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一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[リーマン曲率テンソル編]

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前置き

この記事は「一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[曲線座標編]」の続きです。

まだ読んでいない方は先にご覧ください。

一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[曲線座標編]

テンソル場の扱いはできるようになったと思うのでリーマン曲率テンソルまで進みましょう。

曲線の曲率

そもそも曲率とはなんなんでしょうか。

簡単に言うと「曲がり具合」のことです。

車で道路を走っているところを想像してください。

曲率の小さい道路を走っているときはハンドルをゆっくり回せば済みますが、曲率が大きい急カーブでは大きくハンドルを回さないといけません。

それが曲線の曲率です。

ここではいちばん簡単な曲率として、$2$次元の曲線の曲率を考えていきます。

まずは曲率の厳密な定義から。

曲線の曲率

$C$を向きの定められた曲線とする。$C$上に点$\text{A},\text{B}(\text{A} \ne \text{B})$を取る。

$l_{\text{AB}}$を曲線$\text{AB}$の符号付き長さ(曲線$\text{AB}$の向きが$C$と一致しているときは正、逆のときは負)とし、$\theta_{\text{AB}}$$A$での接線を反時計回りに$\theta_{\text{AB}}$回転させると$\text{B}$での接線と平行になるような角度$( -\pi < \theta_{\text{AB}}<\pi)$とする。

このとき、$\text{A}$上での$C$の曲率$\chi$

\begin{eqnarray} \chi = \lim_{\mathrm{B} \rightarrow \mathrm{A}}\frac{\theta_{\mathrm{AB}}}{l_{\mathrm{AB}}} \end{eqnarray}

で定義する。

また、曲率$\chi$の逆数$\frac{1}{\chi}$を曲率半径と呼ぶ。

試しに1問解いてみましょう。

反時計回りで半径が$r$の円である曲線$C$がある。$C$上の点$\text{A}$における曲率を求めよ。

解答

$\text{A}$の十分近くに点$\text{B}$をとる。

$l_{\text{AB}}=\theta_{\text{AB}} \, r$より$\chi=\frac{1}{r}$を得る。

これにより、曲率とは弧の半径の逆数のようなものだと捉えることができます。

もう1問やってみましょう。

曲線$C$が媒介変数$t$により$(f(t),g(t))$と媒介変数表示されている。このとき、$t=a$での曲率$\chi(a)$を求めよ。

解答

$a$に十分近い実数$b \, (a \ne b)$を取り、$(f(a),g(a))$を点$\text{A},(f(b),g(b))$を点$\text{B}$とする。

$f$$t$による$1$階微分を$\dot{f},2$階微分を$\ddot{f}$で表す。

また、$\boldsymbol{x}(t)=(f(t),g(t)), \, \boldsymbol{v}(t)=(\dot{f}(t),\dot{g}(t)), \, \boldsymbol{a}(t)=(\ddot{f}(t),\ddot{g}(t))$

とおく。

一次近似により$\boldsymbol{v}(b) \sim \boldsymbol{v}(a)+(b-a)\boldsymbol{a}(a)$が得られる。

$\boldsymbol{v}(a)$$\boldsymbol{v}(b)$がなす三角形の面積$S$

\begin{eqnarray} S&=&\frac{1}{2}|\boldsymbol{v}(a)||\boldsymbol{v}(b)|\sin \theta_{\text{AB}} \\ &=&\frac{1}{2}\text{det}(\boldsymbol{v}(a),\boldsymbol{v}(b)-\boldsymbol{v}(a)) \\ &\sim& \frac{1}{2}\text{det}(\boldsymbol{v}(a),(b-a)\boldsymbol{a}(a)) \\ &=& \frac{1}{2}(b-a)\text{det}(\boldsymbol{v}(a),\boldsymbol{a}(a)). \end{eqnarray}

よって

\begin{eqnarray} \sin \theta_{\text{AB}} \sim \frac{(b-a)\text{det}(\boldsymbol{v}(a),\boldsymbol{a}(a))}{|\boldsymbol{v}(a)||\boldsymbol{v}(b)|}. \end{eqnarray}

一方、

\begin{eqnarray} l_{\text{AB}}=\int^b_a |\boldsymbol{v}(t)| \mathrm{d}t \end{eqnarray}

