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Hoffmanの恒等式

1974
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Hoffmanの恒等式の連結和法による証明

はじめに

この記事ではHoffmanの恒等式 (Hoffman's Identity) と呼ばれるある多重ゼータ値に関連した関係式族を紹介して、それを連結和法と呼ばれる証明法で示そうと思います。連結和法は多重ゼータ値の関係式を証明するのに非常に画期的かつ有効なもので、2人の偉大な日本人数学者、関真一朗・山本修司によって発見されました。それが導入された原論文のarXivのプレプリントが A new proof of the duality of multiple zeta values and its generalizations から読めます。この論文ではthe duality of multiple zeta values、すなわち多重ゼータ値の双対性と呼ばれる関係式と、その複数の一般化を証明しています。興味のある方はぜひご一読を!
 そろそろ本題に入りましょう。まずこの記事で使われるノーテーション(記法)から紹介します。

ノーテーション

以下Nと書けば正の整数を表すことにします。ある正の整数aに対して、Ja=Z0××Z0a,IaZ1××Z1a,Ia{(k1,,ka)Ia:ka2}
とおきます。J0=I0=I0={}として、さらにI=a=1Ia,I=a=1Ia,I0=a=0Iaとします。I0の元のことをインデックス (index)、Iの元のことを許容インデックス (admissible index) と呼びます。インデックスk=(k1,,ka)Iaに対してk1++kaのことを重さ (weight) と呼び、wt(k)で表します。またk=(ka,,k1)とし、kのことを逆転インデックス (reverse index) といいます。
 次にこの記事で頻繁に使うことになる矢印記法 (arrow notation) について説明します。インデックスk=(k1,,ka)Iaに対してk=(k1,,ka,1),k=(1,k1,,ka),k(k1,,ka1,ka+1),k(k1+1,k2,,ka),k(k1,,ka1,ka1),k(k11,k2,,ka)
と書くことにしましょう。慣例により、==(1), ====とします。
 インデックスkに対して((k))のことをHoffman双対インデックス (Hoffman dual index) と呼んでkと表記します。ここでまだ紹介していないkというノーテーションがありますが、これはkに対する双対インデックス (dual index) と呼ばれるものです。定義はまだここでは述べず、後で詳しく説明します。とりあえずはHoffman双対インデックスも双対インデックスも、kに対して一意に定まる何らかのインデックスであるということだけ把握してもらえれば大丈夫です。
 最後に、二つのインデックスk=(k1,,ka)Jan=(n1,,na)Iaに対して、nk=i=1aniki (ただしa=0のときnk=1)と定めます。

ではいよいよHoffmanの恒等式がどんな定理であるか見ていきましょう。

Hoffmanの恒等式

Hoffmanの恒等式

HN(k)=1n1naN(1)na1nk(Nna), ζN(k)=0=n0<n1naN1nkとする。
このとき、任意のインデックスkIa (a1)に対してHN(k)=ζN(k)が成立する。

これがHoffmanの恒等式です。初見では何がなんだかさっぱりとなりそうですが、落ち着いて両辺を観察してみましょう。よく見ると右辺も左辺も和の取り方は同じです。そして何の和を取っているかに着目してみます。右辺はnkの逆数であるのに対して、左辺は(Hoffman双対ではない)元のインデックスに関する項nkの逆数にさらに係数(1)na1(Nna)が掛かっています。その二つが同じように和を取ったときに一致するというのですから、どれくらいこの定理が強いかはさておき非常に興味深いことには間違いありません。さらに忘れてはいけない点が、この定理は任意のインデックスkに対してだけではなく、任意の正の整数Nで成立するというポイントです。
 それではこの定理の証明に取り掛かるとしましょう。まずは連結和法について詳しく説明します。

連結和法

主定理の証明法としてここで紹介するのは冒頭で述べたように連結和法 (connected sum method) と呼ばれる手法です。この章で連結和法のアルゴリズムを解説します。
 この証明には大きく4つのステップがあります。

