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周期数列の一般項

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周期数列の一般式の導出

動機

 世の中には周期的な変化をする数列が見つかることがよくある。平易な例だと$a_n = (-1)^n$といったものから、$1,2,3,2,1,2,3,2,1,\cdots$という一見難しそうな例、さらには三角関数のサンプリングによって得られる数式で表しにくそうな例まで、さまざまである。今回はこれらを表示する術を考える。

定義

 ここでは見通しのよさのためにすこし記号を定義する。断わっておくと、以下の定義は大抵筆者が勝手に考えたものであるため、他では通用しない可能性がある。

周期数列と周期

数列$\{a_n\}_{n=-\infty}^{\infty}$において、任意の整数$i$に対して$a_{i+f}=a_{i}$となる正整数$f$が存在するとき、この数列を周期数列という。またこの時$f$をこの周期数列の周期という

周期$1$の周期数列

$a_n=a_{n+1}$という漸化式が成立する、すなわちすべての項が同じ数であるとき、この数列は周期$1$の数列である。なお、これは任意の正整数$f$に対して$a_n = a_{n+f}$であることを意味しており、この数列は任意の個数の周期をもっていると解釈できることに注意する(もちろん一般の周期数列においても、任意の個数(もちろん整数)の周期が存在している)

周期$f$の周期数列

$a_n = (-1)^n$であるとき、$a_{n+2} = a_n$であることより、$\{a_n\}$は周期$2$の数列である。ここで$-1 = e^{\frac{2 \pi i}{2}}$と考えると、一般に$a_n = \exp{\frac{2 n\pi i}{f}}$は周期$f$の数列であることがわかる。

周期数列の和

$\{a_n\} , \{b_m\}$をそれぞれ周期$f_1, f_2$を持つ周期数列とする。このとき$c_n:=a_n+b_n$と定義すると、$c_n$$\mathrm{lcm}{(f_1,f_2))}$を周期にもつ。実際に、
$$ c_{n+\mathrm{lcm}{(f_1,f_2)}}=a_{n+\mathrm{lcm}{(f_1,f_2)}}+b_{n+\mathrm{lcm}{(f_1,f_2)}}=a_n+b_n=c_n. $$
特に$f_1=f_2$とすれば、周期数列$\{c_n\}$も同じ周期をもつ。

一般式の導出

これまでの例をヒントにしながら、一般式を導出する。

方針

基本周期数列

周期数列$\{s_n^f\}$($f$は正整数)を
$$ s_n^f := \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 1 \ (n \equiv 0 \ ( {\rm mod} \ f))\\ 0 \ (\rm otherwise) \end{array} \right. \end{eqnarray}. $$
と定義し、この数列を周期$f$の基本周期数列という。

 次の命題は、例$3$の考えを応用しており、この基本周期数列の重要性を示すものである。

基本周期数列と周期数列

 任意の周期$f$の周期数列${a_n}$は次のように表される。
$$ a_n = \sum_{k=0}^{f-1} s_{n-k}^fa_k. $$

基本周期数列$\{s_n^f\}$の定義より
$$ s_{n-k}^fa_k= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a_k \ (n \equiv k \ ( {\rm mod} \ f)\\ 0 \ (\rm otherwise) \end{array} \right. \end{eqnarray}. $$
従って、任意の整数$i$に対して、$i \equiv k'( {\rm mod} \ f), \ 0 \leq k' \lt f$となる$k'$(一意に存在)を考えると
$$ \sum_{k=0}^{f-1} s_{n-k}^fa_k=s_{n-k'}a_{k'}=a_{k'}=a_n. $$
とわかる(最後の等号は$k'$$n$が合同のため成立)。これより命題は成立している(証明終)。

この命題より、基本周期数列の一般式が分かれば、周期数列の一般式が導出できるといえる。

基本周期数列と周期数列の導出

基本周期数列の一般式を求めるにあたり、例2の考察がヒントになる。例3や命題1のように、同じ周期の数列を加算していけば、目的の数列にたどり着くと考えるのだ。このような思考を経て、次の命題に到達できる。

基本周期数列の一般式

$$ s_n^f = \frac{1}{f}\sum_{k=0}^{f-1}\exp{\frac{2kn\pi i}{f}}. $$

$\left\{\exp{\frac{2kn\pi i}{f}}\right\}_k$という数列を考える。これは初項$1$で公比$\exp{\frac{2n\pi i}{f}}$の数列といえる。この公比は$1$の値を取りえるので、場合分けをして考える
まず$n$$f$の倍数でない場合を考える$(n \neq0)$。このとき公比$\exp{\frac{2n\pi i}{f}}$$1$でないために、命題の右辺は
$$ \frac{1}{f}\sum_{k=0}^{f-1}\exp{\frac{2kn\pi i}{f}}=\frac{1}{f}\cdot \frac{1-\exp{(2kn\pi i)}}{1-\exp{\frac{2n\pi i}{f}}}=0. $$
次に$n$$f$の場合を考える。この時数列の項は全て$1$のため、命題の右辺は
$$ \frac{1}{f}\sum_{k=0}^{f-1}\exp{\frac{2kn\pi i}{f}}=\frac{1}{f}\cdot f=1. $$
これより命題は示された。

これにより目的の命題を得られる。

周期数列の一般式

周期$f$の周期数列$\{a_n\}$の一般式は
$$ a_n=\frac{1}{f}\sum_{j=0}^{f-1}a_j\sum_{k=0}^{f-1}\exp{\frac{2k(n-k)\pi i}{f}} $$

周期数列の具体的表示

冒頭で紹介した$1,2,3,2,1,2,3,2,1,\cdots$を一般の式に表す
命題3より、$f=4, \ a_0=1, \ a_1=2, \ a_2=3, \ a_3 = 2$などを用いて
$$ \begin{eqnarray} \begin{array}{l} a_n &=&\frac{1}{4}\left\{1\cdot \left(1+i^n+i^{2n}+i^{3n}\right)\right. \\ &&+2\cdot \left(1+i^{n-1}+i^{2(n-1)}+i^{3(n-1)}\right) \\ &&+3\cdot \left(1+i^{n-2}+i^{2(n-2)}+i^{3(n-2)}\right)\\ &&\left. +2\cdot \left(1+i^{n-3}+i^{2(n-3)}+i^{3(n-3)}\right)\right\} \\ &=&2-\frac{1}{2}\left\{i^n+(-i)^n\right\}. \end{array} \end{eqnarray} $$

以上で主題は終わりだが、余談を二つ。この周期数列は、その一般式から、漸化式を作ることができると予想される。実際、$S :=a_0+\cdots + a_{f-1}$とすれば
$$ \sum_{k=0}^{f-1} a_{n+k}=S $$
という$f$項間漸化式を得ることができる。基本周期数列の特性方程式は言うまでもないだろう。命題2を建設的に得るにはこの方針が楽である。
最後にもう一つ。$a_n$$n$$x \in \mathbb{C}$とすれば、あることが分かるのではないだろうか。あるいは連続フーリエ変換との類似性を考えてみるのも手立てだろう。

投稿日:20201020

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ネタ切れ中; TeXの空白やピリオドの様式がよく分からん; 日本語記事の少ない話題を主に書く;

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