より一次近似から

\begin{eqnarray} l_{\text{AB}} \sim (b-a)|\boldsymbol{v}(a)| \end{eqnarray}

を得る。$\sin \theta \sim \theta$より

\begin{eqnarray} \chi&=&\lim_{b \rightarrow a}\frac{\theta_{\mathrm{AB}}}{l_{\mathrm{AB}}} \\ &=& \lim_{b \rightarrow a}\frac{\sin \theta_{\mathrm{AB}}}{l_{\mathrm{AB}}} \\ &=& \lim_{b \rightarrow a} \frac{(b-a)\text{det}(\boldsymbol{v}(a),\boldsymbol{a}(a))}{|\boldsymbol{v}(a)||\boldsymbol{v}(b)|(b-a)|\boldsymbol{v}(a)|} \\ &=& \frac{\text{det}(\boldsymbol{v}(a),\boldsymbol{a}(a))}{|\boldsymbol{v}(a)|^3}. \end{eqnarray}

以上より次の定理を得ます。

曲線の曲率

曲線$C$$t$での位置ベクトルを$\boldsymbol{x}(t),$速度ベクトルを$\boldsymbol{v}(t),$加速度ベクトルを$\boldsymbol{a}(t)$とおく。

このとき、$a$での曲率$\chi(t)$

\begin{eqnarray} \chi(t)=\frac{\text{det}(\boldsymbol{v}(t),\boldsymbol{a}(t))}{|\boldsymbol{v}(t)|^3}. \end{eqnarray}

1つ問題をやってみましょう。

曲線$C$$\boldsymbol{x}(t)=(R \cos t, R \sin t) \, \, \, (0 \leq t <2\pi)$ と媒介変数表示されている。

  1. 速度ベクトル(接線ベクトル)$\boldsymbol{v}(t)$を求めよ。
  2. 加速度ベクトル$\boldsymbol{a}(t)$を求めよ。
  3. 曲率$\chi(t)$を求めよ。
  4. 単位法線ベクトル$\boldsymbol{n}(t)$を1つ求めよ。
  5. $\boldsymbol{n}(t)$$t$により微分したベクトル$\dot{\boldsymbol{n}}(t)$を求めよ。
  6. $\dot{\boldsymbol{n}}(t)/\boldsymbol{v}(t)$を求めよ。
解答
  1. $t$で微分して、$\boldsymbol{v}(t)=(-R \sin t, R \cos t).$
  2. $\boldsymbol{v}(t)$をさらに$t$で微分して、$\boldsymbol{a}(t)=(-R \cos t, -R \sin t).$
  3. 曲率の式より
    \begin{eqnarray} \chi(t)&=&\frac{\text{det}(\boldsymbol{v}(t),\boldsymbol{a}(t))}{|\boldsymbol{v}(t)|^3} \\ &=& \frac{1}{R}. \end{eqnarray}
  4. $\boldsymbol{v}(t)$と直交する単位ベクトルを1つ選べば
    \begin{eqnarray} \boldsymbol{n}(t)&=& ( \cos t, \sin t). \end{eqnarray}
  5. $\boldsymbol{n}(t)$をさらに$t$で微分し
    \begin{eqnarray} \dot{\boldsymbol{n}}(t)&=& ( -\sin t, \cos t). \end{eqnarray}
  6. $\frac{1}{R}$となり曲率$\chi(t)$と一致する。

単位法線ベクトルと接線ベクトルが平行になりその比が曲率に一致しましたね。

これは一般的な状況でも成り立ちます。

曲率

$C$$t$での外向きの単位法線ベクトルを$\boldsymbol{n}(t),$接線ベクトルを$\boldsymbol{v}(t)$とする。

このとき、曲率$\chi(t)$

\begin{eqnarray} \frac{\mathrm{d} \boldsymbol{n}(t)}{\mathrm{d}t}=\chi(t)\boldsymbol{v}(t) \end{eqnarray}

で定義する。

この定義であれば曲線だけでなく曲面であっても曲率が求められます。

やってみましょう。

曲面の曲率

ここからは曲面の曲率を求めていきます。

曲率

$C$$t$での外向きの単位法線ベクトルを$\boldsymbol{n}(t),$接線ベクトルを$\boldsymbol{v}(t)$とする。

このとき、曲率$\chi(t)$

\begin{eqnarray} \frac{\mathrm{d} \boldsymbol{n}(t)}{\mathrm{d}t}=\chi(t)\boldsymbol{v}(t) \end{eqnarray}