  1. 連結和 (connected sum) と呼ばれるこの証明法のキーを発見する。

  2. 連結和の輸送関係式 (transport relation) を示す。

  3. 連結和の境界条件 (boundary condition) を確認する。

  4. 輸送関係式を繰り返し用いてインデックスを輸送してできた等式に境界条件を適用する。

もう少し具体的に説明しましょう。等式A=Bを示したいとします。これを証明するのに連結和{S(k)}k=0n (nZ>0)を導入します(ステップ1)。次にその連結和に関する輸送関係式S(k)=S(k+1) (0kn1)を示します(ステップ2)。さらに、導入した連結和が境界条件S(0)=A,S(n)=Bを満たすことを確認します(ステップ3)。最後に輸送関係式を繰り返し用いて得られる等式S(0)=S(1)==S(n)に境界条件を適用して(ステップ4)、等式A=Bが示されるといった具合です。実際には輸送関係式はもっと複雑な式になることが多く、その分ステップ4での輸送が難しくなるケースが多いですが、理屈とやっていることは非常に単純かつ明快です。
 というわけで、連結和法で証明するには連結和・その輸送関係式・境界条件が必要ですね。まずはHoffmanの恒等式の証明に必要な連結和を次の章で定義しましょう。

連結和法ステップ1〜連結和の定義〜

連結和

2つのインデックスkIlI0に対して、その連結和ZNHD(k;l)
ZNHD(k;l)=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)CHD(na,m1)1ml
で定義する。ここでCHD(na,m1)コネクター (connector) と呼ばれる因子で、CHD(na,m1)=(1)na1(m1na)である。また、連結関係式はnam1である。

この定義を見てすぐになるほど!と納得できた方はもうこの先を読む必要はありません。この記事を読む暇があればどうぞ新たなコネクターとそれがうむ新たな関係式族を発見して論文を書いて数学の発展に貢献してください。冗談はさておき、これは定義です。このように連結和を定義するとうまい具合に輸送関係式と境界条件が得られて、Hoffmanの恒等式が証明できてしまうのです。「え、どうやってこんなの思いつくの」と思ったあなた、そうなんです。連結和というものはそう簡単に発見できるものではないんです。連結和法の唯一のネックが、うまく証明が回るような連結和を発見することなのです。なので、とりあえず読者さんはこの連結和を発見した数学者に敬意を表しつつ、この定義を受け入れてしまいましょう。たとえ自分で連結和を見つけられなかったとしても、この連結和を用いることでHoffmanの恒等式がきちんと証明できることが理解できたときには多少なりとも感動が得られるはずです。
 ところでコネクターやら連結関係式やらまだ説明していない用語が出てきました。コネクターはそのまま文字通り、「繋げ役」です。つまり、連結和の部分で、今回であればn(k)の逆数と、mlの逆数をコネクターCHD(na,m1)で繋げていることが見てとれると思います。連結関係式に関しては、和を取る際の連結されている部分の条件式だと思ってもらえれば大丈夫です。今回なら連結関係式はnam1となります。連結関係式に関しては特別に意識する必要はないです。それでは証明の次のステップ、輸送関係式の証明にうつりましょう。

連結和法ステップ2〜輸送関係式の証明〜

輸送関係式の内容とその証明に入る前に、証明に必要な準備をします。

証明の準備

この節で、輸送関係式(後で示す命題4)を示すために用いる2つの補題(補題2・補題3)を用意します。

nam1を満たす任意の正の整数na,m1に対して, nam0m11m0(m0na)=1na(m1na).

na=m1のときは自明に成立するので、以下の議論ではna<m1とします。
 nam0m11m0(m0na)
=nam0m11m0m0!na!(m0na)!
=nam0m11na(m01)!(na1)!(m0na)!
=nam0m11na(m01na1)
=1nanam0m1(m01na1)
=1na((na1na1)+na<m0m1(m01na1))
=1na(1+na<m0m1{(m0na)(m01na)})
=1na(1+(m1na)(nana))
=1na(m1na).
ただし6行目から7行目にかけて二項係数の有名公式(nk)=(n1k)+(n1k1)を用いました。□

nam1を満たす任意の正の整数na,m1に対して,nana+1m1(1)na+11na(m1na+1)=(1)na1m1(m1na).

