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ナポレオンの三角形とレスターの定理の一般化

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この記事に書かれている角度は全て有向角です。
また、この記事は全て自分で考えた内容のため、参考文献が存在しません。

ナポレオンの三角形

ナポレオンの三角形

任意の三角形に対し各辺を1辺とする正三角形を描き、これら3つの正三角形の重心同士を結んだとき、この三角形は正三角形となる。この三角形をナポレオンの三角形という。(wikipedia「ナポレオンの定理」より引用)

この三角形は、以下のような命題が成立することが知られている。

ナポレオンの三角形

ナポレオンの三角形の重心と本の三角形の重心は一致する。

ここでは、この命題についての次のような一般化を考える。

一般化ナポレオンの三角形

三角形$ABC$がある。辺$BC$に関して$A$と反対側にある点$A_1$、辺$CA$に関して$B$と反対側にある点$B_1$、辺$AB$に関して$C$と反対側にある点$C_1$を、三つの三角形$A_1BC,$$AB_1C,ABC_1$が相似となるようにとり、三角形$A_1BC,AB_1C,ABC_1$の垂心をそれぞれ$H_A,H_B,H_C$とし、$A_1,B_1,C_1$から直線$BC,CA,AB$に下ろした垂線の足をそれぞれ$D,E,F$とする。
 このとき、三つの直線$AD,BE,CF$はある点$I$で交わり、三角形$H_AH_BH_C$の内心は$I$となる。

この一般化は、三角形$A_1BC,AB_1C,ABC_1$が全て正三角形であるとき命題1と一致する。

$BH_A$$A_1C$の交点を$E'$$CH_A$$A_1B$の交点を$F'$とするとき、三角形$A_1BC$$AB_1C$$ABC_1$の相似から、チェバの定理より

$$\begin{align*} \frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE}{EA}\cdot\frac{AF}{FB}=\frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE'}{E'A}\cdot\frac{AF'}{F'B}=1 \end{align*}$$

が分かり、チェバの定理より$3$直線$AD,BE,CF$が確かに$I$で交わることが分かる。このとき、メネラウスの定理より

$$\begin{align*} \frac{AI}{ID}=\frac{BC}{CD}\cdot\frac{AF}{FB}=\frac{BC}{CD}\cdot\frac{AF'}{F'B}=\frac{A_1H_A}{H_AD} \end{align*}$$

であるから、$AA_1\parallel H_AI$が分かる。
 また、$B$を中心とした三角形$BA_1C$から$BAC_1$への回転拡大、$C$を中心とした三角形$CA_1B$から$CAB_1$への回転拡大を考えることで、

$$\begin{align*} ABA_1\sim H_CBH_A,\hspace{10pt}ACA_1\sim H_BCH_A \end{align*}$$

が分かる。また、垂心の性質より$\angle A_1BH_A=\angle H_ACA_1$であるから、二つの回転拡大の回転の向き逆であることに注意すれば、$\angle H_BH_AH_C$の二等分線が直線$AA_1$と平行であることが分かる。よって、三角形$H_AH_BH_C$の内心を$I'$とすれば$AA_1\parallel H_AI'$であるから、$3$$H_A,I,I'$は同一直線上にある。同様にして三点$(H_B,I,I'),(H_C,I,I')$も同一直線上にあるから、$I=I'$を得る$\Box$

ナポレオンの定理 ナポレオンの定理

上記の議論は、$A_1,B_1,C_1$が全て直線$BC,CA,AB$に関して$A,B,C$と同じ側にある場合も同様に成立する。

レスターの定理

レスターの定理は、以下のような定理である。

レスターの定理

任意の不等辺三角形$ABC$に対し、そのフェルマー点、第二フェルマー点、外心、九点円中心の四点は同一円周上に存在する。

この定理に対し、以下のような一般化を与える。

一般化レスターの定理

定理2における文字はそのまま使用する。三角形$ABC$の垂心を$H$とし、直線$BC$に関して$A_1,H_A$と対称な点をそれぞれ$A_2,I_A$、直線$CA$に関して$B_1,H_B$と対称な点をそれぞれ$B_2,I_B$、直線$AB$に関して$C_1,H_C$と対称な点をそれぞれ$C_2,I_C$とする。
 このとき、三つの直線$(AA_1,BB_1,CC_1),(AA_2,BB_2,CC_2)$はそれぞれ点$X,Y$で交わり、三角形$XYH,XYI$の外接円はともに直線$HI$に接する。

$A_1BC,AB_1C,ABC_1$が正三角形である場合、$I$$ABC$の重心となるから、直線$HI$とは三角形$ABC$のオイラー線となる。さらに、$X,Y$はそれぞれフェルマー点、第二フェルマー点であり、上の主張が成立すると仮定すると、直線$XY$は線分$HI$の中点を通るから、オイラー線上の点の位置関係と法ベキの定理より確かにレスターの定理と同値となる。

まず、$X,Y$の存在を示す。三角形$A_1BC$$AB_1C$の外接円の交点を$X'$とすると、円周角の定理から

$$\begin{align*} \angle AX'C+\angle CX'A_1=-\angle AB_1C+\angle CBA_1=0^\circ \end{align*}$$

