1
現代数学解説
文献あり

群上のフーリエ変換3:フーリエ変換のL2理論

41
0
$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{B}[0]{\mathcal{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{c}[0]{\cdot} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{f}[0]{\hat{f}} \newcommand{F}[0]{\mathcal{F}} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{FF}[6]{{}_3F_2\left(\begin{matrix}#1,#2,#3\\#4,#5\end{matrix};#6\right)} \newcommand{G}[0]{\widehat{G}} \newcommand{g}[0]{\hat{g}} \newcommand{Ga}[0]{\Gamma} \newcommand{Gal}[0]{\operatorname{Gal}} \newcommand{H}[0]{\mathbb{H}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{ip}[2]{\langle #1, #2\rangle} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{L}[0]{\mathcal{L}} \newcommand{la}[0]{\lambda} \newcommand{La}[0]{\Lambda} \newcommand{Li}[0]{\operatorname{Li}} \newcommand{li}[0]{\operatorname{li}} \newcommand{M}[4]{\begin{pmatrix}#1& #2\\#3& #4\end{pmatrix}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{n}[1]{\| #1\|} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{O}[0]{\Omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{one}[0]{\boldsymbol{1}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{P}[0]{\mathfrak{P}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tF}[0]{\widetilde{\mathcal{F}}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{wh}[0]{\widehat} \newcommand{x}[0]{\chi} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では 前回の記事 に引き続き局所コンパクトアーベル群上のフーリエ変換
$$\f(\x)=\int_Gf(x)\ol{\x(x)}dx$$
の性質について簡単に解説していきます。
 今回の記事ではフーリエ変換の$L^2$理論として有名なプランシュレルの定理を中心に、パーセバルの等式
$$\int_Gf(x)\ol{g(x)}dx=\int_\G\f(\x)\ol{\g(\x)}d\x$$
やコンパクトアーベル群上のフーリエ級数展開
$$f(x)=\sum_{\x\in\G}\ip f\x\x(x)$$
について解説していきます。

語句の定義

 まずプランシュレルの定理の主張を記述するのに必要な語句等を定めておきましょう。
 以下、特に断りがなければ$G$は局所コンパクトアーベル群、$dx,d\x$$G,\G$の双対なハール測度、つまり反転公式
$$f(x)=\int_\G\f(\x)\x(x)d\x$$
が成り立つものとします。

ヒルベルト空間

 $\R$または$\C$上の線形空間$X$に対し、写像$\ip\c\c:X\times X\to\C$であって

  1. $\ip yx=\ol{\ip xy}$
  2. $\ip{ax_1+bx_2}y=a\ip{x_1}y+b\ip{x_2}y\quad(a,b\in\C)$
  3. $\ip xx\geq0$
  4. $\ip xx=0\iff x=0$

を満たすようなものを$X$内積と言い、内積を備えた空間$X$のことを内積空間と言う。
 また内積が定めるノルム(が定める距離$d$)
$$\n x=\ip xx^{\frac12}\qquad(d(x,y)=\n{x-y})$$
について完備な内積空間$X$のことをヒルベルト空間と言う。

 なお調和解析の文脈ではしばしばペアリング
$$G\times\G\to\mathbb T,\quad(x,\x)\mapsto\ip x\x=\x(x)$$
として$\ip x\x$という記号が用いられるので、内積の記号と混同しないよう注意しましょう。

$L^2$の内積

 $f,g\in L^2(G)$に対し内積$\ip fg$
$$\langle f,g\rangle=\int_Gf(x)\ol{g(x)}dx$$
によって定める(ヘルダーの不等式$\n{fg}_{L^1}\leq\n f_{L^2}\n g_{L^2}$からこの積分は収束する)。
 このとき$L^2(G)$はヒルベルト空間となる。

 ちなみに一般の測度空間$X$$1\leq p\leq\infty$に対し$p$乗可積分な関数全体$L^p(X)$$L^p$ノルムに関して完備であることが知られています。

