みなさん、お久しぶりです。しんぎゅらです。本シリーズのpart1が出たのが2024年の12月で、私がまだ学部4年の時でしたが、月日は流れ修士2年になりました。時間が経つのは早いもので、学部1年生の頃を思い出そうとしても少し不鮮明なのです。
それもそのはず、なぜなら今から学部1年を思い出すのは、高校3年生が中学1年生のころを思い出そうとしてるのと同じだし、そこらへんの新入生が小学1年生の頃に私は小学6年生だったのですから!つまり、取り返しのつかない時間が過ぎていき、懐古・後悔する時間すら私を未来に進ませる時間になるのです。こわ。
今回はそんなモヤモヤを吹き飛ばす、いや、爆発させるトピックを話します。
※忙しい方は「ブローアップの具体例」からお読みください
数学科に入ればブローアップという言葉はめちゃめちゃ聞くかもしれません。特に最近亡くなられた廣中平祐さんのご研究なさっていたこともあまりにも有名です。
ブローアップを簡単に言えば特異点を無くす手法です。しかし、私のような特異点畑の人間にとっては無くす以上に重要な使い道もあったりするのです。
まずは射影空間の定義から
$\KK$を体とする。一般の体を考えることが多いが私の記事を通して$\KK=\RR, \CC$と思ってもらって良い。
$\KK^{n}\setminus \{0\}$に以下の同値関係を入れる
$x=(x_{1},\dots,x_{n}), y=(y_{1},\dots,y_{n})\in\KK^{n}\setminus \{0\}$について
$x\sim y\defa \exists \lambda\in\KK\setminus\{0\}$s.t.$x=\lambda y$
上の同値関係による$\KK^{n}\setminus \{0\}$の同値類全体を$\PP_{\KK}^{n-1}$と書き射影空間(projective space)という
また$\PP_{\KK}^{n-1}$の元を$[x_{1}:\cdots:x_{n}]$と表す。
位相空間論を習うときに重要な位相空間の例として扱われるでしょう。イメージのつかない方のために頑張って説明しようと思います!(簡単のため$n=3$で説明します)
定義通りに読めば、定数倍を同一視するベクトル全体の集まりなのです。つまり原点から各方向に向かっていく大きさ1のベクトル全体を考えましょう。そう!つまり球です!ただマイナス倍も考えるので反対側の点と同一視されるのです!
球だけど反対側も同一視
こちらを少しだけ同一視したものがこちらになります!
球が半分になった感じがします
さらに上の半球の縁(円周の部分です)を同一視しましょう!ただイメージが難しいのでちょっと考えてみましょう!
矢印同士をくっつける
上の2種類の矢印($\twoheadrightarrow$と$\rightarrow$)をそれぞれ同じ種類を同じ向きにくっつけましょう。便宜上半球を平面に押し潰して正方形と思いましょう。すると...
急な画力の向上!!??
こちらで説明したものは厳密には実射影平面$\PP_{\RR}^{2}$になりますが、ブローアップを理解するのは複素射影直線$\PP_{\CC}^{1}$で十分になります。
$\PP_{\CC}^{1}:=\{\left.[a:b] \right| a,b\in\CC, \text{ただし$(a,b)\neq(0,0)$}\}$
$(0,0)$以外の$(a,b)$は
(1) $a$は$0$でない
$(a,b)=a(1,\frac{b}{a})$ゆえ、$[a:b]=[1:\xi], (\xi\in\CC)$とできますね。つまり$a\neq0$であるところは$\CC$と同一視できます。同様に
(2) $a$は$0$でない
$(a,b)=b(\frac{a}{b},1)$ゆえ、$[a:b]=[\zeta:1], (\zeta\in\CC)$とでき、$\CC$と同じになります
$a,b$両方とも$0$でないときは何か?
