Glasserのマスター定理(Glasser's master theorem)と呼ばれる定理について解説している日本語の資料が私が探した限りネット上に見当たらなかったので、自力で頑張って証明しました。
を満たす任意の
が成り立つ。
今回はこれを証明していきます。
この式だけ見てもピンと来ないと思われるかもしれませんが、この定理を使ってみれば、この定理がいかに便利かおわかりいただけると思います。
皆さんにGlasserのマスター定理に慣れ、この定理の有用性をご理解いただくために、まずはこの定理を用いて以下の積分を解いてみましょう。
Glasserのマスター定理より、この関数の
よって、
これはガウス積分の形なので、
Glasserのマスター定理によって、あれほど複雑だった被積分関数の一部分を文字一つに置き換えて簡単にすることができました。
では、もう一つ例題を解いてみましょう。
まず、Glasserのマスター定理を使わずに解くとどのようになるのか見てみましょう。
部分分数分解をしなければならなかったり、複雑な関数の極限が必要だったりと、ミスを誘う要素が多いですね。
では、Glasserのマスター定理を使用するとどうなるのかみてみましょう。
まず、Glasserのマスター定理を使用できる形まで、積分範囲や非積分関数を変形します。
Glasserのマスター定理より、
このように、あんなにも複雑な操作を必要としていた定積分でも、Glasserのマスター定理を使用すると瞬殺できてしまうことがあるのです。
Glasserのマスター定理の主張や定理の有用性をご理解いただけましたでしょうか?
Glasserのマスター定理を使用する時は
を満たしていないと使用できないことに留意しましょう。特に
という条件は重要です。例えば、
という積分の
Glasserのマスター定理の魅力をお伝えできたところで、次からはいよいよ証明に移っていきます。
いきなり定理の式を見せられて解答の方針が浮かぶ人はまずいないでしょう。
なので、まず
すべての
まず
とおきます。
最終的な形が
と置換しようとすると、
となり、
(ちなみに、このとき
そこで、積分範囲を二つに分割することでこの重複を解消することを考えます。
ひとまず
と置いてみましょう。つまり、
と書き換えられます。
ここで、
関数
また、
これを見ると、図2のグラフと図1のグラフは直線
そして、図1のグラフを構成していた曲線のうちの一つが
図1のグラフにおいて二つの曲線の境界は
ここまで来れば、積分区間を
右辺の1項目の積分については
ここで、
であり。ここで両辺を
がわかります。よって、
となり、定理が導けました。
ただ、やはり単純に
と置換するのは厳しい。
そこで、
ただどのように積分範囲を分割すれば良いのでしょうか?
ここで、例として
この関数は、5つの曲線で構成されているのがお分かりいただけますでしょうか?
また、
別の例も見てみましょう。以下は
これもやはり4つの曲線で構成されていますので、4つに積分範囲を分割する必要がありそうです。
ここまでくれば、曲線と曲線の境目で積分区間を
本記事では、このような発想をもってGlasserのマスター定理を証明していきます。
また、
とおく。すると、
となる。
任意の実数
となるような実関数
上の式を分母を払うと、
となり、
また、
でかつ関数
よって、関数
ここで、
式
同様に、
というように、
は式
そして式
よって式
両辺を微分して、
ここで、
そして、右辺の項のうち
となる。
すべての
よって定理は示された。
個人的には日本語資料がないことが信じられないほど有用な定理だと思っています。なんで日本語資料ないんや...
この記事によってあなたの積分ライフがより豊かになることを願っています。
証明めっちゃ大変だった...
あと、