ご存知、リーマンゼータ関数のオイラー積表示
$\dis\zeta(s)=\prod_{p\in\mathbb{P}}\frac{1}{1-p^{-s}}$
で、無限積は素数をわたっているけど、自然数にしたらどうなるのだろう。という事で、
$\dis Z(s)=\prod_{k=2}^{\infty}\frac{1}{1-k^{-s}}$
を考えてみる。
(k=1の場合は分母がゼロなので除外)
素数の方はリーマンゼータ関数、自然数のほうは自然数ゼータ関数と呼んで区別する。
(僕が適当に考えた名前。知れ渡った呼び方があるならすみません。)
よく知られた素数ゼータ関数がある時点で、自然数ゼータは不適切じゃねと思ったがもう気にしないでください。切実
$0\le |a_n|< 1$のとき、
・$\sum a_n$が収束
・$\prod (1-a_n)$が収束
この二つは同値である事を認めれば、ただ逆数とった$\prod \frac{1}{1-a_n}$の収束も以上に同値で、結局$f(s)$は
$\dis\sum_{k=2}^{\infty}k^{-s}$
と、収束する範囲が同じになる。
ということで、$\mathfrak{R} s>1$で収束する。
やっぱリーマンゼータ関数で魅力的(主観)なのは、素数の積から円周率が出てくること。では、自然数ゼータ関数ではどうだろう。
$Z(s)=\dis\prod_{m=1}^{s}\Gamma(2-e^{\frac{2i\pi m}{s}})$
部分積
$\qquad\dis z_n(s)\coloneqq\prod_{k=2}^{n}\frac{1}{1-k^{-s}}$
を、考える。
神のお告げにより、分母分子$n!^{s}$をかける。
$\qquad\dis z_n(s)=\frac{n!^{s}}{n!^{s}\prod_{k=2}^{n}(1-k^{-s})}$
$n!^{s}$を$\prod$の中に入れる
$\qquad\dis z_n(s)=\frac{n!^{s}}{\prod_{k=2}^{n}(k^{s}-1)}$
分母をどっさり因数分解
$\qquad\dis z_n(s)=\frac{n!^{s}}{\prod_{k=2}^{n}\prod_{m=1}^{s}(k-e^{\frac{2i\pi m}{s}})}$
順序入れ替えて、分子の$n!^{s}$をばらす
$\qquad\dis z_n(s)=\prod_{m=1}^{s}\frac{n!}{\prod_{k=2}^{n}(k-e^{\frac{2i\pi m}{s}})}$
両辺$n\to\infty$にとばす
$\qquad\dis Z(s)=\prod_{m=1}^{s}\lim_{n\to\infty}\frac{n!}{\prod_{k=2}^{n}(k-e^{\frac{2i\pi m}{s}})}$
右辺の極限、どこかで見たことがないだろうか。
答えを言うと、ガンマ関数のガウスの乗積表示(っていうか、定義)
$\dis\Gamma(x+2)=\lim_{n\to\infty}\frac{n!n^x}{\prod_{k=2}^{n}(k+x)}$
が使える。
「$n^x$がついてるやんけ」と、思ったかもしれないけど、なんとも都合よく、$x$が1の$s$乗根を渡るので、指数法則によって$n^0$になって消える。
つまり、
$\qquad\dis Z(s)=\prod_{m=1}^{s}\lim_{n\to\infty}\frac{n!}{\prod_{k=2}^{n}(k-e^{\frac{2i\pi m}{s}})}$
$\qquad\qquad=\dis\prod_{m=1}^{s}\lim_{n\to\infty}\frac{n!n^{-e^{\frac{2i\pi m}{s}}}}{\prod_{k=2}^{n}(k-e^{\frac{2i\pi m}{s}})}$
$\qquad\qquad=\dis\prod_{m=1}^{s}\Gamma(2-e^{\frac{2i\pi m}{s}})$
きたーー
これで計算していってみる。
定理より、
$\qquad Z(2)=\Gamma(2-1)\Gamma(2+1)$
$\qquad\qquad=2$
リーマンゼータ関数では$\dis\zeta(2)=\frac{\pi^2}{6}$のところが、整数。
因みに簡単な計算で
$\qquad z_n(2)=\frac{2n}{1+n}$
が分かるので、リーマンゼータ関数っぽい不思議さはあんまないかも。
定理より
$\qquad Z(3)=\Gamma(1)\Gamma(\frac{5}{2}-\frac{\sqrt3 i}{2})\Gamma(\frac{5}{2}+\frac{\sqrt3 i}{2})$