上では$\xi:=\frac{b}{a}, \zeta=\frac{a}{b}$としていました。
すなわち$[\frac{1}{\xi}:1](=[1:\xi])=[a:b]=[\zeta:1]$から(1)の$\CC$と(2)の$\CC$を$\xi\zeta=1$で貼り合わせたものとなります。これは2枚の紙でボールを包んだような形になるはずです。
上の絵で線を結んだところを貼り付けたものが下の絵
射影までで少しくたびれてしまいそうですが、いよいよブローアップの定義です!
$Blo(\CC^{2}):=\{((x,y),[\xi,\zeta])\in\CC^{2}\times\PP_{\CC}^{1} | \zeta x-\xi y=0\}$をブローアップ集合(Blow up)という
このとき、自然な写像
$\pi : Blo(\CC^{2})\to\CC^{2};((x,y),[\xi,\zeta])\mapsto(x,y)$が得られる
この写像の引き戻し$\pi^{-1}$をブローアップともいう
一旦$\xi\neq0$で考えて、$\frac{\zeta}{\xi}$を改めて$\zeta$と置き直すと、\begin{align}
\left.Blo(\CC^{2})\right|_{\xi\neq0}&=\{((x,y),[1,\zeta])\in\CC^{2}\times\PP_{\CC}^{1} | \zeta x-y=0\}\\
&=\{((x,y),\zeta)\in\CC^{2}\times\CC | y=\zeta x\}
\end{align}
$\zeta$を固定するとただの原点を通る直線$y=\zeta x$になりますね。$\zeta$を動かせば、傾きの異なる直線たちが現れるはずです。
そう!つまりブローアップ集合というのは直線の傾きを高さに対応させた曲面と言えるでしょう!
ブローアップとその断面たち
ブローアップが見たい人はGeoGebra空間図形で"Surface$(s\cdot\cos(t),s\cdot \sin(t),t,t,-\frac{\pi}{2},s,-1,1)$"と入力することをお勧めします
この$\pi$は終域の原点以外で全単射になります!原点の引き戻しは$\pi^{-1}(0)=\{((0,0),[\xi,\zeta])\in\CC^{2}\times\PP_{\CC}^{1}\}\cong\PP_{\CC}^{1}$なので、複素射影直線になるのです。この引き戻しのことを例外集合(Exceptional curve)$E$だとか言います;$E:=\pi^{-1}(0)$
この例外集合が特異点解消の鍵になるのです
ブローアップ
原点を持ち上げて膨らませてる様子から"Blow up(吹き上げ)"だとか爆発と呼ばれているらしいです
先ほどまでずっとやっていたように$\PP_{\CC}^{1}=\CC\cup \CC$で分けてあげて考えましょう。
$U_{0}:=\{((x,y),[\xi, \zeta])\in Blo(\CC^{2}) | \xi\neq0\}=\{(x,y,\frac{\zeta}{\xi})\in \CC^{3} | \frac{\zeta}{\xi}x=y\}$
$U_{1}:=\{((x,y),[\xi, \zeta])\in Blo(\CC^{2}) | \zeta\neq0\}=\{(x,y,\frac{\xi}{\zeta})\in \CC^{3} | \frac{\xi}{\zeta}y=x\}$とすると、$U_{0}$の$y$って$\frac{\zeta}{\xi}$と$x$から計算できるんだったら、、、あれ?$y$っていらなくね?って思いませんか。思いますよね。思いましょう。
つまり!!
$U_{0}\cong\{(x,\frac{\zeta}{\xi})\in\CC^{2}\}=\CC^{2}$だし$U_{1}\cong\{(y,\frac{\xi}{\zeta})\in\CC^{2}\}=\CC^{2}$じゃん!!
確かにブローアップ集合って2次元でしたね!!(図6,7参照)
では続きを頑張りましょう
ブローアップ集合を分けた$\CC^{2}$をそれぞれ$\CC^{2}_{(s_{0},t_{0})}(\cong U_{0})$と$\CC^{2}_{(s_{1},t_{1})}(\cong U_{1})$と座標付きで表すとしましょう。
つまり、
\begin{cases}
s_{0}:=x\\
t_{0}:=\frac{\zeta}{\xi}\\
s_{1}:=y\\
t_{1}:=\frac{\xi}{\zeta}
\end{cases}
としたわけです。ここで$y=s_{0}t_{0}, x=s_{1}t_{1}$に注意!!