na=m1のときは自明に成立するので、以下の議論ではna<m1とします。
 nana+1m1(1)na+11na(m1na+1)
=1nanana+1m1(1)na+11(m1na+1)
=1na((1)m11(m1m1)+nana+1<m1(1)na+11(m1na+1))
=1na((1)m11(m1m1)+nana+1<m1(1)na+11{(m11na+1)+(m11na+11)})
=1na((1)m11(m1m1)+(1)m12(m11m11)+(1)na1(m11na1))
=(1)na1na(m11na1)
=(1)na1na(m11)!(na1)!(m1na)!
=(1)na1m1m1!na!(m1na)!
=(1)na1m1(m1na).
ただし3行目から4行目にかけて二項係数の有名公式(nk)=(n1k)+(n1k1)を用いました。□

ではこれらの補題を用いて輸送関係式を示していきましょう。

輸送関係式とその証明

輸送関係式

任意の二つのインデックス kI, lI0に対してZNHD(k;l)=ZNHD(k;l) (i),ZNHD(k;l)=ZNHD(k;l)(l) (ii).

まず輸送関係式(i)から示します。
 ZNHD(k;l)
=1n1nam1mbmb+1=N1nkCHD(na,m1)1ml
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)1ml(1)na11na(m1na)
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)1ml(1)na1nam0m11m0(m0na)
=1n1nam0m1mbmb+1=N1n(k)CHD(na,m0)1m01m1l1mblb
=1n1nam1mb+1mb+2=N1n(k)CHD(na,m1)1m(l)
=ZNHD(k;l).
ただし3行目から4行目にかけて、補題2を用いました。
 次に輸送関係式(ii)を示します。
 ZNHD(k;l)
=1n1nana+1m1mbmb+1=N1n1k1nakaCHD(na+1,m1)1ml
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)1ml1nanana+1m1CHD(na+1,m1)
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)1mlnana+1m1(1)na+11na(m1na+1)
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)1ml(1)na1m1(m1na)
=1n1nam1mbmb+1=N1n(k)CHD(na,m1)1m1l1+1m2l2mblb
=ZNHD(k;l).
ただし4行目から5行目にかけて、補題3を用いました。以上で輸送関係式が示されました。□

輸送関係式を手に入れたので、あと私たちに必要なものは境界条件のみです!

連結和法ステップ3〜境界条件の証明〜

輸送関係式は計算がかなり重かったと思いますが、境界条件を確かめるのはそれに比べると容易です。

境界条件

任意のインデックスkIに対して、ZNHD(k;)=HN(k),ZNHD((1);k)=ζN(k).

ZNHD(k;l)の定義より、
 ZNHD(k;)
=1n1nam1=N1nkCHD(na,m1)
=1n1naN1nkCHD(na,N)
=1n1naN(1)na1nk(Nna)
=HN(k).
同じくZNHD(k;l)の定義より、
 ZNHD((1);k)
=1n1m1mbmb+1=NCHD(n1,m1)1mk
=1n1m1mbN1mk(1)n11(m1n1)
=1m1mbN1mk1n1m1(1)n11(m1n1)
=1m1mbN1mk((1)0(m10)0n1m1(m1n1)(1)n11m1n1)
=1m1mbN1mk(1(1+1)m1)
=0=m0<m1mbN1mk
=ζN(k).
以上で境界条件が示されました。□

ついにステップ3までのプロセスが終わりました。残るは、得られた輸送関係式と境界条件を用いて等式を証明するステップ4のみです。あとひと息、頑張りましょう!

