本記事では,河澄響矢著『トポロジーの基礎 上』(初版)で誤りと思われる点,およびその修正案を挙げます.また,(注意)として,誤りではないが注意が必要な箇所についても記述しました.一読者である私(ことり)が作成したものであるため,ミスがあるかもしれません.その場合の責任は全て作成者である私(ことり)にあります.
「向きを保つ」という用語の定義が見当たらなかったので,私の考えた定義をp.180,p.184,p.190の項目にそれぞれ載せています.
「l.-n」は,そのページの下からn行目を指します.
『トポロジーの基礎 上』 正誤表
p.19, l.-8
誤:(1.2.1)
正:(1.2.3)
p.39, l.-3
誤:
正:
p.46, l.5
「前半」と「後半」が逆.
p.50, l.-2
誤:
正:
p.52,l.10
誤:自己同型の全体はに等しい
正:自己同型の全体はに等しい
p.52,l.14
誤:「が定まる.」
正:「が定まる.の連続性との連結性,およびの連結成分はととからなることからが言える.以下ではと考える.」
p.66, l.8
誤:
正:
p.80, l.7, l.8
誤:
正:
p.81, l.-6
誤:
正:
p.82
可換図式中の2つの「」を「」に修正.
p.94
問題2.3.2 解答例中の の定義は ill-defined.実際であるにもかかわらず,ととは等しいとは限らない.
の定義を次のように修正する:
のとき ,
のとき .
これに伴って以降の式も次のように修正する(の定め方は一意ではない):
,.
.
.
.
p.104, l.-2
誤:
正:
p.105,l.5のの中も同様.
p.105, l.2
誤:
正:
p.105,l.-1
誤:
正:
なおを定義する文の中で,記号は定理2.4.12および補題2.4.13のものを引き継いでいる.特にとしている.
p.109, l.2
誤:
正:
p.119, l.8
誤:
正:
p.121, l.11
誤:の閉集合であり
正:の開集合であり
p.121, l.11
誤:
正:
p.121, l.-4
誤:
正:
p.128, l.-10, l.-9
(注意) とは, のこと.
p.130, l.-13
誤:
正:
p.140, l.-8
(注意) の中の は,(一点集合ではなく)族 のこと.
p.144, l.-10
誤:
正:
( の定義がないため)
p.146, l.2
(注意) などは,p.150に定義される交換子.
p.147
問題3.2.3(1)の解答例中での定義がない. とする.
p.151, l.12
誤:一点 から
正:一点 から
p.153, l.-11
誤:
正:
p.153, l.-9
「」から始まる式の各辺中で, と が逆.また,右辺の は が正しい.
p.153, l.-7
誤:
正:
p.169, l.4
両辺の「」を削除.
p.173, l.-3
誤:
正:
p.174, l.2
誤:
正:
p.180
(注意)局所的写像度の定義のあとに次の文言があってもいいかもしれない:
p.184
(注意)局所写像度の定義のあとに次の文言があってもいいかもしれない:
例えば p.233, l.5の「向きを保つ」はこの意味である.
p.185, l.12
(注意) の定義がないが, などと同様, も単なる包含写像 である.(p.234を参照してほしい.)
p.190
(注意)局所的向きの定義のあとに次の文言があってもいいかもしれない(「向きを保つ」という用語の定義):
は向きつけられた次元位相多様体とする.は連続写像,とする.はで局所同相的(p.179)とする.はにおけるの開近傍,はにおけるの開近傍とし,の制限は同相であるとする.このとき,同型によるの像がのとき,はにおいて向きを保つという.
例えばp.251, l.7の「向きを保つ」はこの意味である.
p.191, l.1
(注意)とは,p.180で定義されたものである.p.184で定義されたものとは似ているが異なる.補題4.2.15の「いまの状況」には定理4.2.14の仮定も含んでいると解釈するといい.
p.193, l.12
誤:
正:
p.193, l.13
誤:
正:
p.194, l.1
(注意)を導くのは以下のようにすればよい.本の議論を少し修正する:
p.200, l.-2
誤:管状近傍をもつ
正:管状近傍をもつ
(次の文での定義がないため)
p.205, l.-11
誤:
正:
p.208, l.1
誤:
正:
p.208, l.3
誤:
正:
p.219, l.-2
誤:のとき
正:のとき
p.221, l.13
誤:自由基
正:自由基底
p.225
(注意)証明中のを示す部分に出てくるは,とおいたうえで,証明前半(p.224)のように定めたである.
p.225, l.-13
誤:
正:
p.226
補題4.4.8の証明中で,全ての「」を「」に修正し,全ての「」を「」に修正する.
p.227, l.-12
(注意)「」とあるが,「あるを用いてと書ける」とした方が適切かもしれない.もちろんたちの特性写像を適切に修正することで,たちの符号を揃えることはできる.
p.228, l.7
(注意)「」で始まる等式中のはただの変数である.
p.230, l.8
誤:
正:
p.230, l.9
誤:
正:
p.231,l.-10
ここに書かれている境界付き位相多様体の向き付け可能性の定義では,次元多様体が向き付け不可能になってしまうため,境界付き多様体の次元がの場合については定義を修正する必要がある.p.230で座標近傍を定義する際に,の場合はの代わりに閉区間を用いるとよいか.
