巨大数の各種情報源の信頼性を簡単にまとめる。
アルキメデスが数えた砂の数や、仏典上の巨大数が含まれる。
仏典上の巨大数に関してはしばしば虚偽の情報が含まれるため注意が必要。
(wikipediaに存在しない仏典上の数「涅槃寂静」が載っているという事件があった。)
数学基礎論、計算論、ラムゼイ理論などの文脈で定義された急増大関数および巨大数。
プロの数学者が趣味で考案したものもある。
アッカーマン関数、矢印表記、ヒドラゲーム、グラハム数、ビジービーバー関数など。
原論文を読めば基本的に信頼できる。
(実はグラハム数の論文は出版されていない。)
Harvey Friedmanによる巨大数が紹介されることがあるが、Friedmanはメールリストで巨大数のアイデアを公開していたため、しばしば定義に曖昧な箇所がある。
グラハム数がギネスブックに載って話題になった時期とネット黎明期が重なり、日本語圏と英語圏で独立にネット上の巨大数論が生まれた。
そのため、グラハム数より大きな数を作るのが初期のモチベーションである。
詳細な歴史は『
巨大数論
』に詳しい。
ネット上で定義された巨大数は、急増大する関数を定義し、それに具体的な数を代入することで定義されることが多い。
巨大数論者はこの急増大する関数の増大速度を、その巨大数の大きさと同一視する。
この関数が計算可能関数であるかによって、計算可能巨大数と計算不可能巨大数に分類されている。
計算可能巨大数がメインストリームである。
2002年に「巨大数探索スレ」が成立したことで誕生した。
2ちゃんねるで定義された計算可能巨大数は高階原始再帰を駆使する傾向にある。
ふぃっしゅ数、おこじょ数、3変数アッカーマン関数などがある。
このころの日本の巨大数は定義が簡潔で、定義を読めば意図が分かる。
有名なものは巨大数研究wikiにまとめられており、ある程度信頼できる。
アマチュア数学者Jonathan Bowersが定義した配列表記(矢印表記を拡張したもの)を電子掲示板の住人たちが拡張していくことで発展した。
英語圏の巨大数論は配列表記を拡張していくことで発展したが、BEAF(Bowers Exploding Array Function)などは杜撰な議論・曖昧な定義の上で扱われており怪しい。
このころに電子掲示板以外で定義され、広く知られるようになったものも存在する。
ラヨ数はAgustín Rayoが定義したとされる巨大数だが、定義の不備が指摘されている。
ローダー数はBignum BakeoffというプログラミングコンテストでRalph Loaderが提出したもので、well-defined性は自明ではないものの、c言語上でcalculus of constructionsを記述したものであるため、ある程度信頼されている。
早い段階で、計算可能巨大数を作るうえでは高階原始再帰などに頼る方法には限界があることが分かっていたため、巨大数論者は以下のような手法で巨大数を作ることを試み始めた。
基本列については以下の 八杉 の定義9が分かりやすい。
をprimitive recursiveな全順序 をもつ集合とする。 に対してfundamental sequenceが定義される、あるいは に対して の元のfundamental sequenceが存在する、というのは、 の任意の極限数(limit element) に対してそれに下から の意味で近づく(収束する)primitive recursiveな の元の列 が構成できる;すなわち かつ であるような を構成できる; しかもそのような一様な構成方法が存在する、ということである。
この基本列を用いて、以下のように急増大関数を作る。
よって、大きな数を作る問題は大きな計算可能整礎順序と基本列を作る問題にすり変えられた。
この方法の確立は大きなパラダイムシフトであり、それまでよりはるかに急増大する関数を扱えるようになった。
ただ、2018年ごろまでの議論は順序数と順序数表記を混同しているなどの致命的な誤りが含まれていることがあるので注意しないといけない。
また、整礎な順序を明示的に定めず基本列のみを定義している場合もあり、これは「表記」と呼ばれる。
(ただし、ふぃっしゅ数のような高階原始再帰的に定義された関数も「表記」と呼ぶ場合がある。)
大きな整礎順序を扱うため、2016年ごろから巨大数論者は証明論で扱われていた順序数崩壊関数を取り入れ始めた。
Denisによる拡張ブーフホルツのψ関数、p進大好きbotによる"拡張ブーフホルツのψに伴う順序数表記"などは信頼できる成果である。
この辺りの話題をちゃんと調べたい場合はまずBuchholzの論文等を読むことを勧める。
2018年ごろに英語圏でUNOCFと呼ばれる順序数表記のアイデアが提唱され普及したが、現状定義は与えられずに杜撰な議論が行われているため、UNOCFという単語が含まれる議論は信頼できない。(国内にUNOCFを定義しようとしている人はいる。)
