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位相群の定義の連続性について。

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 この記事では、位相群の定義「群$G$の群演算が連続写像になっていて、なおかつ逆元を出力する写像も連続写像になっている事」と「写像$h:G \times G \longrightarrow G\space ;h(x,y):=x^{-1} y\in G$は連続写像」が同値な事を証明します。
おそらく何か重要な定理とかその様なものの解説ではございませんが、例えば初学者の方などが位相群を学び始めた時に浮かぶ様な小さな疑問への詳細な回答として、この記事に興味を持って読んで下さった方への助けになれば幸いです。

本題

 まずは位相群の定義から。

位相群

集合$G$が位相群であるとは、次の条件を満たす事。
$(1)$$G$には二項演算$f:G\times G\longrightarrow G$が定義されていて、$(G, f)$は群。
$(2)$$(G, \mathcal{O})$は位相空間。
$(3)$二項演算$f$と、逆元を出力する変換$g:G\longrightarrow G\space:g(x):=x^{-1}$がそれぞれ連続。

$G$の元$f(x,y)$は、単に$xy$と書く事もあります。
連続写像とは、終集合の開集合の原像が定義域の開集合になっている事を定義とします。

 最後の(3)が次の(4)と同値な事を示すのがこの記事の目的です。

定義1の$(3)$との同値命題

定義1の(3)と(4)「$h:G \times G \longrightarrow G\space ;h(x,y):=x^{-1} y\in G$は連続写像」は同値。

ここではまず証明の概略を記し、詳細は後述します。

・(3)$\Longrightarrow$(4)について。
写像$g';G\times G\longrightarrow G\times G\space; g'(x,y):=(g(x),y)=(x^{-1},y) $を用いると写像の等式「$h=f \circ g'$」と命題「$g$が連続$\Longrightarrow g'$は連続」が成り立つ(補題2として後述)ため、連続写像の合成写像は連続な事(補題3として後述)と合わせて$(3)\Longrightarrow (4)$が示される。
$(4)\Longrightarrow (3)$について。
$g$の連続性・・・$e$$G$の単位元とする。2つの連続写像$i:G\longrightarrow G\times \lbrace e \rbrace \space;i(x):=(x,e) $$h|_{G\times \lbrace e \rbrace} $(制限$h|_{G\times \lbrace e \rbrace} $が連続写像な事は補題4として後述)を用いると、$g=h|_{G\times \lbrace e \rbrace}\circ i$これは連続写像の合成なので$g$は連続(補題3の事)。

$f$の連続性・・・$g'$$g'$自身を逆写像に持つ全単射な事に注意する。$;g'^{-1}=g'$
$h=f \circ g'$に関して、$g'$は逆写像$g'^{-1}=g'$を持つので$f=h\circ g'^{-1}=h\circ g'$が成り立つ。$g$は連続な事が上で示されたので後述の補題2により$g'$も連続になるため、連続写像の合成写像である$f$は連続(補題3)。
したがって$(3)\Longleftrightarrow (4)$ 。  ▯

上の証明の計算で使った細かい事実の確認として補題とその証明を書きます。

$g$が連続$\Longrightarrow g'$は連続

 $G\times G$の開集合$U$は、$G$の開集合の直積の和で書き表される。;$U=\bigcup_{ \lambda\in \varLambda}V_\lambda\times W_\lambda$
 これら開集合の直積集合の内の1つ$V\times W$に着目して、まずは$g'^{-1}(V\times W)$が開集合な事を示す。
$V\times W=\bigcup_{y\in W}(V\times \lbrace y \rbrace )\space(=\bigcup_{y\in W}(V,y)$)なので$g'^{-1}(V\times W)=g^{-1}(V)\times W$が成り立ち、$g$の連続性から$g^{-1}(V)$$G$の開集合なので、$g'^{-1}(V\times W)=g^{-1}(V)\times W$$G\times G$の開集合。
 したがって$g'^{-1}(U)=g'^{-1}(\bigcup_{ \lambda\in \varLambda}V_\lambda\times W_\lambda)=\bigcup_{ \lambda\in \varLambda}g'^{-1}(V_\lambda\times W_\lambda)$の右辺の各$g'^{-1}(V_\lambda\times W_\lambda )$も同様に計算すれば開集合なため、その和集合$g'^{-1}(U)$も開集合。 ▯

ちなみに補題2はもっと一般的な観点から、$G$上の恒等写像を$id_{G}$として$g'(x,y)=(g(x),id_G(y))$$g$$id_{G}$が連続なので連続とも言える。その一般的な事実とは、$A$上の連続写像$F_A$$B$上の連続写像$F_B$に関して$F_A\times F_B(a,b):=(F_A(a),F_B(b))$が連続な事。

連続写像の合成写像は連続写像。

$a:A\longrightarrow B$$b:B\longrightarrow C$を連続写像とする。
$U$$C$の開集合とすると$b^{-1}(U)$$B$の開集合なため$a^{-1}(b^{-1}(U))$$A$の開集合になる事と、$(b\circ a)^{-1}(U)=a^{-1}(b^{-1}(U))$から$b\circ a$は連続。 ▯

連続写像の定義域を制限した写像は連続。

定義に関する注意として、$F:X\longrightarrow Y$が連続写像な時、定義域を部分集合$X'$へ制限した写像が連続であるとは、$X$の部分位相空間$X'$上の写像として連続な事を言う。
$U$$Y$の開集合とする。$(F|_{X'})^{-1}(U)=X' \cap F^{-1}(U)$が成り立ち、$ X' \cap F^{-1}(U) $$X'$の開集合な事から$F|_{X'}$は連続写像。

ちなみに補題4は部分位相空間上の包含写像$I=id|_{X'}:X'\longrightarrow X\space ; I(x)=x$が連続な事と、写像の等式$F|_{X'}=F\circ I $と、補題3から連続性を示す事も出来る。

投稿日:20231112
更新日:20231113

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