より、$3$$A,X',A_1$は同一直線上にある。また、

$$\begin{align*} \angle AX'B+\angle AC_1B&=\angle AX'C+\angle CX'B+\angle AC_1B\\ &=\angle AB_1C+\angle CA_1B+\angle ABC_1=180^\circ \end{align*}$$

より$4$$A,X',B,C$は同一円周上にあるから、三角形$AB_1C$$ABC_1$、三角形$ABC_1$$A_1BC$に対しても同様の議論を繰り返すことで、$3$直線$AA_1,BB_1,CC_1$がすべて$X'$を通ることが分かる。よって$X'=X$を得る。同様にして$Y$の存在も分かる。

レスターの定理1 レスターの定理1

 また、定理2における議論から$\angle H_BH_AH_C=\angle I_CI_AI_B=2\angle A_1BH_A$であり、他の角についても同様であるから$H_AH_BH_C\sim I_AI_BI_C$であり、三角形$H_AH_BH_C$が時計回りのとき三角形$I_AI_BI_C$は反時計回り、三角形$H_AH_BH_C$が反時計回りのとき三角形$I_AI_BI_C$は時計回りとなる。 
 五点$A_2,B,C,H_A,Y$は共円であるから$\angle BYH_A=\angle BCH_A$。また、定理2より$\angle I_CI_BI=\angle H_ACB$であるから、$BY\parallel II_B$と合わせて$H_AY\parallel I_BI_C$となる。同様に

$$\begin{align*} YH_B\parallel I_CI_A,\hspace{5pt}YH_C\parallel I_AI_B,\hspace{5pt}YI_A\parallel H_BH_C,\hspace{5pt}YI_B\parallel H_CH_A,\hspace{5pt}YI_C\parallel H_AH_B \end{align*}$$

が成立するので、四角形$H_AH_BH_CY$$I_AI_BI_CX$はともに共円であり、しかも相似であることが分かる。

レスターの定理3 レスターの定理3

ここで、三角形$IH_BH_C,II_BI_C$の外心をそれぞれ$O_1,O_2$とすると、Iは三角形$H_AH_BH_C,I_AI_BI_C$の内心であるから$O_1,O_2$はそれぞれ三角形$H_AH_BH_C,I_AI_BI_C$の外接円上にある。よって

$$\begin{align*} \angle O_1YH_B=\angle O_1H_AH_B=\frac{1}{2}\angle H_CH_AH_B=\angle ACH_B=\angle AYH_B \end{align*}$$

より三点$O_1,A,Y$は共線であり、この直線上に$A_2$が存在する。ここで$AA_1\parallel H_AIO_1$より

$$\begin{align*} \frac{AO_1}{AA_2}=\frac{A_1H_A}{A_1A_2}=\frac{A_1H_A}{2A_1D} \end{align*}$$

であり、

$$\begin{align*} \frac{AI}{AD}=\frac{A_1H_A}{A_1D} \end{align*}$$

であるから、$O_1$に関して$I$と対称な点は直線$AH$上にある。同様にして$O_2$に関して$I$と対称な点も直線$AH$上にあるから、三角形$IH_BH_C,II_BI_C$の外接円の交点は$I$から直線$AH$に下ろした垂線の足$P$である。

レスターの定理2 レスターの定理2

ここで直線$AO_1Y$に関して$P$と対称な点を$P'$とすると、$P'$は円$H_BH_CI$上にあるから

$$\begin{align*} \angle H_CP'H_B=\angle H_CIH_B=\angle I_BII_C=\angle I_BPI_C \end{align*}$$

が分かる。また、

$$\begin{align*} \angle(PP',I_BI_C)&=\angle(PP',YH_A)=\angle AYH_A-90^\circ\\ &=\angle ACH_B+\angle H_AH_CH_B-(\angle H_CBA+\angle H_ACB+\angle H_BAC)\\ &=\angle CAH_B-\angle BAH_C \end{align*}$$

であり、

$$\begin{align*} \angle I_CPH_B=\angle I_CPI-\angle H_BPI=\angle I_CI_BI-H_BH_CI=\angle BAH_C-\angle CAH_B \end{align*}$$

であるから、

$$\begin{align*} \angle PI_CI_B=\angle H_BPP'=\angle H_BH_CP' \end{align*}$$

であるので、二角相等で$P'H_BH_C\sim P'I_BI_C$。よって$5$$P',H_A,H_B,H_C,Y$$P,I_A,I_B,I_C,X$の位置関係は相似であるので、

$$\begin{align*} XP:YP=XP:YP'=XI:YI \end{align*}$$

を得る。

レスターの定理4 レスターの定理4

$I$から直線$BH$に下ろした垂線の足を$Q$$I$から直線$CH$に下ろした垂線の足を$R$とすれば、同様に$XQ:YQ=XR:YR=XI:YI$が成立するから、これらは$2$$X,Y$のアポロニウスの円上にある。ここで、$3$$P,Q,R$の取り方から、線分$IH$がこの円の直径を成すことは明らかである。この円の中心を$O$とすれば、アポロニウスの円の性質から三角形$XYH$$H$での接線は$O$を通るが、直線$HO$上に$I$が存在することは明らかであるので題意は示された$\Box$

レスターの定理5 レスターの定理5

投稿日:2020116

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peppersの解説やら何やらかにやらを更新していきたい所存です。

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