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円分体の整数環と判別式

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はじめに

 この記事では円分体の整数環と判別式について解説していきます。
 円分体とは有理数体Q1の原始n乗根ζnを付加した体k=Q(ζn)のことを言い、その整数環Ok=Q(ζn)Zについて以下の定理が成り立ちます。

円分体の整数環

 Ok=Z[ζn]が成り立つ。

 またこの判別式Dk=det(Trk/Q(ζni1ζnj1))は以下のように求まります((ai,j)は行列(ai,j)i,jの意)。

円分体の判別式

Dk=(1)φ(n)2nφ(n)p|npφ(n)p1

 ここでφ(n)はオイラーのトーシェント関数としました。

積の整数環

 まず以下の補題を示す。

 [KL:Q]=[K:Q][L:Q]なる代数体K,Lに対しK,Lの整数環と判別式をそれぞれR,S,DK,DL、そしてKLの整数環をTとおくと
RST1gcd(DK,DL)RS
が成り立つ。特にgcd(DK,DL)=1のときT=RSとなる。

 K,Lの整数底をそれぞれα1,α2,,αm,β1,β2,,βnとおく。
 このとき任意のγTKLに対し
γ=i,jci,jrαiβj(gcd({ci,j},r)=1)
なるci,j,rZを取るとrDKを割り切ることを示せばよい。
 いま
xi=jci,jrβj
とおき、Lの元を固定するKL上の共役写像σi(i=1,2,,m)を取るとσi(γ)=kxkσi(αk)
つまり
(σi(γ))i=A(xi)i(A=(σi(αj))i,j)
が成り立つ。
 またδ=detAとおくとδ2=DKおよび(xi)i=A1(σi(γ))iより
xi=γiδ=γiδDK
なるγiZが取れ
γiδ=DKxi=jDKci,jrβjZK=R
が成り立つ。
 したがってDKci,j/rZ、特にci,j,rの取り方からr|DKを得る。

判別式

 以下n3とする。

 n次円分多項式Φn(x)に対し
Φn(x)=d|n(1xnd)μ(d)
が成り立つ。ここでμ(n)はメビウス関数である。

 円分多項式の定義
Φn(x)=(k,n)=1(xζnk)
より
xn1=d|nΦd(x)
が成り立つので、これにメビウスの反転公式を適応することで
Φn(x)=d|n(xn/d1)μ(d)=(1)d|nμ(d)d|n(1xn/d)μ(d)=d|n(1xnd)μ(d)
を得る。

 素数pと互いに素な自然数kについて
Φpek(x)=Φk(xpe)Φk(xpe1)
が成り立つ。

 d=pidとおくと
Φpek(x)=d|pek(xpekd1)μ(d)=d|ki=0k(xpeikd1)μ(pid)=d|k(xpekd1)μ(d)(xpe1kd1)μ(d)=Φk(xpe)Φk(xpe1)
とわかる。

補題4

Φn(1)={pn=pe1otherwise.

 補題4においてk1であればΦk(1)0より
Φpek(1)=Φk(1)Φk(1)=1
が成り立ち、またk=1であれば
Φpe(1)=limx1xpe1xpe11=p
が成り立つことからわかる。

dn=det(Trk/Q(ζni1ζnj1))
とおくと
dn=(1)φ(n)2nφ(n)p|npφ(n)p1
が成り立つ。

 n3よりφ(n)は偶数となることに注意する。
 いまζn(i)(i=1,2,,φ(n))ζn=ζn(1)の共役元とすると
dn=det((ζn(i))j1)2=i<j(ζn(i)ζn(j))2=(1)φ(n)(φ(n)1)2ij(ζn(i)ζn(j))=(1)φ(n)2Nk/Q(j1(ζnζn(j)))=(1)φ(n)2Nk/Q(Φn(ζn))
と表せる。
 また補題3から
Φn(ζn)=(d|n(1xnd)μ(d))|x=ζn=nζn1d|nd1(1ζd)μ(d)
が成り立つことに注意すると
Nk/Q(Φ(ζn))=(n)φ(n)d|nd1i=1φ(n)(1ζd(i))μ(d)=nφ(n)d|nd1Φd(1)μ(d)φ(n)φ(d)=nφ(n)p|npφ(n)p1
を得る。

整数環

 nと互いに素なi,jについてζni1ζnj1Z[ζn]の単数となる。

 任意のi,jについてζni1ζnj1Z[ζn]に属することを示せばよい。
 いまi,jの取り方からkji(modn)なる自然数kが取れるので
ζni1ζnj1=(ζnj)k1ζnj1=l=0k1(ζnj)lZ[ζn]
を得る。

 素数冪n=peに対しOk=Z[ζn]となる。

 補題4より
Φn(x)=xpe1xpe11=k=0p1xpe1k
となるので上の補題と合わせて
(p)=(Φn(1))=(i(1ζn(i)))=(1ζn)φ(n)
が成り立つことに注意する。
 いま自然な準同型
Z/pZOk/(1ζn)(k+pZk+(1ζn))
を考えると
|Ok/(1ζn)|=|Nk/Q(1ζn)|=Φn(1)=p=|Z/pZ|
なのでこれは同型となる。
 つまり任意のαOkに対してαamod(1ζn)なるaZが存在するので
α(Z+(1ζn))(Z[ζn]+(1ζn))
が成り立つ。したがってOk=Z[ζn]+(1ζn)を得る。
 また
Ok=Z[ζn]+(1ζn)Ok=Z[ζn]+(1ζn)Z[ζn]+(1ζn)2=Z[ζn]+(1ζn)2
のように変形していくことで任意の自然数mに対しOk=Z[ζn]+(1ζn)mが成り立ち、mmφ(n)とすることでOk=Z[ζn]+(pm)がわかる。
 ここでZ[ζn]Okの部分加群としてその商Ok/Z[ζn]を考えると
dn=Dk|Ok/Z[ζn]|2(cf. D(a)=DkN(a)2=Dk|Ok/a|2)が成り立つので、dnpのべきであったことから|Ok/Z[ζn]|pのべきとなる。
 したがって|Ok/Z[ζn]|=pmとおくと任意のαOkpmαZ[ζn]が成り立つので(pm)Z[ζn]つまり
Ok=Z[ζn]+(pm)=Z[ζn]
を得る。

 任意の自然数nに対しOk=Z[ζn],Dk=dnが成り立つ。

 dnの素因数はnを割り切るので
gcd(m,n)=1gcd(dm,dn)=1
が成り立つことに注意すると、補題2,7から数学的帰納法によりわかる。

参考文献

投稿日:20201128
更新日:2024628
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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