高校数学では整数の合同式の概念を習う。この考え方を実数係数多項式の場合に当てはめることにより複素数を構成することができる。以下そのことを簡単に説明しよう。
(iPadで書いたので読みにくかったらすみません。)
$\mathbf{R}[x]$を$x$を不定元とする$\mathbf{R}$上の一変数多項式環とする。
(環という言葉を知らない人は単に実数係数の多項式全体からなる集合だと思ってよい。)
$f(x),g(x)∈ \mathbf{R}[x]$に対して
$f(x)-g(x)$が${x^2+1} $で割り切れるとき$f(x)≡g(x)$と書く。
(このとき$f(x)とg(x)$は同値であると呼ぶことにする。)
整数の合同式の場合と同様に
$f_1(x),f_2(x),g_1(x),g_2(x)∈ \mathbf{R}[x]$に対して
$f_1(x)≡f_2(x)$かつ$g_1(x)≡g_2(x)$ならば
$f_1(x)+g_1(x)≡f_2(x)+g_2(x)$および$f_1(x)g_1(x)≡f_2(x)g_2(x)$
が成り立つので
$f(x)∈ \mathbf{R}[x]$と同値な多項式全体を$[f(x)]$と書くことにすると
$f(x),g(x)∈ \mathbf{R}[x]$に対して
和$[f(x)]+[g(x)]=[f(x)+g(x)]$および積$[f(x)][g(x)]=[f(x)g(x)]$
が代表元の取り方によらずに定まることがわかる。
さて$f(x)∈ \mathbf{R}[x]$を${x^2+1}$で割って
$f(x)=({x^2+1})q(x)+a+bx$となったとしよう。
(余りを$ax+b$としなかったのはあとの都合による。)
このとき
$f(x)≡a+bx$すなわち$[f(x)]=[a+bx]$
である。
また$a,b∈\mathbf{R}$に対して
$a≡b$であることと$a=b$であることは同値なので
$[a]$を単に$a$と書くことにすれば
$i=[x]$とおくとき
$[f(x)]=a+ bi$と(一意的に)表すことができる。
(要するに代表元として$a+bx$という形のものがただ一つ定まるということ。これは多項式の割り算の一意性からの帰結である。)
ここで
${x^2}≡-1$であることから${i^2}=-1$となることに注意しておこう。
以上のようにして表した$a+ bi$の形のものを複素数と定義すれば和と積が矛盾なく定まり、
さらに$0$でない任意の複素数の逆数も定まることがわかるので、
複素数全体の集合$\mathbf{C}$は体になる。
(環論の言葉で表せば剰余環$\mathbf{R}[x]/({x^2+1})$が体ということである。)