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東大数理院試過去問解答例(2013B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2013B06

C級関数f:R(0,)のグラフをx軸の周りに回転して得られる曲面
M:={(x,y,z)|f(x)2=y2+z2}
を考える。ここでC級曲線c:RMが測地線であるとは、任意の実数tについてc(t)0であり、その上で条件

  • ベクトルddtc(t)c(t)は、Mc(t)に於ける接平面に垂直

を満たすことを指す。以下の問いに答えなさい。

  1. αを定数とする。曲線c(t)=(f(t),f(t)cosα,f(t)sinα)は測地線であることを示しなさい。
  2. 測地線c:RMについて、Mc(t)に於ける子午線と速度ベクトルc(t)の為す角をω(t)c(t)x軸の距離をr(t)とおく。このときr(t)sinω(t)tに依存しないことを示しなさい。但しMpに於ける子午線とは、x軸とpを通る平面とMの共通部分として得られる曲線を指す。
  3. f(x)=exとする。測地線cx座標が下に有界でないのは、cがパラメータの取り替えを除いて(1)で求めた測地線(et,etcosα,etsinα)またはその一部である場合に限られることを示しなさい。
  1. M上の座標(s,θ)を、この表示が(s,f(s)cosθ,f(s)sinθ)に対応するように与える。このときc(t)=(s,θ)に於ける接平面は(1,f(s)cosθ,f(s)sinθ)(0,sinθ,cosθ)で生成される。ここで測地線c=(c1,c2,c3)の満たすべき式は
    (ddt(c1,c2,c3)c12+c22+c32)(1,f(s)cosθ,f(s)sinθ)=0
    (ddt(c1,c2,c3)c12+c22+c32)(0,sinθ,cosθ)
    である。ここにθ=αを代入すると
    ddt(c1,c2,c3)c12+c22+c32=0
    であるから、測地線であることがわかる。
  2. 測地線の定義はパラメータに依らないから、以下c12+c22+c32=1と仮定して良い。ここでc1=s,c2=f(s)cosθ,c3=f(s)sinθとしたとき、(1)で求めた測地線の式の二つ目は
    (ddt(s,f(s)scosθf(s)θsinθf(s)ssinθ+f(s)θcosθ))(0,sinθ,f(s)cosθ)=(s,f(s)s2cosθ+f(s)scosθf(s)sθsinθf(s)sθsinθf(s)θsinθf(s)θ2cosθ,f(s)s2sinθ+f(s)ssinθ+f(s)sθcosθ+f(s)sθcosθ+f(s)θcosθf(s)θ2sinθ)(0,sinθ,cosθ)=0
    であり、これをまとめると
    2f(s)f(s)sθ+θ=0
    になる。よって測地線c(t)=(s,θ)はこの微分方程式を満たす。ここで
    r(t)=f(s)
    r(t)=f(s)s
    sinω(t)=c(t)(0,sinθ,cosθ)=f(s)θ
    ddtsinω(t)=f(s)sθ+f(s)θ
    であるから、これらとその前に導出したθについての微分方程式から
    ddt(r(t)sinθ)=2f(s)f(s)sθ+f(s)2θ=0
    が従う。
  3. cx座標が下に有界でないとする。このとき常に|sinω(t)|<1である一方、r(t)=exであり|r(t)sinω(t)|は任意の正の実数εについて、|r(t)sinω(t)|<εとなるようなtを取ることができるから、(2)からr(t)sinω(t)は常に0である。ここから結果が従う。
投稿日:202438
更新日:202438
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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