連結和法ステップ4〜ラストスパート〜

さあようやく全ての準備が整いました。
...と言いたいところですが、大事なことをまだしていませんでした。え、何かって?忘れてしまったでしょうか、ノーテーションの章で後述するとしていた、Hoffman双対インデックスの定義で使われている双対インデックスの定義をまだしていませんでした。このタイミングで双対インデックスを定義することになります。

双対インデックス

任意のインデックスkIは正の整数s,a1,b1,,as,bsを用いてk=({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1)のように表せ、この表示は一意である。このとき、kに対する双対インデックスkk=({1}bs1,as+1,,{1}b11,a1+1)Iと定義する。ここで{}nn個繰り返して並べたものする。たとえば{1}4=(1,1,1,1)k{}3=k↑↑↑である。

これで準備万端です!これから連結和のインデックスを輸送関係式によって輸送していきます。どのように輸送していくかという規則を次のように定めます。
ZNHD(k;l)のインデックスを輸送するとき、

  1. kIのとき、輸送関係式(i)を使う。

  2. kII かつ k(1)のとき、輸送関係式(ii)を使う。

  3. k=(1)となったとき、輸送をやめる。

という規則に従います。このように輸送することで、うまくスタートとゴールがイコールの関係で結ばれるのです。この事実をきちんと証明して、ついにHoffmanの恒等式の連結和法による証明が完結します!
 スタートはZNHD(k;) (ただしkI)です。これを上のルールにしたがって輸送していくのですが、このままだとインデックスk(あるいはk)に具体性がなさすぎて輸送の様子を把握することは困難です。そこで活躍するのが双対インデックスの定義の際に出てきた表示です!kIなので、kIです。したがってk=({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1)となるような正の整数s,a1,b1,,as,bsが一意に定まります。これらを用いて具体的に輸送していきましょう。
 ZNHD(k;)がスタートで、kIなので、上のルールに従えばルール1が適用されます。すなわちZNHD(k;)のインデックスを輸送関係式(i)により輸送します。
 ZNHD(k;)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1);)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs);)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs);)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs);(1))
と言った具合です。輸送関係式(i)は3行目から4行目にかけて使っています。確かにインデックスを左から右に輸送している感じがしませんか?
 さて、今私たちは輸送関係式(i)を使いました。あと何回輸送関係式(i)を使った後に、輸送関係式(ii)を使うことになるか考えてみてください。分かりましたか?正解はあとbs1回です。なぜなら、輸送関係式(i)を1回使うごとに輸送する側のインデックスの最後の値が1ずつ減りますが、これが1になったときに=輸送するインデックスがIIの元となったときに輸送関係式(ii)を適用するからです。つまりbsが1になるまで(i)を使うので、あとbs1回となります。ここで、もしbs=1ならbs1=0より次に使う輸送関係式は輸送関係式(ii)ということになります。まとめると、1回目の輸送と合わせてスタートから計bs回、輸送関係式(i)により輸送することになります。ではスタートからbs回輸送関係式(i)により輸送するとどうなるでしょうか。
 ZNHD(k;)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1);)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,1){}bs;)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,1);{}bs)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,1);({1}bs))=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as);({1}bs))
というようになります。さあこれで輸送する側のインデックス({1}a11,b1+1,,{1}as)IIの元となり、輸送関係式(ii)の出番となります。先ほどと同様に考えると、今度はas回、輸送関係式(ii)を使えばよいということになります。
 ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as);({1}bs))=ZNHD(({1}a11,b1+1,,bs1+1){}as;({1}bs))=ZNHD(({1}a11,b1+1,,bs1+1);({}as{1}bs))=ZNHD(({1}a11,b1+1,,bs1+1);(as+1,{1}bs1))
と輸送でき、輸送する側のインデックス({1}a11,b1+1,,bs1+1)が今度は再びIの元に切り替わりました。したがって今度はbs1回輸送関係式(i)を、さらに次はas1回輸送関係式(ii)を、というように輸送していくことが分かります。これを続けていくと、スタートから数えてbs+as++b1+a11回輸送した結果、輸送する側のインデックスが(1)となってルール3より輸送が終了します。ここで最後はインデックスが(1)になった段階でストップするので、輸送する回数はbs+as++b1+a1回ではなくそれよりも1回少なくなることに注意します。実際スタートZNHD(k;)からbs+as++b1+a11回輸送すると、
 ZNHD(k;)=ZNHD(({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1);)=ZNHD((1){}a11{}b1{}as{}bs;)=ZNHD((1);{}a11{}b1{}as{}bs)=ZNHD((1);(a1,{1}b11,a2+1,{1}b21,,as+1,{1}bs1)).
となって、輸送が完了しました。ここで、輸送されてできたインデックス(a1,{1}b11,a2+1,{1}b21,,as+1,{1}bs1)について考えてみましょう。これは、次のように変形できます。
 (a1,{1}b11,a2+1,{1}b21,,as+1,{1}bs1)=({1}bs1,as+1,,{1}b21,a2+1,{1}b11,a1)=({1}bs1,as+1,,{1}b21,a2+1,{1}b11,a1+1)=((k)).
ここで先ほど定義した双対インデックスが出てくるのです!ところで、((k))に見覚えはありませんか?もういいですね。そうです、このインデックスこそがHoffman双対インデックスの正体だったのです!Hoffman双対インデックスはkと表記することになっていたので、結局次の式が導かれます。
ZNHD(k;)=ZNHD((1);k).
これできちんとスタートとゴールが輸送関係式によって等式で結ばれることが示されました。さあいよいよクライマックスです!この瞬間のために用意した境界条件の出番です!命題5を上の式に適用すると!!ついに!!!この式が得られました!!!!!
HN(k)=ζN(k).
この式こそがHoffmanの恒等式でした。これにて、証明が完了したわけです。 (Q.E.D.)