で定義する。

これを踏まえて早速問題を解いてみましょう。

球面$\boldsymbol{E}(\theta,\varphi)=(R \sin \theta \cos \varphi, R \sin \theta \sin \varphi, R \cos \theta) \, \, \, (0 \leq \theta \leq \pi, 0 \leq \varphi < 2\pi)$がある。

  1. $\varphi$を固定し$\boldsymbol{E}$$\theta$の関数と見たときの$(R \sin \theta \cos \varphi, R \sin \theta \sin \varphi, R \cos \theta)$上の曲率$\chi(\theta)$を求めよ。
  2. $\theta$を固定し$\boldsymbol{E}$$\varphi$の関数と見たときの$(R \sin \theta \cos \varphi, R \sin \theta \sin \varphi, R \cos \theta)$上の曲率$\chi(\varphi)$を求めよ。
解答
  1. 外向きの単位法線ベクトルは$\boldsymbol{n}(\theta,\varphi)=( \sin \theta \cos \varphi, \sin \theta \sin \varphi, \cos \theta)$で与えられる。
    これを$\theta$で偏微分して$\partial_\theta \boldsymbol{n}(\theta,\varphi)=(\cos \theta \cos \varphi, \cos \theta \sin \varphi,-\sin \theta)$を得る。
    一方、$\boldsymbol{v}(\theta)=(R\cos \theta \cos \varphi, R\cos \theta \sin \varphi,-R\sin \theta)$であるから$\chi(\theta)=\frac{1}{R}$を得る。
  2. (1)と同様に、$\chi(\varphi)=\frac{1}{R}$を得る。

このように、偏微分すれば各変数ごとの曲率は得られます。

ですが、すべての変数を動かした上での曲率が知りたいときはどうすればいいのでしょうか?

曲線の曲率では変数が1つだけでありベクトルも1つだけだったのでそのまま比を求めれば済みました。

今度は出てくるベクトルが2つです。

そんなときは外積を使いましょう。

ベクトルの外積を使えば、2つのベクトルから1つの新しいベクトルが作れます。

そのベクトルの比を曲率と定義します。

ガウス曲率

$\mathbb{R}^3$上の曲面$C$$\boldsymbol{S}(u^1,u^2)$で表されているとき、ガウス曲率$\chi(u^1,u^2)$

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^2} =\chi(u^1,u^2) \, \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^2} \end{eqnarray}

で定義する。ここに、$\boldsymbol{n}$$(u^1,u^2)$での外向きの単位法線ベクトルである。

この定義のもとでガウス曲率を求めてみましょう。

球面$\boldsymbol{E}(\theta,\varphi)=(R \sin \theta \cos \varphi, R \sin \theta \sin \varphi, R \cos \theta) \, \, \, (0 \leq \theta \leq \pi, 0 \leq \varphi < 2\pi)$がある。

ガウス曲率$\chi(\theta,\varphi)$を求めよ。

解答

外向きの単位法線ベクトルは$\boldsymbol{n}(\theta,\varphi)=( \sin \theta \cos \varphi, \sin \theta \sin \varphi, \cos \theta)$で与えられる。

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial \theta}×\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial \varphi}&=&\begin{pmatrix} \cos \theta \cos \varphi \\ \cos \theta \sin \varphi \\ -\sin \theta \end{pmatrix}×\begin{pmatrix} -\sin \theta \sin \varphi \\ \sin \theta \cos \varphi \\ 0 \end{pmatrix} \\ &=& \begin{pmatrix} \sin^2 \theta \cos \varphi \\ \sin^2 \theta \sin \varphi \\ \sin \theta \cos \theta \end{pmatrix}, \end{eqnarray}

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial \theta}×\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial \varphi}&=&\begin{pmatrix} R\cos \theta \cos \varphi \\ R\cos \theta \sin \varphi \\ -R\sin \theta \end{pmatrix}×\begin{pmatrix} -R\sin \theta \sin \varphi \\ R\sin \theta \cos \varphi \\ 0 \end{pmatrix} \\ &=& \begin{pmatrix} R^2 \sin^2 \theta \cos \varphi \\ R^2 \sin^2 \theta \sin \varphi \\ R^2 \sin \theta \cos \theta \end{pmatrix} \end{eqnarray}

