双複素解析入門 第一回
高校数学で習う,複素数とは虚数単位$i=\sqrt{-1}$を用いて
$$\mathbb{C}=\{z=x+iy\ |\ x,y \in \mathbb{R} \}$$
で定義されます(他にもいろいろな定義がある).さて,この複素数にもう1つ虚数単位を付け加えて集合を作るとどうなるのでしょうか?ここでは新たに虚数単位$j$を考えます.この$j$は
\begin{equation*}
j^2=-1,i \neq j,ij=ji
\end{equation*}
を満たす$i$とは独立な虚数単位とします.さて,このように作った虚数単位を用いて作られる数の集合を双複素数といいます.つまり,
$$\{Z=z_{1}+jz_{2}\ |\ z_{1},z_{2} \in \mathbb{C}\} $$
を双複素数の集合とし,それをBicomplex(双複素数)を略して$\mathbb{BC}$と名付けます.この$\mathbb{BC}$に複素数と同様に加法と乗法を定義すると,これは可換環になります.ですが,$\mathbb{C}$とは違い体にはなりません.実際,
$$1+ij,1-ij \in \mathbb{BC}$$
ともに0ではありませんが,
\begin{align*}
(1+ij)(1-ij)&=1^2-(ij)^2\\
&=1-i^2j^2\\
&=1-(-1)^2\\
&=1-1\\
&=0
\end{align*}
となるからです.よって,$\mathbb{BC}$は零因子を持つ可換環になるということです.これは$i,j$の可換性から得られる帰結です.もし$i,j$を非可換にしてしまえば,それは四元数と一致します.
今後は,この$\mathbb{BC}$上で関数を考え,それを解析するということを目標にします.
では,今日はこのあたりにしておきましょう.気が向けばまた投稿します.