みなさん,受験数学で何かしらの関数の展開における二次の係数を(間接的にも)答えさせる問題に遭遇したことはありますか?
僕はあります.一次なら微分の定義で解決することがほとんどなのですが,二次となるとそれだけでは苦しく,ロピタルの定理やお気持ちの極限,$O$,テイラー展開などでやり過ごすことがよくあります.
よって,この記事を通して,ちゃんと受験数学の作法に則って二次の係数を取り出せるようにしたいと思います.
誤りや,より早い証明があれば是非コメントで教えていただけると助かります!(もしかしたら微分の定義だけでいけたり…)
(↓証明するもの↓)
$f(x),f’(x),f’’(x)$が十分小さい非負実数$x$で定義されるとき,以下が成立する.
$$\lim_{x\to+0}\frac{f(x)-f(0)-xf’(0)}{x^2}=\frac12 f’’(0)$$
正の実数$x$について$F(x)=f(x)-f(0)-xf’(0)$とする.また$t\in[0,x]$について$G(t)=x^2F(t)-t^2F(x)$とする.このとき,$F(0)=F’(0)=G(0)=G(x)=0,F’’(0)=f’’(0)$かつ$G’(t)=x^2F’(t)-2F(x)t$が成立する.$G(t)$は$[0,x]$で連続かつ$(0,x)$で微分可能なので平均値の定理により,ある$a\in(0,x)$が存在して以下が成立する.
$$\frac{G(x)-G(0)}{x-0}=G’(a)\Longleftrightarrow G’(a)=0\Longleftrightarrow \frac{F(x)}{x^2}=\dfrac12\cdot\frac{F’(a)}{a}$$
ゆえに,$x\to+0$の極限をとると
$$\lim_{x\to+0}\frac{F(x)}{x^2}=\frac12 \lim_{a\to+0}\frac{F’(a)-F’(0)}{a-0}=\frac12 F’’(0)=\frac12 f’’(0)$$
より示せた.
$\vp(x)=f(x)-f(0)-xf’(0)$および$\ps(x)=x^2$とおく.このとき,$\vp(0)=\vp’(0)=\ps(0)=\ps’(0)=0$かつ$\vp’’(0)=f’’(0)$となっている.コーシーの平均値の定理よりある$\zeta\in(0,x)$が存在して,
$$\frac{\vp(x)}{\ps(x)}=\frac{\vp(x)-\vp(0)}{\ps(x)-\ps(0)}=\frac{\vp’(\zeta)}{\ps’(\zeta)}=\frac{\vp’(\zeta)-\vp’(0)}{2\zeta}$$
とでき,各辺$x\to+0$とすると微分係数の定義より$$\lim_{x\to+0}\frac{\vp(x)}{\ps(x)}=\frac{\vp’’(0)}{2}=\frac{f’’(0)}{2}$$
であり題意の主張を得る.
以下の極限を求めよ.
$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\left(\sqrt{1+\frac{k}{n^2}}-1\right)$$
. 考えたい人用
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$S_n=\sum_{k=1}^n(\sqrt{1+\frac{k}{n^2}}-1)$とおく.また,$f_n(x)=\sqrt{1+\frac{x}{n^2}}-1$とおく.このとき$f_n(x)$は十分大きな$n$で単調増加なので$k=1,2,\ldots ,n$について以下が成立する.
$$\int_{k-1}^{k}f_n(x)dx\lt\sqrt{1+\frac{k}{n^2}}-1\lt\int_k^{k+1}f_n(x)dx$$
$k=1,2,\ldots ,n$で辺々足して,
$$\int_0^nf_n(x)dx\lt S_n\lt\int_1^{n+1}f_n(x)dx$$
$\int f_n(x)dx=\frac23 n^2(1+\frac{x}{n^2})^{3/2}-x+(定数)$と計算できるので,
$$(左辺)=\frac23 n^2\left(\left(1+\frac{1}{n}\right)^{3/2}-1-\frac32\cdot\frac{1}{n}\right)$$
$t=\frac{1}{n}$と置き換えて,$f(t)=(1+t)^{3/2}$とすることで冒頭の定理を適用でき,$n\to\infty$において$\displaystyle (左辺)\to\frac23\cdot\frac12 f’’(0)=\frac14$が従う.
同様の議論により,$n\to\infty$において$\displaystyle (右辺)\to\frac14$.
