判別式が$15$になるような整数係数$2$次形式について調べる話。
一応
前回の記事
の続き。とりあえずいろいろまとめる。次の記法を使う。
$$p~が奇素数の時~\chi_4(p)=\sqrs{-1}{p}\\[5pt]$$
$$m~が整数の時~\chi_3(m)=\sqrs{m}{3}\\[5pt]$$
$$m~が整数の時~\chi_5(m)=\sqrs{m}{5}$$
このとき、$60$と互いに素な素数$p$について、
$$\sqrs{15}{p} = \chi_4(p)\chi_3(p)\chi_5(p)$$
となる。そこで$\chi_{60} = \chi_4\chi_3\chi_5$と定義する。
$60$と互いに素な素数$p$について、$p$が次の形式、
$$x^2-15y^2,~~3x^2-5y^2,~~-x^2+15y^2,~~5x^2-3y^2$$
のいずれかで書けるとき、いずれにしろ$\chi_{60}(p)=1$が成り立つ。その上で、次のことが成り立つ:
\begin{array}{ccc}
\chi_4(p)=1,~~\chi_3(p)=1,~~\chi_5(p)=1 & \leftrightarrow & p=x^2-15y^2~~と書ける\\[5pt]
\chi_4(p)=-1,~~\chi_3(p)=1,~~\chi_5(p)=-1 & \leftrightarrow & p=3x^2-5y^2~~と書ける\\[5pt]
\chi_4(p)=-1,~~\chi_3(p)=-1,~~\chi_5(p)=1 & \leftrightarrow & p=-x^2+15y^2~~と書ける\\[5pt]
\chi_4(p)=1,~~\chi_3(p)=-1,~~\chi_5(p)=-1 & \leftrightarrow & p=5x^2-3y^2~~と書ける
\end{array}
これらを満たす素数は次の通り。
\begin{array}{ccc}
\chi_4(p)=1,~~\chi_3(p)=1,~~\chi_5(p)=1 & \leftrightarrow & p\equiv 1, 49\md{60}\\[5pt]
\chi_4(p)=-1,~~\chi_3(p)=1,~~\chi_5(p)=-1 & \leftrightarrow & p\equiv 7, 43\md{60}\\[5pt]
\chi_4(p)=-1,~~\chi_3(p)=-1,~~\chi_5(p)=1 & \leftrightarrow & p\equiv 11, 59\md{60}\\[5pt]
\chi_4(p)=1,~~\chi_3(p)=-1,~~\chi_5(p)=-1 & \leftrightarrow & p\equiv 17, 53\md{60}
\end{array}
素数のタイプを次のように定義する。
正の整数のタイプを次のように定義する。まず$N$を正の整数とし素因数分解する。このときの重複込みでのタイプ$P_i$の素数の個数を$n_i$とおく。
はじめに、$N$がタイプ$Q$の素数のいずれでもちょうど偶数回($0$を含む)割り切れる場合を考える。このとき、
とする。いずれかのタイプ$Q$の素数でちょうど奇数回割り切れるような$N$はタイプ$B$とする。$\\[5pt]$
最後に、正の整数のもうひとつのタイプを定義する。正の整数$N$について、
とする。いずれの形にも書けない正の整数はタイプ$D$とする。
正の整数$N$について、タイプ$A_i$であることとタイプ$C_i$であることは同値$~~(i=0,1,2,3)$。
いろいろ準備しつつ徐々に証明していく感じで。
まず$A_i,A_j$が$i\neq j$のとき交わらないこと。$n_1,n_2,n_3$のモジュロ$2$での値は2通りしかないため、必然的にうち二つは一致する。それがどこか1カ所で残りとは違うのか、もしくはすべて等しいのか、と考えればどれかひとつ、しかもひとつだけが成り立つと分かる。
次に$C_i$について、これは交わらないことを簡単な議論で示せる。次のことが重要(モジュロの場合分けで容易):
これを使って最大公約数とか使ってちょちょっと議論すると示せる。$i\neq j$のとき$C_i$と$C_j$は両立しない。
まず素数の場合。素数については、$P_i$であることと$A_i$であること、また$Q$であることと$B$であることは同値である。$p$が$60$と互いに素なら、$A_i$と$C_i$が同値なのはもう示してある。$2,3,5$については、$2,5$は$A_3$で$C_3$型だし、$3$は$A_1$で$C_1$型。なのですべての素数で定理が成り立つ。
正の整数$N,M$は共にどれかの$A_i$型の正の整数とし、$P_i$型の素因子の数を$n_i,m_i$とする。この場合$NM$も$Q$型でちょうど偶数回は保たれるし、だからどれかの$A_i$型になる、で、積についてはそれぞれ$n_i+m_i$になるから、それがどれになるかは容易に分かる。たとえば$A_1$と$A_3$なら
$$n_1+m_1+1\equiv n_2+m_2\equiv n_3+m_3+1 \md{2}$$
なので$A_2$型。また$A_i$と$A_i$の積ならすべて$A_0$型。まとめるとこう:
\begin{array}{c|c|c|c|c}
\times & A_0 & A_1 & A_2 & A_3 \\
\hline
A_0 & A_0 & A_1 & A_2 & A_3 \\
\hline
