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現代数学解説
文献あり

Göbel数列

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はじめまして.たいせいです.今回はGöbel数列という数列を紹介したいと思います。あまり馴染みがないかもしれませんが, 前提知識はそこまで多くないので色んな方に楽しんでもらいたいです.

まず唐突ではありますが, Göbel数列を定義します.歴史的な背景に興味のある方は1をご覧ください.

Göbel数列

次のように定義される数列$\{g_n\}$ をGöbel数列という.
$g_0=1 \quad g_n=\dfrac{1+g_0^2+g_1^2+\cdots g_{n-1}^2}{n} \quad (n=1,2,\cdots)$

とりあえず定義をしたので例を見てみましょう.

Göbel数列

$g_1=1+g_0^2=2 \quad g_2=\frac{1+g_0^2+g_1^2}{2}=3 \quad g_3=\frac{1+g_0^2+g_1^2+g_2^2}{3}=5 $
$ g_4=\frac{1+g_0^2+g_1^2+g_2^2+g_3^2}{4}=10 \quad g_5=\frac{1+g_0^2+g_1^2+g_2^2+g_3^2+g_4^2}{5}=28 \quad g_6=\frac{1+g_0^2+g_1^2+g_2^2+g_3^2+g_4^2+g_5^2}{6}=154 \cdots $

この先も興味のある方は計算してみていただきたいのですが, 定義から有理数列ではあることがわかるこのGöbel数列は, なぜか整数が続くことがわかります.$g_{42}$まで整数になり,$g_{43}$で初めて整数でなくなります(そのあとはずっと整数ではない有理数が続きます).興味のある方は2をご覧ください.本記事ではこのあと, この数列の指数部分を一般の$k\geq2$に置き換えた$k$-Göbel数列に関する定理(の一部)を同じような方針を使って証明するので省略します.ただこれだけわかってもほえ~としかならないと思いますが,$k$-Göbel数列についてもそれなりに整数が続くことがわかります.(面白い!)
そのまえにこの数列を計算していく中で気付かれたかもしれませんが以下のような漸化式が成り立つことがわかります.

Göbel数列$\{g_n\}$について以下の漸化式が成り立つ.
$ng_n=g_{n-1}(n-1+g_{n-1})\quad (n=2,3,\cdots)$

特に証明はしませんが,簡単な計算でわかると思います(これに関してはある程度手を動かせば本当に簡単にわかるはずです).

そして$k$-Göbel数列を定義します.

$k$-Göbel数列

$k$を2以上の整数とする. 次のように定義される数列$ \{g_{k,n}\}$$k$-Göbel数列という.
$g_{k,0}=1 \quad g_{k,n}=\dfrac{1+g_{k,0}{}^k+g_{k,1}{}^k+\cdots g_{k,n-1}{}^k}{n} \quad (n=1,2,\cdots)$

またまた例を見ていきましょう.

3-Göbel数列
$g_{3,0}=1 \quad g_{3,1}=2 \quad g_{3,2}=\frac{1+1^3+2^3}{2}=5 \quad g_{3,4}=\frac{1+1^3+2^3+5^3}{3}=45 \quad \cdots $
4-Göbel数列
$g_{4,0}=1 \quad g_{4,1}=2 \quad g_{4,2}=\frac{1+1^4+2^4}{2}=9 \quad g_{4,3}=\frac{1+1^4+2^4+9^4}{3}=2193 \cdots $

この$k$-Göbel数列についても例の感じだとある程度整数が続く気がしますね.ではどこまで整数が続くかが気になるわけですが, これも$k$がいろいろ動いても不思議なことにそれなりに整数が続きます.まずは$k=2$(普通のGöbel数列)のときに成り立っていた補題1とおなじような形の式がこの場合にも成り立つことがわかります.

$k$-Göbel数列$\{g_{k,n}\}$に対して次の漸化式が成り立つ.
$ng_{k,n}=g_{k.{n-1}}(n-1+g_{k,{n-1}}{}^{k-1})\quad (n=2,3,\cdots)$

そして今回もどこまで整数であり続けるか, ということが気になるので,1つ記号(整数でなくなるポイント)を用意します.

$k\geq 2$ に対して
$N_k=\inf \{n\in \mathbb{N}; g_{k,n} \notin \mathbb{Z} \}$
とする.

細かい注意

$\inf$はご存じなければ$\min$と読み替えてもらって大丈夫です.じゃあなんで$\inf$なのかということですが, まだこの$N_k$は常に有限かどうかがわかっていないからなんです!(細かいことを気にしない方や$\inf$をまだ勉強されてない方は適当にスルーしてもらってもこの先の内容はわかるはずなので大丈夫です)

コンピュータ計算に任せた$N_k$の表を置いておきます.もっと大きな $k$についても計算ができるみたいですが,それを書くには(心の)余白がありません.

$k$234567891011
$N_k$43899721419239377983239
$k$12131415161718192021
$N_k$314311979238274317331103
$k$22232425262728293031
$N_k$94731924314110153811471077
$k$32333435363738394041
$N_k$19251293111347123864347
$k$42434445464748495051
$N_k$19419311918333759155919127
$k$52535455565758596061
$N_k$10916367353831918310719503

ちょっと観察すると例えば素数が多いなと思いますね. なんとなく気になることをまとめておきますが, このほかにも色んな感想があると思うので自由に眺めてもらえたらと思います.

  • $N_k$ はこの範囲では 19 以上.
  • $N_k$ には素数が多く表れている.
  • $N_k$ の持つ素因数は高々2つ?
  • $N_k$ にはどんな素数が現れる?

このあたりがパッと見で気になることかと思います.そして1つ目に関して, なんとなく予想できる方がいるのかもしれませんが(僕はまさかと思いましたが笑), $k$-Göbel数列の整数性については次のことがわかっています.

$\displaystyle \min_{k\geq2} N_k =19$ $\quad N_k=19 \Longleftrightarrow k\equiv6,14 \quad$ $\text{mod}$18

つまりどんな $k$ に対しても $n=18$ までは整数が続くということです! かなり不思議なことが起こっていますが,定理を証明していきましょう.とはいっても長くなるので次回に回したいと思います.興味がある方は考えてみてください!

参考文献

[1]
小林銅蟲, 関信一朗, せいすうたん1
[2]
Matsuhira, Matsusaka, and Tsuchida, How long can k-Göbel sequences remain integers?, The American Mathematical Monthly , 2023, 6
投稿日:223
更新日:225
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