高校数学では整数の合同式の概念を習う。この考え方を実数係数多項式の場合に当てはめることにより複素数を構成することができる。以下そのことを簡単に説明しよう。
(iPadで書いたので読みにくかったらすみません。)
をを不定元とする上の一変数多項式環とする。
(環という言葉を知らない人は単に実数係数の多項式全体からなる集合だと思ってよい。)
に対して
がで割り切れるときと書く。
(このときは同値であると呼ぶことにする。)
整数の合同式の場合と同様に
に対して
かつならば
および
が成り立つので
と同値な多項式全体をと書くことにすると
に対して
和および積
が代表元の取り方によらずに定まることがわかる。
さてをで割って
となったとしよう。
(余りをとしなかったのはあとの都合による。)
このとき
すなわち
である。
またに対して
であることとであることは同値なので
を単にと書くことにすれば
とおくとき
と(一意的に)表すことができる。
(要するに代表元としてという形のものがただ一つ定まるということ。これは多項式の割り算の一意性からの帰結である。)
ここで
であることからとなることに注意しておこう。
以上のようにして表したの形のものを複素数と定義すれば和と積が矛盾なく定まり、
さらにでない任意の複素数の逆数も定まることがわかるので、
複素数全体の集合は体になる。
(環論の言葉で表せば剰余環が体ということである。)