おわりに

この最後の章で、連結和法による証明をまとめてみたいと思います。
まずは初手として連結和を定義したのでした。この連結和を発見することが唯一の連結和法のネックでしたね。私たちは今回定義を受け入れることにしました。次に用意したのは輸送関係式でした。そのために二項係数に関する級数の補題を2つ用意しました。輸送関係式の証明は級数の変形のみで、特別なテクニックを必要としない点は素晴らしいポイントです。そして境界条件を確認しました。最後に、輸送関係式を用いてZNHD(k;)というスタートから出発し、bs+as++b1+a11回インデックスを輸送してZNHD((1);k)というゴールまで結びつけました。ところでbs+as++b1+a11という数字ですが、k=({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs+1)であったのでk=({1}a11,b1+1,,{1}as1,bs)です。したがってbs+as++b1+a11はもっと簡潔にwt(k)と表現することができます。くどいですがもう一度言い直せば、輸送関係式を用いてルールに従ってインデックスをwt(k)回輸送することで、ZNHD(k;)=ZNHD((1);k)が導けるということです。最後に境界条件を適用して証明終了です。
 連結和法によるHoffamnの恒等式の証明、いかがだったでしょうか。計算がやや面倒な部分もあったかもしれませんが、こんなに非自明な結果がこのような初等的な計算で証明できるということは驚くべきことです。少しでもこの証明方法の凄さや多重ゼータ値の面白さ、ひいては数学の面白さを味ってもらえたなら幸いです。では今日はこの辺で。最後までお読みいただきありがとうございました!

参考文献

[S] Shin-ichiro Seki, Connectors, arXiv preprint arXiv:2006.09076.

投稿日:2020117
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投稿者

Multiple Zeta Values / Selberg zeta / functional analysis / Riemann Hypothesis

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  1. Hoffmanの恒等式の連結和法による証明
  2. はじめに
  3. ノーテーション
  4. Hoffmanの恒等式
  5. 連結和法
  6. 連結和法ステップ1〜連結和の定義〜
  7. 連結和法ステップ2〜輸送関係式の証明〜
  8. 連結和法ステップ3〜境界条件の証明〜
  9. 連結和法ステップ4〜ラストスパート〜
  10. おわりに