はじめに
皆さんこんにちは、あにりんと申すものです。今回の記事は自分が一番好きな定理の「証明」を皆さんに紹介したい!!!というモチベーションで書き始めました。具体的には不定方程式の整数解を今回の記事では取り上げたいと思います。はじめにピタゴラスの定理でお馴染みの整数解をすべて求め、その次にペル方程式の整数解について考察していきます(ここが今回紹介したい証明です)。2つの方程式の性質がどのように明らかにされていくのか、その違いに注目して読んで頂けたらと思います。
の整数解
をみたす正の整数の組はピタゴラス数と呼ばれ、次の事実が成り立ちます。
ピタゴラス数の定理
すべてのを偶数とするピタゴラス数はを整数とするとで表される。
定理1の証明として偶奇性を利用するものと単位円上の有理点を考える2つの方法がありますが、ここでは後者のの整数解の問題(に関する問題)をの有理数解の問題(に関する問題)に置き換える方法で証明したいと思います。
証明の流れ
Step1.単位円上の有理点を求める問題に帰着
Step2.直線と単位円の交点を求める
Step3.が有理数交点が有理点を示す
をピタゴラス数とする。このとき、とおくと
となり、は有理数であるので単位円上の有理点を考えれば良いとわかり、が正の整数であることから単位円上の第1象限にある有理点のみを考えれば良いことがわかる(ただし2点,を除く)。
ここで点を通り、傾きがであるような直線を考える。
単位円と直線
図1よりこの直線と単位円が点と第1象限にてもう1点で交わることがわかるのでその交点の座標を調べる。直線の方程式をに代入すると
ここで、図1よりが解であるので因数定理から
のように変形できるのでが得られる。をに代入するととなる。よって、求めたかった交点の座標はとなるがが有理数のとき、交点は有理点となることがわかる。ゆえにが式の有理数解となることがわかる。
逆にを単位円上の有理数点とすると、2点を通る直線の傾きは有理数となる。
よって、単位円上の第1象限にある有理数点はを有理数とするとですべて与えられる。は有理数であるのでを整数とするととおけ、これを用いると
よって題意は示された。
余談ですが、ピタゴラス数が共通因数をもたないときを既約ピタゴラス数と呼び、定理1は既約ピタゴラス数以外のピタゴラス数を含んでいます。証明として偶奇性を利用するものを採用すると既約ピタゴラス数に関する次のような結果が得られます。
既約ピタゴラス数の定理
すべてのを偶数とする既約ピタゴラス数はを互いに素である奇数とするとですべて表せる。
の整数解
ディリクレのディオファントス近似定理
まず初めに次の補題を示します。(証明は読み飛ばしても問題ありません)
ディリクレのディオファントス近似定理
を無理数とする。このとき、
をみたす正の整数の組が無数に存在する。
を任意の正の整数とする。このとき個の数
, ,
, ,
, ,
, ,
と、個の区間
を考える。このときを鳩、を巣として鳩ノ巣原理を適用すると、ある正の整数が存在して
が成立することがわかる(匹いる鳩を個の巣に押し込めているので少なくとも1つの巣は2匹の鳩をもつ)。
ここで関係式,と置換,を用いると上式は
とかける。よって任意の正の整数に対してをみたす正の整数が存在することがわかる。(正直な話なんでxが正になるのかがわかってません、わかる方がいたら教えてくれると助かります)
このことからをさらに大きくとるとをみたす正の整数が新たに得られに注意すると、これを繰り返すことで不等式をみたす正の整数の組が無数に存在することがわかる。
補題3がなにを意味するかというとであるから有理数と無理数の誤差が未満となるような有理数が無数に存在している、すなわちがどの位の精度でで近似できるかについてを表してるといえます。
紹介したい定理の「証明」
を平方数でない正の整数としたときに不定方程式をペル方程式と呼びます。ペル方程式については以下のような事実が成り立ちます。
ここでの整数解の問題(に関する問題)を定理1と同じようにに関する問題に帰着して解こうとしてもの各項の次数がすべて等しくないことから上手くいきません。その為に新しい発想として、を思い切っての範囲で因数分解してみます。すると、、、