より$\chi(\theta, \varphi)=\frac{1}{R^2}$を得る。

球面の曲率は$\frac{1}{R^2}$になるんですね。

ガウス曲率にはもうひとつの表し方があります。

ガウス曲率

$\mathbb{R}^3$上の曲面$\boldsymbol{S}(u^1,u^2)$のガウス曲率$\chi(u^1,u^2)$

\begin{eqnarray} \det \left(\boldsymbol{n} \cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j} \right)=\chi(u^1,u^2) \det \left(\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} \right) \end{eqnarray}

で定義してもよい。ここに、$(i,j)=(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)$であり$\det$でその$2×2$行列の行列式を表す。

展開すれば

\begin{eqnarray} \left( \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^2} \right) \cdot \left( \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^2} \right)=\det \left(\boldsymbol{n} \cdot \frac{\partial^2 S}{\partial u^i \partial u^j} \right) \end{eqnarray}

および

\begin{eqnarray} \left( \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^2} \right) \cdot \left( \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^1}×\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^2} \right)=\det \left(\frac{\partial S}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial S}{\partial u^j} \right) \end{eqnarray}

が得られる。

この定理を用いて球面の曲率を計算することもできますね。

驚異の定理

直線と曲線座標の変換を考えたとき、計量テンソルは

\begin{eqnarray} g_{ij}=\frac{\partial \boldsymbol{x}}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{x}}{\partial u^j} \end{eqnarray}

で表されました。

それと全く同じように、曲面上の計量は曲面の式を$\boldsymbol{S}$として

\begin{eqnarray} g_{ij}=\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} \end{eqnarray}

で表されます。

接続係数は計量を用いて表すことができました。

では、ガウス曲率は計量を用いて表すことはできるのでしょうか?

やってみましょう。

ガウス曲率(再掲)

$\mathbb{R}^3$上の曲面$\boldsymbol{S}(u^1,u^2)$のガウス曲率$\chi(u^1,u^2)$

\begin{eqnarray} \det \left(\boldsymbol{n} \cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j} \right)=\chi(u^1,u^2) \det \left(\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} \right) \end{eqnarray}

で定義してもよい。ここに、$(i,j)=(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)$であり$\det$でその$2×2$行列の行列式を表す。

この式の右辺はすでに計量で表されていますね。

目標は左辺を計量で表すことです。

ガウス曲率を計量を用いて表せ。できない場合は理由を述べよ。

解答

接続係数は計量によって表されるから、偏微分してガウス曲率を接続係数と計量に結びつける式を導出することが目標である。

$\mathbb{R}^3$上で考えると、法線ベクトルと接ベクトルが直交していることから内積の偏微分より

\begin{eqnarray} \frac{\partial}{\partial u^j}\left( \boldsymbol{n} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i} \right) &=& 0 \\ &=& \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^j} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i}+\boldsymbol{n}\cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j}. \end{eqnarray}

よって

\begin{eqnarray} \boldsymbol{n}\cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j}=-\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^j} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^i}=h_{ij} \end{eqnarray}

を得る。(新しく$h_{ij}$とおいた。)

ここで、$\boldsymbol{n}$の微分は接平面に含まれるから2つの接ベクトルの線形結合で表せるはずである。新しく係数$A^j_i$を用意して

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^i}=A^j_i\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} \end{eqnarray}

とおく。両辺$\boldsymbol{S}$の微分で内積をとると

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^i}\cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j}=A^k_i\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^k}\cdot \frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} &\iff& -h_{ji}=A^k_ig_{kj} \\ &\iff& -h_{ji}g^{jl}=A^k_ig_{kj}g^{jl}=A^k_i\delta^l_k=A^l_i \\ \end{eqnarray}

を得る。ゆえに$A^j_i=-h_{ki}g^{kj}$

\begin{eqnarray} \frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^i}=-h_{ki}g^{kj}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^j} \end{eqnarray}

が得られる。

一方で、ベクトル$\boldsymbol{a}$$\boldsymbol{n}$方向の成分は$\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{n}$であるから$\mathbb{R}^3$上では

\begin{eqnarray} \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j}&=&\Gamma^k_{ij}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^k}+\left( \boldsymbol{n}\cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j} \right)\boldsymbol{n} \\ &=& \Gamma^k_{ij}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^k}+h_{ij}\boldsymbol{n} \end{eqnarray}