等長作用素

 ヒルベルト空間$X$から$Y$への線形作用素$T$が任意の$x,y\in X$に対し
$$\ip{Tx}{Ty}_Y=\ip xy_X$$
を満たすことと、任意の$x\in X$に対し
$$\n{Tx}_Y=\n x_X$$
を満たすことは同値である。
 またこの条件を満たすとき$T$等長であると言う。

 複素内積空間においては
$$4\ip xy=\n{x+y}-\n{x-y}+i(\n{x+iy}-\n{x-iy})$$
が、実内積空間においては
$$4\ip xy=\n{x+y}-\n{x-y}$$
が成り立つことに注意するとわかる。

ユニタリ作用素

 ヒルベルト空間$X$から$Y$への線形作用素であって、等長かつ定義域・値域が$X,Y$に等しいもののことをユニタリ作用素と言う。また$X$から$Y$へのユニタリ作用素が存在するとき、$X$$Y$ヒルベルト空間として同型であると言う。

パーセバルの等式

 ではまず
$$\int_G|f(x)|^2dx=\int_\G|\f(\x)|^2d\x$$
という形のパーセバルの等式を示していきましょう。

畳み込み

 局所コンパクト群$G$上の関数$f,g\in L^1(G)$に対し、その畳み込み$f*g\in L^1(G)$
$$f*g(x)=\int_Gf(y)g(y^{-1}x)dx$$
によって定める(ただし積分は左ハール測度で考える)。

 特に$G$がアーベル群であれば(その演算を加法で表すと)
$$f*g(x)=\int_Gf(y)g(x-y)d\mu$$
と見慣れた形に表せます。

 $\wh{f*g}=\f\c\g$が成り立つ。

\begin{align} \wh{f*g}(\x) &=\int_G\l(\int_Gf(y)g(y^{-1}x)dy\r)\ol{\x(x)}dx\\ &=\int_G\l(\int_Gf(y)g(y^{-1}x)dy\r)\ol{\x(y)\x(y^{-1}x)}dx\\ &=\int_Gf(y)\ol{\x(y)}\l(\int_Gg(y^{-1}x)\ol{\x(y^{-1}x)}dx\r)dy\\ &=\l(\int_Gf(y)\ol{\x(y)}dy\r)\l(\int_G g(x)\ol{\x(x)}dx\r)\\ &=\f(\x)\g(\x) \end{align}
とわかる。

 上の補題において$G$の可換性は仮定しませんでしたが、以下$G$は可換であるものとします。

パーセバルの等式

 $f\in L^1(G)\cap L^2(G)$に対し
$$\int_G|f(x)|^2dx=\int_\G|\f(\x)|^2d\x$$
が成り立つ。特に$\f\in L^2(\G)$となる。

 $f\in L^1(G)\cap L^2(G)$に対し$f^*(x)=\ol{f(x^{-1})}$とおく。
 このとき$\wh{f*f^*}\in L^1(G)$が成り立つことが知られている。つまり反転公式によって
$$f*f^*(1)=\int_\G\wh{f*f^*}(\x)d\x$$
が成り立つことに注意する。
 また$f^*$のフーリエ変換は
\begin{align} \wh{f^*}(\x) &=\int_G\ol{f(x^{-1})\x(x)}dx\\ &=\ol{\int_G f(x)\x(x^{-1})dx}\\ &=\ol{\int_G f(x)\ol{\x(x)}dx}\\ &=\ol{\f(\x)} \end{align}
と求まるので
\begin{align} f*f^*(1) &=\int_Gf(x)f^*(x^{-1})dx\\ &=\int_G|f(x)|^2dx\\ =\int_\G\wh{f*f^*}(\x)d\x &=\int_\G\f(\x)\widehat{f^*}(\x)d\x\\ &=\int_\G|\f(\x)|^2d\x \end{align}
を得る。

プランシュレルの定理

 いま$f\in L^1(G)$に対しそのフーリエ変換$\f$を対応させる作用素$\F:f\mapsto\f$を考えたとき、パーセバルの等式は$\F$$L^1(G)\cap L^2(G)$から$L^2(\G)$への等長作用素となることを意味しています。
 そしてこの作用素の拡張に関する次の主張のことをプランシュレルの定理と言います。

