ノイキルヒ『代数的整数論』の§4の練習問題3を解いたのでそれを書きます。学生が一人で考えたものなので間違っていたり回りくどい議論をしていたりするかもしれないということも言っておきます。
Minkowskiの一次形式定理
を次実正則行列とする。各に対し、
とし、をを満たす正の実数とする。このとき、連立不等式
は以外の整数解を有する。
証明には次の定理を用います。
Minkowskiの格子点定理
の部分集合は体積を持ち、原点対称かつ凸であるとする。このとき、
ならば、は0以外の格子点を必ず含む。
証明は例えば
ミンコフスキーの凸体定理 - INTEGERS
を参照してください。それでは定理1を証明します。
まず、
とする(つまり上の連立不等式の実数解すべての集合とする)とき、このが定理2の条件を満たしていればよい。
点対称なのは明らか。また、
について、この二つの凸結合
についても、
なので満たされ、よっては凸集合でもある。
ここで、連立方程式
について、行列は正則だったから、線形代数の理論により必ず解は存在し、しかも絶対値がついているので各ごとに、なのかなのかの場合分けで、解は合計個存在する。
それらの解のうち、全てのについてとなるを取り、これを成分に持つ列ベクトルをとしておく。
さらに、各に対して、だがそれ以外のなるに対してはとなるような組を取り、これを成分に持つ列ベクトルを各ごとにとしておく。
このとき、個のベクトルは一次独立である。何故なら、実数でと表せたなら、定義より
だったから、
ゆえに、となってしまうので、結局これらは一次独立である。なので、先ほどのについて、個のベクトルも明らかに一次独立である。よって、この次元ベクトル空間上で、を原点としてによって張られるような基底が取れる(原点の位置が変わっているので、正確にはこれはアフィン変換である)。
このとき、
で、なるについては、
となるから、
元々の座標系で で表される点がこの新たな座標系でとなるとき、各について、
である。すなわち、全てのについてが成り立っていることと、が連立不等式の解であることは同値である。
よって、この集合は、個のベクトル
にを原点として張られる基本平行体に等しい。
ゆえに、
であり、ここで、
だが、なるについては、
再び定義より
だったから、
となる。よって、行列式をとって
仮定より、がわかるから、Minkowskiの格子点定理により答えが導かれる。