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【ゲージ理論】Chern類

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特性類速習(Chern-Weilの定理,Chern類,Pontrjagin類,Euler類)

 複素ベクトル束の特性類であるChern類の説明をします。

 $P=P(M,GL(r,\mathbb{C}))$$M$上の主$GL(r,\mathbb{C})$束とし、$P$に同伴した複素ベクトル束を$E=P\times_\rho\mathbb{C}^r$とすると、$E$の接続を任意に定めると、それは$P$の接続にもなるから$P$の特性類を考えることで、$E$の束不変量が得られます。

 $GL(r,\mathbb{C})$の不変多項式$f_0,f_1,\cdots,f_r$を次のように与えることができます。
\begin{align} \det\left(tI_r-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}X\right)&=f_0(X)t^r+f_1(X)t^{r-1}+\cdots+f_r(X)\\ X&\in\mathfrak{gl}(r,\mathbb{C}) \end{align}
$f_i(X)$$i$次の不変多項式となることは明らかです。

 $f_i$の具体的な形を求めるには一旦固有値の基本対称多項式での表示を考えて、そのあとpower sumで書き直せばよいです。つまり
\begin{align} \det\left(tI_r-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}X\right) =\begin{pmatrix} t-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}x_1 & \cdots & * \\ 0 & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & t-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}x_r \end{pmatrix} =\sum_k \left(-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\right)^ke_k(x_1,\cdots,x_r) t^{r-k} \end{align}
として、さらに基本対称多項式$e_k$とpower sum$p_i$との関係を与えるNewtonの恒等式( Wikipedia )
$$ ke_k(x_1,\cdots,x_n)=\sum_{i=1}^k(-1)^{i-1}e_{k-i}(x_1,\cdots,x_n)p_i(x_1,\cdots,x_n) $$
を使うと
\begin{align} e_1&=p_1\\ 2e_2&=p_1^2-p_2\\ 3e_3&=\frac{1}{2}p_1^3-\frac{3}{2}p_1p_2+p_3\\ 4e_4&=\frac{1}{6}p_1^4-p_1^2p_2+\frac{4}{3}p_1p_3+\frac{1}{2}p_2^2-p_4 \end{align}
などが分かるので
$$ p_k(x_1,\cdots,x_n)=\sum_{i=1}^r(x_i)^k=tr(X^k) $$
に注意すると
\begin{align} f_0(X)&=1\\ f_1(X)&=-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}e_1(x_1,\cdots,x_r)=-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}tr(X)\\ f_2(X)&=\left(-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\right)^2e_2(x_1,\cdots,x_r)=-\frac{1}{8\pi^2}(tr(X)^2-tr(X^2))\\ f_3(X)&=\left(-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\right)^3e_3(x_1,\cdots,x_r) =\left(-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\right)^3\left(\frac{1}{6}tr(X)^3-\frac{1}{2}tr(X)tr(X^2)+\frac{1}{3}tr(X^3)\right) \end{align}
などとなります。

$P=P(M,GL(r,\mathbb{C}))$$M$上の主$GL(r,\mathbb{C})$束とし、$A$を任意の接続、$F$をその曲率とする。このとき
\begin{align} \det\left(I_r-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}F\right)=f_0(F)+f_1(F)+\cdots+f_r(F) \end{align}
とするとき、$c_k(E)=[f_k(F)]\in H^{2k}_{dR}(M;\mathbb{C})$$M$のコホモロジー類を定め、これを$E$$k$次Chern類という。また
$$ c(E)=1+c_1(E)+\cdots+c_r(E) $$
$E$全Chern類という。

 構造群が簡約するときは以下のような命題が成り立ちます。

$U(r)$-複素ベクトル束のChern類は実数値コホモロジー類である

$X\in\mathfrak{u}(r),\ X+X^\dagger=0$に対して、
\begin{align} \overline{\det\left(tI_r-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}X\right)}=\det\left(tI_r-\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}X\right) \end{align}
であり、$f_k(X)$が実数であることから従う。

$SU(r)$-複素ベクトル束$E$に対して、$c_1(E)=0$である。

投稿日:2023513

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Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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