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反復積分とその級数表示の関係について

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こんにちは、itouです。

反復積分

反復積分とは、例えば次のような積分をさします。
01A(t)dtA(t)dtka1 個B(t)dtA(t)dtA(t)dtka11 個B(t)dtA(t)dtA(t)dtk11 個B(t)dt
ここで積分は一番右から実行し、B(t)tで積分してA(t)を乗じてtで積分してA(t)を乗じてtで積分して……B(t)tで積分してA(t)を乗じて……というように、名前の通り積分を反復していきます。
今回は反復積分の級数表示を得る上での簡単な方法を考えてみたという記事です。

反復積分と級数表示

反復積分の級数表示を得るには、積分を級数展開しながら実行していけばよいです。このとき、
一回の反復積分、ε(t)dtという操作は(直前の)tの式に対し、tの指数を変化させ、係数になにかを乗じる、という変化を起こします。これを表にすると、以下のようになります。
Mは操作前のtの指数、miは0以上の整数を渡る変数です。また、aは定数とします。)

ε(t)dtMの変化係数に乗じられる式
dttaMMa+11Ma+1
上でa=1のときMM1M
上でa=0のときMM1M+1
tadt1tMM+mi+a+11M+mi+a+1
上でa=1のときMM+mi1M+mi
上でa=0のときMM+mi+11M+mi+1

分かりにくいと思うので説明します。
01dttdttk1 個dt1t
を考えます。まずはじめはM=0なので、dt1tによって

(t)0m1+1()11m1+1 
となります。つぎにdttによって、
(t)m1+1m1+1()1m1+11(m1+1)2 
となります。さらにもう一度dttを作用して、
(t)m1+1m1+1()1(m1+1)21(m1+1)3 
これを繰り返すと結局、正味のtの指数と係数は、
(t)0m1+1()11(m1+1)k 
となります。m1は0以上を渡るので、
01dttdttk1 個dt1t=m1=01(m1+1)k=n1>01n1k
ふつうに反復積分を級数展開する手続きを、tの指数と係数とで分けて考えただけです。

作用の合成

上の例で、dttdttk1 個dt1tという一連の操作は、操作前のtの指数をM、係数をCMとして、

(t)MM+mi+1()CMCM1(M+mi+1)k 
に対応することが確認できました。同様に、複数の積分を合成した作用を表にしてみます。以下、(x)nはポッホハマー記号です。

操作正味のMの変化係数に乗じられる式
dttdttk1 個dt1tMM+mi+11(M+mi+1)k
dttdttk 個MM1Mk
dtdtk 個MM+k1(M+1)(M+2)(M+k)=1(M+1)k
dtdtk 個dttaMMa+1+k1(Ma+1)(Ma+2)(Ma+1+k)
上でk=a1のときMM1(Ma+1)(Ma+2)(M)=(Ma)!M!
dtdtk1 個dttkdt1tMM+mi+11M+mi+1(M+mi+1k)!(M+mi+1)!
dttdttl 個dtt2dtt2k1 個tk1dt1tMM+mi+11(M+mi+1)l(M+mi+1)k

これらを用いて実際に級数表示を得ます。反復積分の式は横に長く見にくくなってしまうので、次のように略記します。

記法

dttdttk1 個dt1tSkとし,

01dttdttka1 個dt1tdttdttka11 個dt1tdttdttk11 個dt1t=01SkaSka1Sk1

というようにかく.

Sk=dttdttk1 個dt1tとすると、表より、
=01SkaSka1Sk1=m1,m2,ma=01(m1+1)k1(m1+m2+2)k1(m1+m2+ma+a)k1=0<m1<m2<ma1m1k1m2k2maka

MZVの級数表示ですね。正味のMの変化がMM+mi+1であるような操作を用いると、このように0<m1<m2<maを渡る和として書くことができます。

Sk=dtdtk1 個dttkdt1t とすると、表より、
=01SkaSka1Sk1=0<m1<m2<ma1m1(m1k)!(m1)!1m2(m2k)!(m2)!1ma(mak)!(ma)!

Sk,l=dttdttl 個dtt2dtt2k1 個tk1dt1t とすると、表より、
=01Ska,laSka1,la1Sk1,l1=0<m1<m2<ma1(m1)k1m1l1(m2)k2m2l2(ma)kamala

感想

というわけで反復積分を級数表示にする方法でした。……もともとはシャッフル積と調和積をもつ、MZV以外の対象を見つけようと思ってやり始めたのですが、上の結果をみるとなさそうな感じがします。正味のMの変化がMM+mi+1であるような操作で、かつシャッフルして形が保存されるようなものが他にないのではと。ここから思いつきの話なのですが、シャッフル積って分数階積分入りのシャッフル積分に対してもできるのでしょうか?
k回微分を(参考: まめけびさんのサイト
Dk(tn)=Γ(n+1)Γ(nk+1)tnk
とすると、k階積分は
Dk(tn)=Γ(n+1)Γ(n+k+1)tn+k
として定義されます。
これをf(t)(dt)kというように書くことにします。例えば
01tndt=Γ(n+1)Γ(n+3/2)tn+1/2
です。1/2階積分について操作の表を得ると、

ε(t)dtMの変化係数に乗じられる式
dttaMMa+1/2Γ(Ma+1)Γ(Ma+3/2)
上でa=1/2のときMMΓ(M+1/2)Γ(M+1)
tadt1tMM+mi+a+1/2Γ(M+mi+a+1)Γ(M+mi+a+3/2)
上でa=1/2のときMM+mi+1Γ(M+mi+3/2)Γ(M+mi+2)

これを使うと、

01dttdttka1 個dt1tdttdttka11 個dt1tdttdttk11 個dt1t=0<m1<m2<ma(Γ(m1+1/2)Γ(m1+1))k1(Γ(m2+1/2)Γ(m2+1))k2(Γ(ma+1/2)Γ(ma+1))ka
を得ます。級数表示をみると調和積が入ることが分かりますが、シャッフル積は入るのでしょうか?

謝辞

ここまで読んで下さりありがとうございました。誤植等指摘お願いいたします。

投稿日:2024310
更新日:2024310
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itou
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