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Levi-Civita 記号 で楽しいベクトル解析ライフを送ろう

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はじめに

この記事ではアインシュタインの和の規約を用いることがあります.逆に,あえて明示的に書くこともあります.

(ap2020の方々へ)これは数学演習第9回の大問1の解説になってます.

Levi-Civita 記号の縮約公式

一応定義から…

Levi-Civita 記号

ϵijk={1((i,j,k)=(1,2,3),(2,3,1),(3,1,2))1((i,j,k)=(1,3,2),(3,2,1),(2,1,3))0(otherwise)

これを使うと,三次元ベクトルの外積はA×B=ϵijkeiAjBkと書ける.また,定義よりϵijk=ϵjki=ϵkij=ϵikj=ϵkji=ϵjik(添字の付け替え)が成り立つ.

Kronecker のデルタ

δij={1(i=j)0(ij))

i,j,k,l,m,m1,2,3のいずれかの値を取るとする.
ϵijkϵlmn=δilδjmδkn+δimδjnδkl+δinδjlδkmδilδjnδkmδinδjmδklδimδjlδkn=|δilδimδinδjlδjmδjnδkjδkmδkn|

ei(i=1,2,3)x,y,z軸方向の単位(たて)ベクトルとすると,ei×ej=ϵijkekが成り立つ.したがってϵijk=(ei×ej)ekとスカラー三重積の形で表すことができる.これを用いると,

ϵijkϵlmn=[(ei×ej)ek][(el×em)en]=|eiTejTekT||elemen|=|δilδimδinδjlδjmδjnδkjδkmδkn| 

これをそのまま使うことはほぼなく,次の形で使うことが多い.

m=13ϵmijϵmkl=δikδjlδilδjk

m=13n=13ϵmniϵmnj=2δij

ϵmijϵmkl=|δmmδmkδmlδimδikδilδjmδjkδjl|=m=13δmm|δikδilδjkδjl|m=13δim|δmkδmlδjkδjl|+m=13δjm|δmkδmlδikδil|=3|δikδilδjkδjl||δikδilδjkδjl|+|δjkδmlδikδil|=|δikδilδjkδjl|=δikδjlδilδjk

ϵmniϵmnj=|δmmδmnδmjδnmδnnδnlδimδinδij|=m,n=13δmm|δnnδnjδinδij|m,n=13δnm|δmnδmjδinδij|+m,n=13δim|δmnδmjδnnδnj|=n=133(δnnδijδinδnj)n=13(δnnδijδinδnj)+n=13(δinδnjδnnδij)=n=13(δnnδijδinδnj)=3δijδij=2δij

気持ち

どんな時に左辺が非ゼロになるのかを考えるとわかりやすいと思います.
公式2の場合を考えると,左辺はmijm,かつmklmでないと値はゼロになってしまいます.この時,添字i,j,k,lが取りうる値は2通りしかないのでi=mかつj=l,またはi=lかつj=mしかあり得ません.添字の巡回性から,前者は置換の符号が一致するため+1,後者は一致しないため1を与えます.このことをKroneckerのデルタで表現すると公式2の右辺になります.

上の証明では明示的にを書いたので混乱はないと思われるが,一行目の行列式の
δmm」を「1」と書いてしまうとミスってしまう.

Levi-Civita 記号を使ってベクトル解析

ベクトル解析では様々な公式が登場するが,これらの記号を上手く使いこなすことができれば非常にスマートに示すことができる.

(A×B)=B(×A)A(×B)を示せ.

(A×b)=ϵijkiAjBk=ϵijkBkiAj+ϵijkAjiBk=ϵijkBijAkϵijkAijBk=B(×A)A(×B)

×(A×B)=(B)A(A)B+A(B)B(A)を示せ.

[×(A×B)]i=ϵijkj(A×B)k=ϵijkϵklmjAlBm=(δilδjmδimδjl)(BmjAl+AljBm)=BjjAiAjjBi+AijBjBijAj=[(B)A(A)B+A(B)B(A)]i

Levi-Civita 記号は添字を巡回的に付け替えても良いことに注意.

すっごく簡単に示せました!最高!

これを使うと大体のベクトル解析の公式は示せると思うのですが,次の問題だけはスマートなやり方が思い浮かばない…

(AB)=(A)B+(B)A+A×(×B)+B×(×A)を示せ.

右辺をゴリゴリやって左辺に一致するのを見るのは非常に簡単です.
[(A)B+(B)A+A×(×B)+B×(×A)]i=AjjBi+BjjAi+ϵijkϵklm(AjlBm+BjlAm)=AjjBi+BjjAi+(δilδjmδimδjl)(AjlBm+BjlAm)=AjiBj+BjiAj=i(AjBj)=[(AB)]i

でも,やっぱり左辺から右辺を自然に導けないとなんか負けた気がするんですよね.どなたか上手いやり方を知っている人がいたら教えて欲しいです.

僕の知る限りでは ときわ台学さん のやり方が最善な気がしています(若干トリッキーな感じはするけど).

おわりに

Levi-Civita記号とお友達になって楽しいベクトル解析ライフを!(おわり)

投稿日:2020126
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