相反公式を変形したら
$\qquad\Gamma(\frac{5}{2}+x)\Gamma(\frac{5}{2}-x)=\frac{\pi}{\cos(\pi x)}(\frac{1}{4}-x^2)(\frac{9}{4}-x^2)$
を得るので、用いて計算すると
$\qquad Z(3)=\frac{\pi}{\cos\left(\pi (\frac{\sqrt3 i}{2})\right)}(\frac{1}{4}-(\frac{\sqrt3 i}{2})^2)(\frac{9}{4}-(\frac{\sqrt3 i}{2})^2)$
$\qquad=\frac{3\pi}{\cos\left(\pi (\frac{\sqrt3 i}{2})\right)}$
$\qquad=3\pi\sech\left(\frac{\sqrt3}{2}\pi \right)$
$\qquad=\dis\frac{6\pi}{e^{\frac{\sqrt3}{2}\pi }+e^{-\frac{\sqrt3}{2}\pi }}$
リーマンゼータでは閉じた形が未発見な$s=3$だが、自然数ゼータのほうだとできた。おーー。
残念だけど、5以上の奇数ではガンマ関数を用いずには表せなかった。(僕の力不足かも分からん)
なぜなら、相反公式が使えなくなるから。
やっぱゼータにおいて、全ての自然数$s$で特殊値を知るのはむずいのか。
一方、偶数だと計算できる。
なんともゼータらしい。
$\dis Z(2n)=2n(i\pi)^{1-n}\prod_{k=1}^{n-1}\csc\left(\pi e^{\frac{k}{n}i\pi}\right)$
結果を載せると
$\qquad Z(4)=4\pi \csch(\pi)$
$\qquad Z(6)=6\pi^2\sech^2(\frac{\sqrt3 }{2}\pi)$
$\qquad Z(8)=\frac{16\pi^3\csch(\pi)}{\cosh(\sqrt2\pi)-\cos(\sqrt2\pi)}$
加法定理とかの計算がなかなか大変。
上記の方法は全く通用しない。
世の中の他のゼータでも、整数以外で求められるのはまぁないから、難しそう。
でも一応、次からの方法で、無限積じゃない表示を得た。
$\dis \begin{align}Z(s) & =\lim_{n\to\infty}\fraco{n!}\frac{d^n}{dx^n}\Bigg|_{x=0}\exp\left(\suminf{k=1}\frac{\zeta(ks)}{k}x^k\right)\\ &=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n!}\frac{d^n}{dx^n}\Bigg|_{x=0}\prod_{k=1}^{\infty}\frac{1}{1-k^{-s}x}\end{align}$
最終はこれを示す。
無限積の形でできそうなことは済んじゃったので、
$\dis Z(s)=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{p(k)}{k^s}$
このように展開したときの、数列$p(k)$を求める。
リーマンゼータ関数では、
$\begin{align}\zeta(s)=(1+2^{-s}+2^{-2s}+…)\\(1+3^{-s}+3^{-2s}+…)\\(1+5^{-s}+5^{-2s}+…)\\ \vdots\qquad\qquad\end{align}$
となって、各因数からの選び方が素因数分解に一致して、展開したときの係数は全て1だった。
言い換えると、
自然数を素数の積で表す方法は順序を除いて1通りである
となる。(1は素数0個の積)
自然数ゼータ関数では、素数が自然数に入れ替わるので
自然数($k$)を2以上の自然数の積で表す方法は順序を除いて$p(k)$通りである
ということ。
$k$を$n$個の素数$q_{1,2,…n}$で素因数分解する。
$k=\prod_{i=1}^{n}q_i$
このとき、$p(k)$を計算するというのは、これらの素数をグループ分けすることと同じ。
例えば、$n=6$の、あるグループ分け
$\{q_1\},\{q_4,q_6\},\{q_2,q_3,q_5\}$
は、$k$が3つの自然数(グループ内の積)の積でかける、ということを表す。
よって、計算すべきは
$n$個のものを何個かにグループ分けする方法の数
となる。
という事は、ベル数$B_n$だ!
