以下の数列の極限と,関数の極限の関係についての命題をご紹介します.
を連続関数とする.
任意のに対して,数列がに収束するとき,
となる.
以下,'数列がに収束'することをと略記します.
この主張は一見当たり前のように見えますが,自明ではありません.
例えばの連続性が無ければ命題は成り立ちません.実際に次のような反例があります.
連続性を課さない場合の反例
とすると,任意のに対して,となるが,は成立しない.
をとる.あるがあり,かつが成立すると仮定する.
すると,あるがあり,, より,
となるが, から,の超越性に反する.
したがって,となる自然数は高々一つ.
よって,であるが,はで明らかに収束しない.
命題1の証明のカギとなるのは以下の有名な位相空間論の定理を用いることです.
Baireのカテゴリー定理
を空でない完備距離空間とする.を上の閉集合族で,を満たすものとする.
このとき,あるが存在して,は内点を持つ.
こちらの定理は,関数解析の重要定理である一様有界性原理や開写像定理などを証明するときに用いられる強力な定理です.
それでは,この定理を認めた上で,最初に紹介した命題を証明しましょう.
(命題1)
連続関数を,任意のに対してが成立するものとする.を任意に取る.
ここで,自然数に対して,連続関数をと定める.
は閉区間の連続関数による引き戻しと閉集合との交叉より閉集合.よって,
も閉集合.
の仮定から,となる.完備距離空間の閉部分集合は,部分距離空間として完備となるため,も完備.よってBaireのカテゴリー定理より,あるが存在して,の(部分距離空間の意味での)内点が存在する.よって,あるがあり,となる.
(が内点の場合でも,あるが存在して,となるため,となるが取れる.)
したがって,任意のに対して,となる.
( )
また,より,アルキメデスの性質から,となる自然数が存在する.よって, より, なる自然数に対して,となる.したがって,となり,なる任意の実数に対して,が成り立つ.よってとなる.