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整数問題における有理数の整数条件

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はじめに

ごきげんよう、みなさま。
まずはご覧くださりありがとうございます。
有理数とは、整数 $a,b$$b\ne0$ を用いて $a/b$ と表せる数です。本記事で扱うのは、整数問題に現れる次のような条件です。
$$ \frac{P(n)}{Q(n)}\in\mathbb Z $$
ここで、$\mathbb Z$ は整数全体を表します。また、$P(n),Q(n)$ は整数 $n$ に対して整数値を取り、分母については $Q(n)\ne0$ とします。
また、
$$ \frac1a+\frac1b+\frac1c\in\mathbb Z $$
のように、複数の分数の和が整数になる条件も扱います。
一方、
$$ \frac1a+\frac1b+\frac1c=\frac1n $$
のように、有理数同士が等しいというだけの方程式は本記事の主題ではありません。
分数が整数になる条件の出発点は、驚くほど単純です。

分数が整数であることと、分母が分子を割り切ることは同じである。
本記事では、まずこの根本原理を確認し、そこから実戦で使う性質を一つずつ導きます。その後、各性質を例題で使い、最後に初見の問題へ持ち込める一つの解法フローチャートへまとめます。
最初から完成した攻略法を暗記するのではありません。単純な原理から順に進むうちに、攻略法が自然に組み上がることを目指します。

この記事の流れ

  • 第1部 根本原理
  • 第2部 根本原理から広がる性質
  • 第3部 性質を問題の中で使う
  • 第4部 ここまでの方法を統一する視点
  • 第5部 解法フローチャート
  • 第6部 実践編
  • おわりに

第1部 根本原理

1 「分数が整数」を整除条件で言い換える

整数 $a,b$ について、$b\ne0$ とします。

根本原理

$$ \frac ab\in\mathbb Z \quad\Longleftrightarrow\quad b\mid a $$

$b\mid a$ は「$b$$a$ を割り切る」、すなわち、ある整数 $k$ を用いて $a=bk$ と表せることを意味します。

証明

実際、$a/b$ が整数なら、その整数を $k$ とおくことで $a=bk$ となります。逆に、$a=bk$ となる整数 $k$ があれば、$a/b=k$ は整数です。

したがって、
$$ \frac{P(n)}{Q(n)}\in\mathbb Z $$
という条件は、$Q(n)\ne0$ のもとで、
$$ Q(n)\mid P(n) $$
と完全に言い換えられます。
ここでの矢印は両向きです。元の整数条件と整除条件は同値であり、情報は失われていません。

2 整数であることから分かる大きさ

整数 $a,b$ について、$b\ne0$ とします。

大きさの必要条件

$$ \frac ab\in\mathbb Z,\quad a\ne0 \quad\Longrightarrow\quad |a|\geqq|b| $$
特に、
$$ 0<|a|<|b| \quad\Longrightarrow\quad \frac ab\notin\mathbb Z $$

証明

$a/b=k$ とおけば、$k$$0$ でない整数なので $|k|\geqq1$ です。よって、
$$ |a|=|k||b|\geqq|b| $$
となります。

分母や分子の符号が分からないときは、勝手に正だと決めず、絶対値で比較します。また、$a=0$ なら $a/b=0$ は整数なので、$0<|a|$ という条件を落としてはいけません。
なお、
$$ |a|\geqq|b| $$
は必要条件にすぎません。たとえば $3/2$ はこの大小関係を満たしますが、整数ではありません。

3 同値条件と必要条件を区別する

この記事では、途中で得た条件が元の条件と同値なのか、必要条件だけなのかを区別します。

条件を弱めたら最後に確認する
  • $X\Longleftrightarrow Y$$X$$Y$ は同値であり、どちらからも他方が従う。
  • $X\Longrightarrow Y$$Y$$X$ の必要条件だが、$Y$ だけでは $X$ が従うとは限らない。
    同値変形だけで最後まで進んだなら、すべての候補を元の式へ機械的に代入し直す必要はありません。一方、途中で必要条件だけを取り出したなら、最後に残った候補が元の条件を満たすか確認しなければなりません。

この「どこで情報を弱めたか」を意識することが、候補の取りすぎと確認漏れを防ぎます。


第2部 根本原理から広がる性質

ここから扱う性質は、互いに無関係な裏技ではありません。第1部の整数条件を出発点として、整除・大小・互いに素など、整数の基本的な性質を組み合わせることで得られます。

1 整数値を狭い区間へ追い込む

狭い区間にある整数値

$f(n)$ が整数で、
$$ |f(n)|<1 $$
ならば、
$$ f(n)=0 $$
です。$-1$ より大きく $1$ より小さい整数は $0$ しかないからです。

これは、整数条件を使った大小評価の最も基本的な形です。より一般に、$f(n)$ がある狭い区間に入れば、その区間に含まれる整数だけを調べればよくなります。たとえば、
$$ 3< f(n)<5, \qquad f(n)\in\mathbb Z $$
ならば $f(n)=4$ です。また、
$$ 7\leqq f(n)<10, \qquad f(n)\in\mathbb Z $$
ならば、$f(n)$ の候補は $7,8,9$ の三つです。
整数値を必ず $0$ にする必要はありません。整数を少数しか含まない区間まで狭めれば十分です。

2 分母の倍数を引いて余りを見る

整数 $A,B,Q$ について、$B\ne0$ とします。このとき、

分母の倍数を引いても整除条件は変わらない

$$ B\mid A \quad\Longleftrightarrow\quad B\mid(A-QB) $$
また、$A=QB+R$ と書けるなら、
$$ \frac AB\in\mathbb Z \quad\Longleftrightarrow\quad \frac RB\in\mathbb Z $$
です。

証明

$B\mid A$ なら、$B$$A$$QB$ の両方を割り切るので、その差 $A-QB$ も割り切ります。逆向きも、$A=(A-QB)+QB$ と戻せば同様です。

分子全体ではなく、分母で割った余りだけを見てよいのです。
多項式でも同じです。整数係数多項式 $P(n),Q(n),S(n),R(n)$
$$ P(n)=Q(n)S(n)+R(n) $$
を満たし、$Q(n)\ne0$ なら、$S(n)$ は整数なので、
$$ \frac{P(n)}{Q(n)} =S(n)+\frac{R(n)}{Q(n)} $$
の整数性は $R(n)/Q(n)$ の整数性と同値です。

