2

双複素数の計算

56
0
$$$$

双複素解析入門 第3回

今回は,前回のべき等元分解の定理を使って双複素数をべき等元分解表示,計算をします.まず,前回で紹介していなかった性質を紹介します.定理の名前から,$e,e^{\dagger}$がべき等元であることはわかりそうですが,改めて紹介することにします.

$$e^2=e,{e^{\dagger}}^2=e^{\dagger}.$$

では,計算していきましょう.

  1. $Z=1+2i-j+3ij \hspace{10mm}$ (2) $W=Z^2$

(1)\begin{align*} Z&=(1+2i)+j(-1+3i)\\ &=\{(1+2i)-i(-1+3i)\}e+\{(1+2i)+i(-1+3i)\}e^{\dagger}\\ &=(4+3i)e+(-2+i)e^{\dagger}. \end{align*}

(2)\begin{align*} W&=Z^2\\ &=\{(4+3i)e+(-2+i)e^{\dagger}\}\{(4+3i)e+(-2+i)e^{\dagger}\}\\ &=(4+3i)^2e^2+2(4+3i)(-2+i)ee^{\dagger}+(-2+i)^2{e^{\dagger}}^2\\ &=(4+3i)^2e+(-2+i)^2e^{\dagger}. \end{align*}

例を確認するとわかるかもしれませんが,べき等元分解をすると$e,e^{\dagger}$が非常に良い性質をもっているため,$n$乗の計算が楽になります.

$Z=(z_{1}-iz_{2})e+(z_{1}+iz_{2})e^{\dagger},W=(w_{1}-iw_{2})e+(w_{1}+iw_{2})e^{\dagger}\in \mathbb{BC}$に対して,
\begin{align*} &Z+W&=&(z_{1}-iz_{2}+w_{1}-iw_{2})e+(z_{1}+iz_{2}+w_{1}+iw_{2})e^{\dagger},\\ &ZW&=&(z_{1}-iz_{2})(w_{1}-iw_{2})e+(z_{1}+iz_{2})(w_{1}+iw_{2})e^{\dagger}. \end{align*}
となる.さらに,$n \in \mathbb{N}$に対して,
$$Z^n=(z_{1}-iz_{2})^ne+(z_{1}+iz_{2})^ne^{\dagger}$$
が成り立つ.

今回はここまでにします.ありがとうございました。次回は,この$e,e^{\dagger}$を用いて零因子について考察を行います.

投稿日:2020123

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

まい.
まい.
29
1689
大学院修士課程まで主に解析数論(素数定理周り)の研究をしていました。今はデータサイエンス関連の仕事をしています。Xでは大学数学入門資料を投稿してます。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中