A_1 & A_1 & A_0 & A_3 & A_2 \\
\hline
A_2 & A_2 & A_3 & A_0 & A_1 \\
\hline
A_3 & A_3 & A_2 & A_1 & A_0
\end{array}
次に、$C_i$型の整数の積についての性質を調べる。
\begin{align*}
(x^2-15y^2)(u^2-15v^2) &= (x-\sqrt{15}y)(u-\sqrt{15}v)(x+\sqrt{15}y)(u+\sqrt{15}v) \\[5pt]
&= (X-\sqrt{15}Y)(X+\sqrt{15}Y)\\[5pt]
&= X^2-15Y^2.~~~(X=xu+15yv,~Y=xv+yu) \\[5pt]
(3x^2-5y^2)(u^2-15v^2) &= (\sqrt{3}x-\sqrt{5}y)(u-\sqrt{15}v)(\sqrt{3}x+\sqrt{5}y)(u+\sqrt{15}v) \\[5pt]
&= (\sqrt{3}X-\sqrt{5}Y)(\sqrt{3}X+\sqrt{5}Y) \\[5pt]
&= 3X^2-5Y^2.~~~(X=xu+5yv,~Y=3xv+yu)\\[5pt]
(3x^2-5y^2)(3u^2-5v^2) &= (\sqrt{3}x-\sqrt{5}y)(\sqrt{3}u-\sqrt{5}v)(\sqrt{3}x+\sqrt{5}y)(\sqrt{3}u+\sqrt{5}v) \\[5pt]
&=(X-\sqrt{15}Y)(X+\sqrt{15}Y)\\[5pt]
&=X^2-15Y^2~~~(X=3xu+5yv,~Y=xv+yu)
\end{align*}
のような計算で簡単に確かめられて、次:
\begin{array}{c|c|c|c|c}
\times & C_0 & C_1 & C_2 & C_3 \\
\hline
C_0 & C_0 & C_1 & C_2 & C_3 \\
\hline
C_1 & C_1 & C_0 & C_3 & C_2 \\
\hline
C_2 & C_2 & C_3 & C_0 & C_1 \\
\hline
C_3 & C_3 & C_2 & C_1 & C_0
\end{array}
同じようになる。不思議。
まず$Q$型の素数はどれも偶数回しか現れないので最後に平方数として乗ずればよいから無視する。存在しないとしてよい。また$P_0$型素数は$C_0$型であのように書け、その積もすべて$C_0$だし、$C_0$に何を掛けても$C_i$は$C_i$のままだから、この部分も無視して$P_1,P_2,P_3$型素数の積を何らかの・・$A_i$であれば$C_i$型の表示をすれば、全体で$C_i$型として書ける。そこで、$N$は$P_1$~$P_3$型の素数の積としてよい。
たとえば$A_0$とすると$n_1\equiv n_2\equiv n_3$だから、平方数を取り除けば一つずつの積になるか$1$になる。$1$なら$C_0$だし、一つずつの積なら$C_1,C_2,C_3$をすべて掛けたものは表より$C_0.$
他の、たとえば$A_2$とすると、平方を取り除けば$P_2$がひとつか$P_1,P_3$が一つずつになるが$C_1$と$C_3$の積は$C_2$だから同じこと。結局$C_2$になる。$A_1,A_3$も同じ議論なので略。
$N$はいずれかの$C_i$型とする。$N$が$60$と互いに素な整数$q$で割り切れるとすると、$x,y$が共に$q$と互いに素なら、$\chi_{60}(q)=1$となるから、$q$が$Q$型なら$x,y$は共に$q$で割り切れ、$N$は$q^2$で割り切れる。これを繰り返していくと$q$で$N$がちょうど奇数回割り切れることはありえないとわかる。だから$N$はいずれかの$A_i$に分類されるはずである。
$N$はいずれかの$C_i$の整数とし、$15$と互いに素とする。$N$の$P_i$型素因子の個数を$n_i$とする。$N$は$3$でも$5$でも割れないので、それぞれの場合の$\chi_3,~\chi_5$はこうなる:
一方、
$$\chi_3(N)=(-1)^{n_2+n_3},~~~\chi_5(N)=(-1)^{n_1+n_3}$$
である。ここから明らか。($2$はどっちも$-1$の$P_3$型)
$N$が$3$で割り切れるとする。このとき表現において$x,y$のどっちかは$3$で割り切れて$N/3$が表現されるが、その場合のタイプは$C_0$と$C_1$、$C_2$と$C_3$を入れ替えたものになる。こうして$3$を削ってできる整数のタイプは$3$の因子数のパリティによりこの置換をしたものかそうでないものになる。$5$についても同じように削っていく、この場合は削るたびに$C_0$と$C_3$、$C_1$と$C_2$が入れ替わる。で、パリティにより入れ替わったかどうか、みたいになる。こうして$3,5$の因子をすべて除いて
$N=N'N'', ~~~~N''はNを割り切る3,5の積または1$
のように書く。$N'$がどんな$C_j$であるかは$N''$の$3,5$の因子数のパリティの組み合わせで$4$通りある。たとえば$3$が奇数個で$5$が偶数個なら$N'$は$N$から$01$と$23$が入れ替わっている。そして$N''$は明らかに$A_1$型。だから前の結果で$N'$を$A_j$に落とすとそれと$A_1$の積でまた$01$と$23$がチェンジして結局$A_i$になる。他のケースも同じ。これで完全に示された。$\square$