現在でもp進大好きbotの方法を受け継いでkanrokoti、mrna(伝)などが新しい方法を模索している。
2014年に2ちゃんねるユーザーのバシクは整礎順序を扱う新しい方法論としてバシク行列を与えた。
バシク行列システムを拡張して作られたものを数列システムといい、数列系巨大数論という一分野を成している。
数列システムは自然数の有限列の集合
なお、バシク行列はこれを2次元配列上で行っているものである。
(集合
数列sと自然数
のように定める。
バシク行列システムにおいては、1行の行列と2行の行列に関しては
1行の行列での
数列系の特徴は、大きな順序型上の整礎再帰を簡単なアルゴリズムで扱える点である。
例えば、バシク行列システムはBASIC言語で500文字程度で実装された簡潔なアルゴリズムである。
主な数列系巨大数には、バシク行列、Y数列、弱亜ペア数列、M-ベクレミシェフなどがある。
巨大数研究wikiの記事に掲載されている数列系巨大数の定義は比較的信頼できる。
2010年以降の有名な計算不可能巨大数の多くはp進大好きbotによって定義されている。
巨大数庭園数、巨大数屋敷数などがある。
これまでの巨大数論の成果は巨大数研究wikiにまとめられている。
巨大数研究wikiの記事はある程度コンセンサスのとれているものであり、比較的信頼できる。
wiki内の個人ブログはこの限りではないので注意。
巨大数の動画を専門とするチャンネルは基本的に信頼できる。
様々な巨大数を短い時間で大量に紹介する動画は内容が怪しい場合が多い。
YouTube上には「絶対無限はいかなる順序数よりも大きい」という間違った主張を行う動画が散見される。
このような動画は信頼しないほうがよい。
また、巨大基数の議論を誤解して「矛盾は最大の数」と主張する動画もあるが、これも誤りである。
(このような悪質な動画は投稿者が数学に興味のない場合が多く、間違いの指摘を送っても言い訳しか返ってこないので悪質である。)
数学的に間違いはなくても、数学の歴史上の文脈を理解していない動画もあるので注意が必要である。
(なぜかYouTubeでは「ヒドラゲームはグラフ理論の研究から生まれた」という言説が広まっている。)
(巨大数を短い時間で大量に紹介する動画は2012年ごろに英語圏で成立したフォーマットであり、ネットカルチャーの歴史としては興味深いものである。)
ニコニコ動画の解説は比較的間違いは少ない。
(巨大数論的には)小さい範囲の巨大数を丁寧に調べるタイプの動画も多く参考になる。
koteitan氏の Googology Map は2018年ごろまでの動向をまとめたものであり、非常に参考になる。
2018~2022頃の巨大数論を調べる際には、FHLASRというサークルがある種の学派のようなものを築いていたことに留意したほうが分かりやすい。
FHLASRのメンバーは巨大数の方法論に関して互いに影響を与え合っていたため、一つの巨大数だけに注目すると文脈を理解できないことがある。
そもそも巨大数論は査読体制を持たないネットカルチャーであり、すべての情報がネット上でやりとりされているため、他のネット上の情報と同様に、どの資料にも間違いが含まれうる。
そのため、内容は玉石混合であり、非常に有意義な数学的議論・博物学的議論からデマまで幅広く存在するのが現状である。
一般に巨大数同士の大小関係は非自明であり、証明はかなり高度になることが多い。
証明が与えられているものもあれば、信用できない議論も存在するので注意が必要である。
巨大数の文脈で「Church-Kleene順序数」という言葉が出てきたら基本信頼できない。
これは英語圏発祥のデマである「Church-Kleene順序数を用いた整礎再帰で、いかなる計算可能関数よりも急増大する関数を定義できる」という主張に由来する。
(2018年ごろにこのデマが拡散され、非常に問題になった。 英語圏のwiki には、数学者の木原貴行先生が間違いを指摘したpdfやp進大好きbotがデマを訂正した痕跡が残されている。この経緯は 木原先生の動画 でも簡単に紹介されている。)
順序数崩壊関数は
基本的にBuchholz's
バシク行列システムの操作の停止性は現状証明されていない。
英語圏の巨大数論者がこれを証明したとする論文をarXiveに投稿したが、これは誤っている。
YouTube上の英語の動画などではバシク行列の停止性が証明されたかのように紹介される場合があるので注意が必要である。
バシク行列はBM1(Bachice Matrix ver.1)~BM4(Bachice Matrix ver.4)まで存在する。
BM4が完成版であり、BM3まではバグを抱えている。
まれに古い資料がBM3以前の定義を紹介していることがあるので注意が必要である。