注意 外す商は整数値を取る必要がある

ただし、外す商が整数値を取ることは必要です。商の係数が分数で、整数 $n$ に対して整数になる保証がない場合は、その商を勝手に「整数部分」として外せません。

3 固定された整数の約数へ落とす

固定された整数の約数条件

整数値を取る式 $D(n)$ が、固定された $0$ でない整数 $C$ を割り切るとします。
$$ D(n)\mid C, \qquad C\ne0 $$
このとき $D(n)$ の値は、$C$ の正または負の約数に限られます。したがって、$D(n)$ の候補は有限個です。

$D(n)$ が非定数の多項式なら、各約数 $d$ に対する方程式 $D(n)=d$ の整数解も有限個です。一方、$D(n)$ の値だけが有限個になっても、求める文字がまだ自由に残る場合は、さらに条件を使う必要があります。
たとえば、
$$ D(n)\mid6 $$
ならば、
$$ D(n)=\pm1,\pm2,\pm3,\pm6 $$
のいずれかです。

注意 固定整数が0の場合

$C\ne0$ は重要です。$D(n)\mid0$ は、$D(n)\ne0$ なら常に成り立つので、$D(n)$ の候補を絞れません。

4 分母全体ではなく、一つの因数だけを見る

分母の一因数から得られる必要条件

整数 $A,B,N$ について $AB\ne0$ とします。
$$ AB\mid N $$
ならば、
$$ A\mid N, \qquad B\mid N $$
です。

したがって、一つの分数
$$ \frac{N}{AB} $$
が整数なら、分母の一因数 $A$ だけを取り出して $A\mid N$ を使えます。$A$$B$ が互いに素である必要はありません。
ただし、これは一般に必要条件だけです。たとえば、$A=B=N=2$ なら $A\mid N$$B\mid N$ はともに成り立ちますが、$AB=4$$N=2$ を割り切りません。
一因数だけを見て候補を絞った場合は、最後に分母全体へ戻って確認します。

5 互いに素な分母なら整数性を分離できる

正の整数 $a,b$ の最大公約数が $1$ であるとき、$a,b$互いに素であるといいます。以下、最大公約数を $(a,b)$ と表します。

互いに素な分母への分離

整数 $A,B$ と互いに素な正の整数 $a,b$ に対して、
$$ \frac Aa+\frac Bb\in\mathbb Z \quad\Longleftrightarrow\quad \frac Aa\in\mathbb Z, \quad \frac Bb\in\mathbb Z $$
が成り立ちます。

証明

実際、ある整数 $k$ を用いて
$$ \frac Aa+\frac Bb=k $$
と書けば、
$$ Ab+Ba=kab $$
です。よって $a\mid Ab$ です。$A=0$ なら $a\mid A$ は明らかです。$A\ne0$ なら、$(a,b)=1$ と素因数分解の一意性から $a\mid A$ が従います。同様に $b\mid B$ です。逆向きは、二つの整数の和が整数であることから明らかです。

分母が負なら符号を分子へ移せばよいので、分母の絶対値同士が互いに素なら同じ結論を使えます。

3項以上の場合

また、分母 $a_1,a_2,\ldots,a_r$ がどの二つを取っても互いに素なら、
$$ \frac{A_1}{a_1}+\frac{A_2}{a_2}+\cdots+\frac{A_r}{a_r}\in\mathbb Z $$
であることと、各 $A_i/a_i$ が整数であることは同値です。
実際、分数の和を整数 $k$ とおき、$L=a_1a_2\cdots a_r$ として等式の両辺に $L$ を掛けます。ある $a_i$ だけに注目すると、
$$ a_i\mid A_i\frac{L}{a_i} $$
を得ます。$a_i$$L/a_i$ は互いに素なので、$a_i\mid A_i$ が従います。

注意 互いに素という条件は必要

互いに素という条件は欠かせません。実際、
$$ \frac12+\frac12=1 $$
ですが、各項は整数ではありません。

ここで、前節との違いを確認します。

一因数を見る方法と分離は別の性質
  • 一つの分数 $N/(ab)$ が整数なら $a\mid N$$a,b$ が互いに素でなくても使える必要条件。
  • $A/a+B/b$ が整数なら各項も整数:原則として $(a,b)=1$ が必要な同値条件。
    見た目は似ていますが、別の性質です。

6 最大公約数は和や差で調べる

最大公約数と差

整数 $u,v,k$ について、$u,v$ は同時には $0$ でないとします。このとき、
$$ (u,v)=(u,v-ku) $$
です。

証明

$u$$v$ の公約数は $v-ku$ も割り切ります。逆に、$u$$v-ku$ の公約数は $v=(v-ku)+ku$ も割り切ります。

これは、二数の最大公約数を調べるときの基本操作です。
たとえば、$2n+3$$n+1$ の公約数は、
$$ (2n+3)-2(n+1)=1 $$
も割り切ります。よって、$2n+3$$n+1$ は常に互いに素です。
一方、$2n+1$$n+2$ では、
$$ (2n+1)-2(n+2)=-3 $$
なので、最大公約数は $1$ または $3$ です。この二数を常に互いに素だと決めつけることはできません。


第3部 性質を問題の中で使う

ここまでは、根本原理を出発点として使う性質を整理しました。ここからは、実際の式を見たときに、どのような目的で変形を選ぶのかを例題で確認します。
各例題は「問題→解答→解説」の順です。解答には答案として必要な論理だけを置き、方針を選んだ理由は解説で説明します。

1 大きさから候補を狭める

例題1

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{n+5}{n^2-3n+5} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ n^2-3n+5=\left(n-\frac32\right)^2+\frac{11}{4}>0 $$
である。
$n\geqq5$ のとき、
$$ (n^2-3n+5)-(n+5)=n(n-4)>0 $$
より、
$$ 0<\frac{n+5}{n^2-3n+5}<1 $$
である。したがって、この範囲では与えられた分数は整数ではない。
$n=1,2,3,4$ のとき、与えられた分数の値はそれぞれ
$$ 2,\quad\frac73,\quad\frac85,\quad1 $$
である。
よって、
$$ \boxed{n=1,4} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分子は一次式、分母は二次式なので、大きい $n$ では分母の方が大きくなります。その予想を、分母から分子を引いた $n(n-4)$ の符号で証明しています。
$n\geqq5$ をまとめて除けば、残るのは $n=1,2,3,4$ だけです。大きさを使う目的は、すべての $n$ を順に調べることではなく、大きな範囲を一度に除くことにあります。

