二次方程式の解の公式の導出は広く知られていると思うが,三次方程式,四次方程式の解の公式について学ぶ中で新たな気づきがあったのでここで紹介したい。
$x^2+ax+b=0$の解は$x = \dfrac{-a\pm \sqrt{a^2-4b}}{2}$
$x^2+ax+b = \left(x+\dfrac{a}{2} \right)^2 -\dfrac{a^2}{4} + b $であるから,$\left(x+\dfrac{a}{2} \right)^2 = \dfrac{a^2}{4} - b $として,$x+\dfrac{a}{2} = \pm\sqrt{\dfrac{a^2}{4}-b}$から,$x = \dfrac{-a\pm \sqrt{a^2-4b}}{2}$を得る。
$x^3+ax^2+bx+c = 0$は$x = t-\dfrac{a}{3}$とすると,$t$についての方程式$t^3+pt+q = 0$と変形できる。(ただし$p=b-\dfrac{a^2}{3}$,$q=c-\dfrac{ab}{3}-\dfrac{2a^3}{27}$である。)
この$x=t-\dfrac{a}{3}$という変換により,$2(=3-1)$次の項がなくなった$t$についての三次方程式を解くことにより三次方程式の解の公式が得られる(詳細は本記事の本筋と離れるので割愛する)。
$x^4+ax^3+bx^2+cx+d=0$は$x=t-\dfrac{a}{4}$とすると,$t$についての方程式$t^4+pt^2+qt+r=0$と変形できる($p$,$q$,$r$の詳細については省略する)。
やはりここでも$x=t-\dfrac{a}{4}$という変換により$3(=4-1)$次の項が消えていることがわかる。
さきほどの変換を二次方程式について考えると$x=t-\dfrac{a}{2}$という変換を施すことになる。二次関数$y=x^2+ax+b$の軸は$x=-\dfrac{a}{2}$であることから,$x=t-\dfrac{a}{2}$という変換は,(元の二次方程式を表す)二次関数の頂点が$y$軸上にくるように平行移動することに対応している。
また,この変換により$1$次の項が消えている(平方完成しているのだから当たり前だが)ことから,$1$次の項が二次関数の横方向の位置を決めていることがわかる。実際,$x+\dfrac{a}{2}=\pm\sqrt{\dfrac{a^2}{4}-b}$という式からも平行移動したあとの解が左右対称な位置にあることが式からもよくわかる。
※ちなみに$x=t-\dfrac{a}{2}$という変換をして解の公式を導出する計算は良く知られた平方完成の手順と何ら変わりはない。
ちなみに、三次方程式における$x=t-\dfrac{a}{3}$という変換について,これは三次関数の変曲点が$y$軸上にくるような平行移動を施していると思えばよい。
平方完成は何度も繰り返しやったし,この記事に書いた内容も式変形自体は何度も目にしているものだが,私自身は平方完成がこのような平行移動に対応しているという自覚がなかった。なぜ今まで感じなかったのかという恥ずかしさはあるが,こういう気づきがいつまでもあるのが楽しさの一つだと思っている。