プランシュレルの定理

 $L^1(G)\cap L^2(G)$上の作用素
$$\F:L^1(G)\cap L^2(G)\to L^2(\G),\quad f\mapsto\f$$
$L^2(G)$から$L^2(\G)$へのユニタリ作用素に一意に拡張される。
 特に$L^2(G)$$L^2(\G)$はヒルベルト空間として同型である。

 これは次の$2$つの主張(この記事では証明しません)

  • $L^1(G)\cap L^2(G)$$L^2(G)$において稠密である
  • $\F(L^1(G)\cap L^2(G))$$L^2(\G)$において稠密である

を示すことで確かめられます。実際これが成り立てば次の補題によって所望の拡張を得ることができます。

 ヒルベルト空間$X$から$Y$への等長線形作用素$T$について、その定義域$D$と値域$R$がそれぞれ$X,Y$において稠密であるとき、$T$$X$から$Y$へのユニタリ作用素に一意に拡張される。

 任意の$x\in X$に対し、稠密性から$x$に収束する$D$内の列$\{x_n\}$が取れ、このとき
$$\n{Tx_m-Tx_n}_Y=\n{x_m-x_n}_X\to0\quad(m,n\to\infty)$$
より$\{Tx_n\}$$Y$内のコーシー列、つまり収束列となるので
$$T'x=\lim_{n\to\infty}Tx_n$$
と定めることで$T$の拡張$T'$が得られる。
 また$T$の連続性からその拡張はこのようなものしか存在しないことがわかり、
$$\n{T'x}_Y=\lim_{n\to\infty}\n{Tx_n}_Y=\lim_{n\to\infty}\n{x_n}_X=\n x_X$$
よりこれは等長作用素となる。
 そして先と同様に$T$の等長性から$y\in Y$に収束する$R$内の列$\{y_n\}=\{Tx_n\}$に対し$X$内の列$\{x_n\}$はある$x\in X$に収束することがわかり、このとき$T'x=y$が成り立つので$T'$の値域は$Y$となる。

 つまるところ$f\in L^2(G)$$L^2$収束する$L^1(G)\cap L^2(G)$内の列$\{f_n\}$に対し、$L^2$収束の意味で
$$(\F f)(\x)=\lim_{n\to\infty}(\F f_n)(\x)=\lim_{n\to\infty}\int_Gf_n(x)\ol{\x(x)}dx$$
と定めることで$\F$の定義域を$L^2(G)$に拡張できるというわけです。
 ただしこの極限は各点の値に関して
$$|(\F f)(\x)-(\F f_n)(\x)|\to0$$
が成り立つことを意味しているのではなく、$L^2$ノルムに関して
$$\n{\F f-\F f_n}_{L^2}=\l(\int_\G|\F f-\F f_n|^2d\x\r)^{\frac12}\to0$$
が成り立つことを意味していることに注意しましょう。

極限の取り方について

 ちなみに$G$$\s$-有限、つまりあるボレル可測集合の増大列$E_n$があって$\mu(E_n)<\infty$および$G=\bigcup_n E_n$が成り立つときは
$$(\F f)(\x)=\lim_{n\to\infty}\int_{E_n}f(x)\ol{\x(x)}dx$$
とも表せます。
 実際そのことは
$$f_n(x)=\l\{\begin{array}{ll} f(x)&(x\in E_n)\\0&(x\notin E_n) \end{array}\r.$$
とおいたとき、ヘルダーの不等式から
$$\n{f_n}_{L^1}\leq\n f_{L^2}\c\n{\one_{E_n}}_{L^2}=\n f_{L^2}\c\mu(E_n)^{\frac12}<\infty$$
つまり$f_n\in L^1(G)\cap L^2(G)$が成り立ち、また単調収束定理とかから
\begin{align} \lim_{n\to\infty}\n{f-f_n}_{L^2}^2 &=\lim_{n\to\infty}\int_G|f-f_n|^2dx\\ &=\int_G\lim_{n\to\infty}|f-f_n|^2dx\\ &=0 \end{align}
が成り立つことからわかります。

