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ここでは東大数理の修士課程の院試の2025A05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2025A05
位相空間$X,Y$とその間の写像$f:X\to Y$が次の条件
- $f$は単射である。
- 任意のコンパクト部分集合$K$に対して$f(K)$もコンパクトである。
を満たすとする。次の問いに答えなさい。
- $X,Y$が共に距離空間ならば$f$は連続であることを示しなさい。
- 条件(i)(ii)を満たす$f:X\to Y$で、$Y$が距離空間であり、$f$が連続でない例を挙げなさい。
- 条件(i)(ii)を満たす$f:X\to Y$で、$X$が距離空間であり、$f$が連続でない例を挙げなさい。
- $\{x_n\}_{n=0}^\infty$を$x\in X$に収束する点列とする。ここで$\{f(x_n)\}_{n=0}^\infty$のある部分列が$f(x)$にする部分列を持たないとし、これを$\{f(x_{k(n)})\}$とおく。ここで$\{x_n\}_{n=0}^\infty\cup\{x\}$は距離空間の点列コンパクト集合、特にコンパクト集合なので、(ii)より$\{f(x_n)\}_{n=0}^\infty\cup\{f(x)\}$は距離空間のコンパクト集合、特に点列コンパクト集合である。よって$\{f(x_{k(n)})\}$は収束部分列を持ち、この収束値を$f(x_{k(\infty)})$とおく。このとき
$$
f(x)\neq f(x_{k(\infty)})\in \bigcap_{N\in\mathbb{N}}\left(\{f_n\}_{n=N}^\infty\cup\{f(x)\}\right)
$$
であるが、(i)より右辺は$\{f(x)\}$であり矛盾が従う。よって$\{f(x_n)\}_{n=0}^\infty$は任意の部分列が$f(x)$に収束する部分列を持つから、
$$
\lim_{n\to\infty}f(x_n)=f(x)
$$
が従い、$f$の連続性が示せた。 - 集合としては$X=Y=\{1,2\}$とし、$X$に密着位相、$Y$に離散位相を入れる。$f:X\to Y$を恒等射としたとき、これは条件(i)(ii)を満たす一方、連続ではない。
- 集合としては$X=Y=\mathbb{R}$とし、$X$には通常の位相を、$Y$には$Y,\{0\},\varnothing$を開集合とする位相を入れる。$f:X\to Y$を恒等射としたとき、$f$は条件(i)(ii)を満たす一方、$f^{-1}(\{0\})=\{0\}$は$X$の開集合ではないから不連続である。