を得る。これをまた偏微分すれば、積の偏微分より

\begin{eqnarray} \frac{\partial^3 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j \partial u^k}&=&\frac{\partial \Gamma^l_{ij}}{\partial u^k}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^l}+\Gamma^l_{ij}\frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^k \partial u^l}+\frac{\partial h_{ij}}{\partial u^k}\boldsymbol{n}+h_{ij}\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^k} \\ &=& \frac{\partial \Gamma^l_{ij}}{\partial u^k}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^l}+\Gamma^l_{ij}\left( \Gamma^m_{kl}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}+h_{ij}\boldsymbol{n} \right)+\frac{\partial h_{ij}}{\partial u^k}\boldsymbol{n}+h_{ij}\frac{\partial \boldsymbol{n}}{\partial u^k} \\ &=& \frac{\partial \Gamma^l_{ij}}{\partial u^k}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^l}+\Gamma^l_{ij}\left( \Gamma^m_{kl}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}+h_{ij}\boldsymbol{n} \right)+\frac{\partial h_{ij}}{\partial u^k}\boldsymbol{n}-h_{ij}h_{lk}g^{lm}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m} \\ &=& \frac{\partial \Gamma^m_{ij}}{\partial u^k}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}+\Gamma^l_{ij}\left( \Gamma^m_{kl}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}+h_{ij}\boldsymbol{n} \right)+\frac{\partial h_{ij}}{\partial u^k}\boldsymbol{n}-h_{ij}h_{lk}g^{lm}\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m} \\ &=& \left( \frac{\partial \Gamma^m_{ij}}{\partial u^k}+\Gamma^l_{ij}\Gamma^m_{kl}-h_{ij}h_{lk}g^{lm} \right)\frac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}+\left( \Gamma^l_{ij}h_{ij}+\frac{\partial h_{ij}}{\partial u^k} \right)\boldsymbol{n}. \end{eqnarray}

ここで$i,j,k$は交換可能であるから、$\dfrac{\partial \boldsymbol{S}}{\partial u^m}$の係数を比較して等式を得ることができる。

$j,k$を入れ替えると、

\begin{eqnarray} &&\frac{\partial \Gamma^m_{ij}}{\partial u^k}+\Gamma^l_{ij}\Gamma^m_{kl}-h_{ij}h_{lk}g^{lm}=\frac{\partial \Gamma^m_{ik}}{\partial u^j}+\Gamma^l_{ik}\Gamma^m_{jl}-h_{ik}h_{lj}g^{lm} \\ &&\iff (h_{ij}h_{lk}-h_{ik}h_{lj})g^{lm}= \frac{\partial \Gamma^m_{ij}}{\partial u^k}-\frac{\partial \Gamma^m_{ik}}{\partial u^j}+\Gamma^l_{ij}\Gamma^m_{kl}-\Gamma^l_{ik}\Gamma^m_{jl} =R^m_{ikj}. \end{eqnarray}

新しく$R^m_{ikj}$とおいた。

$l=1,2$は媒介変数で消えることに注意して、

\begin{eqnarray} (h_{ij}h_{lk}-h_{ik}h_{lj})g^{lm}g_{mn}&=&(h_{ij}h_{lk}-h_{ik}h_{lj})\delta^l_n \\ &=&h_{ij}h_{nk}-h_{ik}h_{nj} \\ &=&R^m_{ikj}g_{mn}. \end{eqnarray}

$i,j,n,k$は自由変数であり$(i,j,n,k)=(1,1,2,2)$とすれば

\begin{eqnarray} h_{11}h_{22}-h_{12}h_{21}=R^m_{121}g_{m2} \end{eqnarray}

を得る。式の意味を思い出せば、

\begin{eqnarray} h_{11}h_{22}-h_{12}h_{21}=\det \left(\boldsymbol{n} \cdot \frac{\partial^2 \boldsymbol{S}}{\partial u^i \partial u^j} \right) \end{eqnarray}