あまり記法としてよくないのはあるのですが、これ以上文字増やしたくないの気持ちで以下書きます。
$\pi:Blo(\CC^{2})\to\CC^{2}$という写像を各$U_{i}$制限して得られる
$\pi_{i}=\pi|_{U_{i}}:\CC^{2}_{(s_{i},t_{i})}\to\CC^{2}$
を考えます。実はもう特異点解消の準備は整いました!!
$f(x,y)\in\CC\{x,y\}$を原点に特異点を持つ正則関数としましょう。
$\pi$を$f$の右側から合成すれば
$f\circ\pi_{1}=f(s_{0},s_{0}t_{0})$となるはずです。だって$x=s_{0}$で$y=s_{0}t_{0}$なんだから!
$f\circ\pi_{i}$の式を整理して$s_{i}$を括り出してあげて残りを観察してあげると、なんと$f$の最低次数が落ちます!お忘れかもしれませんが、$f\in\m^{2}$であることと特異点であることは同値でした。つまり$f\notin\m^{2}$になるまで最低次数を下げ続ければ良いのです!
一方の括り出された$s_{i}$は$E=\pi^{-1}(0)$になります。例外集合は特異点を引き延ばしたものだと思って、考えないようにしましょう。
$f(x,y)=y^{2}-x^{3}$
$f\circ\pi_{1}=f(s_{0},s_{0}t_{0})=s_{0}^{2}(t_{0}^{2}-s_{0})$となります
また$f\circ\pi_{2}=f(s_{1}t_{1},s_{1})=s_{1}^{2}(1-s_{1}t_{1}^{3})$
赤い領域のカスプから持ち上げられて放物線できてる
↑を真横から見た図
もっとテキトーな計算で満足したければ
$x=s, y=st$とか$x=st,y=s$を入れ続けるだけの問題あげます。
$f(x,y)=x^{5}+y^{4}−2x^{3}y−2y^{3}$に
\begin{cases}
x=st\\
y=s
\end{cases}
を代入してみましょう。すると
$f(st,s)=s^{3}(s^{2}t^{5}+s-2st^{3}-2)$
すると$s^{2}t^{5}+s-2st^{3}-2=0$は原点を通らないから非特異!
もう一方もやった方がいいんだけど、ブローアップの気持ちだけ知りたい人はこれくらいで十分だと思う!!やっぱ嘘!やれ!!
ちなみにちゃんと頑張ると3回くらいブローアップするはず(一般に一回では終わらない)
ブローアップの様子
$f=y^2-x^2+x^3$に
\begin{cases}
x=s\\
y=st
\end{cases}
を代入してみましょう。
結節点
$f(s,st)=s^{2}(t^{2}-1+s)$
ブローアップの結果
元々の結節点の2重点は局所的に$y=\pm x$であるので、この傾きに対応する高さは$1, -1$になるので、ブローアップ後の例外集合(赤線)と放物線の交点は$t=1, -1$になるわけです。つまり、結節点で結ばれた(局所的には)2曲線はブローアップに持ち上げられた時に解かれてるっぽいです。
これは良い例
特異曲線$C\subset\CC^{2}$をブローアップして特異点を解消した非特異曲線$\overline{C}$について、$\pi|_{\overline{C}}:\overline{C}\to C$を考えます。
今$\overline{C}$は非特異なので適当な座標変換で$\CC$に直せます!(説明は省略します)
よって$\pi|_{\overline{C}}:\CC\to C$と思えるはずでこれってまさに$C$のパラメータを与えたことになります!詳しい話は以降の記事でピュイズー展開とともに説明しようと思います。