なんとの形が現れたではありませんか!このことを使わない手はないので、ここを出発点として証明をしていきましょう。
証明の流れ
Step1.ならばを示す
Step2.補題3と鳩ノ巣原理よりに無数に整数解があることを示す
Step3.鳩ノ巣原理よりの整数解の中からある性質をもつものが2つはあることを示す
Step4.Step3の2つの解を用いての整数解を作り出す
正の整数の組がを満たしているとする。
ここで、が成り立つので
上式の両辺にをかければ
以上より、をみたす正の整数の組は
を満たす。
ここで、とおく(はガウス記号)。
鳩としてを満たす正の整数を、巣として整数
をとる。今、補題3よりをみたす正の整数の組が無数にあることに注意して鳩ノ巣原理を用いると
が鳩のとき、式はからの間にあるので明らかにある整数が存在して、は無数の正の整数解をもつ(無限匹いる鳩を個の巣に押し込めているので少なくとも1つの巣は無限匹の鳩をもつ)。
の正の整数解をで表す。
以下、を法として
を満たす整数解を鳩ノ巣原理を使って探す。
鳩としてを、巣としてを設定し、各鳩を巣に入れるのにそれぞれので割った余りを考える。すると再び鳩ノ巣原理より、
をみたすが存在することがわかる(無限匹いる鳩を個の巣に押し込めているので少なくとも1つの巣は無限匹、つまり2匹以上の鳩をもつ)。そして実は
がペル方程式の整数解となっている。実際に、
であり、後はが共に整数であることを示せばよい。それにはの分子が共にの倍数であることが言えればよいが、
これよりが共に整数であることがわかり、必要があれば負の符号を置き換えることで整数解,が存在することがわかる。そして今、
となるのでとなる。ここでと仮定するとであるのでとなり、に矛盾することからがわかる。以上のことからがペル方程式の正の整数解であることが示された。
証明の後半に出てきたとはどこからきたんだよ!!!と思う人もいるかもしれませんがこれは式
に由来します。もっと詳しく知りたい方は参考文献[1]を参照して下さい。再び余談ですが、ペル方程式の整数解全体については次のようなことが成り立つことが知られています。
ペル方程式の整数解
ペル方程式の正の整数解の中でもが最小であるようなものをとおく。このとき、ペル方程式の任意の解は
で表される。
2つの証明を見比べると、、、?
定理1と定理4の証明について考えてみましょう。
定理1ではの整数解の問題(に関する問題)をの有理数解の問題(に関する問題)として証明をしました。はの比として表せるので、の世界との世界を行き来するのは簡単であると想像がつくし、特に不思議な感じはしないと感じます。
それに対して定理4ではの整数解の問題(に関する問題)を補題3(をでどれだけ近似できるか)を用いて証明を行いました。これは非常に不思議なように思えます。なぜならとには直接的な繋がりがないように思えるのにも関わらず、証明の中ではこの関係がとても有用に働いており、あたかもの世界との世界が結びついているように見えるからです。実際は少し異なり、がとの世界を結びつける鍵となっています。との世界は比を通して結びついていて、との世界は(今回の場合は)補題3を通して結びついています。
の関係
このようにまとめてみるとペル方程式の整数解を考えるときに無理数が登場する根拠として補題3(ディリクレのディオファントス近似定理)とペル方程式の形の相性が良いことにあるということがよくわかります。
最後に
今回は自分が一番好きな証明を題材として書かせていただきました。初等整数論は高校レベルの数学でフェルマーの二平方和定理や平方剰余の相互法則などが理解できるので個人的には思い入れのある分野です。今後はより高度な数学を用いながら整数論周りを勉強していきたいと思ってます!初投稿ということでわかりにくいところや不適切な部分があるかもしれませんがよろしくお願いします。
参考文献
[1]ジョセフ・H・シルヴァーマン著、鈴木治郎訳、はじめての数論 原著第3版 発見と証明の大航海‐ピタゴラスの定理から楕円曲線まで、丸善出版、2014
[2]
数学の景色、ピタゴラス数の求め方(解)・性質とその証明、閲覧日2024年12月6日、https://mathlandscape.com/pythagoras-triple/#toc7