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複素座標入門3/5 単位円1

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これからは単位円(|z|=1)について書こうと思います.単位円の何がよいかというと円周上の点A(a)においてa=1aが成り立つので全体的に計算が複雑になりにくいことが挙げられます.単位円でなかったらaaは区別しなければなりませんからね.また,以後,先ほどの関係式a=1aは断りなく使い,単位円|z|=1ωとします.

諸定理

よく使う定理を使う頻度順(主観)に挙げます.証明も書きますがさらっと流すよりは完全に理解してから次に進んだほうがいいと思います.では行きましょう.

直線

ω上の異なる2点A,Bにおいて直線ABの方程式はz+abz=a+b

a+b0のとき
直線ABの方程式をpz+qz=1としてz=a,bを代入して
       pa+qa=1,pb+qb=1  
を得る.この2式よりp=1a+b,q=aba+bだからこれらをもとの方程式に代入して分母を払うと z+abz=a+b    が得られる.
これはa+b=0のときも成り立っている.証明終了.

接線

ω上の点Aにおける接線の方程式はz+a2z=2a

ω上の2点a,aを通る直線の方程式は定理1よりza2z=0である.
ω上の点Aにおける接線はこれに垂直だからその方程式はz+a2z=pとおける.
z=aを代入してp=2aが得られるから求める方程式は
       z+a2z=2a    である.証明終了.

垂線

ωに内接する三角形ABCについてCからABへの垂線の方程式はzabz=cabc

ABの方程式は定理1よりz+abz=a+bだからそれに垂直な直線の方程式は
zabz=pとおける.この式にz=cを代入してp=cabcが得られるから,求める方程式は
       zabz=cabc   である.証明終了.

垂線の足

ωに内接する三角形ABCについてCからABへ下した垂線の足の座標は12(a+b+cabc)

定理1,3の式を連立してzを求めると得られる.証明終了.

再び交わる点

ω上の点Aω上にない点Pについて
 直線APωの交点のうちAでないほうの座標はapap1

直線APωの交点のうちAでないほうをXとすると,直線AXの方程式は定理1よりz+axz=a+xであり,z=pはこれを満たすから,p+axp=a+x
xについて解いてx=apap1  これが求める座標である.証明終了.

p1p

Pω上にないのでp=1pとはなりません.pのままです.

垂心

ωに内接する三角形ABCの垂心の座標はa+b+c

BからACへの垂線の方程式は定理3よりzacz=bacb
同様にcからABへの垂線の方程式は   zabz=cabc
2式よりz=a+b+cを得る.証明終了.

重心

ωに内接する三角形ABCの重心の座標は13(a+b+c)

重心は外心と垂心を結ぶ線分を1:2に内分するという有名な事実より明らかである.

こいつらは複素座標で問題を解くうえで最もベーシックな道具になります.
では,練習問題といきましょう.

練習問題

level1

1@@

円に内接する六角形ABCDEFがある.辺ABと辺DEが平行であり,辺BCと辺EFが平行であるとき,辺CDと辺FAも平行であることを示せ.(JJMO2011 1)

2@@@

円に内接する五角形A1,A2,A3,A4,A5があり,辺A3A4,A4A5,A5A1,A1A2,A2A3の中点をそれぞれM1,M2,M3,M4,M5とし,三角形A5A1A2,A1A2A3,A2A3A4,A3A4A5,A4A5A1の垂心をそれぞれH1,H2,H3,H4,H5とする.このとき,五角形M1M2M3M4M5と五角形H1H2H3H4H5は相似であることを示せ.

3@@@@

四角形ABCDに点Oを中心とする円が内接している.対角線AC,BDの中点をそれぞれ
M,Nとしたとき,OM:ON=OAOC:OBODを示せ.(JMO2011予選 11改題)

level2

1@@@@@

鋭角三角形ABCにおいて,外心をO,垂心をHとする.また,Oを通り直線BCに平行な直線と辺AB,ACとの交点をそれぞれP,Qとし,線分AHの中点をMとする.このとき,BMP=CMQを示せ.(JJMO2016 4)

2@@@@@

鋭角三角形ABCがあり,その外心をOとする.3点A,B,Cから対辺に下ろした垂線の足をそれぞれD,E,Fとし,さらに辺BCの中点をMとする.直線ADと直線EFの交点をX,直線AOと直線BCの交点をYとし,線分XYの中点をZとする.このとき3点A,Z,Mが同一直線上にあることを示せ.(JMO2017 3)

level3

1@@@@@@

三角形ABCの外心をO,垂心をHとし,直線AB,BC上に点D,Eを,BC=BE=CDを満たすようにとる.直線BE,CDの交点をKとするとき,直線AK,OHは直線BC上で交わることを示せ.(peppers 5/7)

2@@@@@@

ABCDは円ωに内接する四角形であり,Pは直線AC上の点であって,直線PBおよび直線PDωに接する.ωの点Cでの接線は直線PDと点Qで交わり,ADと点Rで交わる.直線AQωの交点のうちAでない方をEとする.このとき,3点B,E,Rは同一直線上にあることを示せ.(APMO2013 5)

3@@@@@@

鋭角三角形ABCがある.AからBCにおろした垂線の足をD,BCの中点をM,三角形ABCの垂心をHとする.三角形ABCの外接円Γと半直線MHの交点をEとし,直線EDと円Γの交点のうちEでない方をFとする.このときBFCF=ABACが成り立つことを示せ.(APMO2012 4)

次回予告

今回は実践多めでした.peppersが複素で解けるのは楽しいですね.今後もpeppersはちょいちょい登場する予定です.次回は残された五心である内心,傍心,また円周角の定理を複素数で表現する方法を書きます.
それでは,お疲れさまでした.

投稿日:2020127
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natu
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複素座標入門を終わらせたら何するか悩んでます

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