局所小圏${\mathcal C}$を任意に固定します。任意のi,j${ \in }$Ob(${\mathcal C}$)に対して
(広義の)関係iSjを「$ hom(i,j)\neq\emptyset$かつ$hom(j,i)\neq\emptyset$」で定義します。この(iとjに対して存在すれば一意に定まる)関係は
という同値関係の条件を満たします。
(証明)1.恒等射の存在より$ hom(i,i)\neq\emptyset.$
2.は明らか。3.$ hom(i,j)\neq\emptyset$かつ$hom(j,i)\neq\emptyset$かつ$ hom(j,k)\neq\emptyset$かつ$hom(k,j)\neq\emptyset$とすると、射$f_1:i \to j,f_2:j \to i,g_1:j \to k,g_2:k \to j$が存在するので
$g_1\circ f_1:i \to k,g_2\circ f_2:i \to k$が存在。よって$ hom(i,k)\neq\emptyset$かつ$hom(k,i)\neq\emptyset.$(証明終)
そこで、同値類[i]:={j$\in $ Ob(${\mathcal C}$)|i$\in $ Ob(${\mathcal C}$)と関係iSjを持つ}
からなる類Ob(${\mathcal C}$)/Sが定められます。
ここで薄い圏の考察(5)で見た標準的な薄い圏の構成法にならって、以下のような射の定義を与える。
任意のi,j$\in Ob(\mathcal{C})$に対して、hom(i,j)が空集合でないとき、なんでもよいので$ f_{ij} $ を一つ取ってそれを[i],[j]に対して唯ひとつの射$ f_{[i][j]} $として定める。
hom(i,j)が空集合のときは$ f_{[i][j]} $は存在しないとする。
このとき、C(Ob(${\mathcal C}$)/S,{$f_{[i][j]}$}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は薄い圏となる。
(証明)1.まず任意のi$\in Ob(\mathcal{C})$に対して(恒等射の存在より)hom(i,i)は空集合でないので$ f_{[i][i]} $は存在する。
2.$ f_{[i][j]} $と$ f_{[j][k]} $が存在するとき、hom(i,j)もhom(j,k)も空集合でないので先で見たようにhom(i,k)は空ではない。よって定義より唯ひとつの射$ f_{[i][k]} $は唯一存在する。つまり射の合成$ f_{[j][k]}\circ f_{[i][j]}:= f_{[i][k]}$はwell-defined。
1.2.より$ f_{[i][j]} $は『薄い圏の考察(1)』の定義1の条件を満たす(広義の)二項演算となるので、C(Ob(${\mathcal C}$)/S,{$f_{[i][j]}$}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は薄い圏となる。
(証明終)
また、定義よりf$_{[i][j]}$とf$_{[j][i]}$がともにあるとき[i]=[j]となります。すなわちC(Ob(${\mathcal C}$)/S,{$f_{[i][j]}$}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は骨格的な薄い圏です。
${\mathcal C}$が小圏のとき、C(Ob(${\mathcal C}$)/S,{$f_{[i][j]}$}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は半順序集合になります。
上の設定に基づいて、対象についての写像
$T(i)=[i]$ と
射についての写像
$T(f:i→j)={f_{[i][j]}}$ を定めると、自然な薄化関手
$T:\mathcal{C}$ → C(Ob(${\mathcal C}$)/S,{$f_{[i][j]}$}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)
が定義できます。
($T$が関手となるのは『薄い圏の考察3」の命題1よりわかる)
さらに、h$_{[i][j]}$:={hom(i',j')|i'$\in $[i]かつj'$\in $[j]}
を射としたC(Ob(${\mathcal C}$)/S,h)は強連結な薄い圏になります。
(証明)まず射h$_{[i][j]}$の一意性、すなわち$[i_1]=[i_2]$かつ$[j_1]=[j_2]$ならば$h_{[i_1][j_1]}=h_{[i_2][j_2]}$を示す。(証明)
i'$\in [i_1]$かつj'$\in [j_1]$なるhom(i',j')を任意に取ると
「$ hom(i_1,i')\neq\emptyset$かつ$hom(i',i_1)\neq\emptyset$かつ
$ hom(j_1,j')\neq\emptyset$かつ$hom(j',j_1)\neq\emptyset$」と
「$ hom(i_1,i_2)\neq\emptyset$かつ$hom(i_2,i_1)\neq\emptyset$かつ
$ hom(j_1,j_2)\neq\emptyset$かつ$hom(j_2,j_1)\neq\emptyset$」が成り立つので
「$ hom(i_2,i')\neq\emptyset$かつ$hom(i',i_2)\neq\emptyset$かつ
$ hom(j_2,j')\neq\emptyset$かつ$hom(j',j_2)\neq\emptyset$」が言える。
すなわちi'$\in [i_2]$かつj'$\in [j_2]$が成立するので
$hom(i',j')\in h_{[i_2][j_2]} $となり$h_{[i_1][j_1]}\subset h_{[i_2][j_2]}$が言える。同じく$h_{[i_2][j_2]}\subset h_{[i_1][j_1]}$が言える。よって$h_{[i_1][j_1]}=h_{[i_2][j_2]}$が成立。(証明終)
また任意のi,j$\in Ob(\mathcal{C})$に対して、h$_{[i][j]}$は集合として(たとえ空集合であっても)必ず存在するので強連結。(証明終)
特に${\mathcal C}$が小圏のとき、C(Ob(${\mathcal C}$)/S,h)は全順序集合になります。