今日は、任意の有限長の数字列は、無理数である円周率(の小数展開を数字列とみなしたとき)の必ずどこかに含まれるのだろうか。というおはなしです。こういうと若干抽象的に聞こえますが。
無理数であれば、小数展開しても、循環すらせずに延々と無限に数字が続きます。
無理数には、円周率 $\pi = 3.14159265358979\cdots$ のほかに、ネイピア数(自然対数の底という名前のほうが有名?) $\mathrm{e}=2.718281828459045\cdots$、あと平方数でない整数の平方根 $ \sqrt{2}, \sqrt{3}, \sqrt{5}, \cdots $、などが無理数の代表例です。
そもそも無理数とは、整数 $a$ と、正の整数 $b$ を用いて $a/b$ と表すことのできない数でした。
ちょっと脱線。かつて(2006年)京都大学の入試において、数学の問題で
「$\tan 1^{\circ}$ は有理数か?」
という問題が出題されました。タンジェント1度です。1ラジアンではありません
結論から言うと「$\tan 1^{\circ}$ は有理数ではない」ということになります。つまり「はい」か「いいえ」で答えれば点がもらえるのだったら「いいえ」と答えるだけでいいはずですね。その問題は上記の原文ママだそうで、「その答えが正しいことを証明せよ」とはひとことも書いてありませんでした。
昔読んだ高校生向けの数学勉強法の本に「ぶっきらぼうな設問にはぶっきらぼうに答えてよいが、ていないな設問にはちゃんとていねいに答えよう」みたいなことが書かれていました。こんな(証明せよとすら書いていない)ぶっきらぼうな問いかけには「イエス」か「ノー」かの二択でいいような気もしますが。ダメですね。ましてや、京都大学ともなれば。まぁ、暗黙の了解的に。
さて、無理数の中でも円周率は特別な性質を持っていると考えられているそうです。雇用形態にも正規、非正規があるように無理数の中にも正規、非正規の区別があるとか?
正規数についてのWikipediaの記事
もご覧ください。
ここで、私からも問いかけをおひとつ。
任意の無理数 $ r $ について、それを十進展開したときどこかに任意の有限長の数字列を含むか。
(「数字」とは十進法で用いる 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 の文字のことで、「数字列」とは数字を1個以上並べたものを指す)
これの答え、結論から言うと「いいえ」です。
たとえば、0 と 1 だけを使用して $0.0110101000101000101000100000101 \cdots $ (小数点以下 $n$ 桁目は $n$ が素数のとき $1$、そうでなければ $0$)のような無理数を作れるからです。$0$ と $1$ だけで構成されていると二進数と勘違いしてしまいそうですが。
しかし、無理数の中には「任意の有限長の数字列」をどこかに必ず含んでいる(と証明されているらしい?)というすごいものがあります。そのひとつが円周率であり、それこそが円周率の(無理数のうちでも)特別な性質だとのことです。
言い換えれば、あなたの生まれた年(1995などと西暦で表せば4桁。和暦なら2桁以下ですが)、誕生日(3月14日なら0314などの4桁)、その二つを組み合わせた生年月日(19950314などの8桁、言語によっては「日月年」の順番で14031995などと表すこともあるが)、特定の人以外には秘密にしているはずの電話番号(10~11桁)、日本政府の管理する個人番号いわゆるマイナンバー(12桁)、クレジットカードの番号(16桁)などなど。たとえ16桁だろうと、いやそれ以上どれだけ大きな桁数であろうと、任意の有限桁の数字列は、円周率のどこかに必ず含むらしいのですよね。ほんとかなぁ、と思ってしまいます。
証明もしていないくせに、読んでいないくせに、断定するのは気が引けますが。
まぁ、数学のイノチとも言えそうな「証明」とかがどうも苦手な私、でも計算機実験なら……。ということで、4桁の場合についてのみ、ためしに調べてみました。
その結果、とりあえず、0000~9999までの10000通りの数字列のうち任意のものは円周率の10万桁以内のどこかに必ず含んでいることもわかりました。
我々に身近な4桁の数字列。ご愛車の番号だとか、電話番号の下4桁とか。あと生年月日や記念日などの西暦年や日付(月日)などいろいろあります。キャッシュカードの暗証番号も4桁の数字列であることが多いですね。銀行では推測されやすい番号を暗証番号にしないように言っていますが。
これに関してのコーディングや結果などは次回の記事にまとめます。