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関数方程式 f(m^2+n^2)=f(m)^2+f(n)^2

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この記事の目標

この記事では,定義域が0以上の整数全体(以後Z0と書く)で実数全体を取る関数fが,(⛄){f(m2+n2)=f(m)2+f(n)2(m,nZ0)f(n)>0(n>0)
を満たすとき,その関数fの具体的な表示を求めます。そもそもこれが関数としてwell-definedなのかすら怪しい(例えばf(65)=f(8)2+f(1)2=f(7)2+f(4)2が成り立つかどうか怪しい)ですが,考えていきましょう。

すぐに分かること

⛄においてm=n=0を代入すれば,f(0)=f(0)2+f(0)2を得るので,f(0)=0またはf(0)=12を得ます。それぞれの場合に分けて考えます。

f(0)=0のとき

f(1)を求めてみます。⛄より,f(1)=f(0)2+f(1)2が成り立ちますので,f(1)=1が従います。他の数値も調べてみましょう。

f(2)=f(1)2+f(1)2=2f(4)=f(2)2+f(0)2=4f(5)=f(1)2+f(2)2=5f(25)=f(5)2+f(0)2=25
です。また,25=32+42より,f(3)2=f(25)f(4)2=9f(3)=3
となります。次にf(6)も求めてみましょう。
f(8)=f(2)2+f(2)2=8f(10)=f(1)2+f(3)2=10f(102)=f(10)2+f(0)2=100f(6)2=f(102)f(8)2=36
したがってf(6)=6です。

ここまでの計算から,次の予想が出来そうです。

f(0)=0のときの⛄

f(0)=0のとき,⛄を満たす関数fは,f(x)=xに限る。

これを証明しましょう。そのために次の補題 1 を用意します。

mを7以上の整数とする。このとき0以上m未満の整数n,p,qが存在して,m2+n2=p2+q2
と表せる。

補題 1

mが偶数の時は,恒等式m2+|m25|2=(m2)2+(m2+3)2
が成り立つ。m7以上と仮定しているので,|m25|,m2,m2+3はいずれも0以上m未満の整数である。

mが奇数の時は,恒等式m2+(m52)2=(m2)2+(m+32)2
が成り立ち,m7以上だったから,m52,m2,m+32はいずれも0以上m未満の整数である。

というわけで,予想が正しいことを示します。

予想の証明

n=0,1,2,3,4,5,6のときに予想は正しい。

n未満の正の整数に対して予想が正しいとする。このときn7であると仮定してよい。補題 1 より,ある0以上n未満の整数p,q,rが存在して,n2+p2=q2+r2
を満たすように取れる。p,q,rについてはそれぞれ,f(p)=pf(q)=qf(r)=rが成り立つので,f(n)2+p2=q2+r2
であり,これらを比べることでf(n)2=n2つまり,f(n)=nを得る。

というわけで,f(0)=0ならば,⛄を満たす方程式はf(n)=n(nZ0)である(逆も明らか)ことが分かりました。

f(0)=12のとき

f(0)=12のときも何かしら規則性がないかを調べたいですので,具体的に計算していきましょう。

まずはf(1)についてですが,f(1)=f(0)2+f(1)2ですので,f(1)=12に限ります。

次にf(2)についても,f(2)=f(1)2+f(1)2=12です。もう予想できそうですね。

f(0)=1/2のときの⛄

f(0)=12のとき,⛄を満たす関数fは,f(n)=12(nZ0)に限る。

f(0)=0のときと同様の流れで,n=0,1,2,3,4,5,6のときにf(n)=12であることを計算し,n7以上の時は補題 1 を適用すれば帰納的に正しいことが証明される。逆も明らかである。

まとめ(感想)

というわけで今回は,⛄を満たすような関数fというのを具体的に求めていきました。初等的な数字遊びでしたが楽しかったです。補題 1 が強力でしたね。

ここまで見ていただきありがとうございます!

投稿日:20201128
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ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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