多変数では一文字ずつ絞る

正の整数 $a,b,c$ に関する対称な式なら、
$$ a\leqq b\leqq c $$
としてよい場合があります。たとえば、
$$ \frac1a+\frac1b+\frac1c\leqq\frac3a $$
です。この和が正の整数なら、その値は $1$ 以上なので $1\leqq3/a$、すなわち $a\leqq3$ です。その後、$a$ を固定して $b$、最後に $c$ を絞ります。
多変数の問題でも、すべての文字を一度に決める必要はありません。対称性で順序を置き、一文字ずつ同じ大小評価を使います。

2 多項式の割り算で定数の余りへ移す

例題2

整数 $n$ で、
$$ \frac{n^2+3n+5}{n+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。ただし、$n\ne-1$ とする。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ n^2+3n+5=(n+2)(n+1)+3 $$
より、
$$ \frac{n^2+3n+5}{n+1}=n+2+\frac3{n+1} $$
である。したがって、与えられた分数が整数であることと、$n+1\mid3$ は同値である。
よって、
$$ n+1=\pm1,\pm3 $$
であり、
$$ \boxed{n=-4,-2,0,2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
大きな二次式を直接扱わず、分母の倍数 $(n+2)(n+1)$ を引いて、余り $3$ へ移しています。これで $n+1$ の値は $3$ の正負の約数に限られます。
ここでは、最初から最後まで同値変形です。そのため、得た四つを元の分数へ代入し直す必要はありません。

3 合同式は「余りを見る」を短く書く記法

整数 $X,Y,M$ について $M\ne0$ とします。
$$ X\equiv Y\pmod M $$
とは、$M\mid(X-Y)$ であることを表します。この $M$といいます。
たとえば、
$$ n\equiv-1\pmod{n+1} $$
は、$n-(-1)=n+1$ が法 $n+1$ の倍数であることを表します。例題2で分母の倍数を引いた操作を、短く書いただけです。
整数係数多項式 $P(n)$ について、$n+c\ne0$ なら、
$$ n\equiv-c\pmod{n+c} $$
から、
$$ P(n)\equiv P(-c)\pmod{n+c} $$
とできます。加法・減法・乗法を繰り返して作られた式では、合同な数へ置き換えてよいからです。
一方、$2^n$$n!$、根号、分数を含む式では、同じ置換を自動的に使えるとは限りません。

注意 法が一次式でも安易に割らない

また、$a\ne0$ かつ $an+b\ne0$ とし、法が $an+b$ のとき、
$$ n\equiv-\frac ba\pmod{an+b} $$
と安易に書いてはいけません。安全に使えるのは、
$$ an\equiv-b\pmod{an+b} $$
です。たとえば、$an+b$$un+v$ を割り切るなら、
$$ a(un+v)-u(an+b)=av-bu $$
より、$an+b$ は固定整数 $av-bu$ を割り切ります。分数を導入せず、整数倍した式の差で $n$ を消しています。

合同式は新しい原理ではありません。分母の倍数を引き、余りへ移す整除処理の記法です。

4 一度で定数にならなければ、もう一段加工する

例題3

整数 $n$ で、
$$ \frac{n^3+2n+1}{n^2+n+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ D=n^2+n+1 $$
とおくと、
$$ D=\left(n+\frac12\right)^2+\frac34>0 $$
であり、
$$ n^3+2n+1=(n-1)D+2(n+1) $$
である。よって、与えられた分数が整数であることと、$D\mid2(n+1)$ は同値である。
このとき、$D\mid2n(n+1)$ であり、また $D\mid2D$ であるから、
$$ D\mid\{2D-2n(n+1)\}=2 $$
となる。したがって、
$$ D=1,2 $$
である。
$D=1$ から $n(n+1)=0$ となり、$n=-1,0$ を得る。
$D=2$ なら $n(n+1)=1$ となるが、連続する二整数の積は偶数なので不可能である。
$n=-1,0$ では $D=1$ なので、$D\mid2(n+1)$ も成り立つ。
よって、
$$ \boxed{n=-1,0} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
最初の割り算では、余りが $2(n+1)$ となり、まだ $n$ が残ります。そこで処理を止めず、$D$ が割り切る式を整数倍し、$D$ 自身の倍数との差を取っています。
目的は、右辺から $n$ を消して固定整数 $2$ を作ることです。「余りへ移す」「整数倍する」「差を取る」は別々の裏技ではなく、同じ整除条件をさらに簡単にする連続した操作です。

5 平方完成と置換で、次の変数消去を準備する

例題4

整数 $n$ で、
$$ \frac{n^3-3n+5}{n^2+2n-1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
整数 $n$ に対して $(n+1)^2\ne2$ なので、$n^2+2n-1=(n+1)^2-2\ne0$ である。また、
$$ n^3-3n+5=(n-2)(n^2+2n-1)+(2n+3) $$
である。
$x=n+1$ とおくと、与えられた分数が整数であることと、
$$ x^2-2\mid2x+1 $$
は同値である。
このとき、$x^2-2$
$$ (2x+1)(2x-1)=4x^2-1 $$
$4(x^2-2)$ を割り切るので、
$$ x^2-2\mid\{(4x^2-1)-4(x^2-2)\}=7 $$
となる。よって、
$$ x^2-2=\pm1,\pm7 $$
であり、整数 $x$ の候補は
$$ x=-3,-1,1,3 $$
である。
これらについて、
$$ \begin{array}{c|cccc} x&-3&-1&1&3\\ \hline \dfrac{2x+1}{x^2-2}&-\dfrac57&1&-3&1 \end{array} $$
となる。したがって、$x=-1,1,3$ であり、
$$ \boxed{n=-2,0,2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
多項式の割り算をしても、余り $2n+3$ には文字が残ります。分母を平方完成し、$x=n+1$ と平行移動すると、分母が $x^2-2$ になり、
$$ x^2\equiv2\pmod{x^2-2} $$
を使える形になります。
$2x+1$$2x-1$ を掛けたのは、一次の $x$ を平方差によって $x^2$ に変え、その $x^2$$2$ に置き換えるためです。
途中の $x^2-2\mid7$ は必要条件だけなので、四つの候補を、元の条件と同値な $x^2-2\mid2x+1$ へ戻して確認しています。

例題4の変数消去を一般化する

整数 $x$ と、固定された整数 $A,a,b$ について、$x^2-A\ne0$ とします。

二次式から固定整数へ落とす

このとき、
$$ x^2-A\mid ax+b $$
ならば、
$$ x^2-A\mid a^2A-b^2 $$
です。

証明

$x^2-A$$(ax+b)(ax-b)=a^2x^2-b^2$$a^2(x^2-A)$ を割り切るので、差を取れば、
$$ x^2-A\mid a^2A-b^2 $$
を得ます。

