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現代数学解説
文献あり

一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[リーマン曲率テンソル編]

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前置き

この記事は「一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[曲線座標編]」の続きです。

まだ読んでいない方は先にご覧ください。

一般相対性理論に必要なテンソルを大学1年生でもわかるように書いてみた[曲線座標編]

テンソル場の扱いはできるようになったと思うのでリーマン曲率テンソルまで進みましょう。

曲線の曲率

そもそも曲率とはなんなんでしょうか。

簡単に言うと「曲がり具合」のことです。

車で道路を走っているところを想像してください。

曲率の小さい道路を走っているときはハンドルをゆっくり回せば済みますが、曲率が大きい急カーブでは大きくハンドルを回さないといけません。

それが曲線の曲率です。

ここではいちばん簡単な曲率として、2次元の曲線の曲率を考えていきます。

まずは曲率の厳密な定義から。

曲線の曲率

Cを向きの定められた曲線とする。C上に点A,B(AB)を取る。

lABを曲線ABの符号付き長さ(曲線ABの向きがCと一致しているときは正、逆のときは負)とし、θABAでの接線を反時計回りにθAB回転させるとBでの接線と平行になるような角度(π<θAB<π)とする。

このとき、A上でのCの曲率χ

χ=limBAθABlAB

で定義する。

また、曲率χの逆数1χを曲率半径と呼ぶ。

試しに1問解いてみましょう。

反時計回りで半径がrの円である曲線Cがある。C上の点Aにおける曲率を求めよ。

解答

Aの十分近くに点Bをとる。

lAB=θABrよりχ=1rを得る。

これにより、曲率とは弧の半径の逆数のようなものだと捉えることができます。

もう1問やってみましょう。

曲線Cが媒介変数tにより(f(t),g(t))と媒介変数表示されている。このとき、t=aでの曲率χ(a)を求めよ。

解答

aに十分近い実数b(ab)を取り、(f(a),g(a))を点A,(f(b),g(b))を点Bとする。

ftによる1階微分をf˙,2階微分をf¨で表す。

また、x(t)=(f(t),g(t)),v(t)=(f˙(t),g˙(t)),a(t)=(f¨(t),g¨(t))

とおく。

一次近似によりv(b)v(a)+(ba)a(a)が得られる。

v(a)v(b)がなす三角形の面積S

S=12|v(a)||v(b)|sinθAB=12det(v(a),v(b)v(a))12det(v(a),(ba)a(a))=12(ba)det(v(a),a(a)).

よって

sinθAB(ba)det(v(a),a(a))|v(a)||v(b)|.

一方、

lAB=ab|v(t)|dt

より一次近似から

lAB(ba)|v(a)|

を得る。sinθθより

χ=limbaθABlAB=limbasinθABlAB=limba(ba)det(v(a),a(a))|v(a)||v(b)|(ba)|v(a)|=det(v(a),a(a))|v(a)|3.

以上より次の定理を得ます。

曲線の曲率

曲線Ctでの位置ベクトルをx(t),速度ベクトルをv(t),加速度ベクトルをa(t)とおく。

このとき、aでの曲率χ(t)

χ(t)=det(v(t),a(t))|v(t)|3.

1つ問題をやってみましょう。

曲線Cx(t)=(Rcost,Rsint)(0t<2π) と媒介変数表示されている。

  1. 速度ベクトル(接線ベクトル)v(t)を求めよ。
  2. 加速度ベクトルa(t)を求めよ。
  3. 曲率χ(t)を求めよ。
  4. 単位法線ベクトルn(t)を1つ求めよ。
  5. n(t)tにより微分したベクトルn˙(t)を求めよ。
  6. n˙(t)/v(t)を求めよ。
解答
  1. tで微分して、v(t)=(Rsint,Rcost).
  2. v(t)をさらにtで微分して、a(t)=(Rcost,Rsint).
  3. 曲率の式より
    χ(t)=det(v(t),a(t))|v(t)|3=1R.
  4. v(t)と直交する単位ベクトルを1つ選べば
    n(t)=(cost,sint).
  5. n(t)をさらにtで微分し
    n˙(t)=(sint,cost).
  6. 1Rとなり曲率χ(t)と一致する。

