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高校数学解説
文献あり

二重数列の漸化式(二変数漸化式)の解法

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この記事では次の定理1の形で表される二重数列の漸化式(二変数漸化式)を扱う.
また例として二項係数と第二種スターリング数の一般項を漸化式から導出する.

二重数列 {an,m}nm0C が次を満たしている.
an,m=f(m)an1,m+g(m)an1,m1(n>m1)
ただし, f,gZ0 から C への写像である.
ここで ak,0, ak,k (k=0,1,) が既知であるとき,
an,m=k=1nma1(k)++am(k)=nmkf(1)a1(k)f(m)am(k)g(1)g(m)ak,0+k=1mbk(k)++bm(k)=nm1f(k)1+bk(k)f(m)bm(k)g(k+1)g(m)ak,k
と表せる. ただし n>m>0 であり, ai(k),bj(k) は非負整数を動く.

n に関する数学的帰納法により示す.
n=2 のとき, 0<m<n=2 より m=1.
a2,1=f(1)a1,1+g(1)a1,0
これは成立している.

n のときに成立していると仮定して n+1 のとき成立することを示す. m=n ならば
an+1,n=f(n)an,n+g(n)an,n1=f(n)an,n+g(n){g(1)g(n1)a1,0+k=1n1f(k)g(k+1)g(n1)ak,k}=g(1)g(n)a1,0+k=1nf(k)g(k+1)g(n)ak,k
となり成立. m=1 ならば
an+1,1=f(1)an,1+g(1)an,0=f(1){k=1n1f(1)nk1g(1)ak,0+f(1)n1a1,1}+g(1)an,0=k=1nf(1)nkg(1)ak,0+f(1)na1,1
となり成立. 1<m<n ならば
an+1,m=f(m)an,m+g(m)an,m1=f(m){k=1nma1(k)++am(k)=nmkf(1)a0(k)f(m)am(k)g(1)g(m)ak,0+k=1mbk(k)++bm(k)=nm1f(k)1+bk(k)f(m)bm(k)g(k+1)g(m)ak,k}+g(m){k=1nm+1a1(k)++am1(k)=nmk+1f(1)a1(k)f(m1)am1(k)g(1)g(m1)ak,0+k=1m1bk(k)++bm1(k)=nmf(k)1+bk(k)f(m1)bm1(k)g(k+1)g(m1)ak,k}=k=1nm+1a1(k)++am(k)=nmk+1f(1)a1(k)f(m)am(k)g(1)g(m)ak,0+k=1mbk(k)++bm(k)=nmf(k)1+bk(k)f(m)bm(k)g(k+1)g(m)ak,k
となり成立する. 以上から示された.

定理1の状況で特に f(m)p, g(m)q とすると次が従う.

p,qC に対して, 二重数列 {an,m}nm0C が次を満たしている.
an,m=pan1,m+qan1,m1(n>m1)
ここで ak,0, ak,k (k=0,1,) が既知であるとき, 一般項は
an,m=pnmqm{k=1nm(nk1m1)ak,0pk+k=1m(nk1mk)ak,kqk}
と表せる. ただし n>m>0 である.

またさらに次が成立する.

定理1の状況で, さらに f(1),f(2), の値が相異なるならば
an,m=k=1nmg(1)g(m)ak,0i=1mf(i)nk11jm,ji{f(i)f(j)}+k=1mf(k)g(k+1)g(m)ak,ki=kmf(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}
と表せる. ただし n>m>0 である.

定理1より, 相異なる x1,,xnC と任意の非負整数 m に対して
a1++an=mx1a1xnan=k=1nxkn+m1lk(xkxl)
を示せば十分. まずは n2 かつ a=0,1,,n2 のとき
k=1nxkalk(xkxl)=0
となることを示す. i<j のとき左辺に xjxi をかけて xjxi とすると
xiaki,j(xixk)xiaki,j(xixk)=0
となる. よって
i<j(xjxi)k=1nxkalk(xkxl)
は次数が高々
(n2)an1=an2
の多項式であるが, これが0でないなら因数定理より任意の i<j に対して xjxi を因数にもつ. すなわち次数が n(n1)2 以上となるがこれは矛盾.よって示された.

次に
a1++an=mx1a1xnan=k=1nxkn+m1lk(xkxl)
n に関する数学的帰納法により示す. n=1 のときは自明. n までで成立しているときに n+1 のときでも成立していることを示す.
a1++an+1=mx1a1xn+1an+1=an+1=0mxn+1an+1a1++an=man+1x1a1xnan=an+1=0mxn+1an+1k=1nxkn+man+11lk,n+1(xkxl)=k=1nxkn+m1lk,n+1(xkxl)(xn+1xk)m+11xn+1xk1=k=1nxkn1lk,n+1(xkxl)xn+1m+1xkm+1xn+1xk=k=1nxkn+mxkn1xn+1m+1lk(xkxl)
ここで, 先に示していたことから
k=1n+1xkn1lk(xkxl)=0
が成立している. よって
a1++an+1=mx1a1xn+1an+1=k=1nxkn+mlk(xkxl)+xn+1m+1xn+1n1ln+1(xn+1xl)=k=1n+1xkn+mlk(xkxl)
となり示された.

定理3をより整えるために次の補題を考える.

fZ0 から C への写像であるとし, f(1),f(2), が相異なるとすると
k=1if(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=f(i)n11jm,ji{f(i)f(j)}
が成立する.

k=1if(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=f(i)nii<jm{f(i)f(j)}+k=1i1f(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=f(i)nii<jm{f(i)f(j)}+k=1i1{f(i)(f(i)f(k))}f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=f(i)nii<jm{f(i)f(j)}+k=1i1{f(i)nkkjm,ji{f(i)f(j)}f(i)nk1k+1jm,ji{f(i)f(j)}}=f(i)n11jm,ji{f(i)f(j)}

補題4を用いると次の定理が示される.

定理3の状況に加え
ak,k=g(1)g(k)a0,0(k=1,2,)
となるとき
an,m=g(1)g(m)i=1mk=0nmak,0f(i)nk11jm,ji{f(i)f(j)}
と表せる. ただし nm>0 である.

定理3に ak,k の条件を代入すると
an,m=g(1)g(m){i=1mk=1nmak,0f(i)nk11jm,ji{f(i)f(j)}+a0,0k=1mi=kmf(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}}
を得る. {} 内の二項目について 1km,kim1im,1ki は同値であるので, 補題4より
k=1mi=kmf(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=i=1mk=1if(k)f(i)nk1kjm,ji{f(i)f(j)}=i=1mf(i)n11jm,ji{f(i)f(j)}
が従う. 以上から上記の二つの式を合わせると直ちに従う.

二項係数による漸化式

f(m),g(m)1, ak,0=ak,k=1 とすると定理2から
an,m=k=1nm(nk1m1)+k=1m(nk1nm1)
となる. ここで ホッケースティック恒等式 より
an,m=(n1m)+(n1nm)=(nm)
が従う.

第二種スターリング数

f(m)=m, g(m)1, ak,0=0(k=1,2,), ak,k=1(k=0,1,) とすると定理5から
an,m=i=1min11jm,ji(ij)=i=1m(1)miin1(i1)!(mi)!=1m!i=1m(1)mi(mi)in
を得る. 第二種スターリング数の詳しい説明については こちら .

参考文献

投稿日:111
更新日:112
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