$a^2A-b^2\ne0$ なら、$x^2-A$ の値は固定整数 $a^2A-b^2$ の正負の約数に限られます。
ここで $ax-b$ を掛けることは、突然の思いつきではありません。
$$ \text{一次の }x\text{ を消したい} \longrightarrow \text{平方差で }x^2\text{ を作る} \longrightarrow x^2\equiv A\pmod{x^2-A} $$
という目的から決まります。

注意 得られるのは一般に必要条件

なお、得られた固定整数が $0$ なら、この操作だけでは候補は絞れません。また、$x^2-A\mid a^2A-b^2$ は一般に必要条件だけなので、得た候補を元の整除条件へ戻す必要があります。

より一般に、$Q(x)\mid R(x)$ まで進んでも $R(x)$ に文字が残るなら、

  • $Q(x)$ の倍数を足し引きして次数を下げる。
  • 整除条件を整数係数の式で整数倍する。
  • 別に得た整除条件との和や差を取る。
  • 積を作って、因数分解できる形へ変える。
  • $Q(x)$ から得られる合同関係で高次の項を低次の項や定数へ置き換える。
    という処理を続けます。目標は、固定された $0$ でない整数の約数条件、または整数候補の少ない値域へ進むことです。

6 分母の一因数だけで候補を絞る

例題5

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{47n+53}{2n^2+5n+3} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ 2n^2+5n+3=(n+1)(2n+3) $$
である。与えられた分数が整数ならば、
$$ n+1\mid47n+53 $$
である。
$$ 47n+53=47(n+1)+6 $$
より、$n+1\mid6$ である。$n$ は正の整数なので、
$$ n+1=2,3,6 $$
であり、$n=1,2,5$ を得る。
元の分数の値は、それぞれ
$$ 10,\quad7,\quad\frac{48}{13} $$
である。よって、
$$ \boxed{n=1,2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分母全体ではなく、余りが最も簡単になる因数 $n+1$ だけを見ています。この因数だけで候補は三つになります。
ただし、$n+1\mid47n+53$ は元の条件から取り出した必要条件です。もう一方の因数 $2n+3$ の情報を捨てたため、最後に元の分数へ戻して確認しています。実際、必要条件を満たす $n=5$ は元の条件を満たしません。

7 互いに素な分母へ分けてから処理する

部分分数分解は、できるから行うのではありません。目的は、
$$ \text{互いに素な分母へ分ける} \longrightarrow \text{整数性を各項へ分離する} \longrightarrow \text{各項を大小や整除で処理する} $$
ことです。
一つの因数を見るだけで候補が数個になったなら、わざわざ部分分数分解する必要はありません。分離した後に何が使いやすくなるかを考えて選びます。

例題6

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{2(17n^2-4n+17)}{n^4+n^2+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ n^4+n^2+1=(n^2+n+1)(n^2-n+1) $$
であり、$n$ が正の整数なら二つの因数はともに正である。
$d=(n^2+n+1,n^2-n+1)$ とおくと、$d$ は差 $2n$ を割り切る。また、二数はともに奇数なので $d$ は奇数であり、$d\mid n$ となる。よって、
$$ d\mid\{n^2+n+1-n(n+1)\}=1 $$
であるから、
$$ (n^2+n+1,n^2-n+1)=1 $$
である。
また、
$$ \frac{2(17n^2-4n+17)}{(n^2+n+1)(n^2-n+1)} =\frac{21}{n^2+n+1}+\frac{13}{n^2-n+1} $$
である。
したがって、与えられた分数が整数であることと、
$$ n^2+n+1\mid21, \qquad n^2-n+1\mid13 $$
は同値である。
$n$ は正の整数なので、$n^2+n+1$$1,3,7,21$ のいずれかであり、これを満たすのは
$$ n=1,2,4 $$
である。このとき $n^2-n+1$ の値はそれぞれ $1,3,13$ なので、$13$ を割り切るのは $n=1,4$ の場合である。
よって、
$$ \boxed{n=1,4} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
因数分解しただけでは整数性を分離できません。差を使って二つの分母が互いに素であることを証明し、部分分数分解した後で、第2部の分離の性質を使っています。
分離後は、それぞれの分母が固定整数 $21,13$ の約数になります。部分分数分解の役割は、複雑な一つの条件を、処理しやすい二つの整除条件へ変えることです。
この解答では分離の前後も含めて同値変形なので、最後に元の分数へ再代入する必要はありません。

8 数列では、取り得る状態を絞る

例題7

正の整数列 $\{a_n\}$ が、すべての正の整数 $n$ に対して
$$ a_{n+1}=\frac{a_n^2+5}{a_n+1} $$
を満たしている。可能な $a_1$ をすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
各正の整数 $n$ について、
$$ a_{n+1}=a_n-1+\frac6{a_n+1} $$
である。$a_n,a_{n+1}$ は整数なので、
$$ a_n+1\mid6 $$
である。$a_n$ は正の整数であるから、
$$ a_n=1,2,5 $$
のいずれかである。
漸化式による値の移り方は、
$$ 1\longmapsto3, \qquad 2\longmapsto3, \qquad 5\longmapsto5 $$
である。すべての項が $1,2,5$ のいずれかでなければならないため、$1,2$ はどの項にも現れない。
したがって、すべての項が $5$ である。実際、$a_1=5$ なら条件を満たす。
よって、
$$ \boxed{a_1=5} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
各項に同じ整除条件を使うと、数列の各項は $1,2,5$ の三つの状態しか取れません。その後は、漸化式による状態の移り方を調べています。
$1,2$ からは候補外の $3$ へ移るので、無限に続く正の整数列には現れません。数列では、初項だけでなく、すべての項が許された状態の中にとどまることが必要です。