単位法線ベクトルと接線ベクトルが平行になりその比が曲率に一致しましたね。

これは一般的な状況でも成り立ちます。

曲率

Ctでの外向きの単位法線ベクトルをn(t),接線ベクトルをv(t)とする。

このとき、曲率χ(t)

dn(t)dt=χ(t)v(t)

で定義する。

この定義であれば曲線だけでなく曲面であっても曲率が求められます。

やってみましょう。

曲面の曲率

ここからは曲面の曲率を求めていきます。

曲率

Ctでの外向きの単位法線ベクトルをn(t),接線ベクトルをv(t)とする。

このとき、曲率χ(t)

dn(t)dt=χ(t)v(t)

で定義する。

これを踏まえて早速問題を解いてみましょう。

球面E(θ,φ)=(Rsinθcosφ,Rsinθsinφ,Rcosθ)(0θπ,0φ<2π)がある。

  1. φを固定しEθの関数と見たときの(Rsinθcosφ,Rsinθsinφ,Rcosθ)上の曲率χ(θ)を求めよ。
  2. θを固定しEφの関数と見たときの(Rsinθcosφ,Rsinθsinφ,Rcosθ)上の曲率χ(φ)を求めよ。
解答
  1. 外向きの単位法線ベクトルはn(θ,φ)=(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)で与えられる。
    これをθで偏微分してθn(θ,φ)=(cosθcosφ,cosθsinφ,sinθ)を得る。
    一方、v(θ)=(Rcosθcosφ,Rcosθsinφ,Rsinθ)であるからχ(θ)=1Rを得る。
  2. (1)と同様に、χ(φ)=1Rを得る。

このように、偏微分すれば各変数ごとの曲率は得られます。

ですが、すべての変数を動かした上での曲率が知りたいときはどうすればいいのでしょうか?

曲線の曲率では変数が1つだけでありベクトルも1つだけだったのでそのまま比を求めれば済みました。

今度は出てくるベクトルが2つです。

そんなときは外積を使いましょう。

ベクトルの外積を使えば、2つのベクトルから1つの新しいベクトルが作れます。

そのベクトルの比を曲率と定義します。

ガウス曲率

R3上の曲面CS(u1,u2)で表されているとき、ガウス曲率χ(u1,u2)

nu1×nu2=χ(u1,u2)Su1×Su2

で定義する。ここに、n(u1,u2)での外向きの単位法線ベクトルである。

この定義のもとでガウス曲率を求めてみましょう。

球面E(θ,φ)=(Rsinθcosφ,Rsinθsinφ,Rcosθ)(0θπ,0φ<2π)がある。

ガウス曲率χ(θ,φ)を求めよ。

解答

外向きの単位法線ベクトルはn(θ,φ)=(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)で与えられる。

nθ×nφ=(cosθcosφcosθsinφsinθ)×(sinθsinφsinθcosφ0)=(sin2θcosφsin2θsinφsinθcosθ),

Eθ×Eφ=(RcosθcosφRcosθsinφRsinθ)×(RsinθsinφRsinθcosφ0)=(R2sin2θcosφR2sin2θsinφR2sinθcosθ)

よりχ(θ,φ)=1R2を得る。

球面の曲率は1R2になるんですね。

ガウス曲率にはもうひとつの表し方があります。

ガウス曲率

R3上の曲面S(u1,u2)のガウス曲率χ(u1,u2)

det(n2Suiuj)=χ(u1,u2)det(SuiSuj)

で定義してもよい。ここに、(i,j)=(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)でありdetでその2×2行列の行列式を表す。

展開すれば

(nu1×nu2)(Su1×Su2)=det(n2Suiuj)

および

(Su1×Su2)(Su1×Su2)=det(SuiSuj)

が得られる。

この定理を用いて球面の曲率を計算することもできますね。

驚異の定理

直線と曲線座標の変換を考えたとき、計量テンソルは

gij=xuixuj

で表されました。

それと全く同じように、曲面上の計量は曲面の式をSとして

gij=SuiSuj

で表されます。

接続係数は計量を用いて表すことができました。

では、ガウス曲率は計量を用いて表すことはできるのでしょうか?