に他ならない。

ゆえにガウス曲率は計量だけで表すことができる。

疲れましたね。

ですが、ガウス曲率は計量だけで表すことができるという事実が得られました。

驚異の定理

ガウス曲率は計量のみによって記述できる。

つまりは、ガウス曲率は曲面$S$上の人であっても計算できるということです。

たとえその人が外の世界である$\mathbb{R}^3$の存在すら知らず、$2$次元に這いつくばるように生きていたとしてもガウス曲率は計算できます。

これは驚くべきことだと思います。

空間の曲がり具合を内部から知ることができる。

まさに驚異の定理ですね。

また、式の途中に$R^m_{ikj}$が出てきましたね。

これこそがリーマン曲率テンソルです。

ここまで来たら一般相対性理論までもう少しです。

リーマン曲率テンソルについて理解を深めていきましょう。

リーマン曲率テンソル

まずは定義から。

リーマン曲率テンソル

リーマン曲率テンソル$R^i_{jkl}$

\begin{eqnarray} R^i_{jkl}=\frac{\partial \Gamma^i_{lj}}{\partial u^k}-\frac{\partial \Gamma^i_{kj}}{\partial u^l}+\Gamma^i_{km}\Gamma^m_{lj}-\Gamma^i_{ln}\Gamma^n_{kj} \end{eqnarray}

で定める。

早速問題を解いてみましょう。

$\nabla_k \nabla_l A^i-\nabla_l \nabla_k A^i$を求めよ。

解答

$\nabla_l A^i$$1$階反変$1$階共変テンソル場であることに注意する。

\begin{eqnarray} \nabla_kT^i_j=\frac{\partial T^i_j}{\partial u^k}+\Gamma^i_{kl}T^l_j-\Gamma^l_{kj}T^i_l \end{eqnarray}

より、

\begin{eqnarray} \nabla_k \nabla_l A^i&=&\nabla_k (\nabla_l A^i) \\ &=& \nabla_k \left( \frac{\partial A^i}{\partial u^l}+\Gamma^i_{lj}A^j \right) \\ &=& \frac{\partial}{\partial u^k} \left( \frac{\partial A^i}{\partial u^l}+\Gamma^i_{lj}A^j \right)+\Gamma^i_{km}\left( \frac{\partial A^m}{\partial u^l}+\Gamma^m_{lj}A^j \right)-\Gamma^m_{kl}\left( \frac{\partial A^i}{\partial u^m}+\Gamma^i_{mj}A^j \right) \\ &=& \frac{\partial^2 A^i}{\partial u^k \partial u^l}+\frac{\partial \Gamma^i_{lj}}{\partial u^k}A^j+\Gamma^i_{lj}\frac{\partial A^j}{\partial u^k}+\Gamma^i_{km}\frac{\partial A^m}{\partial u^l}+\Gamma^i_{km}\Gamma^m_{lj}A^j-\Gamma^m_{kl}\frac{\partial A^i}{\partial u^m}-\Gamma^m_{kl}\Gamma^i_{mj}A^j \end{eqnarray}

$k,l$を入れ替えて引けば、

\begin{eqnarray} \nabla_k \nabla_l A^i-\nabla_l \nabla_k A^i&=&\left(\frac{\partial^2 A^i}{\partial u^k \partial u^l}+\frac{\partial \Gamma^i_{lj}}{\partial u^k}A^j+\Gamma^i_{lj}\frac{\partial A^j}{\partial u^k}+\Gamma^i_{km}\frac{\partial A^m}{\partial u^l}+\Gamma^i_{km}\Gamma^m_{lj}A^j-\Gamma^m_{kl}\frac{\partial A^i}{\partial u^m}-\Gamma^m_{kl}\Gamma^i_{mj}A^j\right) \\ &&-\left(\frac{\partial^2 A^i}{\partial u^l \partial u^k}+\frac{\partial \Gamma^i_{kj}}{\partial u^l}A^j+\Gamma^i_{kj}\frac{\partial A^j}{\partial u^l}+\Gamma^i_{lm}\frac{\partial A^m}{\partial u^k}+\Gamma^i_{lm}\Gamma^m_{kj}A^j-\Gamma^m_{lk}\frac{\partial A^i}{\partial u^m}-\Gamma^m_{lk}\Gamma^i_{mj}A^j\right) \\ &=& \left( \frac{\partial \Gamma^i_{lj}}{\partial u^k}-\frac{\partial \Gamma^i_{kj}}{\partial u^l}+\Gamma^i_{km}\Gamma^m_{ij}-\Gamma^i_{lm}\Gamma^m_{ij} \right)A^j \\ &=& R^i_{jkl}A^j. \end{eqnarray}