第4部 ここまでの方法を統一する視点

1 一見違う方法が目指していたもの

ここまで、値域、余り、約数、因数、互いに素、数列の状態という、見た目の異なる方法を使いました。
しかし、どの例でも共通していたのは、

有限化

$$ \text{無限にあり得る候補を、有限個の候補へ落とす} $$
ことです。以下、この共通の働きを有限化と呼びます。

  • 狭い区間へ入れる:その区間内の整数値、または文字の範囲が有限個になる。
  • $D(n)\mid C$$C\ne0$ へ落とす:$D(n)$$C$ の正負の約数に限られ、得られた方程式から文字を絞れる。
  • 多変数を一文字ずつ絞る:一つを固定するたびに、次の文字の候補が有限個になる。
  • 数列の各項を少数の値へ絞る:無限に続く数列を有限個の状態の移り方として調べられる。
  • 互いに素な分母へ分離する:分離そのものが終点ではなく、各項を値域や約数によって有限化しやすくする。
    最初から「有限化」という言葉を知らなくても、例題ではすでにこの操作を何度も行っていました。これは新しい技法ではなく、これまでの技法が共通して果たしていた役割の名前です。
    ただし、途中の式が取り得る値を有限個にしただけで、求める文字がまだ無限に残ることもあります。その場合は有限化の途中です。最終的には、求める文字の候補、または数列などの状態が有限個になったかを確認します。

2 一度で有限化できなければ反復する

例題3では、
$$ D\mid2(n+1) $$
まで進んでも文字が残ったので、整数倍と差を使って
$$ D\mid2 $$
まで進みました。例題4でも、
$$ x^2-2\mid2x+1 $$
から積と差を使って
$$ x^2-2\mid7 $$
まで進みました。
この二つに共通する判断は、

一度操作しても文字が自由に残っているなら、処理は終わっていない。
ということです。
余りへ移した後でも、分離した後でも、まだ候補が無限にあり得るなら、

  • 分母の倍数をもう一度引く。
  • 整除条件を整数倍する。
  • 和・差・積を作る。
  • 分母から得られる合同関係で次数を下げる。
  • 各項へ大小評価や別の整除条件を使う。
    という処理を反復します。
    有限化できたと判断してよい代表的な状態は、次の通りです。
  1. 整数値が、整数を有限個しか含まない区間に入った。
  2. 文字を含む整数が固定された $0$ でない整数の約数になり、そこから文字の候補も有限個になった。
  3. 文字そのものが有限区間、または有限個の候補に絞られた。
  4. 数列の各項が有限個の状態に閉じ込められた。

3 ここまでの方法を実戦用に整理する

ここで初めて、これまで使った進み方を、実戦上の見通しのために三つへ整理します。

A 大きさ・値域

分数全体または余りの分数を、整数を少数しか含まない区間へ入れます。分子と分母の差、対称性、単調性などを使います。

B 整除・余り

整数条件を整除条件へ直し、分母の倍数を引いて余りへ移します。必要なら同じ処理を反復し、固定整数の約数条件まで進めます。分母の一因数だけを見る方法もここに含めます。

C 互いに素な分母への分離

複数の分数の和を、そのままでは扱いにくいとき、互いに素な分母を持つ各項の整数条件へ分けます。分けた後はAまたはBへ接続します。
A・B・Cは、数学的に同格の三原理ではありません。根本にあるのは「分数が整数であることと整除条件が同値」という事実です。Cも、その整除条件と互いに素という条件から導かれた性質です。
また、三つの方法は一問につき一つだけ選ぶものではありません。
$$ \begin{array}{c} \text{Bで余りへ移す} \longrightarrow \text{Aで余りを }0\text{ にする}\\[4pt] \text{Cで各項へ分離する} \longrightarrow \text{Bで固定整数の約数へ落とす}\\[4pt] \text{Bで候補を有限個にする} \longrightarrow \text{偶奇・合同式・平方数・大小で選別する} \end{array} $$
のように、普通に接続されます。

4 式を整えるのは、次の一手を作るため

因数分解、平方完成、置換、多項式の割り算は、それ自体が目的ではありません。

  • 因数分解:余りが簡単になる一因数を見つける、または互いに素な分母を作る。
  • 多項式の割り算:整数性を左右する余りだけを取り出す。
  • 平方完成・平行移動:$x^2\equiv A$ のように、高次の文字を定数へ置き換えられる形を作る。
  • 対称性を使う置き方:多変数を一文字ずつ絞れる大小関係を作る。
    「式がきれいになるか」ではなく、

変形後に、どの値域・整除条件・合同関係が使えるようになるか。
を基準にします。

5 有限候補を得た後の役割分担

候補が有限個になった後は、

  • 方程式や因数分解
  • 偶奇
  • 固定された整数を法とする合同式
  • 平方数が取り得る余り
  • 大小や単調性
  • 数列の状態の移り方
    などで候補を選別します。
    文字を含む式を法として使う合同式は、主に余りを簡単にする途中の道具です。一方、$2,3,4,8$ など固定された整数を法とする合同式は、有限個の候補や方程式を最後に判定する場面で特に有効です。
    最後に、途中の論理を振り返ります。分母の一因数だけを見た、複数の必要条件だけを取り出した、固定整数を割り切るという条件を必要条件として取り出した、という場合は情報を弱めています。候補を元の条件へ戻して確認します。同値変形だけで進んだ場合は、その確認を重ねる必要はありません。

第5部 解法フローチャート

ここまで実際に使ってきた判断を、一つの流れにまとめます。ここに新しい知識はありません。

1 条件を確認する
整数か正の整数か、分母は $0$ でないか、符号はどうか。
$$ \Downarrow $$
2 次の一手が使いやすい形へ整える
因数分解、多項式の割り算、平方完成、置換、対称性を使う。
$$ \Downarrow $$
3 有限化の入口を探す

  • A:大きさ・値域
  • B:整除・余り
  • C:互いに素な分母への分離
    $$ \Downarrow $$

4 候補は有限個になったか

  • いいえ:式をさらに加工し、2・3へ戻る。
  • はい:5へ進む。
    $$ \Downarrow $$

5 有限候補を処理する
方程式、偶奇、合同式、平方数、大小、状態の移り方などで選別する。
$$ \Downarrow $$
6 途中で情報を弱めたか

  • はい:元の条件へ戻して確認する。
  • いいえ:そのまま結論とする。

入口を選ぶときは、次のように考えます。

  • 分数全体や余りを狭い区間へ入れられるなら、大きさ・値域を使う。
  • 一つの分数なら、整除条件へ直し、分母の倍数を引いて余りを見る。分母を因数分解できるなら、余りが簡単になる一因数だけを見ることも考える。
  • 複数の分数が互いに打ち消し合って扱いにくいなら、分母の最大公約数を確認し、互いに素な分母へ分離できないか考える。
  • 一度の操作で文字が残ったら、整数倍、和、差、積、合同関係によって、固定整数の約数や有限区間までさらに進める。
  • 最後は偶奇、固定された法での合同式、平方数、大小、状態の移り方などで有限候補を判定する。
    では、本当にこの流れだけで見た目の異なる問題が解けるのか、実践問題で確かめてみましょう。