やってみましょう。

ガウス曲率(再掲)

R3上の曲面S(u1,u2)のガウス曲率χ(u1,u2)

det(n2Suiuj)=χ(u1,u2)det(SuiSuj)

で定義してもよい。ここに、(i,j)=(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)でありdetでその2×2行列の行列式を表す。

この式の右辺はすでに計量で表されていますね。

目標は左辺を計量で表すことです。

ガウス曲率を計量を用いて表せ。できない場合は理由を述べよ。

解答

接続係数は計量によって表されるから、偏微分してガウス曲率を接続係数と計量に結びつける式を導出することが目標である。

R3上で考えると、法線ベクトルと接ベクトルが直交していることから内積の偏微分より

uj(nSui)=0=nujSui+n2Suiuj.

よって

n2Suiuj=nujSui=hij

を得る。(新しくhijとおいた。)

ここで、nの微分は接平面に含まれるから2つの接ベクトルの線形結合で表せるはずである。新しく係数Aijを用意して

nui=AijSuj

とおく。両辺Sの微分で内積をとると

nuiSuj=AikSukSujhji=Aikgkjhjigjl=Aikgkjgjl=Aikδkl=Ail

を得る。ゆえにAij=hkigkj

nui=hkigkjSuj

が得られる。

一方で、ベクトルan方向の成分はanであるからR3上では

2Suiuj=ΓijkSuk+(n2Suiuj)n=ΓijkSuk+hijn

を得る。これをまた偏微分すれば、積の偏微分より

3Suiujuk=ΓijlukSul+Γijl2Sukul+hijukn+hijnuk=ΓijlukSul+Γijl(ΓklmSum+hijn)+hijukn+hijnuk=ΓijlukSul+Γijl(ΓklmSum+hijn)+hijuknhijhlkglmSum=ΓijmukSum+Γijl(ΓklmSum+hijn)+hijuknhijhlkglmSum=(Γijmuk+ΓijlΓklmhijhlkglm)Sum+(Γijlhij+hijuk)n.

ここでi,j,kは交換可能であるから、Sumの係数を比較して等式を得ることができる。

j,kを入れ替えると、

Γijmuk+ΓijlΓklmhijhlkglm=Γikmuj+ΓiklΓjlmhikhljglm(hijhlkhikhlj)glm=ΓijmukΓikmuj+ΓijlΓklmΓiklΓjlm=Rikjm.

新しくRikjmとおいた。

l=1,2は媒介変数で消えることに注意して、

(hijhlkhikhlj)glmgmn=(hijhlkhikhlj)δnl=hijhnkhikhnj=Rikjmgmn.

i,j,n,kは自由変数であり(i,j,n,k)=(1,1,2,2)とすれば

h11h22h12h21=R121mgm2

を得る。式の意味を思い出せば、

h11h22h12h21=det(n2Suiuj)

に他ならない。

ゆえにガウス曲率は計量だけで表すことができる。

疲れましたね。

ですが、ガウス曲率は計量だけで表すことができるという事実が得られました。

驚異の定理

ガウス曲率は計量のみによって記述できる。

つまりは、ガウス曲率は曲面S上の人であっても計算できるということです。

たとえその人が外の世界であるR3の存在すら知らず、2次元に這いつくばるように生きていたとしてもガウス曲率は計算できます。

これは驚くべきことだと思います。

空間の曲がり具合を内部から知ることができる。

まさに驚異の定理ですね。

また、式の途中にRikjmが出てきましたね。

これこそがリーマン曲率テンソルです。

ここまで来たら一般相対性理論までもう少しです。

リーマン曲率テンソルについて理解を深めていきましょう。

リーマン曲率テンソル

まずは定義から。

リーマン曲率テンソル

リーマン曲率テンソルRjkli

Rjkli=ΓljiukΓkjiul+ΓkmiΓljmΓlniΓkjn

で定める。

早速問題を解いてみましょう。

klAilkAiを求めよ。

解答

lAi1階反変1階共変テンソル場であることに注意する。

kTji=Tjiuk+ΓkliTjlΓkjlTli

より、

klAi=k(lAi)=k(Aiul+ΓljiAj)=uk(Aiul+ΓljiAj)+Γkmi(Amul+ΓljmAj)Γklm(Aium+ΓmjiAj)=2Aiukul+ΓljiukAj+ΓljiAjuk+ΓkmiAmul+ΓkmiΓljmAjΓklmAiumΓklmΓmjiAj

