判別式がになるような整数係数次形式について調べる話。
一応
前回の記事
の続き。とりあえずいろいろまとめる。次の記法を使う。
このとき、と互いに素な素数について、
となる。そこでと定義する。
と互いに素な素数について、が次の形式、
のいずれかで書けるとき、いずれにしろが成り立つ。その上で、次のことが成り立つ:
これらを満たす素数は次の通り。
素数のタイプ、整数のタイプ
素数のタイプを次のように定義する。
- タイプの素数:
- タイプの素数:または
- タイプの素数:
- タイプの素数:または
- タイプの素数:それ以外、すなわちと互いに素で
正の整数のタイプを次のように定義する。まずを正の整数とし素因数分解する。このときの重複込みでのタイプの素数の個数をとおく。
はじめに、がタイプの素数のいずれでもちょうど偶数回(を含む)割り切れる場合を考える。このとき、
- タイプの正の整数:を満たす正の整数
- タイプの正の整数:を満たす正の整数
- タイプの正の整数:を満たす正の整数
- タイプの正の整数:を満たす正の整数
とする。いずれかのタイプの素数でちょうど奇数回割り切れるようなはタイプとする。
最後に、正の整数のもうひとつのタイプを定義する。正の整数について、
- タイプの正の整数:と書ける正の整数
- タイプの正の整数:と書ける正の整数
- タイプの正の整数:と書ける正の整数
- タイプの正の整数:と書ける正の整数
とする。いずれの形にも書けない正の整数はタイプとする。
主定理
判別式15の整数の表現定理
正の整数について、タイプであることとタイプであることは同値。
いろいろ準備しつつ徐々に証明していく感じで。
たち、たちが交わらないこと
まずがのとき交わらないこと。のモジュロでの値は2通りしかないため、必然的にうち二つは一致する。それがどこか1カ所で残りとは違うのか、もしくはすべて等しいのか、と考えればどれかひとつ、しかもひとつだけが成り立つと分かる。
次にについて、これは交わらないことを簡単な議論で示せる。次のことが重要(モジュロの場合分けで容易):
これを使って最大公約数とか使ってちょちょっと議論すると示せる。のときとは両立しない。
素数の場合
まず素数の場合。素数については、であることとであること、またであることとであることは同値である。がと互いに素なら、とが同値なのはもう示してある。については、はで型だし、はで型。なのですべての素数で定理が成り立つ。
積についての性質
正の整数は共にどれかの型の正の整数とし、型の素因子の数をとする。この場合も型でちょうど偶数回は保たれるし、だからどれかの型になる、で、積についてはそれぞれになるから、それがどれになるかは容易に分かる。たとえばとなら
なので型。またとの積ならすべて型。まとめるとこう:
次に、型の整数の積についての性質を調べる。
のような計算で簡単に確かめられて、次:
同じようになる。不思議。
「ならば」の証明
まず型の素数はどれも偶数回しか現れないので最後に平方数として乗ずればよいから無視する。存在しないとしてよい。また型素数は型であのように書け、その積もすべてだし、に何を掛けてもはのままだから、この部分も無視して型素数の積を何らかの・・であれば型の表示をすれば、全体で型として書ける。そこで、は~型の素数の積としてよい。
たとえばとするとだから、平方数を取り除けば一つずつの積になるかになる。ならだし、一つずつの積ならをすべて掛けたものは表より
他の、たとえばとすると、平方を取り除けばがひとつかが一つずつになるがとの積はだから同じこと。結局になる。も同じ議論なので略。
「どれかのならばどれかの」の証明
はいずれかの型とする。がと互いに素な整数で割り切れるとすると、が共にと互いに素なら、となるから、が型ならは共にで割り切れ、はで割り切れる。これを繰り返していくとでがちょうど奇数回割り切れることはありえないとわかる。だからはいずれかのに分類されるはずである。
「ならば」の証明(がと互いに素な時)
はいずれかのの整数とし、と互いに素とする。の型素因子の個数をとする。はでもでも割れないので、それぞれの場合のはこうなる:
一方、
である。ここから明らか。(はどっちもの型)
「ならばの証明」(一般の場合)
がで割り切れるとする。このとき表現においてのどっちかはで割り切れてが表現されるが、その場合のタイプはと、とを入れ替えたものになる。こうしてを削ってできる整数のタイプはの因子数のパリティによりこの置換をしたものかそうでないものになる。についても同じように削っていく、この場合は削るたびにと、とが入れ替わる。で、パリティにより入れ替わったかどうか、みたいになる。こうしての因子をすべて除いて
のように書く。がどんなであるかはのの因子数のパリティの組み合わせで通りある。たとえばが奇数個でが偶数個ならはからとが入れ替わっている。そしては明らかに型。だから前の結果でをに落とすとそれとの積でまたとがチェンジして結局になる。他のケースも同じ。これで完全に示された。