)!} \\ \\ &よって、m=k+1の場合も成立するので、帰納的にS_{m}=\frac 1 {m!}である。 \\ \\ &(ただし、それぞれの無限和の収束性は自明のものとしている。) \end{align}

非常に簡明に証明できますね。何かに利用できるというわけではないですが、
大変綺麗な等式です。
この等式を少しいじることで、
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac 1 {\operatorname {_{n+m}C_{m}}}=\frac 1 {m-1}~~(m\ge2)$$
という二項係数の逆数和も得られます。実際には見つけた順番は逆ですが。

応用

せっかく見つけたこの式、何かに利用できないでしょうか。
階乗の逆数でまず考えつくのは$e^{x}$のマクローリン展開です。
$$e^{x}=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{x^{m}}{m!}$$
この式の$\displaystyle \frac 1 {m!}$に今回の等式を適用してみましょう。ただし、$m=0$の場合は除きます。
$$e^{x}=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{x^{m}}{m!}=1+\sum_{m=1}^{\infty}x^{m}\cdot\sum_{n=1}^{\infty}\frac{m}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots\left(n+m\right)}$$
総和記号を交換し、少し変形します。
$$\frac{e^{x}-1}{x}=\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{mx^{m-1}}{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots\left(n+m\right)}$$
両辺を$0< x<1$の範囲で積分します。
$$ \int_{0}^{1}\frac {e^{x}-1} {x}dx =\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1 }{n\left(n+1\right)\left(n+2\right)\cdots\left(n+m\right)}$$
こんな等式が得られました。あとは左辺の定積分を計算して、と行きたいところですが、
実際にはこの定積分は初等関数の範囲では表せません。
指数積分$\displaystyle \operatorname {E_i(x)}=\int_{-\infty}^{x}\frac {e^t} {t}dt$および、オイラーの定数$\displaystyle \gamma=\lim_{n\rightarrow\infty} \left( \sum_{k=1}^{n}\frac 1 k -\ln(n)\right)$を用いて、
$$\int_{0}^{1}\frac{e^{x}-1}{x}dx=\operatorname {Ei}\left(1\right)-\gamma=1.31790...$$と表すことができます。
以上。

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