第6部 実践編

問題名にはA・B・Cを書きません。解答を見る前に、

  1. どの条件を確認するか。
  2. どの形へ整えるか。
  3. どの入口から候補を有限化するか。
  4. 一度の操作で終わったか。
  5. まだ文字が残るなら、何を反復するか。
    を考えてみてください。

実践問題1

正の整数 $a,b$ で、
$$ \frac1a+\frac1b+\frac2{a+b} $$
が整数となる組 $(a,b)$ をすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
式は $a,b$ について対称なので、$a\leqq b$ としてよい。このとき、
$$ 0<\frac1a+\frac1b+\frac2{a+b} \leqq\frac1a+\frac1a+\frac1a=\frac3a $$
である。左辺が正の整数なら $3/a\geqq1$ なので、
$$ a=1,2,3 $$
である。
$a=1$ のとき、$b=1,2$ における値はそれぞれ
$$ 3,\quad\frac{13}{6} $$
である。$b\geqq3$ なら、
$$ 0<\frac1b+\frac2{b+1} \leqq\frac13+\frac12<1 $$
なので、式全体は $1$$2$ の間にある。よって $b=1$ である。
$a=2$ のとき、$b=2,3,4$ における値はそれぞれ
$$ \frac32,\quad\frac{37}{30},\quad\frac{13}{12} $$
である。また、$b\geqq5$ なら、
$$ 0<\frac12+\frac1b+\frac2{b+2} \leqq\frac12+\frac15+\frac27=\frac{69}{70}<1 $$
なので、解はない。
$a=3$ のとき、式の値は正で $1$ 以下である。整数となるには値が $1$ でなければならず、
$$ \frac1a+\frac1b+\frac2{a+b}\leqq\frac3a $$
の等号条件から $b=a=3$ である。
したがって、
$$ \boxed{(a,b)=(1,1),(3,3)} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
対称性を使って $a\leqq b$ と置くと、三つの項をすべて $1/a$ 以下に抑えられます。これにより、先に $a$$1,2,3$ へ有限化されます。
その後は $a$ を一つずつ固定し、同じ大小評価を $b$ に対して反復しています。多変数でも、一文字ずつフローチャートを回せばよいという例です。

実践問題2

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{n^6+n^3+4}{n^2+n+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ D=n^2+n+1 $$
とおく。
$$ n^3-1=(n-1)D $$
より、
$$ n^3\equiv1\pmod D $$
である。したがって、
$$ n^6+n^3+4\equiv1^2+1+4=6\pmod D $$
であり、与えられた分数が整数であることと $D\mid6$ は同値である。
$n=1$ のとき $D=3$ である。$n\geqq2$ のとき、
$$ D=n^2+n+1\geqq7 $$
なので、正の整数 $D$$6$ を割り切らない。
よって、
$$ \boxed{n=1} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分母 $D$ から $n^3\equiv1$ という関係を作ると、$n^6$$1$ に置き換えられます。高次の分子全体が固定された余り $6$ になり、$D$ の候補が $6$ の約数へ有限化されました。
ここでの合同式は、分母の倍数を何度も引く処理を短く書いたものです。変形は同値なので、最後の $n=1$ を元の式へ代入し直す必要はありません。

実践問題3

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{25n^2+24n+2}{2n^3+3n^2+n} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ 2n^3+3n^2+n=n(n+1)(2n+1) $$
である。与えられた分数が整数ならば、
$$ n\mid25n^2+24n+2 $$
である。したがって、
$$ n\mid2 $$
となる。$n$ は正の整数なので、$n=1,2$ である。
元の分数の値は、それぞれ
$$ \frac{17}{2},\quad5 $$
である。よって、
$$ \boxed{n=2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分母を因数分解し、余りが最も簡単になる因数 $n$ だけを選んでいます。この必要条件だけで候補が二つになるため、他の因数を加工する必要はありません。
一因数だけを見た時点で情報を弱めているので、最後に元の分数へ戻しています。部分分数分解は、次の処理を楽にしない限り行う必要がありません。

実践問題4

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{n^3+2n^2+3n-2}{n^2+n+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ \frac{n^3+2n^2+3n-2}{n^2+n+1} =n+1+\frac{n-3}{n^2+n+1} $$
である。
$n=1,2$ では、
$$ |n-3|< n^2+n+1 $$
である。$n\geqq3$ では、
$$ 0\leqq n-3< n^2+n+1 $$
である。したがって、すべての正の整数 $n$ について、
$$ \left|\frac{n-3}{n^2+n+1}\right|<1 $$
となる。
$n+1$ は整数なので、与えられた分数が整数なら、余りの分数も整数である。よって、
$$ \frac{n-3}{n^2+n+1}=0 $$
であり、
$$ \boxed{n=3} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
多項式の割り算で整数部分を外すと、整数性を左右するのは余りの分数だけです。その余りを絶対値が $1$ 未満の区間へ入れ、整数値を $0$ に確定しています。
これは「Bで余りへ移す→Aで値域を使う」という接続です。余りが $0$ になる $n=3$ は元の整数条件を満たすので、別の代入確認は不要です。

実践問題5

正の整数の組 $(a,b)$ で、
$$ \frac{a-1}{a}+\frac{b-1}{b} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ 0\leqq\frac{a-1}{a}<1, \qquad 0\leqq\frac{b-1}{b}<1 $$
より、与えられた和は $0$ 以上 $2$ 未満である。したがって、その整数値は $0,1$ のいずれかである。
和が $0$ のとき、二項はいずれも $0$ 以上なので、
$$ \frac{a-1}{a}=\frac{b-1}{b}=0 $$
である。よって、$a=b=1$ である。
和が $1$ のとき、
$$ \frac1a+\frac1b=1 $$
である。両辺に $ab$ を掛けると、
$$ ab-a-b=0 $$
となるので、
$$ (a-1)(b-1)=1 $$
である。$a,b$ は正の整数だから、$a=b=2$ である。
逆に、$(a,b)=(1,1),(2,2)$ はともに条件を満たす。したがって、
$$ \boxed{(a,b)=(1,1),(2,2)} $$
である。
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分数が二つあるからといって、整数性を各項へ分離できるとは限りません。この問題では $a,b$ が互いに素とは限らず、実際に $(2,2)$ が解です。
そこで和全体を $0$ 以上 $2$ 未満へ入れ、整数値を $0,1$ の二つへ有限化しています。その後は、それぞれの整数値に対応する方程式を処理しています。