反転公式

 また$g\in L^1(\G)\cap L^2(\G)$に対し逆フーリエ変換を対応させる作用素
$$\tF:L^1(\G)\cap L^2(\G)\to L^2(G),\quad g(\x)\mapsto\int_\G g(\x)\x(x)d\x$$
を考えたとき、$L^2(G)$のある稠密集合$\B$において反転公式
$$\tF\F f=f$$
が成り立つ、つまり$L^2(\G)$の稠密集合$\F(\B)$において
$$\tF g=\F^{-1}g$$
が成り立つことが知られているので、プランシュレルの定理による$\tF$の拡張は$\F$の逆作用素となることがわかります。
 つまり次のような反転公式が得られるというわけです。

反転公式

 任意の$f\in L^2(G)$に対し$\F f$$L^2$収束する$L^1(\G)\cap L^2(\G)$内の列$\{g_n\}$を取ると、$L^2$収束の意味で
$$f(x)=\lim_{n\to\infty}\int_\G g_n(\x)\x(x)d\x$$
が成り立つ。

 例えば$\R$$\Z$$\s$-有限であることから次のような反転公式が得られます。

 $f\in L^2(\R)$に対し、そのフーリエ変換を$L^2$収束の意味で
$$\f(y)=\lim_{R\to\infty}\int_{|x|\leq R}f(x)e^{-2\pi ixy}dx$$
によって定めると、$L^2$収束の意味で
$$f(x)=\lim_{R\to\infty}\int_{|y|\leq R}\f(y)e^{2\pi ixy}dy$$
が成り立つ。

 $f\in L^2(\R/\Z)$に対し
$$\f(n)=\int^1_0f(x)e^{-2\pi inx}dx$$
とおくと、$L^2$収束の意味で
$$f(x)=\lim_{N\to\infty}\sum^N_{n=-N}\f(n)e^{2\pi inx}$$
が成り立つ。

パーセバルの等式

 ところで$\F$は等長作用素ということだったので以下の公式が成り立ちます。

 $f,g\in L^2(G)$に対し
$$\int_Gf(x)\ol{g(x)}dx=\int_\G(\F f)(\x)\ol{(\F g)(\x)}d\x$$
が成り立つ。

 この公式のことをパーセバルの等式、あるいはパーセバル・プランシュレルの等式と言います。

指標の完全正規直交性

 最後にコンパクトアーベル群上のフーリエ変換、いわゆるフーリエ級数に関する$L^2$理論について解説していきましょう。
 いま$G$をコンパクトアーベル群とすると、その指標$\x$に対し
$$\int_G|\x(x)|^2dx=\int_Gdx=\mu(G)<\infty$$
つまり$\x\in L^2(G)$が成り立つので、任意の$f\in L^2(G)$に対しフーリエ変換
$$\f(\x)=\int_Gf(x)\ol{\x(x)}dx$$
の右辺は収束し、特にこれは内積$\ip f\x$として表せることになります。
 となると$G$上の反転公式は
$$f(x)=\sum_{\x\in\G}\ip f\x\x(x)$$
と表せることになりますが、実際これは$L^2$収束の意味で任意の$f\in L^2(G)$に対し成り立ち、特に$\{\x\}_{\x\in\G}$はヒルベルト空間$L^2(G)$の完全正規直交系をなすことがわかります。
 以下でそのことについて簡単に見ていきましょう。

完全正規直交系

 ヒルベルト空間$X$の点からなる族$\{e_\la\}_{\la\in\La}$正規直交系であるとは
$$\ip{e_\la}{e_{\la'}}=\l\{\begin{array}{ll} 1&(\la=\la')\\0&(\la\neq\la') \end{array}\r.$$
が成り立つことを言う。
 また正規直交系$\{e_\la\}$完全であるとは、任意の$x\in X$に対し
$$x=\sum_{\la\in\La}\ip x{e_\la}e_\la$$
が成り立つことを言う。またこのような表示のことを$x$フーリエ展開と言う。

