単振動と円運動は, 高校物理の力学において, ニュートンの運動の法則を学んだ後に出てくる単元であり, 高校生が扱う運動の中では, 発展的な現象である.
発展的とはいえ, 他の力学現象と同様に, ニュートンの運動の法則を基に説明される. ここでは, 単振動や円運動をスムーズに導入するための方法論をまとめる.
従来の検定教科書では,
であった. しかし, これには以下の問題点がある.
(a) 何を以って, 単振動と言えるのか(単振動の定義)が理解しにくくなる.
(b) 単振動に限らず, 全ての運動はニュートンの運動の法則を基に説明されるという, 力学で最も重要なことが伝わらない
(c) 単振動の問題を解くたびに, 円運動から解こうとする(回りくどい解き方をしてしまう)
そこで, 私は以下の2つの考えを支持する.
まずは, 単振動の定義である.
物体$m$の運動方程式が, 次の形で表されるとき,
$$ ma = kx \qquad \text{(右辺がxの一次関数)}$$
$m$の運動を, 単振動という. ただし, $a, k, x$はそれぞれ加速度, ばね定数, 自然長からの伸びである.
すなわち, 運動方程式の右辺がxの一次関数である場合, そのような運動はすべて単振動である.
例えば,
$$ma=\frac{k_1}{k_2}(x-d)$$
のようなとき, 右辺はxの一次関数なので, これも単振動である.
実際に, $K=\frac{k_1}{k_2}, X=x-d$とおくと,
$$ma=KX$$
となって, 定義式と同じ形となる.
これをもって, (a), (b)の問題点は解消される.
次に, 円運動を見ていく.
高校物理において, 円運動は, 他の運動と比べて特殊である.
その他の運動は, 運動方程式を解くか, あるいはその形から, 物体の軌道(軌跡)が決定する. それに対し, 円運動では, 運動方程式を解く前に軌道が決まる. というよりも, 物体が円軌道であることを以って, 物体が円運動していると判断する.
物体$m$の軌道(軌跡)が円を描くとき, $m$の運動を円運動という.
単振動は, 運動方程式の右辺がxの一次関数であることから判断され, これを解くことで軌道が決定する. しかし, 円運動は$m$の軌道が円を描くと判断されてから, 運動方程式が立式される.