実践問題6

整数 $n$ で、
$$ \frac{12n^3+24n^2+19n+17}{n^4+n^3+2n^2+n+1} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ n^4+n^3+2n^2+n+1=(n^2+1)(n^2+n+1) $$
である。ここで、
$$ n^2+1>0, \qquad n^2+n+1=\left(n+\frac12\right)^2+\frac34>0 $$
である。与えられた分数が整数ならば、$n^2+1$ は分子を割り切る。
$n^2+1$ を法とすると、
$$ n^2\equiv-1, \qquad n^3\equiv-n\pmod{n^2+1} $$
なので、
$$ \begin{aligned} 12n^3+24n^2+19n+17 &\equiv-12n-24+19n+17\\ &\equiv7(n-1)\pmod{n^2+1} \end{aligned} $$
である。したがって、
$$ n^2+1\mid7(n-1) $$
である。
よって、$n^2+1$$7(n+1)(n-1)=7(n^2-1)$$7(n^2+1)$ を割り切るので、
$$ n^2+1\mid14 $$
となる。
$n^2+1>0$ だから、
$$ n^2+1=1,2,7,14 $$
である。これを満たす整数 $n$ は、
$$ n=-1,0,1 $$
である。
元の分数の値は、それぞれ
$$ 5,\quad17,\quad12 $$
である。よって、
$$ \boxed{n=-1,0,1} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分母を因数分解し、$n^2\equiv-1$ が使える因数 $n^2+1$ を選んでいます。最初の余り $7(n-1)$ には、まだ $n$ が残っています。
そこで $n+1$ を掛けて $n^2-1$ を作り、分母自身の倍数との差によって固定整数 $14$ へ落としました。平方を作って分母の合同関係で定数へ変える処理は、例題4と同じです。
一因数から得た必要条件だけを使ったため、最後に元の式へ戻して十分性を確認しています。

実践問題7

正の整数 $n$ で、
$$ \frac{39n+42}{2n^2+5n+2} $$
が整数となるものをすべて求めよ。

解答を見る(クリック/タップ)
$$ 2n^2+5n+2=(2n+1)(n+2) $$
である。
与えられた分数が整数ならば、
$$ n+2\mid39n+42 $$
である。
$$ 39n+42=39(n+2)-36 $$
より、$n+2\mid36$ である。$n$ は正の整数なので、
$$ n=1,2,4,7,10,16,34 $$
である。
また、$2n+1\mid39n+42$ であり、
$$ 2(39n+42)-39(2n+1)=45 $$
より、$2n+1\mid45$ である。したがって、
$$ n=1,2,4,7,22 $$
である。
二つの候補に共通するものは、
$$ n=1,2,4,7 $$
である。元の分数の値は、それぞれ
$$ 9,\quad6,\quad\frac{11}{3},\quad\frac73 $$
である。
よって、
$$ \boxed{n=1,2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
二つの一次因数を別々に使い、それぞれから固定整数の約数条件を取り出しています。$n+2$ では分母の倍数を直接引き、$2n+1$ では二式を整数倍して差を取ることで $n$ を消しています。
二つの因数がそれぞれ分子を割り切っても、その積が分子を割り切るとは限りません。実際、$(2n+1,n+2)$$1$ または $3$ です。二つの必要条件の共通部分を取った後も、元の条件へ戻す必要があります。

実践問題8

正の整数列 $\{a_n\}$ が、すべての正の整数 $n$ に対して
$$ \begin{aligned} a_{n+1}={}&a_n-3 +\frac{(a_n-1)(a_n-2)}{a_n^2+1}\\ &+\frac{2^{a_n}+2}{a_n^2-a_n+1} \end{aligned} $$
を満たしている。可能な $a_1$ をすべて求めよ。

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正の整数 $n$ を固定し、$x=a_n$ とおく。$a_{n+1}$$x-3$ は整数なので、
$$ \frac{(x-1)(x-2)}{x^2+1} +\frac{2^x+2}{x^2-x+1} $$
は整数である。
$x^2+1$$x^2-x+1$ はともに正である。
$d=(x^2+1,x^2-x+1)$ とおくと、$d$ はその差 $x$ を割り切る。よって、
$$ d\mid\{x^2+1-x\cdot x\}=1 $$
であるから、
$$ (x^2+1,x^2-x+1)=1 $$
である。
したがって、
$$ \frac{(x-1)(x-2)}{x^2+1} $$
は整数である。
$x=1,2$ のとき、この分数は $0$ である。$x\geqq3$ のとき、
$$ 0<(x-1)(x-2)< x^2+1 $$
である。実際、
$$ x^2+1-(x-1)(x-2)=3x-1>0 $$
である。
よって、
$$ x=1,2 $$
でなければならない。したがって、数列のすべての項は $1$ または $2$ である。
漸化式へ代入すると、
$$ 1\longmapsto2, \qquad 2\longmapsto1 $$
となる。
$a_1=1$ なら $1,2,1,2,\ldots$$a_1=2$ なら $2,1,2,1,\ldots$ となり、いずれも条件を満たす。よって、
$$ \boxed{a_1=1,2} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
整数部分 $x-3$ を外した後も、二つの分数の和には指数 $2^x$ が残るため、和全体を狭い区間へ入れるのは困難です。
そこで二つの分母の最大公約数を調べ、Cによって第1の分数だけを取り出します。その分数をAによって $0$ に確定すると、各項が $\{1,2\}$ へ有限化されます。最後に、二つの状態の間の移り方を調べています。
式を整える、互いに素な分母へ分離する、値域で状態を絞る、漸化式で候補を処理する、という複数の段階を接続した問題です。

総合問題

最後に、この記事で学んだ判断を一問の中で接続します。

整数 $n,m$ に対して、
$$ D=nm-4n-4m+14 $$
とおく。ただし、$D\ne0$ とする。
次の三つの数がすべて整数となる組 $(n,m)$ を求めよ。
$$ \frac{nm-3n-4m+19}{D}, \qquad \frac{nm-4n-3m+19}{D}, \qquad \frac{n+m+1}{5} $$