じゃあ完了、というわけはなく、ベル数は、異なる$n$個のもののグループ分けであって、
素因数分解には同じ素数が何回も出てくることがある。よってその重複を省かないといけない。
では、求めよう、と言いたいところだが、簡単な計算では難しそう(主観)だと気づく。
なので、分かりやすいものから段階的に求めていこう
$p_n(k)$を、自然数($k$)を自然数$n$個の積で表す方法の数と定義する
ただし、$p_0(k)$は便宜上
$p_0(k)\coloneqq\Bigg\{ \begin{align} 1\qquad k=1 \qquad \\ 0 \qquad otherwise \end{align}$
$r_n(k)\coloneqq\Bigg\{ \begin{align}1\qquad\quad \sqrt[n]{k}\in\mathbb{N}\\ 0\qquad otherwise\end{align}$
$\dis p_n(k)=\frac{1}{n}\sum_{i=0}^{n-1}\sum_{d|k}p_{i}(d)r_{n-i}(\textstyle\frac{k}{d})$
証明は、、僕の日本語力が欠けるのでざっくりで。
$i=n-1$のときの項に注目してみると、$r_1$はいつでも1なので、$\sum_{d|k}p_{n-1}(d)$というのが出てくる。これは、グループをひとつ固定して、残り$n-1$個のグループ分けをしているということ。
大小(順序)で打ち切らず、約数全てで和をとっているので、$n$で割っている。
次に出す例を見れば何となくわかるけど、残りの項は、因数が重複している場合、$n$で割れなくなるのを調整する為にある。重複しているかを検知するのが、$r_i$となっている。
定理によると
$\begin{align}\dis p_2(k)&=\frac{1}{2}\left(\sum_{d|k}p_0(k)r_2(\textstyle\frac{k}{d})+\dis\sum_{d|k}p_1(d)r_1(\textstyle\frac{k}{d}) \right) \\
\dis &=\frac{1}{2}\left(r_2(k)+\dis\sum_{d|k}p_1(d)r_1(\textstyle\frac{k}{d}) \right)\\
\dis &=\frac{1}{2}\left(r_2(k)+\dis\sum_{d|k}1 \right)\\
\dis &=\frac{1}{2}\left(r_2(k)+d(k) \right)\end{align}$
($d(k)$は約数関数)
右辺はちょっと睨んだら左辺になることが分かる。
$k$の約数を書き出せば、掛けて$k$になる相方が定まるので、$k$を2数の積で表す組を得るが、順序は考えないので2で割れば良い。
また、平方数のときは$(\sqrt k,\sqrt k)$の組に順序はない為、1足して調整する。
3のときも見てみる。
定理によると、
$\begin{align}
p_3(k)&=\dis\fraco{3}\left(r_3(k)+\sum_{d|k}(r_2(\textstyle\frac{k}{d})+p_2(d))\right)\\
&=\dis\fraco{3}\left(r_3(k)+\sum_{d|k}(r_2(d)+p_2(d))\right)
\end{align}$
$p_2$の和を計算している部分は、3数のうち、一つを固定してのこりを2つに分けるということ。
同じく3で割る必要がある。
$r_2$の和の部分は、$p_2$のときに固定されたのが平方数の場合(r_2が検知する場合)、その平方根が固定される場合は1回しかない
$\big(\{a\}_{固定枠},\{a\},\{b\}\big)$と$\big(\{b\}_{固定枠},\{a\},\{a\}\big)$
この2つしかカウントされない
ので、3で割ったときに1とカウントされる為に1足しておく、ということ。
最後に$r_3$を足すのは、立法数だと上記の一回じゃ足りないので、もう一回1足しておく。
こんな感じ。(適当)
$\dis Z_n(s)\coloneqq\suminf{k=1}\frac{p_n(k)}{k^s}$
$\qquad Z_0(s)=1$
$\qquad Z_1(s)=\zeta(s)$ (リーマンゼータ)
$\qquad\dis\lim_{n\to\infty}Z_{n}(s)=Z(s)$
以上がすぐに分かる。
求めた$p_n(k)$の関係式を用いて$Z_n(s)$の関係式を導く