なんとリーマン曲率テンソルがでてきました。

リーマン曲率テンソルは$2$階の共変微分と大きな関連があります。

私の勉強不足により詳しくは述べられませんが、曲線では$2$階の微分で曲率が出せたのと同じようなものだと思っていいでしょう。

さて、最後はリーマン曲率テンソルの亜種である3つのテンソルについて解説して終わりにしたいと思います。

1つ目がリーマン・クリストッフェルのテンソルです。

計量$g_{im}$とリーマン曲率テンソル$R^m_{jkl}$の縮合$R_{ijkl}=g_{im}R^m_{jkl}$をリーマン・クリストッフェルのテンソルといいます。

これは$4$階共変のテンソル場です。

リーマン・クリストッフェルのテンソルに関してはビアンキの恒等式という等式が成り立っています。

ビアンキの恒等式

次が成立:

\begin{eqnarray} &(\text{i})& \, \, \, R_{ijkl}+R_{iklj}+R_{iljk}=0 \\ &(\text{ii})& \, \, \, \nabla_m R_{ijkl}+\nabla_k R_{ijlm}+\nabla_l R_{ijmk}=0. \end{eqnarray}

これを示すにはヤコビの恒等式が便利です。

ヤコビの恒等式

$[a,b]=ab-ba$とすると、

\begin{eqnarray} [a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]]=0. \end{eqnarray}

\begin{eqnarray} [a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]]&=&a(bc-cb)-(bc-cb)a+b(ca-ac)-(ca-ac)b+c(ab-ba)-(ab-ba)c\\ &=&0. \end{eqnarray}

これより共変微分バージョンも得られます。

ヤコビの恒等式

$[a,b]=ab-ba$とすると、

\begin{eqnarray} [\nabla_i,[\nabla_j,\nabla_k]]+[\nabla_j,[\nabla_k,\nabla_i]]+[\nabla_k,[\nabla_i,\nabla_j]]=0. \end{eqnarray}

ビアンキの恒等式の証明はヤコビの恒等式よりすぐに得られるので気になった人は調べてみてください。

アインシュタインの重力場方程式を導くときに活躍します。

2つ目はリッチテンソルです。

リーマン曲率テンソルを反変成分の1番目と共変成分の2番目で縮約したテンソル$R_{ij}=R^k_{ikj}$をリッチテンソルといいます。

最後はスカラー曲率です。

リッチテンソルを計量$g^{ij}$と縮合したテンソル$R=g^{ij}R_{ij}$をスカラー曲率といいます。

いずれも一般相対性理論と関わりが深い曲率なので覚えておいてください。

最後に問題を解いておしまいにしましょう。

球面$\boldsymbol{E}(\theta,\varphi)=(a\sin \theta \cos \varphi, a\sin \theta \sin \varphi, a\cos \theta)$を考える。

  1. リーマン曲率テンソル $R^\varphi_{\theta \varphi \theta}$を求めよ。
  2. リーマン・クリストッフェルのテンソル$R_{\theta \varphi \theta \varphi}$を求めよ。
  3. リッチテンソル$R_{\theta \theta}$を求めよ。
  4. スカラー曲率$R$を求めよ。
解答

計量と接続係数をすべて求めておく。

\begin{eqnarray} g_{ij}=\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial u^i} \cdot \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial u^j} \end{eqnarray}

$g_{ik}g^{kj}=\delta^j_i$より

\begin{eqnarray} &&g_{\theta \theta}=a^2, g_{\theta \varphi}=g_{\varphi \theta}=0,g_{\varphi \varphi}=a^2\sin^2 \theta, \\ &&g^{\theta \theta}=1/a^2, g^{\theta \varphi}=g^{\varphi \theta}=0,g^{\varphi \varphi}=1/(a^2\sin^2 \theta). \end{eqnarray}

これより接続係数も得られる。よって

  1. $R^\varphi_{\theta \varphi \theta}=1$
  2. $R_{\theta \varphi \theta \varphi}=a^2\sin^2 \theta$
  3. $R_{\theta \theta}=1$
  4. $R=\dfrac{2}{a^2}.$

お疲れさまでした。

これにて長旅は終了です。

一般相対性理論を理解できる準備は整いました。

ここから先のことはいい文献がたくさんあるのであえて書きません。

みなさんにお任せします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

[1]
石井俊全, 一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する
投稿日:37
更新日:37
OptHub AI Competition

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みつき
みつき
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