よのです. 今回は第一種楕円積分を定義していこうと思います.
この記事は「楕円積分と楕円関数 -おとぎの国の歩き方-」という本の輪読会で使用する(された)資料です.
本のまとめと練習問題の解答が主であり, この本独自の書き方や資料作成時の省略等で読みづらいかもしれませんがご容赦ください.
適宜, 内容の補充はしていきたいと思います.
前回扱った楕円は「二点間からの距離の和が一定」, 双曲線は「二点間からの距離の差が一定」, 放物線は「二点間からの距離が一定」となる点の軌跡であった.
では「二点間からの距離の積が一定」となる点の軌跡はどうなるだろうか
二定点$A=(-a,0), B=(a,0)$として点$P=(x,y)$と二定点の距離の積が$l^2$(一定)となる軌跡の方程式を計算する.
\begin{align*}
PA・PB
&=\sqrt{(x+a)^2+y^2}\sqrt{(x-a)^2+y^2} \\
&=\sqrt{x^2+y^2+2ax+a^2}\sqrt{x^2+y^2-2ax+a^2} \\
&=\sqrt{r^2+2ar\cos\phi+a^2}\sqrt{r^2-2ar\cos\phi+a^2} &(極座標表示)\\
&=\sqrt{(r^2+a^2)^2-4a^2r^2\cos^2\phi} \\
&=\sqrt{r^4+a^4-2a^2r^2\cos2\phi}
\end{align*}
よって$\sqrt{r^4+a^4-2a^2r^2\cos2\phi}=l^2$となるので両辺を2乗して$r^4+a^4-2a^2r^2\cos\phi=l^4$
この曲線をCassiniの卵形と呼ぶ.
特に$l=a$の場合を考えると, $r^4=2a^2r^2\cos2\phi$から$r^2=2a^2\cos2\phi$となる.
極座標表示から戻すと$(x^2+y^2)^2=2a^2(x^2-y^2)$となり, レムニスケートと呼ばれる.
極座標表示の左辺と右辺を比べてもらうと第一象限では$0\lt\phi\lt\displaystyle \frac{\pi}{4}$のみに存在する.
この範囲で$\cos2\phi$は1から0に単調減少するので$\cos2\phi=(\cos\psi)^2$となる$\phi$が[$0,\displaystyle\frac{\pi}{2}$]内で一つ決まる.
これを用いると極座標表示は$r=\sqrt{2}a\cos\psi$となる.
またこれらから$x$と$y$はそれぞれ$x^2=a^2\cos^2\psi(1+\cos^2\psi)$, $y^2=a^2\cos^2\psi(1-\cos^2\psi)$となるので
$x=\sqrt2a\cos\psi\sqrt{1-\displaystyle\frac{1}{2}\sin^2\psi}$, $y=a\cos\psi\sin\psi=\displaystyle\frac{a}{2}\sin2\psi$となる.
パラメタ$\psi$の幾何学的意味は置いておく.(図の書き方を知らないから書きたいけど書けない)
パラメタ表示が出来たので, 後は$\psi$で微分して曲線の公式に代入するだけである.
\begin{align*}
\frac{dx}{d\psi}=\sqrt2a\frac{\sin\psi}{\sqrt{1-\displaystyle\frac{1}{2}\sin^2\psi}}\bigg(-\frac{3}{2}+\sin^2\psi\bigg),
\frac{dy}{d\psi}=a\cos2\psi=a(1-2\sin^2\psi)
\end{align*}
より
\begin{align*}
\bigg(\frac{dx}{d\psi}\bigg)^2+\bigg(\frac{dy}{d\psi}\bigg)^2=\frac{a^2}{1-\displaystyle\frac{1}{2}\sin^2\psi}
\end{align*}
これを弧長の公式に代入すると, $\psi$が$0$から$\theta$まで動く時の弧長は
\begin{align*}
a\displaystyle\int_{0}^{\theta}\frac{d\psi}{\sqrt{\displaystyle1-\frac{1}{2}\sin^2\psi}}
\end{align*}
よって積分区間の上端を$\displaystyle\frac{\pi}{2}$とすると第一象限の長さとなり, これを4倍するとレムニスケートの全周を得られる(図形の対称性).
これも初等関数では表せないので, 新しく積分を定義しよう.
$F(k,\theta):=\displaystyle\int_{0}^{\theta}\frac{d\psi}{\sqrt{1—k^2\sin^2\psi}}$を第一種不完全楕円積分と呼ぶ.
第一種不完全楕円積分において$\theta=\displaystyle\frac{\pi}{2}$とした
$K(k):=F\bigg(k,\displaystyle\frac{\pi}{2}\bigg)=\int_{0}^{\pi/2}\frac{d\psi}{\sqrt{1—k^2\sin^2\psi}}$を第一種完全楕円積分と呼ぶ.
この2つを第一種楕円積分と呼び, パラメタ$k$をモジュラスと呼ぶ.
これらを用いると, レムニスケートの弧長は
\begin{align*}
(0\leq\psi\leq\theta)の部分=aF\bigg(\displaystyle\frac{1}{\sqrt2},\theta\bigg), \\
全周=4aK\bigg(\displaystyle\frac{1}{\sqrt2}\bigg)
\end{align*}
となる
第二種楕円積分の時と同様に, $\sin\psi$を被積分関数からなくす. $z=\sin\psi$と置くと
\begin{align*}
F(k,\theta)=\displaystyle\int_{0}^{\sin\theta}\frac{dz}{\sqrt{(1-z^2)(1-k^2z^2)}}\\
K(k)=\displaystyle\int_{0}^{1}\frac{dz}{\sqrt{(1-z^2)(1-k^2z^2)}}
\end{align*}
となる
このCassiniはCassiniの間隙等の土星関連の研究で有名なGiovanni Cassiniの方ですかね. 息子のJacques Cassiniとともに有名ですよね.
最後まで見ていただきありがとうございました.