k,lを入れ替えて引けば、

klAilkAi=(2Aiukul+ΓljiukAj+ΓljiAjuk+ΓkmiAmul+ΓkmiΓljmAjΓklmAiumΓklmΓmjiAj)(2Aiuluk+ΓkjiulAj+ΓkjiAjul+ΓlmiAmuk+ΓlmiΓkjmAjΓlkmAiumΓlkmΓmjiAj)=(ΓljiukΓkjiul+ΓkmiΓijmΓlmiΓijm)Aj=RjkliAj.

なんとリーマン曲率テンソルがでてきました。

リーマン曲率テンソルは2階の共変微分と大きな関連があります。

私の勉強不足により詳しくは述べられませんが、曲線では2階の微分で曲率が出せたのと同じようなものだと思っていいでしょう。

さて、最後はリーマン曲率テンソルの亜種である3つのテンソルについて解説して終わりにしたいと思います。

1つ目がリーマン・クリストッフェルのテンソルです。

計量gimとリーマン曲率テンソルRjklmの縮合Rijkl=gimRjklmをリーマン・クリストッフェルのテンソルといいます。

これは4階共変のテンソル場です。

リーマン・クリストッフェルのテンソルに関してはビアンキの恒等式という等式が成り立っています。

ビアンキの恒等式

次が成立:

(i)Rijkl+Riklj+Riljk=0(ii)mRijkl+kRijlm+lRijmk=0.

これを示すにはヤコビの恒等式が便利です。

ヤコビの恒等式

[a,b]=abbaとすると、

[a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]]=0.

[a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]]=a(bccb)(bccb)a+b(caac)(caac)b+c(abba)(abba)c=0.

これより共変微分バージョンも得られます。

ヤコビの恒等式

[a,b]=abbaとすると、

[i,[j,k]]+[j,[k,i]]+[k,[i,j]]=0.

ビアンキの恒等式の証明はヤコビの恒等式よりすぐに得られるので気になった人は調べてみてください。

アインシュタインの重力場方程式を導くときに活躍します。

2つ目はリッチテンソルです。

リーマン曲率テンソルを反変成分の1番目と共変成分の2番目で縮約したテンソルRij=Rikjkをリッチテンソルといいます。

最後はスカラー曲率です。

リッチテンソルを計量gijと縮合したテンソルR=gijRijをスカラー曲率といいます。

いずれも一般相対性理論と関わりが深い曲率なので覚えておいてください。

最後に問題を解いておしまいにしましょう。

球面E(θ,φ)=(asinθcosφ,asinθsinφ,acosθ)を考える。

  1. リーマン曲率テンソル Rθφθφを求めよ。
  2. リーマン・クリストッフェルのテンソルRθφθφを求めよ。
  3. リッチテンソルRθθを求めよ。
  4. スカラー曲率Rを求めよ。
解答

計量と接続係数をすべて求めておく。

gij=EuiEuj

gikgkj=δijより

gθθ=a2,gθφ=gφθ=0,gφφ=a2sin2θ,gθθ=1/a2,gθφ=gφθ=0,gφφ=1/(a2sin2θ).

これより接続係数も得られる。よって

  1. Rθφθφ=1
  2. Rθφθφ=a2sin2θ
  3. Rθθ=1
  4. R=2a2.

お疲れさまでした。

これにて長旅は終了です。

一般相対性理論を理解できる準備は整いました。

ここから先のことはいい文献がたくさんあるのであえて書きません。

みなさんにお任せします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

[1]
石井俊全, 一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する
投稿日:202437
更新日:202437
OptHub AI Competition

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みつき
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数学が好きな大学1年生です。

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  3. 曲面の曲率
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  6. 参考文献