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多重三角関数の値

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はじめに

今回の内容に関して, 本格的に研究しているわけでもなければこの記事の参考文献になっている本もちゃんと読めていない(ちゃんと読めるだけの経験値が足りていない)ので, 少し遊んでみるみたいな感覚で扱うことになります.
この簡単な記事を読んで, この辺りの分野に興味をもつきっかけになったら嬉しいです.

下準備

r=0,1,2,に対して,

多重フルヴィッツ・ゼータ関数

ζr(s,x)=n=0rHn(n+x)s=n=0(n+r1n)(n+x)s

多重ガンマ関数

Γr(x)=exp[sζr(s,x)|s=0]

多重三角関数

Sr(x)=Γr(x)1Γr(rx)(1)r

と定義されます.
今回は簡単に済ませるので周期ω(1,1,,1)で扱っていくことにします.


S3(x)=exp[s(ζ3(s,x)+ζ3(s,3x))|s=0]

定義通りに計算します.
S3(x)=Γ3(x)1Γ3(3x)1=exp[sζ3(s,x)|s=0]exp[sζ3(s,3x)|s=0]=exp[s(ζ3(s,x)+ζ3(s,3x))|s=0]


φ(s)=n=0(n+12)sとします.

φ(s)=(2s1)ζ(s)
ζはリーマンのゼータ関数

n=0(n+12)s=2sn=01(2n+1)s=(2s1)ζ(s)

本題

今回はS3(12)を計算したいと思います. 補題1より,
S3(12)=exp[s(ζ3(s,12)+ζ3(s,52))|s=0]
(1)
ζ3(s,12)=12n=0(n+2)(n+1)(n+12)s
ここで,
(n+2)(n+1)=(n+12+32)(n+12+12)
だから, n+12を崩さないように展開すると,
=12n=0{(n+12)2+2(n+12)+34}(n+12)s=12n=0(n+12)2s+n=0(n+12)1s+38n=0(n+12)s
補題2より,
=2s212ζ(s2)+(2s11)ζ(s1)+3(2s1)8ζ(s)
(2)
ζ3(s,52)=12n=0(n+2)(n+1)(n+52)s
(n+12)sを出現させるために,
=12n=2n(n1)(n+12)s
n=0,1のときでも0を足すだけだから,
=12n=0n(n1)(n+12)s
(1)と同様な変形をすると,
=2s212ζ(s2)(2s11)ζ(s1)+3(2s1)8ζ(s)
(3)
(1), (2)より,
ζ3(s,12)+ζ3(s,52)=2s212ζ(s2)+3(2s1)8ζ(s)
よって,
s(ζ3(s,12)+ζ3(s,52))|s=0=ln24ζ(2)+34ζ(2)3ln24ζ(0)
ここで, ζ(0)=12,ζ(2)=0であり, 関数等式
ζ(1s)=2(2π)sζ(s)Γ(s)cos(πs2)
の両辺をsで微分してs=3とすると得られる
ζ(2)=ζ(3)4π2
を用いて,
=3ln28+34(ζ(3)4π2)
よって


S3(12)=238exp[3ζ(3)16π2]

式変形をすれば,
ζ(3)=16π23ln(238S3(12)1)
というように, 多重三角関数を用いたζ(3)の表示が得られます.

参考文献

黒川信重 (2013) 『現代三角関数論』 岩波書店.

投稿日:20201128
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投稿者

地頭が悪い 研究するより、ただ「知って」ただ「使う」のが好き

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