著者からいただいたコメントを付しておく:
修正方法はいろいろありえます。
p.232
補題4.5.2証明中のはill-defined.実際,例えばのとき,はの元でない.を閉直方体とするか,に原点を中心とする縮小写像を合成することで修正できる.
p.233
ページ中央の可換図式で,1番右の縦の射をとする.(連続写像が定義されるとは限らないため,はここには書けない.)また,右から2つ目の縦の射も括弧をつけてとする.
上記に対して著者からいただいたコメントを付しておく:
右から2つ目はそのとおりで、未修正です。
一方、一番右は切除同型を介して が定義できています。
私(ことり)としては本の1番右の縦の射はやっぱりとした上で,本の可換図式の右端に次の図式を書き加えるのがよいと思うのだがどうだろう:
(ただし,包含でに写るの元のこともと書いている.横の射は2本とも切除同型)
p.237, l.-11
(注意)とは,上に書かれている同型のこと.
p.237, l.-10
誤:
正:
p.237, l.-6
誤:(3-2)
正:(3-1)
p.240,
l.-12からl.-8までのを全てに変更.
p.241, l.2
誤:
正:
p.242, l.6
, の定義がない.次のように定義する(l.12も参照):
p.242, l.-5
誤:
正:
(p.243, l.1, l.-9も同じ)
p.242, l.-3
誤:
正:
(p.243, l.2, l.-5も同様)
p.243, l.11
誤:
正:
p.248, l.3
誤:
正:
p.248, l.-7
(注意)(d)または((b)かつ境界が空でない場合)にとなることは次のようにしてわかる:
p.231で見たようにはとホモトピー同値であり,はコンパクトでないことから(a)に帰着できる.
p.249, l.-6
(注意)の定義は,以下のようにした方がより正確:
p.250
(注意)補題4.5.16のは定理4.5.13の条件を満たすとする.
p.250, l.7
(注意)「境界のホモロジー的に誘導された向きに関する正の生成元」という表現が私には難しいと感じたので,メモを残しておく.(正確性に欠けるかもしれない.)
結論から言うと,「境界のホモロジー的に誘導された向きに関する正の生成元」とは,要するにのことである.少し説明しよう.
がアトラスにより向き付けられているとする.このアトラスを境界に制限したもの(と書くことにする)は,のアトラスになり,を向き付ける(p.233参照).について,の(における)座標近傍を1つとったときに,がの定義である(p.189参照).なおに対してのの定義はp.183にある.
さて,p.233, l.-7以降を見てほしい.このが,からに幾何的に誘導された(における)向きである.ホモロジー的に誘導された向きは,の次元が偶数のときは幾何的に誘導された向きと同一,奇数のときは逆,と定義されているので,これにをかけたものが,そうである.つまり,からにホモロジー的に誘導された(における)向きは,である,ということになる.
(「正の生成元」という言葉は,今注目している生成元(ここでは)に一致するものを正の生成元と呼んでいるだけである.)
p.253, l.4
(注意)「およびをおよびの部分多様体とみなす」とは,をの部分多様体とみなし,をの部分多様体とみなす,という意味である.
p.253, l.-8
誤:
正:
p.253, l.-7
誤:の望む連続な拡張
正:の望む連続な拡張
p.254, l.-9
誤:
正:
p.257,l.-5
の定義がない.とする.
p.258, l.1
このはill-defined.実際,だが,というものは定義されない.次のように定義を修正する:
p.258, l.4
誤:
正:
もしおかしなところがあれば,教えていただければと思います.よろしくお願いします.また,この正誤表には,私以外の方が見つけた誤りもいくつか含んでいます.見つけてくださった方には感謝申し上げます.ありがとうございました.
(編集ログ)
(2024/2/26)出版社に誤りの報告を行なったところ,担当の方を介して著者から各項目に対してコメントをいただきました.それに基づいて,いくつかの項目を修正をしました.特に,p.222,l.-5の項目については,私の勘違いで,本の通りで正しかったため,項目を削除しました.
なおこの正誤表は,初版に対するものであり,第2刷(以降)ですでに修正されているものも含んでいます.