解答を見る(クリック/タップ)
$x=n-4,\ y=m-4$ とおく。このとき、
$$ D=xy-2 $$
である。また、
$$ \begin{aligned} nm-3n-4m+19&=D+x+9,\\ nm-4n-3m+19&=D+y+9,\\ n+m+1&=x+y+9 \end{aligned} $$
である。したがって、与えられた三数がすべて整数であることと、
$$ D\mid x+9, \qquad D\mid y+9, \qquad 5\mid x+y+9 $$
は同値である。
初めの二条件から、
$$ x\equiv-9\pmod D, \qquad y\equiv-9\pmod D $$
である。一方、$D=xy-2$ より、
$$ xy\equiv2\pmod D $$
である。前二式を掛けると $xy\equiv81\pmod D$ であるから、
$$ D\mid79 $$
となる。$79$ は素数なので、
$$ D=1,-1,79,-79 $$
である。$xy=D+2$ と、元の二つの整除条件を満たす組を調べると、
$$ \begin{array}{c|c|c} D&xy&(x,y)\\ \hline 1&3&(-3,-1),\ (-1,-3),\ (1,3),\ (3,1)\\ -1&1&(-1,-1),\ (1,1)\\ 79&81&(-9,-9)\\ -79&-77&\text{なし} \end{array} $$
となる。
このうち $5\mid x+y+9$ を満たすのは、
$$ (x,y)=(-3,-1),\ (-1,-3) $$
である。したがって、$(n,m)=(x+4,y+4)$ より、
$$ \boxed{(n,m)=(1,3),(3,1)} $$
である。
解説を見る(クリック/タップ)
分母には $nm$ だけでなく、$n,m$ の一次の項も含まれています。そこで、
$$ nm-4n-4m+14=(n-4)(m-4)-2 $$
と積の形へ整え、$x=n-4,\ y=m-4$ と平行移動します。すると分母は $D=xy-2$ となり、
$$ xy\equiv2\pmod D $$
を使える形にします。$n,m$ のまま合同式を処理することもできますが、平行移動によって「二つの余りを掛けて $xy$ を作り、$xy$$2$ に置き換える」という次の一手が見えやすくなります。
置換は単なる略記ではなく、二つの余りを掛けて分母中の積$ xy $へ戻す構造を見えやすくしています。
初めの二つの分子から分母を一つずつ引くと、整数性を左右する余りは $x+9,y+9$ です。ただし、$D\mid x+9$ だけでは、$x=-9$ とすれば任意の $y$ が残ります。同様に、$D\mid y+9$ だけでも有限化できません。第1の整除条件に第3の条件を加えても、たとえば
$$ x=-9,\qquad y=5k\quad(k\in\mathbb Z) $$
という無限個の候補が残ります。第2の整除条件についても同様です。したがって、どれか一条件の大小や小さい法だけで先に有限化することはできません。
そこで、二つの整除条件を接続します。$x\equiv-9$$y\equiv-9$ を掛ければ $xy\equiv81$ です。一方、分母から $xy\equiv2$ なので、差を取って $D\mid79$ を得ます。文字を消すために積を作り、分母自身が与える合同関係でその積を定数へ置き換えたのです。ここで初めて、$D$ の値が $79$ の正負の約数へ有限化されます。
ただし、$D\mid79$ は二つの整除条件から得た必要条件にすぎません。そこで、$xy=D+2$ から得た候補を $D\mid x+9,\ D\mid y+9$ へ戻し、最後に固定された法 $5$ の条件で選別しています。第3の条件は単独で候補を有限化するものではなく、有限化後の候補を選ぶ役割だけを担っています。
この問題で新しい原理は使っていません。積の形へ整えて平行移動する、Bで整数部分を外して余りへ移す、文字が二つ残ったので二つの整除条件を掛け合わせる、分母から得られる合同関係で固定整数へ落とす、ここで有限化する、固定された法で候補を選別する、必要条件へ弱めた箇所を元へ戻す、という第5部のフローチャートをたどっています。一見複雑でも、フローチャートを一周で終えず、必要なだけ反復しただけです。

実践編の振り返り

問題の見た目はそれぞれ違いましたが、使った流れを並べると次のようになります。

  • 実践問題1:対称性で順序を置く→値域で一文字を絞る→同じ評価をもう一文字へ使う。
  • 実践問題2:分母から合同関係を作る→高次の項を定数へ変える→固定整数の約数へ落とす。
  • 実践問題3:分母を因数分解する→一因数から必要条件を取る→元の条件へ戻す。
  • 実践問題4:多項式の割り算をする→余りの分数を絶対値 $1$ 未満へ入れる。
  • 実践問題5:和全体の値域を狭める→有限個の整数値に対応する方程式を解く。
  • 実践問題6:一因数を選ぶ→余りに残った文字を積と差で消す→固定整数の約数へ落とす→元の条件へ戻す。
  • 実践問題7:二つの因数から必要条件を取る→候補の共通部分を取る→元の条件へ戻す。
  • 実践問題8:整数部分を外す→互いに素な分母へ分離する→値域で各項の状態を絞る→状態の移り方を調べる。
  • 総合問題:分母を積の形へ整えて平行移動する→整数部分を外して二つの余りへ移す→一条件では有限化できないことを確認する→二つの合同関係を掛けて文字を消す→固定整数の約数へ落とす→固定された法で選別する→必要条件へ弱めた箇所を元へ戻す。
    問題ごとに別々の特殊技巧を使ったわけではありません。
  • 値域を狭める。
  • 分母の倍数を引いて余りへ移す。
  • 固定整数の約数へ落とす。
  • 分母の一因数だけを見る。
  • 互いに素なら整数性を分離する。
  • 文字が残れば、整数倍・和・差・積・合同関係でもう一段加工する。
  • 有限候補を最後に選別し、必要条件だけを使ったなら元へ戻す。
    という、ここまで学んだ原理の組み合わせと反復だけです。

おわりに

本記事は、
$$ \frac ab\in\mathbb Z \quad\Longleftrightarrow\quad b\mid a $$
という根本原理から始まりました。
そこから、値域を狭める、余りへ移す、固定整数の約数へ落とす、一因数を見る、互いに素な分母へ分離する、という性質を導きました。具体例を通して見えてきた共通点が、無限にあり得る候補を有限個へ落とす「有限化」です。
一度の操作で有限化できなければ、式を整え直し、同じ原理を反復します。難しい解答で突然現れる整数倍、和、差、積、置換も、

何を消したいのか。どの状態まで候補を絞りたいのか。
から逆に考えれば、孤立した裏技ではなくなります。
見た目が違う問題でも、根本原理は同じです。条件を確認し、次の一手が使いやすい形へ整え、候補が有限個になるまで処理を反復し、最後に必要十分性を確認する。この流れを、ぜひ初見の問題でも使ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
みなさまの日常に良き数学の彩りのあらんことを。それでは、ごきげんよう。

投稿日:8日前
更新日:2日前
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