$\dis f*g(n)\coloneqq\sum_{d|n}f(d)g(\textstyle\frac{n}{d})$
$\dis \suminf{k=1}\frac{f*g(k)}{k^s}=\left(\suminf{k=1}\frac{f(k)}{k^s}\right)\left(\suminf{k=1}\frac{g(k)}{k^s}\right)$
証明は、左辺、二重級数にして分子を基準に和をとろうとしたら得る
定理をそのままつっこんで計算する
$\dis\begin{align} Z_n(s)&=\suminf{k=1}\frac{\frac{1}{n}\sum_{i=0}^{n-1}\sum_{d|k}p_{i}(d)r_{n-i}(\textstyle\frac{k}{d})\dis}{k^s}\\
&=\fraco{n}\sum_{i=0}^{n-1}\suminf{k=1}\frac{\sum_{d|k}p_{i}(d)r_{n-i}(\textstyle\frac{k}{d})\dis}{k^s}\\
&=\fraco{n}\sum_{i=0}^{n-1}\suminf{k=1}\frac{p_i*r_{n-i}(k)}{k^s}\\
&=\fraco{n}\sum_{i=0}^{n-1}\left(\suminf{k=1}\frac{p_k}{k^s}\right)\left(\suminf{k=1}\frac{r_{n-i}(k)}{k^s}\right)\\
&=\fraco{n}\sum_{i=0}^{n-1}Z_i(s)\zeta((n-i)s)
\end{align}$
きたぁ。
あとはこの漸化式をどうにかして解いて、$n$を無限大にとばせばいい。
$\dis Z_n(s)=\fraco{n}\sum_{i=0}^{n-1}Z_i(s)\zeta((n-i)s)$
何項間漸化式ってレベルではなさそう。
と、思いきやなんとも都合よく、コーシー積ぽくなっている。
ので、母関数を計算してみる。
$\dis G(s,x)\coloneqq\suminf{k=0}Z_k(s)x^k$
これを用いれば
$\dis\begin{align}\dis\left(\suminf{k=0}Z_k(s)x^k\right)\left(\suminf{k=0}\zeta(ks)x^k\right)&=\suminf{k=0}x^k\sum_{i=0}^{k}Z_i(s)\zeta((k-i)s)\\&=\suminf{k=0}x^k\bigg(kZ_k(s)+Z_k(s)\zeta(0)\bigg)\end{align}$
となるので、移項、微分に注意すると
$\dis G(s,x)\suminf{k=1}\zeta(ks)x^k= x\frac{d}{dx}G(s,x)$
を得る。きたぞ。
$G(s,0)=1$に注意し、この微分方程式を解くと、
$\dis G(s,x)=\exp\left(\suminf{k=1}\frac{\zeta(ks)}{k}x^k\right)$
うぉー。
と、いうことで係数は微分で出てくるので
$\dis Z_n(s)=\fraco{n!}\frac{d^n}{dx^n}\Bigg|_{x=0}\exp\left(\suminf{k=1}\frac{\zeta(ks)}{k}x^k\right)$
テイラー展開は大変そう。
ちょっと変形すると、
$\dis Z_{n}(s)=\frac{1}{n!}\frac{d^n}{dx^n}\Bigg|_{x=0}\prod_{k=1}^{\infty}\frac{1}{1-k^{-s}x}$
なんと元の形っぽいのが出てきた
$x=0$での無限階微分によって、$x=1$の値がわかるようだ。ほう。
都合よく行くことが多くて、良い感じの関数だった。
最後の等式は全くもって$n\to\infty$が計算できる気がしないが、無限積の計算に飽きた人は使ってみてね。
読んでくれてありがとうございました
間違いあれば指摘ください
最初のガンマ関数による表示は、似たようなことがリーマンゼータでもできないか?
素数版ウォリス積みたいな。
関数等式とか、そもそも解析接続があるのか分からないけど、もしあるなら、自然数の分布がわかるのか?
分かったとしたら、逆に非自明零点(あるのかも謎)が分かるのか?
因みにグラフをみると、$Z_k(s)$は、$k$を大きくしていくと、$s<1$では、(無限積としての)発散しているように思われる。
素数、自然数じゃなくて、奇数、合成数とかではどうなる?
無限積は素数も含むので、リーマンゼータ関数を因数に持っていると考えられる。
ということは、同じ零点も持つ?合成数だけの積は、極が生まれる?