左辺は三角数$ \frac{n(n+1)}{2}$の極限なので+∞であり、右辺は負数であるので明らかに誤った等式。
しかしこれは、一説にはオイラーが考えた公式と言われ、数学や物理学の深いところの事実や現象に出現して、ある種の正当化も与えることができるそうだ。詳細はWikipediaやNHKの笑わない数学の公式サイト参照。
[Link]「
1+2+3+4+… - Wikipedia
」
[Link]「
1 + 2 + 3 + 4 + ⋯ - Wikipedia
」
NHKのTV番組「笑わない数学」でもテーマとして取り上げられて、2023/11/29に放送された。
[Link]「
数学ノート 1+2+3+4+…=-1/12(シーズン2) - 笑わない数学 - NHK
」
また「笑わない数学」の書籍版3巻(2025年9月5日発売予定)にもこのテーマが収録されるという。群論や環論、その他数学のとてもわかりやすい動画を世に送り出されつづけられている龍孫江さんの担当だそうである。他のテーマも含めてとても楽しみである。
→
https://x.com/ron1827/status/1944973207918030973
KADOKAWA学習参考書編集部のツイート→
収録テーマはコレだーー🫵
— KADOKAWA学習参考書編集部(高校学参中心) (@kadokawagakusan) July 15, 2025
 ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
🟢非ユークリッド幾何学
🟡結び目理論
🩷「P対NP」問題
🔵1+2+3+4+…=-1/12
🟤abc予想そして、笑わない数学1巻から3巻で扱った出来事を年表にまとめて「数学史」をおまけとして収録💡
こうご期待⭐️@kiguro_masanao @ONEWAN @ron1827 pic.twitter.com/BYHM01HmCS
この式にまつわる上記リンクに載っていないさらなる深い話はそちらの本を楽しみにすることにして、この等式は間違っているけど全く支離滅裂ではないわけなので、「簡単に納得できる」方法は無いのかを改めて考えてみた。
実は、「笑わない数学」のそのテーマの放送回の予告を見た時にも
導出を考えみた
が、その時のは高校の数学で習う事を使っていたので、それも使わないでできないか思い改めて考えてみた。
間違った等式なので、正しい意味での導出は不可能で、間違った式の「導出」なんていかようにもできるが、頭の体操としてできるだけ直観的で一見成り立ってそうな初等的な計算(四則演算)で導出できないかを考えてみた。
振動する無限級数で、無限にある項の順番を変えている等式は正確には間違いである。
有名な誤ってるが興味深い等式
$1+2+3+ \cdots = -\frac{1}{12} $
\begin{align} &1+2+3+ \cdots \\ &=\frac{3}{3}(1+2+3+ \cdots ) \\ &=-\frac{1-4}{3}(1+2+3+ \cdots ) \\ &=-\frac{1}{3}\{(1+2+3+ \cdots )-4(1+2+3+ \cdots )\} \\ &=-\frac{1}{3}\{(1+2+3+ \cdots )-2(2+4+6+ \cdots )\} \\ &=-\frac{1}{3}(1-2+3-4+5-6+ \cdots ) \\ &=-\frac{1}{3}\{1-(1+1)+(1+1+1)-(1+1+1+1)+ \cdots \} \\ &=-\frac{1}{3}\{(1-1+1-1+1- \cdots )+(0-1+1-1+1- \cdots )+(0+0+1-1+1-1+ \cdots )+ \cdots \} \\ &=-\frac{1}{3}\{(1-1+1-1+1- \cdots )-(1-1+1-1+1- \cdots )+(1-1+1-1+1- \cdots )+ \cdots \} \\ &=-\frac{1}{3}(1-1+1-1+1- \cdots )^{2} \\ &=-\frac{1}{3}\left({\frac{1-1+1-1+1- \cdots }{1}}\right)^{2} \\ &=-\frac{1}{3}\left\{{\frac{1-1+1-1+1- \cdots }{(1-1+1-1+1- \cdots )+(0+1-1+1-1+1- \cdots )}}\right\}^{2} \\ &=-\frac{1}{3}\left({\frac{1}{2}}\right)^{2} \\ &=-\frac{1}{3}{\frac{1}{4}} \\ &=-\frac{1}{12} \qquad ∎ \end{align}
上述の正しくない式変形でも、各式変形の「変形している理由」があるのでそれを説明する。
\begin{align}
&=-\frac{1}{3}\{(1+2+3+ \cdots )-2(2+4+6+ \cdots )\} \\
&=-\frac{1}{3}(1-2+3-4+5-6+ \cdots ) \\
\end{align}
自然数の和から偶数を2回引いて下の式になる。
\begin{align}
&=-\frac{1}{3}\{1-(1+1)+(1+1+1)-(1+1+1+1)+ \cdots \} \\
&=-\frac{1}{3}\{(1-1+1-1+1- \cdots )+(0-1+1-1+1- \cdots )+(0+0+1-1+1-1+ \cdots )+ \cdots \} \\
\end{align}
上の式の外括弧の中身は以下の表の
各列ごとの総和の各列に渡る和と見なして、それが
各行ごとの総和の各行に渡る和と等しいとして、下の式としている。
| 1項 | 2項 | 3項 | 4項 | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | -1 | 1 | -1 | $\cdots$ |
| 0 | -1 | 1 | -1 | $\cdots$ |
| 0 | 0 | 1 | -1 | $\cdots$ |
| 0 | 0 | 0 | -1 | $\cdots$ |
| $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\ddots$ |
\begin{align}
&=-\frac{1}{3}\{(1-1+1-1+1- \cdots )-(1-1+1-1+1- \cdots )+(1-1+1-1+1- \cdots )+ \cdots \} \\
&=-\frac{1}{3}(1-1+1-1+1- \cdots )^{2} \\
\end{align}
どの項も同じ$1$の無限交代和で、それの交代和になっているので、「因数分解」をして、$1$の無限交代和の二乗として、下の式になる。(逆に下の式を展開して上の式とも考えられる)
\begin{align}
&=-\frac{1}{3}\left({\frac{1-1+1-1+1- \cdots }{1}}\right)^{2} \\
&=-\frac{1}{3}\left\{{\frac{1-1+1-1+1- \cdots }{(1-1+1-1+1- \cdots )+(0+1-1+1-1+1- \cdots )}}\right\}^{2} \\
\end{align}
分母について、
\begin{align}
&1=1+0+0+0+0+0 \cdots \\
&=(1-1+1-1+1-\cdots )+(0+1-1+1-1+\cdots )
\end{align}
を使って、下の式となる。
\begin{align}
&=-\frac{1}{3}\left\{{\frac{1-1+1-1+1- \cdots }{(1-1+1-1+1- \cdots )+(0+1-1+1-1+1- \cdots )}}\right\}^{2} \\
&=-\frac{1}{3}\left({\frac{1}{2}}\right)^{2} \\
\end{align}
$X:=1-1+1-1+1- \cdots $とするとき、括弧の中身は
\begin{align}
\frac{X}{X+X}=\frac{1}{2}
\end{align}
となる。
数学の証明は、論理に従って真である命題をつなげていくことで完成させるもので、定理(やそれに出てくる公式)は真の命題が原則である。
しかし、実際には、この公式のように、正しくないが「何か理由がある」「事実と何かつながっている」物も話題になったり、考察の対象になる。真の命題だけの世界では、発見されない概念や事実の発見や新たな世界への第一歩かもしれない。夢は膨らむ。
この不思議で有名な「等式」の自分なりに考えた「導出」を紹介した。
より「簡単な」導出を考えてみるのもまた数学ファンの楽しみの一つと言えるかもしれない。