以上より,はさみうちの原理から求める極限値は$\dfrac14$
正整数$n$と,$f^{(k)}(x)\ (k=1,2,\ldots,n)$が十分小さい非負実数で定義された関数$f$について以下が成立する.
$$\lim_{x\to+0}\frac{\displaystyle f(x)-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k}{x^n}=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}$$
ただし,$f^0=f,f^{(k+1)}=\left(f^{(k)}\right)’\ _{(k=0,1,\ldots,n-1)}$とする.
まず以下の補題を示す.
関数$F$と正整数$n$と正実数$a$について,$F$が$[0,a]$で連続かつ$(0,a)$で微分可能かつ$F(0)=0$であるとき,ある$ b\in(0,a)$が存在して以下が成立する.
$$\frac{F(a)}{a^n}=\frac{F’(b)}{nb^{n-1}}$$
[証明]
$G(x)=x^nF(a)-a^nF(x)$とする.このとき$G(0)=G(a)=0$であり,$G(x)$は$[0,a]$で連続かつ$(0,a)$で微分可能なので平均値の定理からある$b\in(0,a)$が存在して
$$\frac{G(a)-G(0)}{a-0}=G’(b)\Leftrightarrow nb^{n-1}F(a)-a^nF’(b)=0\Leftrightarrow \frac{F(a)}{a^n}=\frac{F’(b)}{nb^{n-1}}$$
より示せた.
以下は題意の証明である.十分小さな正の実数$t$に対して
$$\vp(t)=f(t)-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}t^k$$
とすると,$\vp(0)=\vp’(0)=\vp’’(0)=\cdots=\vp^{(n-1)}(0)=0$かつ$\vp^{(n)}(0)=f^{(n)}(0)$が成立する.$\frac{\vp(x)}{x^n}$に補題を繰り返し適用すると,ある実数列$0\lt\zeta_0\lt\zeta_1\lt\ldots\lt\zeta_{n-1}\lt x$が存在して
$$\frac{\vp(x)}{x^n}=\frac1{n}\cdot\hodai{\frac{\vp’(\zeta_{n-1})}{\zeta_{n-1}^{n-1}}}=\frac1{n}\cdot\frac1{n-1}\cdot\hodai{\frac{\vp’’(\zeta_{n-2})}{\zeta_{n-2}^{n-2}}}=\cdots=\frac1{n!}\cdot\frac{\vp^{(n)}(\zeta_0)}{\zeta_0^0}=\frac{\vp^{(n)}(\zeta_0)}{n!}$$
が成立する.各辺$x\to+0$を考えることで$\displaystyle\lim_{x\to+0}\frac{\vp(x)}{x^n}=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}$であり題意の主張を得る.
題意が正整数$n$に対して成立することを$P(n)$とする.
任意の正整数$n$について$P(n)\Rightarrow P(n+1)$を示す.
$$F(x)=f(x)-\sum_{k=0}^n\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k$$
とおくと示すべきは以下である.
$$\lim_{x\to+0}\frac{F(x)}{x^{n+1}}=\frac{f^{(n+1)}(0)}{(n+1)!}$$
ここで,以下のように$G(t)$を$t\in[0,x]$において定める.
$$G(t)=x^{n+1}F(t)-t^{n+1}F(x)$$
このとき$G(0)=G(x)=0$かつ$G’(t)=x^{n+1}F’(t)-(n+1)F(x)t^{n}$が成立する.
$G(t)$は$[0,x]$で連続かつ$(0,x)$で微分可能なので平均値の定理よりある実数$a\in(0,x)$で以下が成立する.
$$\frac{G(x)-G(0)}{x-0}=G’(a)\Longleftrightarrow G’(a)=0\Longleftrightarrow \frac{F(x)}{x^{n+1}}=\frac1{n+1}\cdot\frac{F’(a)}{a^n}$$
両辺$x\to+0$の極限をとると
$$\lim_{x\to+0}\frac{F(x)}{x^{n+1}}=\frac1{n+1}\lim_{a\to+0}\frac{F’(a)}{a^n}$$
ここで,$f’$について$P(n)$を適用することで
$$\lim_{a\to+0}\frac{F’(a)}{a^n}=\frac{f^{(n+1)}(0)}{n!}$$
を得るので$P(n+1)$が真であることが従う.
$P(0)$は微分係数の定義より明らかであるので帰納的に$\forall n\in\mathbb{Z}_{\ge 1};P(n)$であることがわかり,題意は示せた.