 ただしこの右辺の和は次のような意味での収束を考えています(冗長なので折り畳み)。

和の収束性について
非可算和の収束

 ヒルベルト空間$X$の点列$\{x_n\}^\infty_{n=0}$に対し和
$$\sum^\infty_{n=0}x_n$$
無条件収束するとは、任意の全単射$\s:\Z_{\geq0}\to\Z_{\geq0}$に対し$\sum^\infty_{n=0}x_{\s(n)}$が同じ値に収束することを言う。
 また$X$の点からなる族$\{x_\la\}_{\la\in\La}$に対し和
$$\sum_{\la\in\La}x_\la$$
が収束するとは、高々可算な集合$\La'$以外の点で$x_\la=0$であり、また和$\sum_{\la\in\La'}x_\la$が無条件収束することを言う。

 ちなみに$X=\C$においては
$$(\text{絶対収束})\iff(\text{無条件収束})$$
が成り立ちますが(cf. リーマンの再配列定理)、一般の空間においては
$$(\text{絶対収束})\Longrightarrow(\text{無条件収束})$$
までしか言えません。

 ヒルベルト空間$X$の正規直交系$\{e_\la\}$について、任意の$x\in X$に対し
$$\n x=\sum_{\la\in\La}|\ip x{e_\la}|^2$$
が成り立っていれば$\{e_\la\}$は完全である。

 仮定より和$\sum_\la|\ip x{e_\la}|^2$は収束するので、ある高々可算な集合$\La'$以外の点では$\ip x{e_\la}=0$となり、また$\{e_\la\}$の正規直交性に注意すると任意の有限集合$\L\subseteq\La'$に対し
\begin{align} \l\|x-\sum_{\la\in\L}\ip x{e_\la}e_\la\r\|^2 &=\n x^2-2\Re\l\langle x,\sum_{\la\in\L}\ip x{e_\la}e_\la\r\rangle+\l\|\sum_{\la\in\L}\ip x{e_\la}e_\la\r\|^2\\ &=\n x^2-2\sum_{\la\in\L}|\ip x{e_\la}|^2+\sum_{\la\in\L}|\ip x{e_\la}|^2\\ &=\n x^2-\sum_{\la\in\L}|\ip x{e_\la}|^2\\ &\to0\qquad(\L\to\La') \end{align}
と評価できるので
$$x=\sum_{\la\in\La}\ip x{e_\la}e_\la$$
を得る。

 コンパクトアーベル群$G$に対しそのハール測度$\mu$$\mu(G)=1$を満たすように取ったとき、$G$の指標群$\G$$L^2(G)$の完全正規直交系をなす。
 特に任意の$f\in L^2(G)$に対し、$L^2$収束の意味で
$$f(x)=\sum_{\x\in\G}\ip f\x\x(x)$$
が成り立つ。

正規性

$$\ip\x\x=\int_G|\x(x)|^2dx=\int_Gdx=\mu(G)=1$$
とわかる。

直交性

 $\x\neq\x'$なる$\x,\x'\in\G$に対し、$\x(a)\neq\x'(a)$なる$a\in X$を取ると
\begin{align} \x(a)\ip\x{\x'} &=\int_G\x(ax)\ol{\x'(x)}dx\\ &=\int_G\x(x)\ol{\x'(a^{-1}x)}dx\\ &=\x'(a)\ip\x{\x'} \end{align}
が成り立つので$\ip\x{\x'}=0$でなければならないことがわかる。

完全性

 パーセバルの等式から任意の$f\in L^2(G)$に対し
$$\int_G|f(x)|^2dx=\sum_{\x\in\G}|\f(\x)|^2=\sum_{\x\in\G}|\ip f\x|^2$$
が成り立っていたことと上の補題からわかる。

参考文献

[1]
Gerald B. Folland, A Course in Abstract Harmonic Analysis - 2nd Edition, CRC Press, 2015
[2]
黒田 成俊, 関数解析, 共立出版, 1980
投稿日:18日前
更新日:18日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

子葉
子葉
1104
273558
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中